JPH0696842A - 正抵抗温度係数発熱体およびその製造方法 - Google Patents

正抵抗温度係数発熱体およびその製造方法

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JPH0696842A
JPH0696842A JP3147408A JP14740891A JPH0696842A JP H0696842 A JPH0696842 A JP H0696842A JP 3147408 A JP3147408 A JP 3147408A JP 14740891 A JP14740891 A JP 14740891A JP H0696842 A JPH0696842 A JP H0696842A
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Kazunori Ishii
和典 石井
Masayuki Terakado
誠之 寺門
Takeshi Hayashi
武史 林
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 異常過熱、発煙、発火等の危険性のない、安
全でしかも長寿命な高出力正抵抗温度係数発熱体および
その製造方法を提供する。 【構成】 導電性微粉末と結晶性重合体よりなるシート
状の正抵抗温度係数の抵抗体4と、その抵抗体4の厚さ
方向に電圧を印加するために設けられた一対の電極体
5、6と、抵抗体4および電極体5、6を外装するホッ
トメルト層7、8と電気絶縁層9、10とからなる正抵
抗温度係数発熱体において、抵抗体4の厚さ方向の投影
面で一対の電極体5、6が重合しない部位Aに2,2−
チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含有さ
せた。これにより部位Aでホットゾーンの形成が防止で
きることになり、長寿命で安全性の高い正抵抗温度係数
発熱体とその製造方法が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、採暖器具および、一般
の加熱装置として有用な正抵抗温度係数発熱体およびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の正抵抗温度係数発熱体は、例えば
特公昭57−43995号公報や特公昭55−4016
1号公報に示されているような構成であり、一対の電極
間の抵抗体の正抵抗温度特性により一定温度に自己制御
されるものであった。しかし、特に大きな電力密度や高
温度が要求される場合においては、発熱体自体の温度分
布を一様にするために一対の電極間方向の温度分布を常
に良好にすることが不可欠であり、その解決策として特
公昭62−59515号公報や図4に示すように一対の
電極間距離を互いに接近させて構成する方法が講じられ
た。図4において、1,2は互いに接近して設けられた
一対の平行平板電極であり、その間に結晶性重合体に導
電性微粉末を混合分散して形成した抵抗体3を配するこ
とにより高出力の正抵抗温度係数発熱体を現出する可能
性が見出された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のよ
うな従来の正抵抗温度係数発熱体は、高出力を現出する
ための構造としては非常に優れていたが、抵抗発熱する
部位を両面より電極で覆う構造となるため、電極と抵抗
体との接触面積も大きく、電極と抵抗体との界面部や電
極端部に熱応力が集中し、電圧集中によるホットゾーン
が発生することにより、抵抗体の損傷等が進み、寿命が
低下することがあった。また、電極間隔が非常に接近し
ていることにより、特に電極端部において、結晶性重合
体の劣化、さらには重合体の劣化に伴うマイクロクラッ
ク等が生じ、湿気、気圧、さらには電極端面のばり等に
よっては空中放電、耐電圧破壊し、発煙、発火に至る危
険性も有していた。発熱体としては、ライフエンド時ま
での安全性を図っていくことが最優先となるが、こうし
た安全性のメカニズムに関して、全く明確になっておら
ず、異常過熱、発煙、発火等の危険性のない、安全でし
かも長寿命な高出力の正抵抗温度係数発熱体を作り出す
ことができなかった。
【0004】本発明はこのような従来の問題点を解消
し、長寿命で安全性の高い正抵抗温度係数発熱体とその
製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明の正抵抗温度係数発熱体は、導電性微粉末と
結晶性重合体よりなるシート状の正抵抗温度係数の抵抗
体と、その抵抗体の厚さ方向に電圧を印加するために設
けられた一対の電極体と、前記抵抗体および前記電極体
を外装するホットメルト層と電気絶縁層とからなる正抵
抗温度係数発熱体において、前記抵抗体の厚さ方向の投
影面で前記一対の電極体が重合しない部位に2,2−チ
オ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](以下、酸
化防止剤と称する)を含有させたものである。
【0006】
【作用】上記構成による作用は次のようになる。すなわ
ち、酸化防止剤を正抵抗温度係数の抵抗体の一部に含有
させる構成とすることにより、結晶性重合体等の酸化劣
化を防止し、マイクロクラック等の欠損により発生する
発煙、発火等の危険性を取り除くことができるとともに
抵抗体中の導電性微粉末の連鎖に不導通部を形成し、電
気抵抗を高抵抗化していくことになる。本発明の構成で
は、抵抗体の厚さ方向の投影面で前記一対の電極体が重
合する部位が有効発熱部であり、金属材料等よりなる電
極体で覆われているために劣化しにくい。一方、重合し
ない部位はほとんど発熱に寄与せず、また劣化しやすい
部位であり、この部位に酸化防止剤を導入することによ
り抵抗体の劣化を抑制する。さらに、電極体で覆われな
いこの部位の抵抗体の体積固有抵抗を増大させ、この部
位で発生し易い電圧集中によるホットゾーンを防止す
る。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて
説明する。本実施例の正抵抗温度係数発熱体は、例え
ば、図1の斜視図、図2の断面図に示すように、厚さ
0.5mmの抵抗体4の上下面に一対の電極体5,6が接
着され、さらに両者の上に外装材であるホットメルト層
7,8、そのホットメルト層7,8の上に電気絶縁層
9,10が順次構成されている。抵抗体4は以下のよう
に形成されている。すなわち導電性微粉末として、ファ
ーネスブラック60wt%と高密度ポリエチレン40w
t%とを混練しつつ、有機過酸化物であるジクミールパ
ーオキサイドを高密度ポリエチレンに対して3wt%添
加し、熱処理を施すことによって架橋反応を完了させた
後に、冷凍粉砕によって平均粒径50μmの粉砕物、す
なわち導電性フィラーを得た。次に、この導電性フィラ
ーを、カーボンブラック組成比が全量の45.0wt%
になるように、マレイン酸変性高密度ポリエチレン中に
均一分散されるように混練し、抵抗体4を得た。さら
に、この抵抗体4を前記のように電極体5,6で接着し
た後、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート]の酸化防止剤(チバガイギー: IRGANOX
1035)を含有したポリエチレンのホットメルト層
7,8および電気絶縁層9,10で順次外装した後、ア
ニールして所定の抵抗特性を得るとともに、図2に示す
ように電極体が重合しない抵抗体のA部にホットメルト
層に含有された酸化防止剤を拡散させた。本実施例の場
合、ホットメルト層の材料を抵抗体4の材料と相溶性を
もつポリエチレンとしたため効果的にこの酸化防止剤を
拡散させることができた。その拡散により、抵抗体のA
部が高抵抗化されていくため、この部位に発生しやすい
ホットゾーンを抑制し長寿命化を図るとともに、酸化劣
化を抑え異極間耐電圧性能をも向上させるものである。
本発明の有効性を調べるために、酸化防止剤の添加サン
プルと無添加サンプルを試作し、実際に次の比較実験を
行った。
【0008】その実験は150℃耐熱促進後に通電評価
する方法で行い、通電測定前には通電エージングにより
抵抗安定化処理を行った。その結果を図3に示してい
る。図3から明らかなように、この酸化防止剤が添加さ
れたサンプルでは、150℃耐熱処理が2000hレベ
ルまで発熱温度はほとんど変化なく、それ以降徐々に温
度が低下していっており、試験サンプル数n=10のば
らつきも小さいものであった。これに対して、この酸化
防止剤が無添加のサンプルでは、n=10の試験サンプ
ルのうちn=3のサンプルは200〜300hから発熱
温度が低下していっており、その他のサンプルは300
0hレベルまで発熱異常はなかったが、約3500hで
n=1が、約4500hでn=3がスパーク発生した。
実際の発熱体寿命は熱、通電、湿度等により決ってくる
が、シミュレーション等によりこの通電寿命を推定する
と、この酸化防止剤が添加されているものでは、200
00〜30000hでそれ以降は徐々に温度降下し、安
全にライフエンドとなる。また、酸化防止剤が無添加の
ものでは、2000〜3000h程度の短い発熱寿命で
あったり、20000hレベル以上発熱するが、ライフ
エンド時にスパーク、さらには発煙・発火に至るという
極めて高い危険性を有したりするものもあり、ばらつき
も大きく寿命も定まらないと想定される。実際使用され
るモードにより寿命は変化するものの、この酸化防止剤
を添加することによりライフエンド時までの高い安全性
を確保できるという優れた性能を供するものである。ま
た、長期にわたる安全性が図れるだけでなく、各種用途
における実用期間や構成材料の耐熱特性等に適合した発
熱寿命になるように、酸化防止剤を適宜添加することが
できる。このようにして、酸化防止剤を添加することに
より、ライフエンド時までの安全性のメカニズムを明確
にし、異常過熱、発煙、発火等の危険性のない、安全で
しかも長寿命な高出力正抵抗温度係数発熱体を供するも
のであり、実用上極めて有益なものである。
【0009】酸化防止剤は一般に有機系の抵抗体に添加
すると樹脂の酸化劣化に対しては向上するが、抵抗値等
の電気的物性に対する影響が大きく、安定して使いこな
すことが困難であった。本発明の酸化防止剤は硫黄を含
有した特異なヒンダードフェノール系酸化防止剤である
2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t
−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
からなる酸化防止剤は、電気物性については抵抗体を特
異的に安定して高抵抗化していく作用があり、抵抗体劣
化、ホットゾーン等の発生し易い、一対の電極体が重合
しない部位に構成することにより、上記の効果を奏する
ことを可能にするものである。この酸化防止剤の構成と
しては、外装材料からの作用に限定するものではなく、
一対の電極体が重合しない部位に作用できればよく、例
えば、外装材を被覆する前にこの部位に添加してもよ
く、また電極体が重合しない部位にこの酸化防止剤添加
の抵抗体を形成してもよい。さらには、導電性微粉末を
結晶性重合体中に分散させ、その後架橋し細分化してな
る粒子状正抵抗温度係数抵抗組成物を結晶性重合体等の
バインダー中に分散させ抵抗安定性を高めた組成では、
導電性微粉末による明確な連鎖が形成されているだけ
に、この酸化防止剤の上記のような作用も顕著となり、
また架橋物性にも有効に作用するので、この信頼性はさ
らに確実なものとなる。また、前記のように高出力化に
は、好ましくは、抵抗体の厚さが1mm以下であるとよい
が、このように電極間隔が接近するほど上記効果も顕著
となるものである。
【0010】
【発明の効果】以上のように本発明の正抵抗温度係数発
熱体によれば、正抵抗温度係数抵抗体の厚さ方向の投影
面で一対の電極体が重合しない部位に酸化防止剤を含有
する構成としているので、次の効果が得られる。
【0011】(1)抵抗体の劣化しやすい部位の劣化を
抑制し、異常過熱、発煙、発火等の危険性のない、長期
にわたる高い安全性を確保できる。
【0012】(2)抵抗体の劣化しやすい部位の体積固
有抵抗を増大させることになるので、その部位で発生し
易い電圧集中によるホットゾーンを防止し、長寿命化を
実現できる。
【0013】(3)酸化防止剤を抵抗体と相溶性の外装
材に添加することにより、簡単に本発明の正抵抗温度係
発熱体が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における正抵抗温度係数発熱
体の斜視図
【図2】同発熱体の断面図
【図3】同発熱体の発熱温度性能図
【図4】従来の正抵抗温度係数発熱体の斜視図
【符号の説明】
4 抵抗体 5、6 電極体 7、8 ホットメルト層 9、10 電気絶縁層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性微粉末と結晶性重合成よりなるシ
    ート状の正抵抗温度係数の抵抗体と、その抵抗体の厚さ
    方向に電圧を印加するために設けられた一対の電極体
    と、前記抵抗体および前記電極体を外装するホットメル
    ト層と電気絶縁層とからなる正抵抗温度係数発熱体にお
    いて、前記抵抗体の厚さ方向の投影面で前記一対の電極
    体が重合しない部位に2,2−チオ−ジエチレンビス
    [3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
    ニル)プロピオネート]を含有させたことを特徴とする
    正抵抗温度係数発熱体。
  2. 【請求項2】 正抵抗温度係数の抵抗体が導電性微粉末
    を結晶性重合体中に分散された後架橋されたものである
    ことを特徴とする請求項1記載の正抵抗温度係数発熱
    体。
  3. 【請求項3】 正抵抗温度係数の抵抗体の厚さが1mm以
    下であることを特徴とする請求項1記載の正抵抗温度係
    数発熱体。
  4. 【請求項4】 導電性微粉末と結晶性重合体よりなるシ
    ート状の正抵抗温度係数の抵抗体の厚さ方向に電圧を印
    加する一対の電極体を接着し、その電極体の表面を前記
    抵抗体と相溶性を有し、2,2−チオ−ジエチレンビス
    [3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
    ニル)プロピオネート]を添加したホットメルト層で被
    覆し、そのホットメルト層の表面を電気絶縁層で被覆
    し、アニールすることを特徴とする正抵抗温度係数発熱
    体の製造方法。
  5. 【請求項5】 正抵抗温度係数の抵抗体が導電性微粉末
    を結晶性重合体中に分散された後架橋されたものである
    ことを特徴とする請求項4記載の正抵抗温度係数発熱体
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 正抵抗温度係数の抵抗体の厚さが1mm以
    下であることを特徴とする請求項4記載の正抵抗温度係
    数発熱体の製造方法。
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