JPH0685922B2 - 継目無鋼管の圧延におけるガイドシュウの焼付防止方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は継目無鋼管の製造工程における穿孔、減肉延
伸又は磨管などの加工段階を一括して単に「圧延」と呼
ぶこととして、このような圧延の加工を行う際には、圧
延中の材料の振動および外径膨出の抑制制御のために用
いられているガイドシュウの焼付を生じ易く、これに起
因する管外表面の引掻き疵（以下、シュウマーク疵と呼
ぶ）の発生を回避することを目指したガイドシュウの焼
付防止方法に関する。

（従来の技術） 一般に継目無鋼管の製造工程で使用される穿孔、減肉延
伸又は磨管などの圧延加工を行うミルには、例えば第２
図に示すような外観形状にて一体鋳造（成分組成例（wt
％）;C/1.1,Si/0.5,Mn/0.3,Ni/30,Cr/30,Mo/0.9,Ti/0.
5,W/0.8,Zr/0.3,Cu/2及び残部鉄）されたガイドシュウ
4,4′を具備している。

このガイドシュウを備える傾斜圧延機による圧延態様を
一例として第３図に従い、ビレット０から中空素管１に
穿孔圧延する場合について説明すると、次のとおりであ
る。

ビレット０は上下対向配置の圧延ロール2,2′及びプラ
グ３とにより穿孔されるが、この際中空素管１の振動を
防止するとともに外径が必要以上に膨出しないように規
制するガイドシュウ4,4′が配置（第３図（ｂ）のＡ−
Ａ断面参照）される。

ところで、このような圧延においては被圧延材とガイド
シュウとが全面滑り摩擦の状態で圧延が行われるため、
被圧延材として特にCr,Ni,およびMo等の元素を含有する
合金鋼を用いる圧延に際しては、ガイドシュウの表面に
焼付が生じ易く、それが原因で被圧延材の外表面にシュ
ウマーク疵が発生する。従って、このような圧延におい
ては管材品質の劣下を招くのみならず、ガイドシュウの
手入れや交換等に要する圧延機のダウンタイムが増大し
て生産性を低下させるなど実操業上の不都合が著しい。

このような問題に関し特開昭58−68409号公報ではガイ
ドシュウと圧延材との間にグリースをロールゴージ部よ
り下流側で材料の回転方向から供給することが提案され
ている。

また、特開昭62−220204号公報では鉱物油に黒鉛を分散
させた潤滑剤を第２図に併記した様なノズル６により、
ガイドシュウ入側より連続的に噴射供給するガイドシュ
ウ潤滑方法が提案されている。

しかし潤滑の手法は何れの場合も次のような大きい問題
を残す。

第１は潤滑剤が圧延ロールに転写されるため圧延材に前
進方向の推進力が作用しなくなり、穿孔効率の大幅な低
下を来たし、圧延作業性や品質上好ましくないという欠
点である。

第２にはガイドシュウの入側のみより潤滑剤を供給する
方法であるため圧延中の材料の塑性変形によって生じる
新生面に潤滑剤が十分に供給されずしてガイドシュウと
材料との間の焼付を確実に防止することが困難な欠点で
ある。

（発明が解決しようとする課題） 発明者は先に圧延中においても穿孔効率の低下を伴わず
に焼付を防止することを目指し開発した水溶性のほう酸
塩化合物を主たる成分とする水溶液よりなる焼付防止剤
を用いた熱間圧延方法を提案した。この場合、焼付防止
剤の供給方法はガイドシュウ表面はその入側のみにて供
給するようにしていたので、シュウ表面温度の高い時は
かなりな焼付の防止効果が認められても、たとえば圧延
トラブルためにミルが一たん停止された時とか、操業立
上げなどの圧延初期のようにガイドシュウ表面温度が低
い時には焼付が確実に防止され得ないという欠点があっ
た。

この発明は上記のような欠点を解消するためさらに開発
を進めたもので、ガイドシュウと被圧延剤との間の焼付
を確実に防止し、シュウマーク疵発生のない高品質の継
目無鋼管を高能率で製造出来る継目無鋼管圧延における
ガイドシュウの焼付防止方法を提供することを目的とす
る。

（課題を解決するための手段） この発明は継目無鋼管の圧延において焼付防止剤を用い
てガイドシュウの焼付を防止するに際して、管軸方向に
おける前記ガイドシュウと被圧延剤との全接触長さ領域
にわたって被圧延材の外表面に、水溶性ほう酸塩化合物
を供給しながら圧延することを特徴とする継目無鋼管圧
延におけるガイドシュウの焼付防止方法である。

本発明者は傾斜圧延機による圧延を行うに際して、ガイ
ドシュウと被圧延材との焼付の確実な防止にあわせ、両
者間のスリップをも有効に抑制し、とくにNi,Cr及びMo
などの焼付を生じ易い合金成分を含有する鋼管の圧延に
おいてもガイドシュウの焼付を防止し得る方法を開発す
べく鋭意研究した。

その結果、焼付防止剤の供給用ノズル５を第１図に示す
ように設置し、これにより焼付防止剤を管軸方向の位置
が少なくとも前記ガイドシュウと被圧延材との接触部分
を含む前記被圧延材の外表面に供給し得るのでその供給
下に圧延をすることにより焼付防止のための第三成分が
被圧延材の外表面に介在してガイドシュウとの金属接触
が遮ぎられるとともにスリップもなくなり圧延初期から
焼付が確実に抑制できることの知見を得たのである。

以下、この発明の由来するに至った実験結果について説
明する。

実験では焼付防止剤としての利用可能性がある粉粒体分
散液として、黒鉛（20％含有）,Al₂O₃（10％含有）,Fe₂
O₃（10％含有）,SiO₂（10％含有）及びBN（４％含有）
をそれぞれ水に分散させ、かつ高温での展着性向上のた
めメチルセルロースを含有させたもの及び上記の先行開
発に係る水溶性ほう酸塩化合物としてのほう酸アルカノ
ールアミン塩を主成分とする15％濃度水溶液を何れも1.
0/minの噴射量で用い、ガイドシュウと被圧延材との
接触部における噴射供給の要領を下記の３水準にて変化
させた。

ガイドシュウ４の長手方向のほぼ中心に至る圧延入
側の半部のみとした場合（（Ａ）タイプ）、 ガイドシュウ４の長手方向の中心より圧延出側の半
部のみとした場合（（Ｂ）タイプ）、 ガイドシュウ４と被圧延材１との全接触長さ領域に
わたって被圧延材１の外表面全域に供給した場合
（（Ｃ）タイプ）、 圧延条件は207mmφ×2000mmの22％Cr鋼のビレット０
を1250℃に加熱し、225mmφ×20.5mmtの中空ホローに圧
延した。

調査項目はシュウ表面の焼付状況、管長手方向における
シュウマーク疵の発生状況、そして穿孔効率などであ
る。

実験結果を表１に示す。

同表から明らかなように、ガイドシュウと材料との接触
する全長さ相当分をかけた場合の（Ｃ）タイプでは実操
業上問題となる焼付およびシュウマーク疵深さは軽微と
なっている。

一方、入側よりかけた場合タイプ（Ａ）、中心より出側
に向かってかけた場合（Ｂ）タイプの何れにあってもシ
ュウの焼付が認められ、管外表面の全長にわたり0.25〜
0.35mmのシューマーク疵の発生が認められた。

ところで、（Ｃ）の供給タイプで用いられた焼付防止剤
の影響についてみる。Al₂O₃,SiO₂,Fe₂O₃,BNは実操業上
問題となる焼付およびシュウマーク疵深さは軽微である
が、水溶性ほう酸塩化合物の場合は尚一層良好であり、
メタルの凝着やシュウマーク疵の深さは０〜0.01mmでほ
とんど皆無と言える程度であった。このようにガイドシ
ュウと接触する長さ全領域にわたって焼付防止剤を供給
する方法が他の供給方法に比して優れている理由は、圧
延中の塑性変形で生じる新生面へ焼付防止剤が連続的に
供給されるため、被圧延材とガイドシュウ表面との金属
接触を防止し、焼付の発生を皆無にしているものと考え
られる。

また、穿孔効率についてみると、いずれのタイプの噴射
方法においても水分散型の黒鉛では摩擦係数が低いた
め、大幅な低下となり、使用出来ないことが分かった。

これに反しAl₂O₃,Fe₂O₃,SiO₂,BN,及び水溶性ほう酸塩化
合物は穿孔効率の低下もなく良好であった。

以上の実験結果からこの発明ではガイドシュウ４と被圧
延材１との間の焼付防止剤として、上記の水溶性ほう酸
塩化合物のがとくに好適であることが分かった。しか
し、Al₂O₃,Fe₂O₃,SiO₂,BNなどの焼付防止剤も実操業上
問題となる焼付およびシュウマーク疵深さが軽微なた
め、使用出来ることは言うまでもない。

（作 用） この発明では継目無鋼管の圧延の際、管軸方向における
ガイドシュウと被圧延材との全接触長さ領域にわたり焼
付防止剤を連続供給することによって、被圧延材表面の
圧延加工によって不断に創出する新生表面とガイドシュ
ウとの間に焼付防止剤が行きわたり、焼付きを的確に防
止できる。

この焼付防止剤としては、上記実験の経過から水溶性ほ
う酸塩化合物の如きが水を分散媒又は溶媒とし、必要な
展着剤たとえばメチルセルロースとともに用いることが
できるのであり、好適濃度は１％〜35％また供給量は0.
3〜2.0/minで適合する。

（実施例） 以下、この発明の実施例について説明する。

ここで用いた焼付防止剤の組成は水溶性のほう酸塩化合
物として15％のほう酸アルカノールアミン塩と残り水か
らなるものである。

マンネスマン・プラグミル法の第１パスである固定式ガ
イドシュウ（成分組成は従来技術中のものと同様）を具
備したピアサーミルにより、外径が207mm,長さ2000mmの
１％Cr鋼，％Cr鋼,22％Cr鋼,SUS304鋼及びSUS321鋼を各
300本宛何れも外径が225mm,肉厚20.5mmの中空素管に圧
延する際、第１図に示した噴射方法によりガイドシュウ
と材料との接触する全長に渡って噴射するタイプ（Ｃ）
の場合を従来法に従いガイドシュウの入側のみより噴射
するタイプ（Ａ）の場合及びガイドシュウ長手中心より
出側に向かって噴射するタイプ（Ｂ）の場合と対比し
た。ここで、焼付防止剤の噴射量は何れも１/minで行
った。なおこの時、ロールの冷却水がガイドシュウ側に
廻り込まない様にロール側に水切りワイパーを付けて実
施した。

結果は表２に示すとおりであった。

表２から明らかなよう、従来法に従い焼付防止剤をガイ
ドシュウの入側のみから噴射する場合（Ａ）およびガイ
ドシュウ長手中心より出側に向かって噴射する場合
（Ｂ）では１％Cr,5％Cr各鋼など、比較的耐酸化性の低
い被圧延材ではガイドシュウ表面への材料側の移着すな
わち、焼付は認められないが、ガイドシュウ表面にスケ
ールが付着するので、管外表面に0.2mm程度のシュウマ
ーク疵およびスケールによる押込み疵が発生している。

また、22％Cr,SUS304及びSUS321各鋼は従来法の噴射方
法ではシュウ表面に材料側のメタルが軽度ながらも凝着
して焼付き、管外表面に0.25〜0.35mm程度の疵がほぼ全
長に渡って発生した。

これに対して、この発明になる供給方法ではいずれの材
質においても、シュウの表面にはスケールの付着および
焼付は全く発生せず、シュウマーク疵の発生は皆無であ
った。

尚、この実施例では穿孔圧延について例示したが、次の
工程の減肉延伸工程のエンロゲータおよび磨管工程のリ
ーラー圧延などに適用することによっても同様な効果が
あることがわかっている。また、被圧延材としては１％
Cr鋼以上についてのみ主に説明したが、低炭素鋼，中炭
素鋼等の一般炭素鋼に適用することにより同様な効果が
得られることは言うまでもない。

（発明の効果） この発明によればガイドシュウを有する傾斜圧延機によ
る継目無鋼管の圧延において、被圧延材と接触するガイ
ドシュウとの間の焼付に起因して生じるシュウマーク疵
が効果的に防止でき、従ってガイドシュウの手入れによ
る圧延機のダウンタイムの激減ならびに工程反復手入れ
材の減少などを有利に達成でき、高Cr合金鋼であっても
高能率で高品質の継目無鋼管を製造することができその
工業的意義は極めて大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の実施態様を示す斜視図、 第２図は傾斜圧延機に用いられる従来のガイドシュウを
示す斜視図、 第３図は固定式ガイドシュウをそなえる傾斜圧延機の模
式図と断面図である。 ０……ビレット、１……中空素管 2,2′……圧延ロール、３……プラグ 4,4′……ガイドシュウ ５……焼付防止剤の供給ノズル

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】継目無鋼管の圧延において焼付防止剤を用
   いてガイドシュウの焼付を防止するに際して、管軸方向
   における前記ガイドシュウと被圧延材との全接触長さ領
   域にわたって被圧延材の外表面に、水溶性ほう酸塩化合
   物を供給しながら圧延することを特徴とする継目無鋼管
   圧延におけるガイドシュウの焼付防止方法。