JPH0685962B2 - 鍛造用金型及びその製法 - Google Patents
鍛造用金型及びその製法Info
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- JPH0685962B2 JPH0685962B2 JP63310489A JP31048988A JPH0685962B2 JP H0685962 B2 JPH0685962 B2 JP H0685962B2 JP 63310489 A JP63310489 A JP 63310489A JP 31048988 A JP31048988 A JP 31048988A JP H0685962 B2 JPH0685962 B2 JP H0685962B2
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- ion
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Description
【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は鍛造用金型およびその製法に関し、より詳しく
はダイナミックミキシング法によりイオンが注入された
鍛造用金型およびその製法に関する。
はダイナミックミキシング法によりイオンが注入された
鍛造用金型およびその製法に関する。
〔従来の技術〕 一般に、鍛造加工は、被加工物に繰り返し衝撃を加える
ことによって所望の形状に成形する方法であり、用いる
金型には苛酷な加圧状態が課されることとなる。とく
に、冷間鍛造は被加工物を積極的に加熱することなく室
温または室温に近い温度で行うため、被加工物に変形抵
抗が高く、冷間鍛造用金型には極めて苛酷な条件が課さ
れることとなる。つまり、用いられる金型には衝撃を伴
う動的で、単位体積当たり高い荷重がかかり、格別強度
の高い材質のものが要求される。
ことによって所望の形状に成形する方法であり、用いる
金型には苛酷な加圧状態が課されることとなる。とく
に、冷間鍛造は被加工物を積極的に加熱することなく室
温または室温に近い温度で行うため、被加工物に変形抵
抗が高く、冷間鍛造用金型には極めて苛酷な条件が課さ
れることとなる。つまり、用いられる金型には衝撃を伴
う動的で、単位体積当たり高い荷重がかかり、格別強度
の高い材質のものが要求される。
そのため、鍛造用金型とりわけ冷間鍛造用金型として
は、熱処理技術の改良と相俟って、これまで種々の合金
鋼の開発あるいは粉末冶金技術からの産物である超硬合
金の応用などといった材料面からの改良がなされてき
た。
は、熱処理技術の改良と相俟って、これまで種々の合金
鋼の開発あるいは粉末冶金技術からの産物である超硬合
金の応用などといった材料面からの改良がなされてき
た。
他方、より一層生産性の高い優れた工具材料を開発する
ため、材料表面に種々の金属間化合物をコーティングす
る技術が発達してきた。例えば、真空蒸着法、イオンス
パッタリング法、イオンプレーティング法などのいわゆ
るPVD法や、気相めっき法ともいうべきCVD法などによっ
て工具表面にTiNなどの金属間化合物をコーティングす
ることにより、工具寿命を延長させる試みである。
ため、材料表面に種々の金属間化合物をコーティングす
る技術が発達してきた。例えば、真空蒸着法、イオンス
パッタリング法、イオンプレーティング法などのいわゆ
るPVD法や、気相めっき法ともいうべきCVD法などによっ
て工具表面にTiNなどの金属間化合物をコーティングす
ることにより、工具寿命を延長させる試みである。
しかしながら、PVD法によるコーティング層は材料表面
における密着性が悪く、苛酷な動的荷重のかかる鍛造用
金型表面に施しても到底耐えられるものではなかった。
における密着性が悪く、苛酷な動的荷重のかかる鍛造用
金型表面に施しても到底耐えられるものではなかった。
後者のCVD法による場合は、PVD法よりも材料表面におけ
るコーティング層の密着性は幾分改善されるが、この場
合も、材料表面に明確に識別されるコーティング層を形
成することとなるので、苛酷な動的加圧条件では依然と
してコーティング層が剥離するという問題があった。
るコーティング層の密着性は幾分改善されるが、この場
合も、材料表面に明確に識別されるコーティング層を形
成することとなるので、苛酷な動的加圧条件では依然と
してコーティング層が剥離するという問題があった。
さらに、CVD法では金型を高温に加熱する必要がある
(たとえば、TiN或いはTiCをコーティングする場合、10
00℃程度に加熱する)ので、金型の焼入れ処理が焼戻さ
れて金型基質そのものの強度的な低下をきたしたり、熱
歪による寸法精度の狂いが生じたりして金型として不都
合である。この不都合を解消するためには、材料に著し
く制約を課す必要があって実用的ではなかった。
(たとえば、TiN或いはTiCをコーティングする場合、10
00℃程度に加熱する)ので、金型の焼入れ処理が焼戻さ
れて金型基質そのものの強度的な低下をきたしたり、熱
歪による寸法精度の狂いが生じたりして金型として不都
合である。この不都合を解消するためには、材料に著し
く制約を課す必要があって実用的ではなかった。
上記従来技術の課題に鑑み、本発明の目的は、苛酷な動
的荷重にも耐えられ強度が高く、かつ生産性に優れた鍛
造用金型、およびその製法を提供する事にある。
的荷重にも耐えられ強度が高く、かつ生産性に優れた鍛
造用金型、およびその製法を提供する事にある。
上記目的を達成するため、本発明にかかる鍛造用金型の
特徴構成は、少なくとも被加工物と接する表面に、イオ
ンの注入と真空蒸着とを同時に行うダイナミックミキシ
ング法により、非晶質金属の層状部分を備えるミキシン
グ領域が形成された点にある。
特徴構成は、少なくとも被加工物と接する表面に、イオ
ンの注入と真空蒸着とを同時に行うダイナミックミキシ
ング法により、非晶質金属の層状部分を備えるミキシン
グ領域が形成された点にある。
さらに、本発明にかかる鍛造用金型の製法の特徴構成
は、少なくとも被加工物と接する表面に、イオンの注入
と真空蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法に
より、非晶質金属の層状部分を備えるミキシング領域を
形成する点にある。
は、少なくとも被加工物と接する表面に、イオンの注入
と真空蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法に
より、非晶質金属の層状部分を備えるミキシング領域を
形成する点にある。
ダイナミックミキシング法により鍛造用金型の表層にミ
キシングされるイオンは、例えば、元素周期律表におけ
る第III族〜第VI族および第VIII族に属する元素の1種
または2種以上であることが望ましい。
キシングされるイオンは、例えば、元素周期律表におけ
る第III族〜第VI族および第VIII族に属する元素の1種
または2種以上であることが望ましい。
このうち、とくに好ましいイオン種は第IV族及び第V族
であり、また、イオン化して用いるに好ましい化合物
は、TiC,VC,BN,TiN,Fe2N,TaCなどである。
であり、また、イオン化して用いるに好ましい化合物
は、TiC,VC,BN,TiN,Fe2N,TaCなどである。
各イオンの好ましいミキシング領域を形成するに必要な
イオン量は、5〜7×1016個/cm2である。
イオン量は、5〜7×1016個/cm2である。
上記の如く構成した本発明にかかる鍛造用金型およびそ
の製法の作用は次の通りである。
の製法の作用は次の通りである。
鍛造用金型の表面に、ダイナミックミキシング法によ
り、イオン注入装置を用いて、イオンの注入を行うと同
時に、真空蒸着を同時に行うことにより、これらのイオ
ンと、蒸着物質とによる混入物質が、被加工物の母材金
属の表層部分の基質に対して、表面側ほど混入物質の濃
度勾配が徐々に高くなるように変化しながらミキシング
される。つまり、母材金属の結晶のみで構成されう母材
金属基質から、まず、僅かな混入物質が結晶格子間に入
り込む状態の多結晶層状部分へと変化し、次第に混入物
質の濃度が増して結晶構造部分が少なくなる微結晶層状
部分へ、ついには結晶構造が原形をとどめなくなる非結
晶層状部分へと徐々に変化し、その非晶質金属層状部分
が材料基質の表面に一体形成されるところの、高強度で
耐摩耗性に優れたミキシング領域が形成される。
り、イオン注入装置を用いて、イオンの注入を行うと同
時に、真空蒸着を同時に行うことにより、これらのイオ
ンと、蒸着物質とによる混入物質が、被加工物の母材金
属の表層部分の基質に対して、表面側ほど混入物質の濃
度勾配が徐々に高くなるように変化しながらミキシング
される。つまり、母材金属の結晶のみで構成されう母材
金属基質から、まず、僅かな混入物質が結晶格子間に入
り込む状態の多結晶層状部分へと変化し、次第に混入物
質の濃度が増して結晶構造部分が少なくなる微結晶層状
部分へ、ついには結晶構造が原形をとどめなくなる非結
晶層状部分へと徐々に変化し、その非晶質金属層状部分
が材料基質の表面に一体形成されるところの、高強度で
耐摩耗性に優れたミキシング領域が形成される。
このような鍛造用金型の表層は、PVD法やCVD法によって
形成される薄膜のような明確な2層に分離されるもので
はなく、金型基質とミキシング領域とが層として区分で
きない一体状態となっていて、苛酷な動的加圧条件にも
表層が剥離するといったことがなく、極めて強度の高い
表層となる。
形成される薄膜のような明確な2層に分離されるもので
はなく、金型基質とミキシング領域とが層として区分で
きない一体状態となっていて、苛酷な動的加圧条件にも
表層が剥離するといったことがなく、極めて強度の高い
表層となる。
本発明では、注入する元素の選択が容易であり目的に応
じて各種の表層を形成することができるのみならず、各
元素がイオン状態であることから極めて活性であるとい
うイオン注入技術を利用しているので、注入された基質
との一体性が良く、2種以上のイオンをミキシングした
り、各種蒸着物質を用いて基質に確実に所望の非晶質金
属層状部分を形成させることのできるのである。
じて各種の表層を形成することができるのみならず、各
元素がイオン状態であることから極めて活性であるとい
うイオン注入技術を利用しているので、注入された基質
との一体性が良く、2種以上のイオンをミキシングした
り、各種蒸着物質を用いて基質に確実に所望の非晶質金
属層状部分を形成させることのできるのである。
前記構成による効果は次の通りである。
被加工物の表面部分に、単なるコーティング層ではな
く、注入イオンと蒸着物質とによる混入物質が、被加工
物の母材金属の表層部分の基質に対して、表面側ほど混
入物質の濃度勾配が徐々に高くなるように変化しながら
ミキシング領域が形成されて、注入イオンと蒸着物質と
が被加工物の材料基質と混然一体となった非晶質金属層
状部分からなる耐剥離性に優れた高強度のミキシング領
域を得られた。
く、注入イオンと蒸着物質とによる混入物質が、被加工
物の母材金属の表層部分の基質に対して、表面側ほど混
入物質の濃度勾配が徐々に高くなるように変化しながら
ミキシング領域が形成されて、注入イオンと蒸着物質と
が被加工物の材料基質と混然一体となった非晶質金属層
状部分からなる耐剥離性に優れた高強度のミキシング領
域を得られた。
そして、このイオン注入されたミキシングされた表層部
分は機械的特性に優れた非晶質金属の層状部分を備えて
いて、そのうえ、このダイナミックミキシングにより形
成された非晶質金属層部分は、例えば、溶融状態から瞬
間的に急冷して製造される非晶質金属とは異なり、熱的
に安定性が高く、従って連続的な成形加工による加熱に
際しても表層が変質し劣化することがないため、強度が
高くて長寿命な金型を得られる。
分は機械的特性に優れた非晶質金属の層状部分を備えて
いて、そのうえ、このダイナミックミキシングにより形
成された非晶質金属層部分は、例えば、溶融状態から瞬
間的に急冷して製造される非晶質金属とは異なり、熱的
に安定性が高く、従って連続的な成形加工による加熱に
際しても表層が変質し劣化することがないため、強度が
高くて長寿命な金型を得られる。
しかも、ダイナミックミキシング法により、イオン化し
難い、あるいは、できない物質を蒸着物質として改質層
に大量に混入させることができるので、金型表層とし
て、イオン化可能な物質のみを混入させる場合に比べ
て、より多種多様な性質を有した表層を形成することが
できる。
難い、あるいは、できない物質を蒸着物質として改質層
に大量に混入させることができるので、金型表層とし
て、イオン化可能な物質のみを混入させる場合に比べ
て、より多種多様な性質を有した表層を形成することが
できる。
また、このように被加工物の母材金属と一体化したミキ
シング領域とすることで、母材金属の表面に重ねてコー
ティング層を別途形成するというものではないので、コ
ーティング層の厚み分だけ仕上げ精度が低下することを
避けられ、寸法精度が安定する利点もある。
シング領域とすることで、母材金属の表面に重ねてコー
ティング層を別途形成するというものではないので、コ
ーティング層の厚み分だけ仕上げ精度が低下することを
避けられ、寸法精度が安定する利点もある。
さらに、本発明による方法によれば、CVD法によるよう
な加熱の必要がないので、必要な熱処理を行った後に、
前記のイオン注入と蒸着とによるダイナミックミキシン
グ法による表層改質処理を行っても、表層の熱処理部分
に悪影響を及ぼすことがない。
な加熱の必要がないので、必要な熱処理を行った後に、
前記のイオン注入と蒸着とによるダイナミックミキシン
グ法による表層改質処理を行っても、表層の熱処理部分
に悪影響を及ぼすことがない。
その結果、金型の強度を損なったり、寸法制度に狂いを
生じたりすることがなく、精度が良く、かつ強度が高く
て長寿命な、鍛造加工品の生産性に優れた鍛造用金型が
得られた。
生じたりすることがなく、精度が良く、かつ強度が高く
て長寿命な、鍛造加工品の生産性に優れた鍛造用金型が
得られた。
以下に本発明にかかる成形用金型およびその製法の一実
施例を、図面を参照して詳細に説明する。
施例を、図面を参照して詳細に説明する。
鍛造用金型としては、テーパーローラーベアリング用テ
ーパーローラの製造に用いられ、とくに苛酷な条件が要
求される冷間鍛造用金型を例にとった。
ーパーローラの製造に用いられ、とくに苛酷な条件が要
求される冷間鍛造用金型を例にとった。
第1図は、金型の縦断面を示す。この金型(1)は、雄
型(パンチ側)(1a)と、雌型(1b)とからなる組合せ
ダイスで構成されていて、ヘッダーマシン(図示せず)
によって切断された鋼線片が被加工物たるテーパーロー
ラ用素材(2)として両型間に配置されるようになって
いる。このときの鋼線片の寸法は、たとえば長さ22mm、
直径10mmであった。
型(パンチ側)(1a)と、雌型(1b)とからなる組合せ
ダイスで構成されていて、ヘッダーマシン(図示せず)
によって切断された鋼線片が被加工物たるテーパーロー
ラ用素材(2)として両型間に配置されるようになって
いる。このときの鋼線片の寸法は、たとえば長さ22mm、
直径10mmであった。
第1図に示した金型形状のうち、とくにコーナ部分に苛
酷な動的荷重がかかり、割れ、欠けなどの損傷を生じや
すい。そこで、コーナ部分を始めとして素材(2)と金
型とが接する部分にイオン注入を行った。
酷な動的荷重がかかり、割れ、欠けなどの損傷を生じや
すい。そこで、コーナ部分を始めとして素材(2)と金
型とが接する部分にイオン注入を行った。
第1図中に符号(3)で示される部分は、イオン注入さ
れ、後述のようにミキシングされた鍛造用金型のミキシ
ング領域である。このミキシング領域(3)は、鍛造用
金型の表面に、ダイナミックミキシング法により形成さ
れたものであり、イオン注入装置を用いて、イオンの注
入を行うと同時に、真空蒸着を同時に行うことにより、
これらのイオンと、蒸着物質とによる混入物質が、被加
工物の母材金属の表層部分の基質に対して、表面側ほど
混入物質の濃度勾配が徐々に高くなるように変化しなが
らミキシングされたものである。
れ、後述のようにミキシングされた鍛造用金型のミキシ
ング領域である。このミキシング領域(3)は、鍛造用
金型の表面に、ダイナミックミキシング法により形成さ
れたものであり、イオン注入装置を用いて、イオンの注
入を行うと同時に、真空蒸着を同時に行うことにより、
これらのイオンと、蒸着物質とによる混入物質が、被加
工物の母材金属の表層部分の基質に対して、表面側ほど
混入物質の濃度勾配が徐々に高くなるように変化しなが
らミキシングされたものである。
つまり、このミキシング領域(3)は、母材金属の結晶
のみで構成される母材金属基質から金型表面に近づくに
したがって、まず、僅かな混入物質が結晶格子間に入り
込む状態の多結晶層状部分へと変化し、次第に混入物質
の濃度が増して結晶構造部分が少なくなる微結晶層状部
分へ、ついには結晶構造が原形をとどめなくなる非結晶
層状部分へと徐々に変化したものである。本発明でいう
ミキシング領域とは、母材金属基質の他に、注入イオン
と蒸着物質とが濃度勾配をもって混在している範囲を指
し、前記の多結晶層状部分から非結晶金属層状部分まで
の全範囲をいう。
のみで構成される母材金属基質から金型表面に近づくに
したがって、まず、僅かな混入物質が結晶格子間に入り
込む状態の多結晶層状部分へと変化し、次第に混入物質
の濃度が増して結晶構造部分が少なくなる微結晶層状部
分へ、ついには結晶構造が原形をとどめなくなる非結晶
層状部分へと徐々に変化したものである。本発明でいう
ミキシング領域とは、母材金属基質の他に、注入イオン
と蒸着物質とが濃度勾配をもって混在している範囲を指
し、前記の多結晶層状部分から非結晶金属層状部分まで
の全範囲をいう。
また、前記第1図中の符号(4)は、金型による成形後
のテーパーローラを、外部から挿入するピンで突き出し
て型抜きするためのけり出し用ピン孔である。
のテーパーローラを、外部から挿入するピンで突き出し
て型抜きするためのけり出し用ピン孔である。
次に、ミキシング領域の形成方法を以下に説明する。
この実施例で用いた方法は、ダイナミックミキシング
法、あるいはIVD(Ion and Vapor Deposition)法とも
称されるもの(M.Satou,S.Fukui and F.Fujimoto,Proc.
5th Symp.ISIAT,349頁,1981年 及び、M.Satou,K.Matsu
da and F.Fujimoto,Proc.6th Symp.ISIAT,425頁,1982
年)であって、通常のイオン注入法より低いイオン加速
エネルギーを用い、真空蒸着とイオン注入とを同時に行
うものである。ミキシング領域形成の初期段階では、蒸
着原子の一部はイオンとの衝突による反跳で基質内に侵
入するが、それと同時に入射イオンも基質に注入され基
質との間にミキシング領域が形成されることとなる。し
たがって、予め試料表面に蒸着その他の方法によりコー
ティング層を形成した後イオンを注入する方法とは、原
理的にも効果の点でも異なる。
法、あるいはIVD(Ion and Vapor Deposition)法とも
称されるもの(M.Satou,S.Fukui and F.Fujimoto,Proc.
5th Symp.ISIAT,349頁,1981年 及び、M.Satou,K.Matsu
da and F.Fujimoto,Proc.6th Symp.ISIAT,425頁,1982
年)であって、通常のイオン注入法より低いイオン加速
エネルギーを用い、真空蒸着とイオン注入とを同時に行
うものである。ミキシング領域形成の初期段階では、蒸
着原子の一部はイオンとの衝突による反跳で基質内に侵
入するが、それと同時に入射イオンも基質に注入され基
質との間にミキシング領域が形成されることとなる。し
たがって、予め試料表面に蒸着その他の方法によりコー
ティング層を形成した後イオンを注入する方法とは、原
理的にも効果の点でも異なる。
第2図に、用いたイオン注入装置の概略構成を示す。
この装置は、イオン源(5)として冷陰極型イオン源を
用い、このイオン源(5)から出たイオンは質量分析系
(6)によって注入したいイオンのみを取り出して試料
台(17)に載置された試料(7)に注入するようになっ
ている。したがって、予定していない不純物元素は質量
分析系(6)によってふるい分けられ、試料(7)には
不純物元素が混入しないのである。さらに、選択したイ
オンの電流密度を制御することによって、試料表層で形
成される化合物薄層の組成比を制御できるようになって
いる。
用い、このイオン源(5)から出たイオンは質量分析系
(6)によって注入したいイオンのみを取り出して試料
台(17)に載置された試料(7)に注入するようになっ
ている。したがって、予定していない不純物元素は質量
分析系(6)によってふるい分けられ、試料(7)には
不純物元素が混入しないのである。さらに、選択したイ
オンの電流密度を制御することによって、試料表層で形
成される化合物薄層の組成比を制御できるようになって
いる。
図中(14)はバルブであり、(8)は試料(7)に照射
されるイオン電流を正確に知るための追い返し電極で、
これに試料(7)における電流密度および均質な照射領
域を得るためのレンズ作用を持たせたものである。図中
(9)は、試料(7)に照射されるイオン電流を測定す
るための電流積算計である。
されるイオン電流を正確に知るための追い返し電極で、
これに試料(7)における電流密度および均質な照射領
域を得るためのレンズ作用を持たせたものである。図中
(9)は、試料(7)に照射されるイオン電流を測定す
るための電流積算計である。
他方、イオン源(5)からのイオンとともに、試料
(7)の表層に別元素をミキシングさせるため、チャン
バー(10)内に電子ビーム蒸着装置(11)を設置してあ
る。電子ビーム蒸着装置(11)を用いれば、蒸着速度を
電子ビーム電流の調整により容易に制御できて都合がよ
い。チャンバー(10)内には、電子ビーム蒸着装置(1
1)による試料表層の蒸着量を測定するため、石英板を
備えた水晶振動型膜厚計(12)も設置されている。これ
は水晶振動子の振動数変化によって蒸着膜厚を正確に測
定できるのである。図中(13)は、チャンバー(10)内
を排気するための軸流分子ポンプ(図示せず)に接続す
る排気口である。もっとも、別イオンを混合させるため
の蒸着装置(11)は、上記のように電子ビーム蒸着装置
に限られず、通常の蒸着装置でもよい。
(7)の表層に別元素をミキシングさせるため、チャン
バー(10)内に電子ビーム蒸着装置(11)を設置してあ
る。電子ビーム蒸着装置(11)を用いれば、蒸着速度を
電子ビーム電流の調整により容易に制御できて都合がよ
い。チャンバー(10)内には、電子ビーム蒸着装置(1
1)による試料表層の蒸着量を測定するため、石英板を
備えた水晶振動型膜厚計(12)も設置されている。これ
は水晶振動子の振動数変化によって蒸着膜厚を正確に測
定できるのである。図中(13)は、チャンバー(10)内
を排気するための軸流分子ポンプ(図示せず)に接続す
る排気口である。もっとも、別イオンを混合させるため
の蒸着装置(11)は、上記のように電子ビーム蒸着装置
に限られず、通常の蒸着装置でもよい。
試料である金型(7)をイオン注入装置に挿入してイオ
ン注入するに当たり、まず、被加工物と当接することと
なる金型の表面部分を、イオン注入方向に向けて試料台
(17)に設置する。しかる後、所定の条件で注入処理
(イオン注入と同時に蒸着を行う)を実施する。
ン注入するに当たり、まず、被加工物と当接することと
なる金型の表面部分を、イオン注入方向に向けて試料台
(17)に設置する。しかる後、所定の条件で注入処理
(イオン注入と同時に蒸着を行う)を実施する。
このときの注入条件は次のようである。
イオン種……………………………N(N2) 加速電圧(Kev)………………5〜40 N2イオン注入量(個/cm2)5〜7×1016 到達真空度(Pa)………………3×10-5 (薄層形成時(Pa)……………約10-3) 蒸着元素……………………………Ti Tiは高純度金属チタンを用いた。
蒸着速度(Å/sec)…………約10 蒸着時の電流値(mA)…………3 上記条件によれば、金属表層に金属間化合物系非晶質物
質の層状部分が形成されることとなる。
質の層状部分が形成されることとなる。
上記のミキシング処理を行った金型を用い、第1図に示
した素材を基にテーパーローラベアリング用テーパロー
ラを製造した。そして、この金型について、ミキシング
処理を行わなかった金型の場合と寿命を比較した。この
時の寿命は、製品に損傷を与えるなど、金型として使用
不能となるまでの製造個数とした。その結果を次の第1
表に示す。
した素材を基にテーパーローラベアリング用テーパロー
ラを製造した。そして、この金型について、ミキシング
処理を行わなかった金型の場合と寿命を比較した。この
時の寿命は、製品に損傷を与えるなど、金型として使用
不能となるまでの製造個数とした。その結果を次の第1
表に示す。
なお、金型の母材としては、現在一般に冷間鍛造用金型
として用いられている工具鋼用のJIS SKD−11、SKH−
9、及び超硬合金(NK−15)の3種のものを用いた。
として用いられている工具鋼用のJIS SKD−11、SKH−
9、及び超硬合金(NK−15)の3種のものを用いた。
第1表に見るように、SKD−11およびSKH−9製金型では
ミキシング処理した方が3倍以上の寿命となり、超硬合
金製金型では2倍以上の寿命となった。
ミキシング処理した方が3倍以上の寿命となり、超硬合
金製金型では2倍以上の寿命となった。
ミキシングするイオン種としては、上記Tinの他、TaC,T
iC,VC,BN,TiN,Fe2Nなど原子周期律表における第III族〜
第VI族および第VIII族に属する元素あるいは化合物を単
独あるいは2種以上を組合せて用いるようにしてもよ
い。
iC,VC,BN,TiN,Fe2Nなど原子周期律表における第III族〜
第VI族および第VIII族に属する元素あるいは化合物を単
独あるいは2種以上を組合せて用いるようにしてもよ
い。
ミキシング処理としては種々の条件が考えられ、イオン
注入量、注入深さなどを変えて、目的に応じた処理を行
うことができる。
注入量、注入深さなどを変えて、目的に応じた処理を行
うことができる。
また、本発明を熱間鍛造用金型に適用してもよいことは
いうまでもない。
いうまでもない。
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にする為
に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成
に限定されるものではない。
に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成
に限定されるものではない。
第1図は本発明にかかる鍛造用金型の一実施例を表す縦
断面図、第2図は本発明の実施に用いたイオン注入装置
の概略構成図である。 (2)……加工物、(3)……ミキシング領域。
断面図、第2図は本発明の実施に用いたイオン注入装置
の概略構成図である。 (2)……加工物、(3)……ミキシング領域。
フロントページの続き (72)発明者 下井谷 良信 大阪府松原市新堂3丁目13―41番地 (72)発明者 寺尾 信夫 大阪府南河内郡美原町さつき野西1丁目15 ―14 審査官 川端 修 (56)参考文献 特開 昭52−93661(JP,A)
Claims (2)
- 【請求項1】少なくとも被加工物(2)と接する表面
に、イオンの注入と真空蒸着とを同時に行うダイナミッ
クミキシング法により、非晶質金属の層状部分を備える
ミキシング領域(3)が形成された鍛造用金型。 - 【請求項2】少なくとも被加工物(2)と接する表面
に、イオンの注入と真空蒸着とを同時に行うダイナミッ
クミキシング法により、非晶質金属の層状部分を備えた
ミキシング領域(3)を形成する鍛造用金型の製法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP63310489A JPH0685962B2 (ja) | 1988-12-07 | 1988-12-07 | 鍛造用金型及びその製法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP63310489A JPH0685962B2 (ja) | 1988-12-07 | 1988-12-07 | 鍛造用金型及びその製法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH02155531A JPH02155531A (ja) | 1990-06-14 |
JPH0685962B2 true JPH0685962B2 (ja) | 1994-11-02 |
Family
ID=18005853
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP63310489A Expired - Lifetime JPH0685962B2 (ja) | 1988-12-07 | 1988-12-07 | 鍛造用金型及びその製法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0685962B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP5350053B2 (ja) * | 2009-04-09 | 2013-11-27 | Ntn株式会社 | 円錐ころの加工方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPS582022A (ja) * | 1981-06-27 | 1983-01-07 | Agency Of Ind Science & Technol | 薄膜形成方法 |
JPS58181863A (ja) * | 1982-04-14 | 1983-10-24 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 表面処理方法 |
JPS6063372A (ja) * | 1983-09-19 | 1985-04-11 | Agency Of Ind Science & Technol | 高硬度窒化ホウ素薄膜の製造方法 |
-
1988
- 1988-12-07 JP JP63310489A patent/JPH0685962B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH02155531A (ja) | 1990-06-14 |
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