JPH07108452B2 - 金属溶湯用樋 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は溶融した金属を流すため
の金属溶湯用樋に関し、特に、内面側に発熱体を配置し
た蓋を備え、樋の溝内に流れる金属溶湯を凝固させるこ
となく供給するのに適した金属溶湯用樋に関する。

【０００２】

【従来技術】例えばアルミニウムなどの金属を成形する
場合、溶融炉内で溶融した金属溶湯を金型や砂型などに
流し込む。その際、溶融炉から取り出した金属溶湯は、
例えば添付の図５に示すようなセラミックの樋１に形成
された溝２内を流して所定の位置まで供給する。すなわ
ち、この従来の樋１では、その上部を解放したままであ
り、そのため、比較的短い時に有用であるが、しかしな
がら、その長さが長くなるとその途中で供給している金
属溶湯が凝固してしまう等の問題点があった。

【０００３】そこで、従来、溝２の上部に蓋３を被せて
放熱による金属溶湯の凝固を防止するものや、さらに、
例えば添付の図６や図７に示すように、溝の上部に被せ
る蓋３の内側にシーズヒータ４やニクロム線などの電熱
線５を張って加熱しながら樋１の溝２内を流れる金属溶
湯の凝固を防止しながら供給するものが提案されてい
た。なお、前記の図７（Ｂ）において、符号６は電熱線
５が落ちないように、これを挿入するための挿入溝を示
している。

【０００４】

【発明が解決すべき課題】しかしながら、前記の従来技
術の金属溶湯用樋、特に図７に示されるような、溝の上
部に被せる蓋の内側に発熱手段を設け、これによって樋
の溝内を流れる金属溶湯を加熱しながら凝固を防止する
ものでも、次のような問題点があった。

【０００５】第一に、蓋の内側にシーズヒータを設けた
シーズヒータ型では、発熱体であるシーズヒータの発熱
体自体が１０００℃位になってもシースの表面の温度は
５００℃〜７００℃程度までしか上昇せず、そのため、
樋の内面の温度は３００℃〜５００℃位にしかならず、
これではアルミニウム等の溶湯では凝固してしまうとい
う問題点があった。この様なシーズヒータ型の樋の予熱
は、言い替えれば、樋内面の水分の除去程度の効果しか
得られなかった。

【０００６】第二に、裸のニクロム線が蓋の内側に取り
付けられた金属溶湯用樋は、前記のシーズヒータ型のも
のよりは熱効率が良いが、樋の内面を７００℃程度にす
るためにはヒータであるニクロム線自体の温度を１００
０℃以上にしなければならず、これでは、ニクロム線自
体の寿命の問題点があった。特に、樋で金属溶湯を流す
場合、湯口では湯が飛び跳ねたりすることから、ヒータ
であるニクロム線にアルミニウムが付着して、そのため
にヒータが断線することが多く見られた。

【０００７】そこで、本発明では、前記の従来技術にお
ける問題点に鑑み、金属溶湯用樋の樋内面を、溝内に流
れるアルミニウム等の金属溶湯が凝固しない程度の高温
に予熱することが可能で、金属溶湯の飛び跳ねにもかか
わらずヒータなどの発熱体の寿命を長く維持する構造の
金属溶湯用樋を提供することをその目的とする。

【０００８】本発明では、さらに、前記の金属溶湯用樋
におけるガス置換を実施するにも最適な構造の金属溶湯
用樋を提供することをもその目的とする。

【０００９】

【課題を解決する手段】前記の目的を達成するため、ま
ず本発明により提案されるのは、金属溶湯を流す溝を形
成した耐熱性部材の樋と、この耐熱性部材の樋の上面に
被せる耐熱性部材の蓋とを備え、前記セラミック樋の溝
内に金属の溶湯を流すと共に、前記耐熱性部材の蓋の内
面側に発熱体を配置して前記溝内を流れる金属溶湯を加
熱する金属溶湯用樋において、前記耐熱性部材の蓋の少
なくとも内側面を、断面中央が上方に向かって湾曲した
アーチ型に形成し、この湾曲面に前記発熱体を配設した
金属溶湯用樋である。

【００１０】また、前記の他の目的を達成するため、本
発明によれば、前記の金属溶湯用樋において、さらに、
前記樋と前記蓋との間に輻射熱透過性部材の板状部材を
挿入している金属溶湯用樋が、あるいは、前記蓋の端面
に、前記蓋の湾曲した内側面により形成される気体の通
流路を遮断するための断熱性仕切板を配置した金属溶湯
用樋が提案される。

【００１１】

【作用】前記の本発明の金属溶湯用樋によれば、金属溶
湯を流す溝を形成した耐熱性部材の樋の上面に被せる耐
熱性部材の蓋の内側面を、断面中央が上方に向かって湾
曲したアーチ型に形成し、この湾曲面に前記発熱体を配
設したことにより、前記発熱体を配設するための内側面
の面積を増大することが出来、これにより、前記蓋の内
側面に配設する発熱体の本数を増大させて前記樋の溝を
上方から加熱する熱量を増加させて、溝内を流れる金属
溶湯が凝固しない程度に、高温に予熱することが可能と
なる。これにより、発熱体を非常に高温に加熱する必要
がなく、また、その形状から金属溶湯が跳ね上がっても
発熱体に付着しにくく、発熱体の寿命を長く維持するこ
とが可能になる。

【００１２】さらに、前記樋と前記蓋との間に、ガラス
板などの輻射熱透過性部材の板状体を挿入することによ
り、樋の内側を不活性ガス雰囲気に保ち、かつ、発熱体
に金属溶湯が跳ね上がって付着することを防止し、ま
た、蓋の端面に断熱性仕切板を配置することにより、前
記蓋のアーチ型内面により形成される空間を煙突効果に
よって流れる対流を遮断し、対流による熱ロスを低減す
る。

【００１３】

【実施例】以下に本発明の実施例について、添付の図面
を参照しながら詳細に説明する。まず、図１及び図２に
本発明の実施例による金属溶湯用樋が示されており、こ
の樋１０は、図にも示すように、例えば鉄などの金属で
形成した断面略「コ」の字形状の枠１１の内部にセラミ
ック等の耐熱性部材を詰め込み、その中央部に長手方向
に延びた断面略「Ｖ」あるいは「Ｕ」字状の溝１２を成
形してなる。そして、この樋１０の溝１２が開口した上
面側に樋１０の長手方向に複数に分割された蓋２０が、
その溝１２の開口を覆うように一列に配置されて、金属
溶湯用樋が構成されている。

【００１４】また、図２にも示すように、前記樋１０の
上面に被せる蓋２０は、やはりセラミック等の耐熱性部
材を所定の形状に形成してなり、本実施例では、この蓋
２０は、その断面中央部が上方に向かって湾曲したアー
チ型になるように形成されている。すなわち、この蓋２
０の中央部にアーチ型の内面凹部２１が形成され、複数
の蓋２０を前記樋１０の上面に被せたときに、この内面
凹部２１が、樋１０の溝１２に沿ってその上方を覆うよ
うになっている。さらに、前記蓋２０の内面凹部２１の
表面に複数の嵌入用溝２２、２２…が形成されており、
この嵌入溝２２の内部に、後に詳細に説明する発熱体３
０が複数本嵌入される。また、図中の符号２３、２３
は、後に説明する発熱体３０を外部に引き出すための端
子引出穴を示している。

【００１５】図３に前記蓋２０の内面凹部２１に複数形
成された嵌入用溝２２、２２…内に嵌入されて固定配置
される発熱体３０の配線状態が示されている。すなわ
ち、前記蓋２０の湾曲した内面凹部２１を展開して示し
た図であり、この図はに示されていないが、前記の図１
及び図２から明らかなように、複数の嵌入用溝２２、２
２…が前記蓋２０の内面凹部２１の延長方向に沿って形
成されている。そして、これら複数の嵌入用溝２２、２
２…内に、例えばシーズヒータや、ニクロム線あるいは
カンタル線などの電熱線などからなる発熱体３０が挿入
固定されている。その配線の一例として、本実施例で
は、前記一方の端子引出穴２３から挿入された発熱体３
０は、図の最も上側の嵌入用溝２２から最も側の嵌入用
溝２２まで順次千鳥状に配線され、反対側の端子引出穴
２３から取り出される。また、前記の実施例では、発熱
体３０は、前記蓋２０の内面凹部２１に複数形成された
嵌入用溝２２、２２…内に嵌入固定されるとして説明さ
れているが、この嵌入用溝２２、２２…は必ず形成する
必要はなく、これに代え、例えば蓋２０の内面凹部２１
の表面上に複数の突起を形成し、発熱体３０をこれらの
突起に引っ掛けて配設すること、または接着剤により接
合することなども可能である。

【００１６】このように、本発明によれば、前記蓋２０
の内面に凹部２１を、断面中央部が上方に向かって湾曲
したアーチ型になるように形成することにより、発熱体
３０を配設するための内側面の面積を増大し、これによ
り、蓋２０の内側面に配設する発熱体３０の本数を増大
させ、樋１０の溝１２を上方から加熱する熱量を増加さ
せている。すなわち、発熱体３０が従来と同一熱量を放
出する場合でも、伝熱面積を増やしてやれば、樋１０の
溝１２の加熱温度を上昇することが可能であり、ことこ
とは他方では、発熱体３０の温度を著しく高温にするこ
となく低下させることも可能になる。また、前記蓋２０
の内面凹部２１を、断面中央部が上方に向かって湾曲し
たアーチ型になるように形成することにより、樋１０の
溝１２内を流れる金属溶湯に多少の跳ね上がりがあって
も、平板状の蓋よりは、その内側面に配設される発熱体
３０に金属溶湯が付着しにくい。

【００１７】再び図１に戻り、図中の符号４０は、前記
樋１０と前記蓋２０との間に配置された輻射熱透過性部
材としてのガラス板を示している。このガラス板４０
は、前記蓋２０の内面凹部２１の表面に配設された発熱
体３０を例えば１０００℃程度に加熱した場合に発生す
る輻射熱を透過して樋１０上に照射し、これによって樋
１０を加熱して、溝１２内を流れる金属溶湯を加熱しな
がら凝固を防止するものである。また、樋１０は、通
常、所定の勾配をもって傾斜して配置されることから、
熱が上流側に向かって流れる、所謂、煙突効果により、
前記蓋２０の内面凹部２１内に気体の流れ（対流）が生
じるが、前記のガラス板４０はこの対流による熱ロスを
軽減し、併せて、樋１０内面のガス置換を実施する。

【００１８】なお、前記のガラス板４０は、樋１０の長
さ全体にわたって設けられるが、このガラス板４０の長
さは、本実施例では樋１０の長さ全体の長さのガラス板
ではなく、その上を覆う前記蓋２０と同じ長さに分割し
た複数枚のガラス板を使用し、これにより一枚ガラスで
輻射熱透過性部材を作る場合のコストの上昇を解消して
いる。また、このガラス板４０は、上述の輻射熱透過性
部材としての機能と共に、樋１０の内側を不活性ガス雰
囲気に保つための機能と、樋１０の溝１２内を流れる金
属溶湯が跳ね上がっても、金属溶湯が発熱体３０に付着
することから防止する機能をも有している。

【００１９】さらに、図１及び図２の本発明の実施例で
ある金属溶湯用樋では、前記蓋２０の長手方向の両端面
に、セラミック等の断熱性部材により形成され、断面が
前記蓋２０の形状と同じではあるが内面凹部２１のな
い、いわゆる蒲鉾形状の仕切板５０、５０…を挿入して
いる。この仕切板５０は、隣接して配置される蓋２０の
アーチ状の内面凹部２１が連通した場合に生じる気体の
流れを防止する。すなわち、これら蓋２０のアーチ状の
内面凹部２１の間を遮断し、上述の煙突効果により形成
される気体の流れ（対流）の発生を防止する。

【００２０】図４は、前記の本発明の実施例である金属
溶湯用樋を使用する状態の一例を示すものであり、炉１
００の内部ではアルミニウムが溶解されており、炉１０
０の一部に電磁ポンプ１１０が配置されている。この電
磁ポンプ１１０によって炉１００から汲み上げられた溶
融アルミニウムの溶湯は、本発明の実施例である金属溶
湯用樋１２０の上流端に設けられた湯受けノズル１３０
を介して供給され、金属溶湯用樋１２０の内部（溝）を
流れて所望の位置まで導かれる。その際、前記のような
本発明の金属溶湯用樋を使用することにより、金属溶湯
用樋の樋内面を、溝内に流れるアルミニウムの金属溶湯
が凝固しない７００℃程度の高温に予熱することが可能
であることから、途中で凝固させることなく金属溶湯を
確実に所望の位置まで導くことが出来る。また、その
際、アーチ型凹部を有する蓋の内面に発熱体を取り付け
ることにより、これら発熱体の発熱温度が９００℃程度
でも十分に金属溶湯が凝固しない温度に保つことが可能
となることからも、発熱体の寿命を長くし、金属溶湯用
樋全体としての使用寿命を向上させることが出来る。

【００２１】

【発明の効果】以上に述べた本発明の詳細な説明からも
明らかなように、本発明の金属溶湯用樋によれば、樋の
上方を覆う蓋のアーチ型凹部に取り付けた発熱体により
加熱することにより、発熱体を非常な高温まで加熱する
ことなく、金属溶湯用樋の樋内面を溝内に流れる金属溶
湯が凝固しない７００℃程度の高温に予熱することが可
能となることから、樋を延長しても溶湯が凝固すること
なく金属溶湯を流すことが可能で、実用的にも寿命が長
い、優れた金属溶湯用樋を提供することが可能となる。
また、本発明の金属溶湯用樋によれば、金属溶湯の飛び
跳ねにもかかわらず発熱体の寿命を長く維持することが
可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例である金属溶湯用樋の構造を示
すための一部断面を含む斜視図である。

【図２】前記金属溶湯用樋の断面図である。

【図３】前記金属溶湯用樋の蓋のアーチ型凹部に配設さ
れる発熱体の配線状態を示す図である。

【図４】前記金属溶湯用樋を金属溶解炉に適用した状態
を示す全体概念図である。

【図５】従来技術である上方解放型の樋の構造の一例を
示す図である。

【図６】上方を発熱体を取り付けた蓋で覆った他の従来
技術の樋の構造の一例を示す図である。

【図７】上方を発熱体を取り付けた蓋で覆ったさらに他
の従来技術の樋の構造の一例を示す図である。

【符号の説明】

１０ 樋 １２ 溝 ２０ 蓋 ２１ アーチ状の内面凹部 ３０ 発熱体 ４０ ガラス板 ５０ 仕切板

Claims (3)

【整理番号】 ０９３０１０１−０２ 【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属溶湯を流す溝を形成した耐熱性部材
   のセラミック樋と、この耐熱性部材の樋の上面に被せる
   耐熱性部材の蓋とを備え、前記セラミック樋の溝内に金
   属の溶湯を流すと共に、前記耐熱性部材の蓋の内面側に
   発熱体を配置して前記溝内を流れる金属溶湯を加熱する
   金属溶湯用樋において、前記耐熱性部材の蓋の少なくと
   も内側面を、断面中央が上方に向かって湾曲したアーチ
   型に形成し、この湾曲面に前記発熱体を配設したことを
   特徴とする金属溶湯用樋。
2. 【請求項２】 前記請求項１の金属溶湯用樋において、
   前記樋と前記蓋との間に輻射熱透過性部材の板状体を挿
   入していることを特徴とする金属溶湯用樋。
3. 【請求項３】 前記請求項１の金属溶湯用樋において、
   前記蓋の端面に前記蓋の湾曲した内側面により形成され
   る気体の通流路を遮断するための断熱性仕切板を配置し
   たことを特徴とする金属溶湯用樋。