JPH0696164B2 - 鋼板の冷延潤滑法 - Google Patents

鋼板の冷延潤滑法

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JPH0696164B2
JPH0696164B2 JP62170343A JP17034387A JPH0696164B2 JP H0696164 B2 JPH0696164 B2 JP H0696164B2 JP 62170343 A JP62170343 A JP 62170343A JP 17034387 A JP17034387 A JP 17034387A JP H0696164 B2 JPH0696164 B2 JP H0696164B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、仕上厚0.2mm程度以下の薄鋼板から、仕上厚
2〜4mm程度の厚鋼板までの広範囲の板厚の鋼板を同一
種類の潤滑油を用いて、スリップおよび焼付疵を発生す
ることなく高圧下率での高速圧延を可能にする鋼板の冷
延潤滑法に関する。
(従来の技術) 鋼板の冷間圧延においては、圧延ロールと被圧延材との
摩擦を軽減し、圧延時の荷重および摩擦熱や変形熱によ
る発熱を抑制し、さらには美麗な表面を得るために、潤
滑油として圧延油が一般に用いられる。圧延油は、一般
に水エマルションの形態で、必要により冷却水と共に各
圧延パス間毎に鋼板に吹きつけられ、これを回収して循
環使用される。
この圧延油には、鉱油を主成分(基油)とする鉱油系、
合成油を基油とする合成油系、動植物油脂を基油とする
動植物油系があり、基油に必要により、油性剤、極圧
剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、防錆剤、乳化剤など
の各種添加剤が添加される。
上記圧延油のうち、鉱油系圧延油は潤滑性が比較的低い
ので仕上厚が厚い鋼板の圧延に、動植物油系圧延油は潤
滑性に優れているため仕上厚が薄い鋼板の圧延にそれぞ
れ使用され、合成油系圧延油は潤滑性が鉱油系と動植物
油系の中間であるので中間の仕上厚の鋼板の圧延に使用
されており、鋼板の仕上厚により圧延油の種類を使い分
けている。より詳しく説明すると、鉱油系圧延油は安価
で使い易い反面、鋼板やロール表面への吸着が小さく、
油膜強度が劣るため、接触面での摩擦係数が高くなり、
圧下率の低い厚鋼板の圧延には使用できても、薄鋼板の
高速かつ高圧下率圧延時には潤滑不足となり焼付疵が発
生するため、不適当である。一方、動植物油系圧延油は
吸着力が大きく油膜強度が高いため、薄鋼板の圧延には
支障なく使用できるが、接触面での摩擦係数が低いた
め、圧下率が低い厚鋼板圧延時には潤滑過多となり、ス
リップが発生して安定した圧延ができないため、厚鋼板
の圧延には不適当である。
このように、鋼板の仕上厚別に使用する圧延油の種類を
変えることは、設備、資源、時間の無駄が多く、仕上厚
に関係なく1種類の圧延油で冷間圧延を行うことにより
合理化を達成することが要請されている。
この要請に対処するために、(1)潤滑性に優れた動植
物油系圧延油を用い、厚鋼板の圧延時には潤滑性を低下
させるためにエマルション濃度を下げて圧延を行う方
法、(2)潤滑性が中間の合成油系圧延油を用い、薄鋼
板の圧延時には潤滑不足を補うために高濃度もしくは原
液の圧延油を通常の供給とは別に供給して圧延する方
法、(3)鉱油系もしくは合成油系圧延油を使用し、薄
鋼板圧延時には、被圧延材に予め潤滑性の優れたプレコ
ート油を塗布し、圧延油の潤滑不足を補う方法などがこ
れまでに試みられている。
しかし、上記(1)および(2)の圧延油の濃度差によ
り対処する方法では、濃度切り換え時の相互混入は避け
られず、特に低濃度側の濃度管理が難しく、所定濃度よ
り高濃度になればスリップが発生し、低濃度過ぎると防
錆性が低下し、錆が発生するなどの問題があった。ま
た、上記(3)のプレコート油を塗布する方法では、圧
延パスを経るごとにプレコート油の付着量が減少してい
くため、潤滑性が特に必要な後半パスで十分な潤滑性を
得ることが難しく、これを克服するために多量に塗布し
た場合や高粘度のプレコート油を使用した場合には、前
半パスでスリップが発生するなどの問題があった。この
ようなことから、仕上厚0.2mm以下の薄鋼板から2〜4mm
程度の厚鋼板まで同一の圧延油を用いて冷間圧延可能な
冷延潤滑法は、実操業では未だに実現していない。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は、これらの問題点を解決し、薄鋼板圧延時の焼
付疵や厚鋼板圧延時のスリップを発生させることなく、
薄鋼板から厚鋼板までを同一種類の圧延油を用いて圧延
可能な冷延潤滑法を提供すること目的とする。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは、イオウ含有化合物を添加した特定の特性
を有するプレコート油と、特定の鹸化価の圧延油とを使
用することにより、薄鋼板から厚鋼板まで同一種類の潤
滑油で高品質の鋼板を高能率で冷間圧延することができ
ることを見出し、本発明を完成させた。
ここに、本発明は、圧延前に鋼板表面にプレコート油を
塗布した後、圧延油を用いて鋼板を冷間圧延する鋼板の
冷延潤滑法において、前記プレコート油が、合成エステ
ル、または合成エステルに動植物油脂、鉱油およびポリ
α−オレフィンから選ばれた1種もしくは2種以上を混
合した混合油からなる基油と、S含有量が10〜35重量%
のイオウ含有物質1.0〜5.0重量%との混合物からなる、
鹸化価が120〜160KOH mg/g、粘度が40℃で30cSt以下、
粘度指数が150以上の潤滑油であり、前記圧延油が鹸化
価140KOH mg/g以上のものであることを特徴とする、鋼
板の冷延潤滑法である。
(作用) 以下、本発明の方法について詳細に説明する。
冷間圧延すべき被圧延材(通常は熱延鋼板)はまず常法
により酸洗処理する。本発明の方法では、鋼板の冷間圧
延に先立って、イオウ含有物質が添加された特定の特性
を有する潤滑油をプレコート油として鋼板表面に塗布す
る。このプレコート油の基油は、合成エステル単独、ま
たは合成エステルと動植物油脂、鉱油およびポリα−オ
レフィンのうちの1種もしくは2種以上との混合油であ
る。
この基油に用いる合成エステルとしては、吸着力が大き
く、粘度指数が高いものを選択することが望ましい。適
当な合成エステルの例としては、炭素数12〜22の脂肪酸
と炭素数1〜26の一価アルコールとのモノエステル、例
えば、牛脂脂肪酸メチルエステル、牛脂脂肪酸オクチル
エステル、ステアリン酸ブチルエステル、ラウリン酸オ
レイルエステル、ステアリン酸オレイルエステル、ベヘ
ン酸2−ウンデカチルペンタデシルエステル、ベヘン酸
イソステアリルエステル、ベヘン酸メチルエステル;炭
素数6〜36の二塩基酸もしくは三塩基酸と炭素数1〜18
の一価アルコールとのジエステルもしくはトリエステ
ル、例えば、アジピン酸ジイソステアリルエステル、セ
バチン酸ジテトラデシルエステル、1,20−エイコサメチ
レンジカルボン酸ジメチルエステル、オレイン酸の二量
体(ダイマー酸)のステアリルエステル、トリメリト酸
トリオクチルエステル;炭素数3〜8の多価アルコール
と炭素数12〜18の脂肪酸とのジエステル、トリエステル
およびテトラエステル、例えば、ネオペンチルグリコー
ルジパルミチン酸エステル、プロピレングリコールジオ
レイン酸エステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸
エステル、1,3−ブタンジオールジパルミチン酸エステ
ル、トリメチロールプロパントリラウリン酸エステル、
トリエチレングリコールジステアリン酸エステル、ペン
タエリスリトールジラウリン酸エステル;などが挙げら
れる。
プレコート油の基油において、合成エステルに混合して
使用しうる動植物油脂としては、牛脂、ラード、パーム
油、やし油などがあり、粘度指数が大きく、低融点のも
のが望ましい。鉱油としては、40℃での粘度が10〜35cS
tであり、粘度指数の大きいものが望ましく、n-d-M法に
よる環分析においてパラフィン成分含有量が60%以上の
パラフィン系鉱油が望ましい。ポリα−オレフィンの例
は、1−デセンオリゴマーなどであり、40℃での粘度が
10〜35cStのものが望ましい。
上述した基油に、次に説明するイオウ含有物質を1〜5
重量%添加した混合物を本発明ではプレコート油として
使用する。この混合物は、鹸化価が120〜160KOH mg/g、
粘度が40℃で30cSt以下、粘度指数が150以上であること
が必要である。この要件を満たすように、基油の材料の
種類および配合割合(混合油の場合)を適宜選択する。
混合油を基油とする場合、合成エステルの配合割合は特
に制限されないが、一般に少なくとも20重量%の合成エ
ステルを混合油に存在させることが好ましい。
本発明において、プレコート油の鹸化価を限定した理由
は、鹸化価が120KOH mg/g未満では潤滑剤の吸着力が低
く、特に薄鋼板の圧延において良好な潤滑性がが得られ
ず、一方、160KOH mg/gを越えると潤滑過多となり、特
に厚鋼板の圧延でスリップが発生しやすくなるためであ
る。
プレコート油の粘度については、粘度が高いと粘性のた
めに潤滑油の導入量が増え、特に温度の低い前半パスに
おいてスリップが発生しやすくなるため、40℃で30cSt
以下と比較的低粘度に限定した。なお、従来は、プレコ
ート油としては潤滑性のすぐれた比較的高粘度の潤滑油
を使用している。
プレコート油の粘度指数に関しては、粘度指数が小さい
と温度上昇による粘度の低下が大きく、摩擦発熱の大き
い圧延後半パスでの潤滑油の導入量が減少し、潤滑不足
となって焼付が発生しやすくなるため、粘度指数150以
上に限定した。
本発明で使用するプレコート油は、基油とS含有量が10
〜35重量%のイオウ含有物質1〜5重量%とを含有する
混合物からなる。基油のみをプレコートした場合には、
温度が150℃を越えると耐焼付性が急激に低下し、また
摩擦係数も高くなって潤滑性能が発揮されず、したがっ
て圧延後半パスにおいて焼付が発生しやすくなる。これ
に対して、イオウ含有物質を添加すると、イオウが鋼板
およびロールと反応して潤滑性の優れた鉄セッケンが生
成することにより、温度の上昇と共に耐焼付性が向上
し、しかも摩擦係数が温度上昇に関係なくほぼ一定に保
たれる。その結果、冷間圧延において常に適当な摩擦係
数を保持することができ、スリップと焼付が共に防止さ
れるのである。
本発明で使用可能なイオウ含有物質の例としては、アル
キル基の炭素数が6〜18のジターシャリーアルキルポリ
サルファイド、例えばジ‐tert-ドデシルポリサルファ
イド(S含有量:22重量%)およびジ‐tert-ノニルポリ
サルファイド(S含有量:32重量%);ジベンジルジサ
ルファイド(S含有量:26重量%);S含有量が10〜35重
量%の硫化α−オレフィン;硫化ラード(S含有量:10
重量%以上)などが挙げられる。
このようなイオウ含有物質のS含有量および基油への添
加量(基油中のイオウ物質含有量)の限定理由は次の通
りである。S含有量が10重量%未満および基油への添加
量が1重量%未満では、圧延の際に鋼板およびロールと
反応するS量が少なく、圧延後半パスにおいて十分な耐
焼付性が得られない。一方、S含有量が35重量%、また
は基油の添加量が5重量%、を越えると、鋼板やロール
と反応するS量が多くなり過ぎて潤滑過多になり、スリ
ップや、S化合物の反応生成物による汚れの発生、さら
には腐食性ガスの発生による悪臭や錆の発生などの問題
が生じる。
鋼板表面への上記混合物のプレコートは、例えば、吹付
け、ロールコーター、ブラッシングオイラーなどの手段
により実施できる。このプレコート油の塗布量は特に制
限されないが、一般には0.1g/m2以上であれば良好な潤
滑性が確保される。あまり多量に塗布しても、圧延時に
ロールバイト内に導入される量には制限があるため、余
分な潤滑油はスカムとなり分離され、経済的に損失であ
る上、汚れの原因ともなる。その意味では、プレコート
油の塗布量は0.1〜2.0g/m2が望ましい。
本発明では、上記のようにプレコート油を塗布してか
ら、鋼板の冷間圧延を行う。この冷間圧延中に使用する
圧延油は、良好な潤滑性を確保するために、鹸化価が14
0KOH mg/g以上であることが必要である。鹸化価が190KO
H mg/g以上の圧延油は高潤滑性であり、特に厚鋼板の圧
延の場合には、スリップ防止のために使用濃度もしくは
供給量を著しく低下させる必要がある。その意味では、
鹸化価が140〜180KOH mg/gの範囲内の圧延油を使用する
ことが望ましい。鹸化価が上記要件を満たす限り、圧延
油の種類は制限されないが、このような比較的高い鹸化
価は、一般に牛脂などの動植物油脂を主成分とする圧延
油により得られる。
圧延油は、濃度0.5〜5.0重量%の水エマルションとして
使用することが望ましく、通常は各圧延パス間に鋼板に
対して吹付けることにより供給される。
前述のように、薄鋼板圧延時に発生する焼付疵は潤滑不
足により発生し、厚鋼板圧延時に発生するスリップは潤
滑過多により発生するため、同一種類の潤滑油を用いて
薄鋼板から厚鋼板までの圧延を行うことは容易ではな
い。
本発明に方法により、仕上厚に関係なく同一の潤滑油で
焼付疵やスリップの発生を防止しながら圧延可能となる
理由は、次に述べるティムケン試験ならびに低温および
高温のバウデン試験の結果から説明される。これらの試
験は、下記の供試油、試験方法および試験条件を使用し
て実施した。
ティムケン試験 (1)供試油 牛脂脂肪酸メチルエステル(鹸化価:195KOH mg/g、酸
価:0.5KOH mg/g、粘度(40℃):4.5cSt)に粘度の異な
るパラフィン系鉱油(鹸化価:0KOH mg/g)を45重量%添
加して得た、鹸化価が125KOH mg/g、40℃の粘度がそれ
ぞれ3.8、7.5、35、70、150cStの混合油。
(2)試験方法 公知のティムケン式摩擦試験機において、試験片として
軟鋼のブロックを用い、試験片に作用する摩擦力を測定
して摩擦係数を求める。
(3)試験条件 リング材質:SUJ-2(表面あらさRmax=0.6μm) リング回転速度:800rpm(すべり速度:2m/s) 荷重:3kg(ヘルツ圧:20kg/mm2) ブロック温度:50℃ 潤滑:リングおよびブロックに塗布 (塗布量:約30g/m2) 試験時間:1分 低温バウデン試験 (1)供試油 ティムケン試験に用いたのと同じ牛脂脂肪酸メチルエス
テルに牛脂〔鹸化価:195KOH mg/g、酸価:3.5KOH mg/g、
粘度(40℃):44.5cSt〕を50重量%添加して得た混合油
(40℃の粘度:12.5cSt)、ならびにこれと同一粘度のパ
ラフィン系鉱油(鹸化価:0KOH mg/g)もしくは牛脂と鉱
油の両者を混合することにより鹸化価が175、156、12
7、98、68、29KOH mg/gに調整された混合油。
(2)試験方法 公知のバウデン式摩擦試験機において試験片として軟鋼
板を用い、試験球に作用する摩擦力を測定し、摩擦係数
を求める。
(3)試験条件 試験球材質:SUJ-2(表面あらさRmax≦0.1μm) 摺動速度:0.65mm/s 摺動幅:10mm 荷重:3kg(ヘルツ圧230kg/mm2) 温度:50℃ 潤滑:試験片に塗布(塗布量:約30g/m2) 高温バウデン試験 (1)供試油 低温バウデン試験に用いた牛脂脂肪酸メチルエステルと
牛脂との混合油を基油とし、この基油、ならびに基油に
40℃の粘度が27.5cStのパラフィン系鉱油35重量%とS
含有量が22重量%のジ‐tert−ドデシルポリサルファイ
ド2重量%とを添加した混合油、および基油に同じ鉱油
35重量%とP含有量が6.5重量%のトリラウリルハイド
ロジェンホスファイト2重量%とを添加した混合油を使
用。
(2)試験方法 低温バウデン試験と同じ方法で摩擦係数を求める。また
試験後の摩擦面を顕微鏡で観察して焼付疵の有無を確認
し、焼付が発生しない最高摺動回数を耐焼付性として評
価する。
(3)試験条件 試験球材質:SUJ-2(表面あらさRmax≧0.1μm) 摺動速度:0.65mm/s 摺動幅:10mm 荷重:3kg(ヘルツ圧230kg/mm2) 温度:50,100,150,200,250,300℃ 潤滑:試験片に塗布(塗布量:約30g/m2) 以上の試験で得られた試験結果を、添付の第1図〜第4
図にまとめて示す。この試験結果から、本発明の方法で
は次に述べる4つの作用の相乗作用により、冷間圧延に
おける焼付疵およびスリップの防止が図られるものと推
定される。
(1)鋼板にプレコートする潤滑油として低粘度の潤滑
油を使用することにより、厚鋼板圧延時に前半パスにお
いてロールバイトに導入される潤滑油(プレコート油+
圧延油)の粘度が下がり、流体潤滑領域の比率が減少し
て摩擦係数が高くなる(第1図のティムケン試験結果参
照)ため、スリップが防止される。
(2)プレコートする潤滑油の鹸化価を従来の薄鋼板用
圧延油の鹸化価(160〜200KOH mg/g)より低い120〜160
KOH mg/gとすることで、境界潤滑領域の摩擦係数が高く
なり(第2図の低温バウデン試験結果参照)、スリップ
および焼付が起こらない適度な潤滑性が確保される。
(3)プレコートする潤滑油の粘度指数を150以上とす
ることで、温度上昇に伴う粘度低下が減少し、高温とな
る圧延後半パスにおける導入油量の減少が抑えられ、焼
付防止に十分な油膜厚が維持される。
(4)プレコートする潤滑油に高温になると潤滑性を発
揮するイオウ含有物質を少量添加することで、温度の低
い圧延前半パスでは潤滑過多にならず、温度が高くなる
後半パスで良好な潤滑性(低摩擦係数および耐焼付性)
が得られる(第3図、第4図の高温バウデン試験結果参
照)。
以上の結果を総合すると、厚鋼板圧延時は、主に上記
(1),(2)、さらには(4)の相乗作用により、十
分に高い摩擦係数となるため、スリップが防止される。
一方、薄鋼板圧延時には、主に上記(3)、(4)の相
乗作用により、温度が高くなる圧延後半パスにおいても
十分な潤滑性が確保され、焼付疵が防止される。
なお、第3図から、リン酸エステルの添加では、低温時
から耐焼付性向上効果があるが、この効果が真に必要と
なる150℃以上の高温では耐焼付性のそれ以上の向上は
認められず、200℃以上では逆に耐焼付性の低下が起こ
ること、また第4図からは、リン酸エステルを添加した
場合には、摩擦係数が低温時から低くなり過ぎ、スリッ
プ発生を引き起こす恐れがあることがわかる。これに対
して、イオウ含有物質の場合には、耐焼付性向上効果が
温度上昇と共に現れて高温で特に顕著となり、また摩擦
係数の低下効果も適度である上に、100℃より高温で顕
著となるため、スリップは生じにくい。
(実施例) 次に本発明の実施例(比較例を含む)を説明する。
実施例で使用した被圧延材は、板厚4.5mm×板幅950mm
(厚鋼板圧延用)、および板厚1.9mm×板幅935mm(薄鋼
板圧延用)の2種類の熱圧鋼板であり、酸洗により脱ス
ケール処理してから使用した。
この被圧延材の表面に、プレコート油をブラッシングオ
イラーにより1g/m2の量で塗布した。使用したプレコー
ト油は、各種合成エステル、牛脂、鉱油、ポリα−オレ
フィン(1−デセンの低分子量ポリマー)から選んだ潤
滑油を、下記の第2表に示す比率で混合して得た基油
に、イオウ含有物質を添加した混合物である。このプレ
コート油の鹸化価、40℃での粘度、および粘度指数も第
2表に示す。
プレコート油を塗布した被圧延材を、次いで圧延機とし
てワークロール径が500mmの5スタンドタンデムミルを
使用し、第1表に示す圧延パススケジュールで冷間圧延
した。この圧延時に使用した圧延油は、鹸化価195KOH
mg/gの牛脂系圧延油、鹸化価170KOH mg/gの牛脂、合
成エステル混合系圧延油、鹸化価140KOH mg/gの牛
脂、合成エステル、鉱油混合系圧延油、および鹸化価
130KOH mg/gの牛脂、合成エステル、鉱油混合系圧延油
であり、この圧延油を濃度3重量%、温度50℃の水エマ
ルションとして、各圧延パス間においてロールおよび鋼
板に3000/minの量で吹付けて使用した。
圧延時の潤滑性の評価は、厚鋼板および薄鋼板の各圧延
時におけるスリップ発生の有無、および圧延後の圧延
材、ロール表面のスリップ疵、焼付疵の有無を観察する
ことにより行い、いずれの圧延においてもスリップ発生
や焼付疵発生がなかった場合を〇、少なくともいずれか
の圧延時にこれらの発生が認められた場合を×とした。
この結果も第2表にまとめて示す。
第2表に示した結果から、本発明の冷延潤滑法では、同
一の潤滑油を用いて、薄鋼板と厚鋼板の両方の冷間圧延
を行ったにもかかわらず、スリップおよび焼付疵の発生
がなく、仕上厚に関係なく使用可能な優れた潤滑法であ
ることがわかる。これに対して、比較例では、厚鋼板圧
延時のスリップ発生か、薄鋼板圧延時の焼付疵発生のい
ずれかが起こり、薄鋼板か厚鋼板のいずれか一方の圧延
にしか良好に使用できない。
実施例の結果をより詳しく検討すると、本発明例1およ
び2と比較例1および2との比較により、プレコート油
の鹸化価が120〜160の範囲内を外れると、スリップ発生
と焼付疵発生の両方を同時に防止できないことがわか
る。
また、本発明例3と比較例3および4との比較により、
プレコート油の粘度が40℃で30cSt以下、または粘度指
数が150以上の要件を満たさないと、スリップか焼付疵
が発生することがわかる。
同様に、本発明例4および5と比較例5および6との比
較、ならびに本発明例6および7と比較例7との比較に
より、プレコート基油に添加するイオウ含有物質のS含
有量が10〜35重量%の範囲内、添加量が1〜5重量%の
範囲内という要件をはずれると、やはり圧延結果がよく
ないことがわかる。
さらに、本発明例8および9と比較例8とを比較するこ
とで、圧延油の鹸化価が140KOH mg/g未満であると、焼
付疵発生を防止するのに十分な潤滑性が得られないこと
がわかる。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明による鋼板の冷延潤滑法
は、仕上厚0.2mm以下の薄鋼板から仕上厚2〜4mm程度の
厚鋼板までの圧延に対して、プレコート油、圧延油を変
えることなく適用でき、満足すべき潤滑性能を発揮す
る。したがって、従来のように仕上厚ごとに潤滑油を変
える必要がなくなるため、冷間圧延における設備、資源
の合理化および生産性の向上に対して優れた効果を奏す
るものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ティムケン式摩擦試験機における潤滑油の粘
度(40℃)と摩擦係数との関係を示すグラフ、 第2図は、バウデン式摩擦試験機における潤滑油の鹸化
価と50℃での摩擦係数との関係を示すグラフ、 第3図は、潤滑油のバウデン試験における温度と耐焼付
性との関係に及ぼすリンおよびイオウ含有物質の影響を
示すグラフ、および 第4図は、同じく温度と摩擦係数との関係に及ぼすリン
およびイオウ含有物質の影響を示すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】圧延前に鋼板表面にプレコート油を塗布し
    た後、圧延油を用いて鋼板を冷間圧延する鋼板の冷延潤
    滑法において、前記プレコート油が、合成エステル、ま
    たは合成エステルに動植物油脂、鉱油およびポリα−オ
    レフィンから選ばれた1種もしくは2種以上を混合した
    混合油からなる基油と、S含有量が10〜35重量%のイオ
    ウ含有物質1.0〜5.0重量%との混合物からなる、鹸化価
    が120〜160KOH mg/g、粘度が40℃で30cSt以下、粘度指
    数が150以上の潤滑油であり、前記圧延油が鹸化価140KO
    H mg/g以上のものであることを特徴とする、鋼板の冷延
    潤滑法。
JP62170343A 1987-07-08 1987-07-08 鋼板の冷延潤滑法 Expired - Lifetime JPH0696164B2 (ja)

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