JPH0674274A - 疲労強度に優れたコイルばね - Google Patents

疲労強度に優れたコイルばね

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JPH0674274A
JPH0674274A JP22626992A JP22626992A JPH0674274A JP H0674274 A JPH0674274 A JP H0674274A JP 22626992 A JP22626992 A JP 22626992A JP 22626992 A JP22626992 A JP 22626992A JP H0674274 A JPH0674274 A JP H0674274A
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coil spring
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strength
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Michiaki Tateyama
道昭 舘山
Takeshi Miki
武司 三木
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、表面欠陥のない疲労強度に優れた
高強度コイルばねを提供する。 【構成】 90±10kgf/mm2 の圧縮残留応力が
表層から150μm 深さの内部まで分布し、最大粗さR
max1.0μm 以下の表面粗さを有する母材硬さHv
が700以上である、疲労強度に優れたコイルばねであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車エンジンにおけ
る弁ばね、あるいは懸架ばね等、高度の疲労特性が要求
されている分野に用いられる、母材硬さHvが700以
上の高強度コイルばねに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にばねは、JIS−G3502、3
506あるいは4801に規定されている鋼材などを用
い、単に焼入れ焼戻しをしたものが多い。しかし、最
近、自動車関連のコイルばね類は、高強度化の方向にあ
り、エンジンの弁ばねの一部には特公昭36−9406
号公報にあるように、500℃近傍の低温で浸炭窒化し
たものさえある。一方、ばねの強度が高くなると、現状
の製造工程能力からも、不可避と思われるほど微小な表
面欠陥によってばねの疲労特性を阻害するようになる。
【0003】そのために、「ばね技術研究会会報」N
o.203(AUG.1988−P7)や特開昭63−
52729号公報「耐疲れ性にすぐれたばねおよびその
製造方法」さらには特開平2−129421号公報「高
強度コイルばねおよびその製造方法」と特開平2−12
9422号公報「高強度コイルばねおよびその製造方
法」にあるように、ばねを電解研磨仕上げすることによ
り、表面欠陥やショットピーニングにより生じた圧痕を
低減して疲労寿命を向上させることが報告されている。
このばねの電解研磨仕上げ方法は、ばねの疲労強度向上
の今後の一方法と考えられるが、コイルばねの場合、ば
ねの全表面を一様に仕上げることに問題があり、且つコ
イルばねの内側に陰極をその都度配置する必要があるた
め極めて効率が悪い。
【0004】また、タンブリング(バレルの中に被加工
物を入れて回転させ、被加工物同士の衝突によって、被
加工物表面の油やスケールを除去する)や液体ホーニン
グもばねの表面仕上げ法として検討されていることが、
「ばね技術研究会偏;ばね、第3版」(1982−P4
37)に記載されているが、これらはいずれもショット
ピーニング類似の処理、即ち圧縮残留応力という観点か
ら検討されたものであって、以下にいう本発明の表面疵
対策とは全く関係のないものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】例えば、自動車の高性
能化に伴い、疲労強度の高いばねが強く望まれている。
このような要望に応えるためには、ばねの強度、特に表
面硬さを高くする必要がある。而して、現状では完全に
なくすことが不可能であると思われるほどの微小な表面
欠陥が問題となる。本発明は、かかる表面欠陥のない疲
労強度に優れた高強度コイルばねを提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、90±10kgf/mm2 の圧縮残留応力が表層
から150μm深さの内部まで分布し、最大粗さRma
xで1.0μm以下の表面粗さを有する母材硬さHvが
700以上である疲労強度に優れたコイルばねにある。
【0007】
【作用】以下、本発明の詳細について、説明する。近
年、コイルばね素材の疵検査技術も高まっており、深さ
60μm以上の表面疵はほぼ検出できる。母材硬さHv
が500未満の一般のコイルばねでは、この程度の表面
疵が問題になることは少ない。しかし、母材硬度Hvが
500以上、700未満の炭素鋼線または合金鋼線を用
いたコイルばねで、疲労試験の剪断応力τ=60±50
kgf/mm2 で繰返し回数が5×107 以上を保証す
る場合には、深さ60μm以上の表面疵はもちろん、深
さ10乃至30μmのものでも、表面疵を起点として疲
労破損することがある。特に窒化処理をして表面硬さH
vを700以上にもしたコイルばねになると、上記のよ
うな表面疵保証では必ず表面疵を起点として疲労破壊す
るので、信頼できる疲労強度を保証することはできな
い。
【0008】コイルばねの疲労強度を高めるために、ば
ねの表面硬さを高くするわけであるが、表面疵が保証で
きない限り、その効果は望めない。そこで、本発明者ら
は、母材硬さHvが700以上の炭素鋼線または合金鋼
線を用いてコイルばねの表面疵を保証するために、現状
のコイルばね製造工程におけるショットピーニングの直
後にバレル研磨仕上げを施すことにより、前記の効果が
得られることを見出した。バレル研磨仕上げは、6〜8
角形断面の筒状容器の中に被加工物(コイルばね)と適
当な粒度のアランダムやカーボランダムなどの砥粒、少
量の水およびコンパウンドと称されている種々の研磨促
進剤をそれぞれ適当量一緒に入れて、数時間回転あるい
は振動させて行う。
【0009】本発明では、バレル研磨による表面粗さ条
件を規定することが、重要な要件である。即ち、母材硬
さHvが700以上の炭素鋼線または合金鋼線を用い
て、コイルばねを得る製造工程において、コイルばね成
形後行われるショットピーニング処理に続いてバレル研
磨を施すことによって、表面粗さを最大粗さRmaxで
1.0μm以下に仕上げる。最大粗さRmaxが1.0
μmを超えると、母材硬さの高いばね、特にHvが70
0以上ともなると切欠感受性が高くなるため疲労強度が
低下する。
【0010】圧縮残留応力は、外力による引張応力を相
殺するために付加するが、上限を超えて付加してもショ
ットピーニング処理が非能率的となり、下限を下回る
と、特に表面近傍で外力の引張応力を相殺することが困
難となるため、その範囲を90±10kgf/mm2
する。また、その深さを表面から150μmまでとした
のは、外力の引張応力を内部深さ150μmまで相殺す
れば、現状の鋼中非金属介在物の大きさ最大20μmに
よる疲労亀裂発生が抑制可能となるためであり、150
μmを超えて分布しても特性の上では問題がないが、シ
ョットピーニング処理の面で経済的制約を考慮して、圧
縮残留応力の及ぶ範囲を表層から150μmとする。
【0011】このバレル研磨仕上げは、現状のコイルば
ね製造工程におけるショットピーニングの直後に行うの
が良い。即ち、ショットピーニングによりコイルばね表
面に凹凸が生じ、これが疲労強度低下の原因の一つにも
なっていることを考えると、ショットピーニングの直後
が好ましい。しかしながら、表面疵がショットピーニン
グによって叩き込まれることもあるので、好ましくはシ
ョットピーニング前でも軽度のバレル研磨をすればその
効果はさらに向上する。
【0012】コイルばねは、へたり特性を向上させるた
めにセッチングが必要であるため、本発明においても、
ショットピーニング、バレル研磨仕上げを施した後セッ
チングを行う。
【0013】
【実施例】以下に、本発明の効果を実施例により、さら
に具体的に示す。母材硬さHvを730〜870まで熱
処理条件によって変化させたφ3.0mmの弁ばね用シ
リコンクロム鋼オイルテンパー線を用い、ばね平均径2
4.2mm、ばね高さ52mm、総巻数6.5巻、有効
巻数4.5巻のコイルばねを成形した。その後、0.8
mm径のカットワイヤによりショットピーニングをして
圧縮残留応力を付与し、直ちに6角回転バレル内にコイ
ルばねを各5個入れ、砥粒、コンパウンド、水などを適
当量配合して、粗研磨と仕上げ研磨のバレル研磨時間を
それぞれ変えてコイルばねの表面粗さを変化させ、その
後セッチングした。
【0014】ここで本発明の効果を明瞭にするために、
これら全てのコイルばね表面の粗さおよび圧縮残留応力
を測定した。残留応力は表層および表層から20μmピ
ッチで150μmまで測定し、その平均値を残留応力分
布の値として示し、また平均値の±10kgf/mm2
の範囲で分布している深さを表1に示した。また、比較
材は上記と同様の硬度を得てからコイルばね成形後、シ
ョットピーニングを行い、その後バレル研磨処理したも
のは表面粗さを変化させ、バレル研磨処理しなかったも
のはそのままセッチングを行った。
【0015】このようにして製造したコイルばねについ
て、ばね形状から計算される剪断応力(τm=65±5
0kgf/mm2 )になる圧縮荷重を繰返し負荷して疲
労寿命を5×107 回を限度に求めた。これらの結果を
表2に示す。その結果、本発明のショットピーニング直
後にバレル研磨仕上げを施したコイルばねは高寿命を示
すものであったが、特に母材硬度を考慮した最適な表面
粗さとし、且つ内部深く圧縮残留応力が分布したコイル
ばねは、保証疲労寿命を確保している。一方、比較例と
したものは、大半が表面疵による破損発生であった。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明によれば、自動
車用エンジンの弁ばねあるいは懸架ばねの疲労強度を大
幅に向上させることができるので、産業上極めて有用で
ある。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 90±10kgf/mm2 の圧縮残留応
    力が表層から150μm深さの内部まで分布し、最大粗
    さRmaxで1.0μm以下の表面粗さを有する母材硬
    さHvが700以上である疲労強度に優れたコイルば
    ね。
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