JPH0710659B2 - 車両のシート装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は車両のシート装置、特にシートクッションを車
体の前後方向に移動可能に支持するシートフレームが設
けられた車両のシート装置に関する。

（従来の技術） 一般に、自動車の車内に配設されるフロントシートは、
乗員の要望に応じて前後位置を調整し得るようになって
いると共に、このフロントシートには、乗員を保護する
ことを目的としてシートベルトが装備されている。そし
て、シートベルトの一端を、車体の所定位置に固設され
たシートベルトアンカに連結することにより、該シート
ベルトに作用する荷重を車体側で受けるようになってい
るのであるが、上記フロントシートを前後動させてその
前後位置を調整した場合には、該フロントシートと車体
の所定位置に固設された上記シートベルトアンカとの相
対的な位置がずれることになって、シートベルトを装着
する場合における装着性が損ねられることになってい
た。

そこで、例えば実開昭61-56124号公報に記載されたシー
トスライド装置によれば、車体に固設されたロアレール
に摺動自在に係合されてシートクッションが取り付けら
れるアッパレールの側部にシートベルトアンカ取付用ブ
ラケットを固着し、且つ該ブラケットの一側部下縁にＵ
字状の屈曲部を形成すると共に、上記ロアレールに固着
された補強レールに逆Ｕ字状の屈曲部を形成して、該屈
曲部と上記シートベルトアンカ取付用ブラケットに形成
されたＵ字状の屈曲部とを摺動自在に係合させることに
より、上記アッパレールに取り付けられたシートクッシ
ョンを前後動させてシート位置を調整する場合に、該シ
ートクッションと共にシートベルトアンカ取付用ブラケ
ットを移動させることにより、例えシートクッションを
前後動させた場合においても該シートクッションとシー
トベルトアンカ取付用ブラケットとの相対的なずれをな
くして、シートベルト装着時における装着性を向上させ
ると共に、シートベルトに作用する荷重を、上記両屈曲
部を介して車体側で確実に受支するように構成されてい
る。

一方、キャブオーバ型自動車においては、車室底部を形
成するフロアパネルの一部が床面部より前壁部を経て一
段と高くされたデッキ部とされ、該デッキ部の下方にエ
ンジンやラジエータ等が配設されており、該デッキ部の
上部にフロントシートを構成する運転シートや助手シー
トが車幅方向に並設されていると共に、該デッキ部の上
面には、上記エンジンやラジエータ等の保守点検用のサ
ービスホールが開設されている。そして、上記運転シー
トや助手シート等のフロントシートは、例えば後方に傾
倒可能とされており、該フロントシートを傾倒させるこ
とにより、上記サービスホールを開口してエンジンやラ
ジエータ等を必要に応じて保守点検するようになってい
る。

（発明が解決しようとする課題） ところで、上記のごとくキャブオーバ型自動車において
は、フロントシートが設けられた車室内より直接後方の
荷室内に移動できるようにしたいといった要望がある。
しかしながら、従来のようにフロントシートを後方にの
み傾倒可能に構成しただけでは、乗員が必要に応じて後
方の荷室内に乗り移ろうとした場合に、上記フロントシ
ートが障害となって、スムーズに移動することが困難と
なっていた。そのため、上記フロントシートを後方に傾
倒可能とするだけでなく該フロンシートの動きを多様化
させる必要があり、また、このようにフロントシートの
動きを多様化させたうえで該フロントシートに装備され
るシートベルト装着時における装着性を損ねることな
く、しかも、該シートベルトに作用する荷重を車体側で
如何に確実に受支するかが課題であった。

そこで本発明は、車両のシート装置において、シートの
動きを多様化させたうえで該シートに装備されるシート
ベルトの装着時における装着性を損ねることなく、しか
も該シートベルトに作用する荷重を車体側で確実に受支
し得る車両のシート装置を提供することを目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記の目的を達成するために、本発明は次のように構成
したことを特徴とする。

即ち、シートクッションを車体の前後方向に移動可能に
支持するシートフレームを設け、このシートフレームを
車幅方向に延びる前後一対の前後フレーム部材と、車体
前後方向に延びて上記前後フレーム部材の両端部に夫々
連結された左右一対の側部フレーム部材とから構成する
と共に、上記前後フレーム部材に係合してシートクッシ
ョンを車幅方向に移動可能に車体に対して支持するガイ
ド部材を設け、且つ上記シートクッションにシートベル
トの一端が連結されるシートベルトアンカを取り付け、
該アンカに設けられた係合部を上記側部フレーム部材に
摺動自在に支持したことを特徴とする。

（作用） 上記の構成によれば、シートクッションがシートフレー
ムにより車体の前後方向に移動可能に支持されていると
共に、該シートフレームを構成する前後フレーム部材に
係合してシートクッションを車幅方向に移動可能に支持
するガイド部材が設けられていることにより、上記シー
トクッションを車体の前後方向はもとより車幅方向にも
移動させることが可能となって、これにより、該シート
クッションの動きが多様化することになる。従って、本
発明に係る車両のシート装置を、例えばキャブオーバ型
自動車に装備することにより、運転シートおよび助手シ
ートが設けられた車室内より直接後方の荷室内に乗り移
ろうとする場合に、上記運転シートや助手シートを構成
するシートクッションを車幅方向、例えば、車体の中央
寄りに移動させることができることになって、これによ
り、後方の荷室へ移動する場合に、上記運転シートや助
手シートが邪魔とならずスムーズに移動することができ
る。

また、シートベルトの一端が連結されるシートベルトア
ンカが上記シートクッションに取り付けられていると共
に、該シートベルトアンカに設けられた係合部が、上記
シートフレームを構成する側部フレーム部材に摺動自在
に支持されているので、シートクッションを前後動させ
てその前後位置を調整する場合に、該シートクッション
と共にシートベルトアンカが移動し得ることになって、
該シートベルトアンカに一端が連結されるシートベルト
の装着時における装着性を損ねることがない。しかも上
記シートベルトに荷重が作用した場合には、この荷重が
シートベルトアンカに設けられた係合部を介して上記側
部フレーム部材に効果的に伝えられることになって、こ
れにより、上記荷重が車体側で確実に受支されることに
なる。

このように本発明によれば、シートの動きを多様化させ
ることができると共に、該シートに装備されるシートベ
ルトの装着時における装着性を損ねることなく、しかも
該シートベルトに作用する荷重を確実に車体側で受支す
ることが可能となる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

なお、本実施例においては、キャブオーバ型の自動車に
本発明に係る車両のシート装置を適用した場合について
説明する。

第１〜３図に示すように、自動車の車室底部を形成する
フロアパネル１が、前部の床面部２から前壁部3aを介し
てデッキ部４にかけて一段と高く形成され、該デッキ部
４の下方にエンジンおよびラジエータ等（図示せず）が
配設されていると共に、該デッキ部４の上面には、上記
エンジンやラジエータ等の保守点検用サービスホール５
（第１図参照）が開設され、且つこのサービスホール５
を覆うサービスホールカバー６が設けられている。

また、第１、２図に示すように、上記デッキ部４上に
は、運転シートや助手シート等を構成するフロントシー
ト７（一方のみ図示、この実施例では助手シートとされ
ている）が装備されており、このフロントシート７は、
シートクッション８と、その後端部にリクライニング機
構９（第２図参照）を介して前後方向に傾倒可能に支持
されたシートバック10とから構成されている。

然して本実施例においては、上記フロントシート７が、
該シート７を構成するシートクッション８の下方と上記
デッキ部４の上面との間に配設されたシートフレーム11
により車体前後方向ならびに車幅方向に移動可能に支持
されている。

即ち、上記シートフレーム11は、車幅方向に延びる前後
一対の前部フレーム部材12および後部フレーム部材13
と、車体前後方向に延びて上記各フレーム部材12、13の
両端部に夫々連結された左右一対の側部フレーム部材1
4、15とから構成されている。そして、上記前後部フレ
ーム部材12、13の車体中央寄りの端部に夫々固設された
ストライカ16a、16bが、上記デッキ部４と床面部２とに
連なる前壁部3aおよび後壁部3b（第２図参照）に夫々固
設された固定部材17、17により固定されていると共に、
上記前後部フレーム部材12、13の下面における所定位置
に夫々固設された係合部材18、18（第1,3図において一
方のみ図示）が、側壁部3cに固設された固定部材19、19
（第２図参照）により固定され、且つ上記側部フレーム
部材14の下面に車体前後方向に架設されたパイプ部材20
が、上記側壁部3cの側方における床面部２の所定位置に
形成された凹部2aに回動自在に支持さられた支持ステー
21に支持されていることにより、上記シートフレーム11
の全体が図示の状態に車体に対して固定支持されてい
る。

更に、上記前部フレーム部材12の上面と後部フレーム部
材13の上面との間において車体前後方向に架設されたガ
イド部材22、22上に固設された一対のロアレール23、23
に、上記シートクッション８の下面に複数の取付ブラケ
ット24…24（第２図参照）を介して固設された一対のア
ッパレール25、25が摺動自在に係合されていることによ
り、上記シートクッション８の全体が車体前後方向に移
動し得るようになっている。なお、上記ロアレール23、
23とアッパレール25、25との間には、シートクッション
８を前後動させて前後位置を調整した場合に、その位置
で該シートクッション８を固定するための従来周知の前
後位置調整装置（図示せず）が設けられている。

そして、上記前部フレーム部材12および後部フレーム部
材13の一端、即ち、車体中央寄りの端部が、第４図に示
すように、上記デッキ部４上に固設された取付ブラケッ
ト26、26に支持された前後一対のガイドローラ27、27を
介して夫々支持されていることにより、該前部フレーム
部材12および後部フレーム部材13が車幅方向に移動可能
に車体に対して支持されている。

更に、第４、５図に示すように、上記側部フレーム部材
15内には、上記シートクッション８の下面に取付ブラケ
ット28を介して固設されてシートベルト29の一端が連結
されるシートベルトアンカ30と一体的に取り付けられた
係合部材31が摺動自在に係合されている。

なお、上記支持ステー21は、第１図に示す矢印（イ）方
向に回動自在とされていることにより、該支持ステー21
を回動させることにより、床面部２の所定位置に形成さ
れた凹部2a内に収納されるように構成されている。ま
た、上記前部フレーム部材12下面の所定位置に当接して
シートフレーム11の全体を支持する複数のラバー部材32
…32（第1,3図参照）が上記デッキ部４の上面における
所定位置に装着されている。更に、上記前部フレーム部
材12の前面および後部フレーム部材13の後面における所
定位置には、シートフレーム11を車幅方向に移動させた
ときに、該シートフレーム11をその位置に固定すべく上
記各固定部材17,17に係合される補助ストライカ16c、16
dが夫々固設されている。

上記の構成によれば、上記側壁部3cに固設された各固定
部材19、19による係合部材18、18の固定を解除すると共
に、上記各固定部材17、17をストライカ16a、16bに係合
させた状態でシートフレーム11の全体を上記ガイドロー
ラ27、27を中心として車体の幅方向に傾倒させることが
でき、これにより、上記デッキ部４の上面に開設された
サービスホール５を開口して、これの下方に配設された
エンジンやラジエータ等の保守点検を行い得るようにな
っている。

更に、上記シートクッション８の下面に固設された一対
のアッパレール25、25が、シートフレーム11の上面に固
設されたロアレール23、23に摺動自在に係合されている
ことにより、該シートクッション８が、車体前後方向に
移動自在に支持されていると共に、上記シートフレーム
11を構成する前部フレーム部材12および後部フレーム部
材13が、ガイドローラ27、27を介して夫々車幅方向に移
動可能に支持されているので、上記各固定部材17、17に
よるストライカ16a、16bの固定ならびに固定部材19、19
による係合部材18、18の固定を解除することにより、シ
ートフレーム11を、第１図に鎖線で示すように、車幅方
向に移動させることができ、これにより、上記シートク
ッション８を車体の前後方向はもとより車幅方向にも移
動させることが可能となる。従って、該シートクッショ
ン８の動きが多様化することになり、フロントシート７
が設けられた車室内より乗員が後方の荷室内に乗り移ろ
うとする場合には、該フロントシート７を車幅方向に寄
せて移動をスムーズに行うことができる。

また、第５図に示すように、シートベルト29の一端が連
結されるシートベルトアンカ30が、シートクッション８
の下面に取付ブラケット28を介して取り付けられている
と共に、該シートベルトアンカ30に設けられた係合部31
が、上記シートフレーム11を構成する側部フレーム部材
15内に摺動自在に係合されているので、シートクッショ
ン８と共にシートベルトアンカ30が車体の前後方向に移
動し得ることになって、該シートベルトアンカ30に一端
が連結されるシートベルト29の装着時における装着性を
損ねることなく、しかもシートベルト29に荷重が作用し
た場合には、この荷重が上記シートベルトアンカ30に取
り付けられた係合部材31を介して側部フレーム部材15に
効果的に伝えられることになって、シートベルト29に作
用する荷重が車体側で確実に受支されることになる。

（発明の効果） 以上のように本発明に係る車両のシート装置によれば、
シートを構成するシートクッションを車体の前後方向に
移動可能に支持するシートフレームを設けると共に、こ
のシートフレームに係合してシートクッションを車体の
幅方向に移動可能に支持するガイド部材を設けたので、
シートクッションの動きを多様化させることができると
共に、上記シートフレームを構成する側部フレーム部材
に、シートクッションに取り付けられたシートベルトア
ンカに設けられた係合部を支持させるようにしたので該
シートクッションに装備されるシートベルトの装着時に
おける装着性を損ねることなく、しかも該シートベルト
に作用する荷重を確実に車体側で受支することができ
る。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すもので、第１図は本実施例
に係る車両のシート装置の正面図、第２図は該実施例の
車両のシート装置の側面図、第３図はフロントシートを
取外した状態の車両のシート装置の全体斜視図、第４図
は第１図におけるIV-IV切断線よりみた要部拡大断面
図、第５図は第４図におけるV-V切断線よりみた要部拡
大断面図である。 ８……シートクッション、11……シートフレーム、12、
13……前後フレーム部材（前部フレーム部材、後部フレ
ーム部材）、14、15……側部フレーム部材、27、27……
ガイド部材（ガイドローラ）、29……シートベルト、30
……シートベルトアンカ、31……係合部。

フロントページの続き (72)発明者 村上 善則 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツダ 株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−19608（ＪＰ，Ａ) 実開 昭61−56124（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−57460（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シートクッションを車体の前後方向に移動
   可能に支持するシートフレームが設けられ、このシート
   フレームが車幅方向に延びる前後一対の前後フレーム部
   材と、車体前後方向に延びて上記前後フレーム部材の両
   端部に夫々連結された左右一対の側部フレーム部材とか
   ら構成されていると共に、上記前後フレーム部材に係合
   してシートクッションを車幅方向に移動可能に車体に対
   して支持するガイド部材が設けられ、且つ上記シートク
   ッションにシートベルトの一端が連結されるシートベル
   トアンカが取り付けられ、該シートベルトアンカに設け
   られた係合部が上記側部フレーム部材に摺動自在に支持
   されていることを特徴とする車両のシート装置。