JPH0680926U - 機械的動力伝達継手を密封するブーツ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 動力伝達継手で継がれた両側の軸を大きな角
度で、しかも密封を保った状態で曲げることができるよ
うに継手をカバーする小型のブーツを提供すること。 【構成】 本考案ブーツは非可撓性の材料で成形された
第１部材と第２部材とからなる。第１部材は、一方の軸
に取り付けられている外部レースの球面上の外面を滑る
ことができるように外部レースに取り付けられるように
なっており、その開放端には球面状の溝が形成されてい
る。一方、第２部材は、一端が他方の軸に取り付けら
れ、その開放端が前記第１部材の溝に密閉を保った状態
で滑ることができるように挿入されてその軸と第１部材
との間に取り付けられる。

Description

【考案の詳細な説明】 【０００１】 【産業上の利用分野】 本考案は機械的動力伝達継手、特に動作中に関節状に動くことができる継手及 びこの継手に使用するブーツに関する。さらに詳細には本考案は可撓性でない材 質からなるブーツであって、このブーツを使用して継手、特に前輪駆動自動車の 等速型自在継手を密封するのに適したブーツに係わる。 【０００２】 【従来の技術】 前輪駆動自動車の変速機から前輪へ動力を伝える手段として、等速型自在継手 が広く用いられている。各駆動車輪にその継手が１個またはそれ以上設けられる 。もちろん、必要な潤滑剤を継手内部の所定の場所に保持し、かつほこりその他 の外部汚染物が継手の部分に入らないようにするために密封されている。 【０００３】 この密封を行うためのシール部材はブーツと称されている。従来のこのブーツ は、弾性材料で作られた可撓性を有するもので、ジャバラ状のひだを設けた形状 に成形され、そのひだ及び材料自体の可撓性でいずれの方向にも自由に動けるよ うにされている。すなわち、この構造によって軸線方向に整列されている継手の 入力軸と出力軸との間の関節状運動、すなわち角運動を継手のシールが破れるこ となく行うことができる。周知のように自動車に搭載した場合には継手の関節状 運動、角運動は必然的に生じる。 【０００４】 上記した可撓性材料からなるブーツは自動車にも広く使用されている。しかし 、それらのブーツは非常に高価であり、しかもそれらのブーツが可撓性であるた めに寸法が変わりやすく、継手の密封は手作業で行わなければならない。したが って取り扱う部品の寸法が正確であることを前提にしている機械的組立技術を使 用することはできない。また弾性材料からなるブーツは、機械的強度が弱く、路 上の危険物及びその他の集中的な衝撃によって穴があけられることがある。また 、自動車は使用中高温や低温に曝されることがあるが、その温度差によって弾性 材料の性質が劣化することがある。さらに、それらの可撓性ブーツすなわちシー ルはひだを付けられた形状であるので、内部容積が大きくなり、その中に継手を 適正に潤滑するために入れるグリースの充填量が必要以上に多くなる。一般的に は弾性材料はグリースに接触すると劣化するので、従来のブーツの寿命はより一 層短くなる。 【０００５】 【考案が解決しようとする課題】 本考案の目的は機械的動力伝達継手を密封するための改良したブーツを得るこ とである。 本考案の他の目的は、入力部材と出力部材とが相対的に関節状の動きができる 機械的動力伝達継手を密封する改良したブーツを得ることである。 さらに本考案の他の目的は、軸どうしが大きな角度で関節状動きができ、しか も密封状態でその動きができる小型なブーツを提供することである。 【０００６】 【課題を解決するための手段】 本考案に使用するブーツは非可撓性材料からなる二つの部材からなるものであ る。 第１部材は、一方の軸に取り付けられた外部レースの球面状外面を囲んでその 球面状外面に面と面との関係で封止して係合される内面を有し、密封状態を保っ たまま外部レースに対して関節状動きができるようにされている。また外部レー ス側から離れた端部は球面状の溝からなるグローブを形成させてある。 第２部材は、上記第１部材のグローブに密封状態で滑動又は摺動できるように 挿入される球面状の端部を有し、その球面状端部の反対側は他方の軸に密封状に 係合される構造である。 軸に係合された第２部材の端部を第１部材のグローブに挿入することによって その軸が前記外部レースを取り付けた軸と相対的に密封状態を保って関節状動き ができるとともに、双方の軸の間の継手を内部に潤滑剤を保持して密封すること ができるものである。 【０００７】 【実施例】 第１図は固定型すなわち非プランジング型の等速型自在継手１１である。この 継手１１は入力軸１３から動力を入力端部１２に受け、出力端部１５から伸びて いる出力軸１４に伝え、その動力を従動部材（図示せず）に伝えるものである。 この種の継手の技術で知られているように、入力軸１３から軸受保持器１７に含 まれている円周方向の一連の球（その数は通常６個である）により動力が出力軸 １４へ伝えられる。球１６は内部レース１９の球状表面１８の上をころがる。そ の内部レースはキーその他の手段により入力軸１３に固定される。それと同時に 、球１６は外部レース２２の球面状内面２１の上もころがる。外部レース２２は 出力軸１４の一部となるものである。この外部レースはたとえば鍛造で製造でき る。 【０００８】 動作中は、入力軸１３と出力軸１４はそれらの軸の間の正常な軸線方向の向き （第１図）から関節運動すなわち角運動をさせられる。前輪駆動自動車の前輪駆 動用継手の場合には、この関節運動の大きさは折れ角が４５度のオーダーであっ て、たとえば自動車が路上で遭遇する振動、揺れ及び旋回とによって生じる。球 １６が内部と外部のレース１９，２２の球面状表面２１に転動接触するために等 速型自在継手自体はその程度の関節運動は十分できる。 【０００９】 前述のように等速型自在継手は相対的に動く精密機械加工された部品を含むの で、常に潤滑を保ち、自動車という環境において遭遇するほこりその他の汚染物 による汚染を受けないようにしなければならない。そのため等速型自在継手１１ の内部を密封するブーツ２３が設けられている。このブーツ２３は、等速型自在 継手１１自体ができる程度の関節状運動を行えなければならない。その際ブーツ ２３の密閉性を失ってはいけない。しかも、ブーツ２３は長年にわたって密閉性 を保って関節運動ができなければならない。 【００１０】 すでに述べたように等速型自在継手１１は入力軸と出力軸との間で大きな関節 状運動ができなければならない。自動車の前輪駆動継手の場合には約２０度まで は通常の走行で折れることがあり、急角度で旋回する場合には折れ角度は約４５ 度にまで達する場合がある。ブーツ２３も当然同様の動きができなければならな い。本実施例のブーツ２３は、外部レース２２の外面２４を球面状とし、この球 面状の外面２４を覆う部分と、入力軸１３に密封するように取り付けられる部分 の２個のブーツ部分によって構成させている。外部レースを鍛造で製造した場合 にはコスト低減のため球面状外面２４はなるべく機械加工しない。 【００１１】 ブーツ２３の第１の部分、すなわち第１部材２５は半硬質材で構成される。こ の第１部材２５は外部レースの球面状外面２４に面どうしで接触して密閉する球 面状内面を有している。本考案の密封ブーツは、円筒形その他の非球面状外部レ ースを利用する既存の等速型自在継手に利用できることもねらっている。その場 合にはプラスチックその他の材料で作った取付具を外部レースに取り付けなけれ ばならない。そして密封ブーツに対して表面どうしの密封接触を行うために、そ の取付具は球面状の外面を設けなければならない。 【００１２】 第１部材２５の入力軸１３側の端部には分岐部材２６が取り付けられている。 この分岐部材２６と第１部材の端部とで球面状の溝２７を有するグローブを形成 させている。ブーツ２３の第２の部分、すなわち第２部材２８は同様に半硬質材 で構成され、その先端部は前記グローブの溝２７の中に密封状態で滑動できるよ うに入れられている。第２部材２８の他端側は入力軸１３の一部２９を密封する ように囲んで取り付けられている。この第２部材は従来のもののようにはひだが 付けられておらず、基本的には球の一部の形状に形成された板であり、中心部が 入力軸１３に取り付けられ開放端が前記グローブの溝２７に摺動自在に挿入され る。 【００１３】 この第２部材２８の開放端が溝２７内で関節状に動くことによって等速型自在 継手１１の関節運動を行うことができる。この第１部材２５と第２部材２８とに よる関節運動は、等速型自在継手１１が正常に使用されているときに起こるあら ゆる衝撃、旋回、振動に対して対応できるようにされている。自動車の前輪駆動 継手では２０度まで関節状の動きができるようにする。上記溝２７の深さ及び第 ２部材２８の開放端までの長さはその程度の動きができる寸法とされている。そ れ以上に大きな関節状運動は、外部レース２２の球面状外面２４の周囲を第１部 材２５が滑ることによって行われる。この滑りによって第２部材が溝２７の底に 達したあとさらに約２５度まで曲げることができる。したがって、自動車におい て鋭い旋回を行ったときや、大きな上下動すなわちバウンドが起きたときにも十 分対応することができる。 【００１４】 ブーツ２３の第１部材２５と、第２部材は強力で、破れにくい非弾性、すなわ ち半硬質の重合材料で作られる。その材料としてはガラス含浸ナイロン（ポリア ミド）材料が相応しい。そのような材料で作られたブーツ２３は、従来の可撓性 のある弾性的なブーツよりもパンクと引き裂きにかなり強く、かつ小さい許容誤 差内に治まる寸法を有するので、自動組立装置による組立に向いている。したが って組立労賃を低減することができる。また、このブーツ２３は自動車の前輪駆 動継手の正常な寿命期間中に遭遇するであろうあらゆる高温とあらゆる低温に良 く耐えることができる。さらに等速型自在継手１１の内部に充填されるグリース との接触による劣化に対しても良く耐えることができる。 【００１５】 本実施例ブーツ２３は上記の構成になるので、第２部材と第１部材との内面の 一部が継手内部のグリースに接触する。したがって、第１部材２５の溝２７の中 での第２部材２８の滑動と、外部レース２２の球面状外面２４上の第１部材２５ の滑動とが自己潤滑されスムースに動くことができる。さらに継手の回転中には グリースに遠心力が働きブーツ部分（２５と２８）の内面へのグリースの付着が 増大し、継手の最も頻繁な関節状運動の期間中に、それらの内面へのグリースの 付着が保たれる。 【００１６】 さらに本実施例ブーツ２３は第１部材２５が非弾性であるため、これを外部レ ースの球面状外面２４に取り付け保持させるために、固定手段やリングを必要と せず、スナップはめ合いによって取り付け、保持を行うことができる。したがっ て継手制作に含まれる部品のコストと、それらの部品の組立コストを一層低減す ることができる。同様に第２部材２８も非可撓性の材料であって、ひだが付けら れていないので、これを密封保持するために固定手段などを必要とせずに、単に 入力軸１３に設けた溝３１に入力軸密封部内面に形成させた突条３０をはめ込む だけで密封状態に保持させておくことができる。したがって材料費と組立費とを 一層低減することができる。 【００１７】 上記例においては等速型自在継手に使用することを説明したが、この種のブー ツすなわちシールは三脚接触型すなわち球接触型のような他の種類の動力伝達継 手、またはフック継手さらにはカルダン継手のような非等速型のものにも使用す ることができる。 【００１８】 【考案の効果】 以上のように本考案ブーツは二つの部材からなり、第１部材に設けた球面状の 溝を有するグローブに第２部材の端部を挿入し、その溝内で第２部材を摺動自在 とするとともに、第１部材自体も外部レースに対して関節状の動きができるよう にしている。すなわち本考案は関節状の動きを二重に行っている。そのため非可 撓性材料でブーツを構成させても入力軸と出力軸と間で大きな角度での関節状の 動きを行わせることができる。 【００１９】 そして前述したようにブーツを非可撓性の材料で成形してあるので、組立が容 易となり、材料コストの低減ともあいまってコスト低減効果が著しい。さらに機 械的強度も強く、かつ劣化も少なく長寿命とすることができる。

【図面の簡単な説明】 【図１】本考案の密封ブーツの好適な実施例を有する等
速型自在継手の一部断面図である。 【符号の説明】 １１ 等速型自在継手 ２２ 外部レース ２３ ブーツ ２４ 外部レースの球面 ２５ 第１部材 ２７ 溝 ２８ 第２部材

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 （１）入力軸と、出力軸と、それらの軸の一方に連結さ
   れる外部レースと、前記他方の軸から動力を前記外部レ
   ースへ伝える手段とを備え、前記外部レースの外面は球
   面状であり、前記入力軸と前記出力軸は継手の動作中に
   互いに関節状に動かされるようになっている機械的動力
   伝達継手を密封するブーツにおいて、 非可撓性材料からなり、前記外部レースの球面状外面を
   囲んでその球面状外面に面と面との関係で封止して係合
   される内面を有し、密封状態を保ったまま外部レースに
   対して関節状動きができるようにされるとともに、他方
   の軸に向いた球面状に形成された溝を有する第１部材
   と、 非可撓性材料からなり、前記第１部材の溝に密封状態で
   摺動できるように挿入される球面状の端部を有し、前記
   他方の軸に密封状態に係合されて前記第１部材に対して
   密封状態で関節状動きができ、前記第１部材とによって
   前記外部レースと前記他方の軸との間の継手を内部に潤
   滑剤を保持してほこりその他の汚染物が前記継手の内部
   に入るのを阻止する第２部材とを有することを特徴とす
   る機械的動力伝達継手を密封するブーツ。 （２）前記継手が等速型自在継手である請求項１記載の
   機械的動力伝達継手を密封するブーツ。 （３）前記等速型自在継手が前輪駆動自動車用の前輪駆
   動継手である請求項２記載の機械的動力伝達継手を密封
   するブーツ。 （４）前記前輪駆動継手の入力軸と出力軸とが、正常な
   動作中で相対的に各方向に少なくとも２０度関節状に曲
   げられる請求項３記載の機械的動力伝達継手を密封する
   ブーツ。 （５）前記前輪駆動継手の入力軸と出力軸とが、継手の
   動作中各方向に少なくとも４５度関節状に曲げることが
   できる請求項１記載の機械的動力伝達継手を密封するブ
   ーツ。 （６）前記ブーツの第２部材が前記第１部材に対して各
   方向に少なくとも２０度密封したままで関節状に動くこ
   とができ、かつ、前記第２部材は前記外部レースに対し
   て、各方向に少なくとも２５度密封したまま関節状に動
   く請求項１記載の機械的動力伝達継手を密封するブー
   ツ。