JPH0680261U - ボタン形空気電池 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ボタン形空気電池において、ガスケットの圧
縮率を高くした際に生じる空気極の湾曲を抑え、反応効
率を維持しつつ、耐漏液性の向上を図ることを目的とす
る。 【構成】 ガスケット３の空気極側当接部Ａの形状を、
その内径方向において肉厚とした傾斜部３ａを設けた。
このようなガスケット形状とすることにより、ガスケッ
ト３の圧縮時に、空気極５をガスケット３に設けた肉厚
傾斜部３ａが最初に押圧し、空気極５が内径方向に移動
しないように固定し、ついでガスケット３の底面全体が
空気極５に押圧されるため、空気極５の上方への湾曲を
防止することができる。これにより、反応効率を維持し
つつ、耐漏液性の優れた空気電池を供給できる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、封口板外周に取りつけた断面形状が略Ｌ字状のガスケットを介して 液密的に封口されているボタン形空気電池に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

ボタン形空気電池（以下単に空気電池という）は水銀電池の代替電源として開 発された電池であり、低水銀で環境にやさしい、大電気容量、軽量という優れた 特長を有し、補聴器用電源を中心にその需要を急速に伸ばしている。また近年大 容量タイプの開発にともないその用途も拡大し、ページャ用、医療機器用の電源 として今後一層の成長が見込まれている。

【０００３】 図１は従来の空気電池の構造を示すものである。図１において、１は、有底筒 状の負極ケースである封口板、２は負極で汞化亜鉛とアルカリ電解液からなる。 ３は封口板１の外周に取りつけた実公昭５７−２９２５０号、実公昭５７−１７ ７１５号各報に記載のような断面が略Ｌ字状をなすリング状のガスケット、４は 正負極間のショート防止のためのセパレータ、５は正極活物質である酸素の反応 場である空気極で、酸素還元触媒層と撥水層から成る。６は空気極への酸素供給 と電解液の電池外漏出を防止するための撥水膜、７は空気を均一に拡散させるた めの拡散紙、８は空気孔であり、９の正極ケースに正極活物質である酸素の取り 込みを目的として設けられている。１０は未使用時に空気孔を封鎖、空気の侵入 を遮断し電池の劣化を防止するためのシール紙である。

【０００４】 空気電池では、正極ケース９の開口周縁部を内方にカールすることにより、ガ スケット３を介して封口板１の外周を締めつけると同時に、セパレータ４、空気 極５、撥水膜６を圧縮することにより、液密的な封口を行い、耐漏液性を確保し ている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、空気電池を組み立てる際にガスケット３の特に空気極側と当接 する部分の圧縮率を高くすると、これに比例して耐漏液性は向上するが、反対に 放電時に反応効率が低下するという欠点を有していた。

【０００６】 これは、ガスケット３の空気極５との当接部における圧縮率が高くなると、図 ３に示すように空気極５を下方に圧縮する力Ｆ₁が作用した時、空気極５には内 径方向に逃げようとする力Ｆ₂が作用し、このため空気極５が上方に湾曲し、空 気極５内部に電解液が過剰に滞留し、放電時に空気の透過が阻害されることによ り生じる。

【０００７】 本考案はガスケット３の空気極当接部Ａの圧縮率を高くした際に生じる空気極 ５の湾曲を防止し、反応効率を維持し、耐漏液性の向上を図ることを目的とする 。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

これらの課題を解決するため、本考案の空気電池は図２に示すようにガスケッ ト３の空気極側当接部の形状を、その内径方向に肉厚とした傾斜部３ａを形成し た形状とすることにより、従来の問題点を解決する。

【０００９】

【作用】

このようなガスケット形状とすることにより、ガスケット３の圧縮時に、図２ に示すようにガスケット３に設けた肉厚傾斜部３ａが最初に空気極５を押圧し、 空気極５が内径方向に移動しないように固定し、ついでガスケット３の底面全体 が空気極５に押圧されるため、空気極５の上方への湾曲を防止することができる 。

【００１０】

【実施例】

以下本考案の一実施例をＲ４８サイズの空気電池（ＰＲ４８；直径７．９mm， 高さ５．４mm）を例にとって図面とともに説明する。

【００１１】 図２は本考案の実施例における封口ガスケットの要部拡大模式図である。図２ において、セパレータ、撥水膜は空気極５とほぼ一体化しているため省略した。

【００１２】 この実施例で、ガスケット３はその空気極側当接部Ａがその内径方向において 肉厚とした傾斜角が２°〜３０°の傾斜部３ａを設けた形状を有している。

【００１３】 図３は従来品の封口ガスケットの要部拡大模式図であり、ガスケット３の空気 極側当接部Ａは空気極に対し並行に当接している。

【００１４】 図２、図３の構成を持つガスケットを使用して、前記の空気電池ＰＲ４８サイ ズを各々２０個構成し、放電特性および耐漏液特性の比較を行った。結果を（表 １）に示す。なお本実験では傾斜角１５°のものを使用した。

【００１５】

【表１】

【００１６】 （表１）は放電特性試験の結果を示したものであり、放電は４５℃７０％Ｒ． Ｈ．の環境下で６２０Ωの負荷をかけて行った。放電曲線は図４に示すように２ つに大別することができ、１つは放電末期まで高い維持電圧を保つ正常品（曲線 Ａ）であり、もう１つは維持電圧が時間経過と共に徐々に低下し、反応効率が低 下する放電不良品（曲線Ｂ）である。（表１）では試験電池総数中の、Ａ状・Ｂ 状それぞれの放電曲線を描いた電池個数を示した。

【００１７】

【表２】

【００１８】 （表２）は（表１）と同じロットの電池についての耐漏液性試験の結果を示し たものである。試験は、未放電の電池をシールを貼った状態で６０℃９０％Ｒ． Ｈ．の環境下で加速保存した際の結果を示しており、この条件下で２５０時間保 存した電池の漏液進度は、常温常湿下で１年間保存したものに相当する。

【００１９】 なお、本実施例ではガスケットの傾斜角を１５°のもので実施したが、諸種実 験を行ったところ、傾斜角２°〜３０°の範囲であれば本実験と同様の結果があ った。

【００２０】

【考案の効果】

以上のように本考案によれば、空気極の封口時における湾曲を防止でき、反応 効率を維持し、耐漏液性の優れた空気電池を供給できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】空気電池の半截側断面図

【図２】本考案の実施例におけるガスケットの要部拡大
模式図

【図３】従来品のガスケットの要部拡大模式図

【図４】４５℃７０％Ｒ．Ｈ．の環境下で負荷６２０Ω
で放電した場合の放電曲線の比較図

【符号の説明】

１ 封口板 ３ ガスケット ３ａ ガスケット肉厚傾斜部 ５ 空気極 ９ 正極ケース Ａ ガスケット底部（空気極当接部）

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】空気孔を有する正極ケース内部に、空気中
   の酸素を還元するシート状空気極を載置し、ガスケット
   で空気極を押圧し封口するボタン形空気電池であって、
   ガスケットの空気極側当接部形状を、その内径方向にお
   いて肉厚とした傾斜角が２°〜３０°の傾斜部を設けた
   ことを特徴とするボタン形空気電池。