JPH069565Y2 - 回転電機の固定子枠 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 （産業上の利用分野） 本考案は二極タービン発電機のような高速回転の回転電
機の固定子鉄心支持構造を改良した固定子枠に関する。

（従来の技術） 一般に回転界磁形の回転電機の固定子鉄心は回転子の回
転磁界によって生じる振動力を受ける。たとえば二極タ
ービン発電機の場合、回転子鉄心上のある一点に着目す
ると、この点は回転磁界の作用によって回転子速度の二
倍の周波数で振動する。即ち、回転子速度50r.p.s.の二
極回転子の場合、その強制振動数は100Hzとなることは
良く知られている。

このような固定子鉄心の振動が固定子枠へ伝達するのを
効果的に抑制する手段として、固定子枠の内周にばね板
を設け、これを介して固定子鉄心を支持する構造が広く
採用されている。

この種の構造の中で一体形固定子構造を有する二極中容
量タービン発電機に広く使われている従来技術を第３図
及び第４図に示す。この構造では固定子鉄心(1)の外周
面に係合して軸方向に伸びる複数個のリブ(2)が配置さ
れ、このリブ(2)は中空円板状のリブ支え(3)を介して同
一円周上に配置され軸方向に伸びる複数個の丸棒状のば
ね棒(4)に溶接にて取付けられている。さらにこのばね
棒(4)は中央部及び両端部にて中空円板状の中央部主板
(5a)及び端部主板(5b)に溶接にて取付けられている。こ
の複数個の主板(5a),(5b)はその外周面で円筒状の外周
板(6)に溶接にて取付けられ互に連結されている。

この構成では、ばね棒(4)の取付け方法を前記の溶接構
成に代えて加熱を伴わない他の方法、例えばねじ締付け
構造にすることは同取付け部に要求される高い剛性と強
度から考えて実際的でない。このようにばね棒(4)の材
料は溶接性が要求されるので通常低炭素鋼が使用され、
従ってその強度は低い。

しかるにこの構成ではばね棒(4)は固定子鉄心(1)に作用
する回転磁界の振動を吸収する機能の他に、固定子鉄心
(1)の重量と電力系統事故時等の強大なトルクに耐えて
固定子鉄心を支持する機能が要求される。

（考案が解決しようとする問題点） この従来の装置は、多数個のばね棒(4)を配置するた
め、加工組立に多大な時間を要し、かつ、相接続銅帯
(8)や機械循環冷却用ガスの冷却器(9)の軸方向配置に必
要な空間の不足を招き、固定子枠の寸法を拡大せねばな
らない。又、主板に穴を明けて弾性部を形成する手段が
あるが、これは弾性が小さい上に寸法が大になる欠点が
ある。

本考案は簡易な構成で、主板にばね作用を持たせて、固
定子鉄心の振動を吸収し、小形化した回転電機の固定子
枠を提供することを目的とする。

〔考案の構成〕

（問題点を解決するための手段） 前記問題点を解決するために、本考案においては、中空
板状の複数の主板を軸方向に所定の間隔で配列し、前記
主板を介して固定子鉄心を支持する固定電機の固定子枠
において、前記主板の固定子鉄心支持部の外周側近傍に
円周方向に伸びた複数個のスリットを半径方向に複数層
に設け、各層のスリットは互いに半径方向に隣り合うス
リット間部を覆わせたことを特徴とする回転電機の固定
子枠を提供する。

（作用） このように構成されたものにおいては、ジグザグに設け
たスリットにより主板でばね作用をさせたので、構成が
簡易で、ばね作用が大となり、固定子鉄心の振動を良好
に吸収し、かつ、スリットは半径方向の幅を極めて小と
するから、小形化された耐振動性の良好な固定子枠とな
る。

（実施例） 以下、本考案の一実施例について第１図および第２図を
参照して説明する。

固定子鉄心(1)はその外周面においてリブ(2)に係合され
ている。前記リブ(2)の両端は端部主板(5b)の内径面に
溶接により取付けられている。前記の端部主板(5b)及び
中央部主板(5a)は、外周が円形又は多角形で中空板状を
しており、その外周面で筒状の外周板(6)に溶接され互
に連結されている。さらに前記の端部主板(5b)にはリブ
(2)の溶接支持部の外周側近傍の二つの同心円上の各々
にスリット(11a)及び(11b)が互に半ピッチずれて等間隔
で配置されている。

内側スリット(11a)は端部主板(5b)の内周面から、半径
方向間隔ｅだけ入った位置に設け、外側スリット(11b)
は内側スリット(11a)より半径方向間隔ｆだけ入った位
置に設ける。内側スリット(11a)の円弧長さはｇとし、
外側スリット(11b)の円弧長さをｈとする。内側スリッ
ト(11a)同志の円周方向間隔をｌとし、外側スリット(11
b)同志の円周方向間隔をｍとする。各層のスリット(11
a),(11b)は互いに円周方向に半ピッチずれて半径方向に
隣り合うスリット間の間隔（ｌ，ｍの部分）を覆わせ
て、いわゆるジグザグに配置する。端部主板(5b)は従来
のばね棒が無くなった分だけ、軸方向位置および半径方
向位置を短くし、それにつれて、固定子巻線端(7)，相
接続導体(8)，冷却器(9)の位置を固定子鉄心端部に近づ
ける。

次に、この実施例の作用について説明する。

このような構成において、固定子鉄心(1)に作用する回
転磁界による半径方向振動は内側スリット(11a)の円周
方向の中央部近辺では主として端部主板(5b)の内周面と
内側スリット(11a)間の薄い円弧部分の弾性変形により
吸収され、内側スリット(11a)の円周方向の端部近辺で
は主として端部主板(5b)の内側スリット(11a)と外側ス
リット(11b)間の間隔ｆの薄い円弧部分の弾性変形によ
り吸収される。このようにして内側スリット(11a)およ
び外側スリット(11b)は互いに間隔部ｌ，ｍをジグザグ
に覆ったから、ばね作用は連続的であり、又、スリット
(11a),(11b)は薄いから主板の半径方向の幅を大きくす
ることなく、固定子枠を小さくすることができる。

一方、固定子鉄心(1)の重量と電力系統事故時等の強大
なトルクは端部主板(5b)の内側スリット(11a)間の円周
方向間隔、内側スリット(11a)と外側スリット(11b)間の
薄い円弧部分、外側スリット(11b)間の円周方向間隔を
経由して固定子枠が据付けられている基礎台（図示せ
ず）に安全に伝達される。

従って、リブ(2)を取付ける端部主板(5b)の板厚ｔ、内
径面と内側スリット(11a)間の半径方向間隔ｅ、内側ス
リット(11a)と外側スリット(11b)間の半径方向間隔ｆ、
スリット(11a)及び(11b)の長さｇ，ｈと円周方向間隔
ｌ，ｍを適当に選定することにより、振動吸収と強度の
機能を両立させつつ固定子鉄心を支持することが出来る
ので、従来技術で必要であった多数個のばね棒が不要と
なり、更に固定子巻線端の冷却器や相接続銅帯の配置の
最適化が可能になる等、回転電機の性能を維持しつつ小
形化された回転電機の固定子枠を提供出来る。

尚、スリットは２層に限らず、加振力の大きさにより３
層，４層等の複数層にしても良い。そして、通風ガスが
漏れては困る場合には、アルミニウム又はファイバー等
の軟質材料の詰め物をスリット内に充填しても良い。

〔考案の効果〕

以上述べてきたように、本考案によれば鉄心を支持する
主板に複数層のスリットを設けて、その主板でばね作用
をさせたので、構成が簡易で固定子鉄心の振動を良好に
吸収し、小形化された固定子鉄心支持構造を有する回転
電機の固定子枠を提供出来る。

【図面の簡単な説明】 第１図は本考案の回転電機の固定子枠の要部を示す縦断
面図、第２図は第１図のII−II線に沿う矢視断面図、第
３図は従来技術による回転電機の固定子枠の要部を示す
縦断面図、第４図は第３図のIV−IV線に沿う矢視断面図
である。 １……固定子鉄心、２……リブ、 5a……中央部主板、5b……端部主板、 ６……外周板、11a……内側スリット、 11b……外側スリット。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】中空板状の複数の主板を軸方向に所定の間
   隔で配列し、前記主板を介して固定子鉄心を支持する回
   転電機の固定子枠において、前記主板の固定子鉄心支持
   部の外周側近傍に円周方向に伸びた複数個のスリットを
   半径方向に複数層に設け、各層のスリットは互いに半径
   方向に隣り合うスリット間部を覆わせたことを特徴とす
   る回転電機の固定子枠。