JPH0673045A - イオン選択性配位分子およびイオンセンサ - Google Patents

イオン選択性配位分子およびイオンセンサ

Info

Publication number
JPH0673045A
JPH0673045A JP4232396A JP23239692A JPH0673045A JP H0673045 A JPH0673045 A JP H0673045A JP 4232396 A JP4232396 A JP 4232396A JP 23239692 A JP23239692 A JP 23239692A JP H0673045 A JPH0673045 A JP H0673045A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ion
compound
mmol
chemical
selective coordination
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP4232396A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3307687B2 (ja
Inventor
Koji Suzuki
鈴木  孝治
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP23239692A priority Critical patent/JP3307687B2/ja
Publication of JPH0673045A publication Critical patent/JPH0673045A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3307687B2 publication Critical patent/JP3307687B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heterocyclic Compounds That Contain Two Or More Ring Oxygen Atoms (AREA)
  • Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Nitrogen And Oxygen As The Only Ring Hetero Atoms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 極めて高い選択性を有するイオン選択性配位
分子。 【構成】 下記一般式(i)で示されるイオン選択性配
位分子。 【化1】 但し、式(i)中、R1〜R6はそれぞれ独立して、Hま
たは炭化水素基であって、R1〜R6の内の少なくとも1
つは炭化水素基である。 【効果】 本発明の分子を使用して作製される高選択性
のイオンセンサ(イオン電極)は極めて有用であり、工
業プロセス、食品、医療基礎研究等の分野において広く
使用できる

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 この発明は、イオンセンサ(イ
オン電極)用感応物質、特に、リチウムイオン、マグネ
シウムイオンおよびカルシウムイオンに対する選択性の
高いイオンセンサ用感応物質に好適なイオン選択性配位
分子およびそのイオン選択性配位分子を使用したイオン
センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】イオンセンサ用感応物質として、バリノ
マイシンなどの環状ペプチド類、ベンゾ〔15〕クラウ
ン−5などの環状ポリエーテル類、ノナクチン、モナク
チン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチンなど
のナクチン類等の化合物を用いる技術が知られている
(特開昭59−163557号公報参照)。この技術
は、このような化合物を感応物質とすることにより、従
来検出不可能とされていたアンモニウムイオン、ナトリ
ウムイオン、カリウムイオンなどの陽イオンを高精度で
検出可能としたものである。このような化合物は総称し
てイオン選択性配位分子(あるいは中性イオノホア、イ
オン感応物質など)と呼ばれる。イオン選択性配位分子
のうち、リチウムイオンについては、例えば、木村恵一
らによって、Analytical Chemistry誌 1987年,5
9巻,2331〜2334頁(文献)に14クラウン
4誘導体を使用したリチウムイオンセンサが発表され
た。また、マグネシウムイオンおよびカルシウムイオン
については、例えば、ウイルヘルム・シモン(Wilhelm
Simon)により、それぞれAnalytical Chemistry誌,1
989年,61巻,574〜576頁(文献)および
同誌1986年,58巻,2282〜2285頁(文献
)に報告された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、イオン
センサの性能はどのような用途にせよできるだけ選択性
のよいものが望まれており、さらなる高い選択性を有す
るイオン選択性配位分子が切望されている。本発明は上
記課題を鑑みてなされたもので、極めて高い選択性を有
するイオン選択性配位分子およびそのイオン選択性配位
分子を感応物質として使用したイオンセンサを提供する
ものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、下記一般式(i)で示されるイオン選択性配位分子
である。
【化5】 但し、式(i)中、R1〜R6はそれぞれ独立して、Hま
たは炭化水素基であって、R1〜R6の内の少なくとも1
つは炭化水素基である。
【0005】請求項2に記載の発明は、下記一般式(i
i)で示されるイオン選択性配位分子である。
【化6】 但し、式(ii)中、R7〜R9はそれぞれ独立して、Hま
たは炭化水素基であって、R7〜R9の内の少なくとも1
つは炭化水素基である。
【0006】請求項3に記載の発明は、下記一般式(ii
i)で示されるイオン選択性配位分子である。
【化7】 但し、式(iii)中、R10〜R13はそれぞれ独立して、
Hまたは炭化水素基であって、R10〜R13の内の少なく
とも1つは炭化水素基である。
【0007】請求項4に記載の発明は、下記一般式(i
v)で示されるイオン選択性配位分子である。
【化8】 但し、式(iv)中、R14〜R17はそれぞれ独立して、H
または炭化水素基であって、R14〜R17の内の少なくと
も1つは炭化水素基である。
【0008】本発明のイオンセンサは、請求項1〜4の
いずれかに記載のイオン選択性配位分子を感応物質とし
て使用することを特徴とするものである。
【0009】
【実施例】
〔実施例1〕リチウムイオンに対して極めて選択性の高
い感応物質として、新規物質である下記化学式(i)と
化学式(ii)で示される化合物を合成した。
【0010】
【化9】 但し、式(i)中、R1〜R6はそれぞれ独立して、Hま
たは炭化水素基であって、R1〜R6の内の少なくとも1
つは炭化水素基である。
【0011】
【化10】 但し、式(ii)中、R7〜R9はそれぞれ独立して、Hま
たは炭化水素基であって、R7〜R9の内の少なくとも1
つは炭化水素基である。
【0012】この新規なリチウムイオン選択性配位分子
(i)(ii)は、下記モデル分子式(a)に示されるよ
うなモデル分子の概念によるものである。
【0013】
【化11】
【0014】モデル分子式(a)は、リチウムイオンの
大きさに適合する空孔径を持つことが知られている14
クラウン4を基本骨格としたもので、モデル分子式
(a)のXとYの位置に、かさ高い側鎖あるいはサブユ
ニットを導入したものである。この構造を採ることによ
り、リチウムイオン径よりも大きなイオンは、XとYの
位置にある側鎖(サブユニット)に妨害され、安定した
イオン配位化合物が形成されなくなる。XまたはYの位
置には、例えば、2,2,3,3−テトラメチルやピナン
やデカリノ基のようなかさ高いサブユニットが適してい
る。但し、XとYの位置に、かさ高い基を2つ導入する
ことは必ずしもリチウム選択性を向上させるものではな
い。なぜならば、リチウムイオン自身も2つのかさ高い
基に妨害されてイオン配位しにくくなるからである。従
って、XまたはYの一方がかさ高く、他方はあまりかさ
高くない方がよい。従って、式(i)で示される化合物
においては、R1〜R6はそれぞれ独立して、Hまたは炭
化水素基であって、R1〜R6の内の少なくとも1つが炭
化水素基であるものが好ましい。また、式(ii)で示さ
れる化合物においては、R7〜R9はそれぞれ独立して、
Hまたは炭化水素基であって、R7〜R9の内の少なくと
も1つは炭化水素基であるものが好ましい。特に、これ
らの化合物をイオンセンサに使用する場合に、耐久性を
付与するため、基本環の側鎖、即ち、R1〜R9の炭化水
素基には、1つ以上の、アルキル基(特に、長鎖アルキ
ル基)や、ベンジル基(特に、ベンジルオキシメチル
基)、フェニル基、シクロヘキシル基などを導入してお
くことが望ましい。
【0015】化学式(i)に示す化合物において、R
1,R2にベンジルオキシメチル基を、R3,R4,R5,
R6にメチル基を導入した分子を下記化学式(b)に示
す。尚、この分子はIUPAC命名法によれば、trans
−2,3−Dibenzyloxymethyl−9,9,10,10−tetra
methyl−1,4,8,11−tetraoxacyclotetradecane で
ある。
【化12】
【0016】また、化学式(ii)に示す化合物におい
て、R7にHを、R8に長鎖アルキル基を、R9にメチル
基を導入した例を下記化学式(c)に示す。尚、この分
子は、IUPAC命名法によれば、Tricyclo〔12,4,
2,4,01,6〕−1,3,3−trimethyl−12−tetradec
yl−7,11,14,18−tetraoxacyclononadecane で
ある。
【化13】
【0017】これらのイオン選択性配位分子を感応物質
として用いたイオンセンサを作製したところ、リチウム
イオン以外の全てのアルカリ金属イオンおよびアルカリ
土類金属イオンに対して1000倍以上の選択性を有す
るリチウムイオンセンサ(リチウムイオン選択性電極)
を作製できた。
【0018】化合物(b)の合成例を以下に示す。ま
ず、ピナコール(下記化合物(1))(5.00g、4
2.3mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF)溶液
に、室温攪拌下で、水素化ナトリウム(2.54g、1
06mmol、2.5eq)を徐々に加えた後、アリルブロ
ミド(12.8g、106mmol、2.5eq)の無水TH
F溶液の25mlを50分かけて滴下し、さらに80℃
で15時間攪拌した。メタノールを加えて反応を終了さ
せた後、濃縮し、これを酢酸エチル−水系で分液抽出
し、酢酸エチル層を水で3回洗浄した。さらに、最初の
水層を酢酸エチルで1回逆抽出した後、すべての酢酸層
を芒硝乾燥後、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラム
クロマイトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチ
ル:4/1)で分離精製し、下記化合物(2)(3.9
2g、収率46.7%)を得た。
【化14】
【0019】上記得られた化合物(2)(3.92g、
19.8mmol)の無水THF溶液(60ml)に、細か
く砕いた水素化ホウ素ナトリウム(0.673g、17.
8mmol、0.9eq)を加えた後、室温攪拌下で、三フ
ッ化ホウ素・エーテラート(3.36g、23.7mmol.
1.2eq)無水THF溶液(20ml)を1時間かけ
て滴下し、さらに13時間攪拌した。さらに、水を加え
て過剰な水素化ホウ素ナトリウムをつぶした後、3N水
酸化ナトリウム(0.569g、14.2mmol、0.72
eq)水溶液を加え、30%過酸化水素水(9.6m
l)をゆっくり加えた。3時間攪拌後、反応を終了させ
て濃縮した。これを酢酸エチル−水系で分液抽出し、酢
酸エチル層を水で3回洗浄した。最初と二番目の水層を
まとめて酢酸エチルで1回逆抽出し、すべての酢酸エチ
ル層を酢酸エチルで1回逆抽出した後、すべての酢酸層
を芒硝乾燥後、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラム
クロマイトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチ
ル:1/5)で分離精製し、ジオール(下記化合物
(3))(2.06g、収率44.5%)を得た。
【化15】
【0020】上記得られた化合物(3)(2.03g、
8.79mmol)に、無水ピリジンを加えた後、氷冷下
で、30分間攪拌した。さらに、塩化p−トルエンスル
ホニル(4.19g、22.0mmol、2.5eq)を加
え、5時間氷冷下で攪拌した。反応終了後、トルエンを
加えてピリジンをとばして濃縮し、これをクロロホルム
−水系で分液し、クロロホルム層を水で3回洗浄した。
クロロホルム層を芒硝乾燥後、濃縮した。濃縮残渣をシ
リカゲルカラムクロマイトグラフィー(溶離液;ヘキサ
ン/酢酸エチル:3/1)で分離精製し、ジトシレート
(下記化合物(4))(1.22g、収率25.6%)を
得た。
【化16】
【0021】スレイトール((+)−1,4−di−o−be
nzyl−D−threitol、下記化合物(5))(167.1m
g、0.55mmol)の無水THF溶液(30ml)に、
室温攪拌下で、水素化ナトリウム(31.8mg、1.3
3mmol、2.4eq)をゆっくり加えた後、1時間攪拌
した。これに、上記得られたジトシレート(化合物
(4))(300mg、0.55mmol、1eq)の無水
THF溶液(30ml)を加えた後、70℃で96時
間、90℃で87時間攪拌した。メタノールを加えて反
応を終了させた後、濃縮し、クロロホルム−水系で分液
抽出し、クロロホルム層を水で4回洗浄した。クロロホ
ルム層を芒硝乾燥後、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲル
カラムクロマイトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸
エチル:4/1)で分離し、さらに高速液体クロマトグ
ラフィー(HPLC)(溶離液;メタノール)で分離精
製し、下記化合物(6)(37.4mg、収率13.5
%)を得た。
【化17】
【0022】この化合物(6)は、無色の粘度液状物で
あった。これを元素分析したところ化合物(b)の計算
値が、C:72.0%、H:8.9%、0:19.1%で
あるのに対し、化合物(6)の実測値は、C:71.8
%、H:9.0%、0:19.2%であった。この元素分
析の結果からも、得られた反応生成物(6)は、目的と
する化合物(b)であることが確認された。
【0023】化合物(c)の合成例を以下に記す。ま
ず、1,2−ヘキサデカンジオール(2g、7.7mmol、
下記化合物(10))をジメチルホルムアミド15ml
に溶解し、臭化アリルを2.4倍等量(2.3g、18.
6mmol)加え、氷冷下で水素化ナトリウムを3倍等量
(0.56g、23.2mmol)をゆっくり添加する。徐々
に温度を80℃に上げ、3日間攪拌する。これにより収
率約40%で下記化合物(11)が得られた。
【0024】
【化18】
【0025】上記得られた化合物(11)(3.4g
10mmol)の無水THF溶液(30ml)に、細かく砕
いた水素化ホウ素ナトリウム(0.34g、9mmol、0.
9eq)を加えた後、室温攪拌下で、三フッ化ホウ素・
エーテラート(1.7g、12mmol、1.2eq)の無水
THF溶液(10ml)を1時間かけて滴下し、さらに
13時間攪拌した。水を加えて過剰な水素化ホウ素ナト
リウムをつぶした後、3N水酸化ナトリウム(0.29
g、7mmol、0.72eq)水溶液を加え、30%過酸
化水素水(5ml)をゆっくり加えた。3時間攪拌後、
反応を終了させ濃縮した。これを酢酸エチル−水系で分
液抽出し、酢酸エチル層を水で3回洗浄した。最初と二
番目の水層をまとめて酢酸エチルで1回逆抽出し、すべ
ての酢酸エチル層を芒硝乾燥後、濃縮した。濃縮残渣を
シリカゲルカラムクロマイトグラフィー(溶離液;ヘキ
サン/酢酸エチル:1/5)で分離精製し、ジオール体
(下記化合物(12))(2.0g、収率55%)を得
た。
【0026】
【化19】
【0027】上記得られた化合物(12)(2.0g、
5.4mmol)に無水ピリジンを加えた後、氷冷下で、3
0分間攪拌した。さらに、塩化p−トルエンスルホニル
(2.6g、13.5mmol、2.5eq)を加え、5時間
氷冷下で攪拌した。反応終了後、トルエンを加えてピリ
ジンをとばして濃縮し、これをクロロホルム−水系で分
液し、クロロホルム層を水で3回洗浄した。クロロホル
ム層を芒硝乾燥後、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカ
ラムクロマイトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エ
チル:1/5)で分離精製し、ジトシレート(下記化合
物(13))(1.84g、収率50%)を得た。
【0028】
【化20】
【0029】ピナンジオール(Pinanediol:下記化合物
(14))(0.46g、2.7mmol)の無水ジメチルホ
ルムアミド(DMF)溶液(20ml)に、室温攪拌下
で水素化ナトリウム(0.23mg、11mmol、4e
q)を加え、1時間攪拌した。この溶液に、上記得られ
たジトシレート(化合物(13))(1.84g、2.7
mmol、1eq)の無水DMF溶液(20ml)を加え、
90℃で160時間攪拌した後、メタノールを加えて反
応を終了させた。濃縮後、クロロホルム−水系で分液抽
出し、クロロホルム層を芒硝乾燥後、濃縮した。濃縮残
渣をシリカゲルカラムクロマイトグラフィー(溶離液;
ヘキサン/酢酸エチル:15/1)で分離し、さらに高
速液体クロマトグラフィー(溶離液:メタノール)で分
離精製し、下記化合物(15)(69mg、収率5%)
を得た。こうして化合物(c)が合成された。
【0030】
【化21】
【0031】〔実施例2〕マグネシウムイオンまたはカ
ルシウムイオンに対して極めて選択性の高い感応物質と
して、新規物質である下記化学式(iii)および化学式
(iv)で示される化合物を合成した。
【0032】
【化22】 但し、式(iii)中、R10〜R13はそれぞれ独立して、
Hまたは炭化水素基であって、R10〜R13の内の少なく
とも1つは炭化水素基である。
【0033】
【化23】 但し、式(iv)中、R14〜R17はそれぞれ独立して、H
または炭化水素基であって、R14〜R17の内の少なくと
も1つは炭化水素基である。
【0034】この新規なマグネシウムイオン選択性配位
分子およびカルシウムイオン選択性配位分子は、下記モ
デル分子式(d)に示されるようなモデル分子の概念に
よるものである。
【0035】
【化24】
【0036】モデル分子(d)は、基本骨格に環状のア
ザクラウンを使用したものであり、陽イオンが酸素原子
や窒素原子などの電子密度の高い環の空孔へ配位しやす
くなっている。しかしこれだけでは、マグネシウムやカ
ルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンへの配位
力は弱いので、Zの位置にアミド結合をもつ側鎖を導入
して、これらのイオンに対する配位力を強めてある。Z
部の側鎖を検討したところ、マグネシウムイオンに対し
ては、マロンアミド形(下記化学式(e))が特に適し
ていることがわかった。
【0037】
【化25】
【0038】また、カルシウムイオンに対しては、ジグ
リコリックアミド形(下記化学式(f))が特に適して
いることがわかった。
【0039】
【化26】
【0040】これらマロンアミドとジグリコリックアミ
ドは、ウィルヘルム・シモンらが以前に発表した上記文
献中のマグネシウムイオンおよびカルシウムイオン
選択性配位分子中にも存在するユニットであるが、該イ
オン選択性配位分子では不十分であったイオン選択性能
が、アザクラウン環を必須構成骨格とする本発明のイオ
ン選択性配位分子では、イオン選択性能を格段に高める
ことが可能となる。基本環であるアザクラウンは、マグ
ネシウムイオンについては、18員環が、カルシウムイ
オンに対しては、21員環が適している。また、化学式
(iii)と(iv)において、側鎖中の末端であるR10〜
R13及びR14〜R17についてはHまたは炭化水素基であ
って、少なくともR10〜R13の内の1つは、及びR14〜
R17の内の1つはアルキル基(特に、ノルマルアルキル
基)または、アダマンチル基(下記化学式(g))や、
シクロヘキシル基のようなかさ高いものが選択性が高く
なって好ましい。
【化27】
【0041】化合物(iii)において、R10とR12にア
ダマンチル基を導入し、かつR11とR13にHを導入した
マグネシウムイオン選択性配位分子を下記化合物(h)
に示す。尚、化合物(h)はIUPAC命名法によれ
ば、4,13−di−N−adamantanecarbamoylacetyl−1,
7,10,16−tetraoxa−4,13−diazacyclooctadec
ane である。
【0042】
【化28】
【0043】また、R10とR12にアルキル基を導入し、
R11とR13にHを導入したマグネシウムイオン選択性配
位分子を下記化合物(k)に示す。尚、化合物(k)は
IUPAC命名法によれば、4,13−di−N−dodecyl
carbamoylacetyl−1,7,10,16−tetraoxa−4,1
3−diazacyclooctadecane である。
【0044】
【化29】
【0045】化合物(iv)において、R14とR16にアダ
マンチル基を導入し、R15とR17にHを導入したカルシ
ウムイオン選択性配位分子を下記化合物(l)に示す。
尚、化合物(l)はIUPAC命名法によれば、4,1
3−di−N−1−adamantanecarbamoyl−3−oxabutyry
l−1,7,10,13,19−pentaoxa−4,16−diazac
yclohenicosane である。
【0046】
【化30】
【0047】また、R14とR16にアルキル基を導入し、
R15とR17にHを導入したカルシウムイオン選択性配位
分子を下記化合物(m)に示す。尚、化合物(m)はI
UPAC命名法によれば、4,16−di−N−dodecyl
carbamoyl−3−oxabutyryl−1,7−10,13,19−
pentaoxa−4,16−diazacyclohenicosane である。
【0048】
【化31】
【0049】上記イオン選択性配位分子を使用したイオ
ンセンサ(イオン選択性電極)を作製したところ、今迄
に報告されたマグネシウムイオンおよびカルシウムイオ
ン選択性電極よりも格段に高い選択性を有するものが作
製できた。
【0050】上記イオン選択性配位分子(h)の合成例
を以下に示す。化合物(h)の側鎖部分を合成する。マ
ロン酸モノメチルエステルカリウム塩(下記化合物(1
6))(3g、19.2mmol)からマロン酸モノメチル
エステルクロライド(下記化合物(17))を合成(合
成方法は省略)し、次いでこの得られたマロン酸モノメ
チルエステルクロライドを1−アダマンタンアミン(下
記化合物(18):Adaはアダマンチル基)(500m
g、3.3mmol)を入れた無水塩化メチレン溶液20m
l中に加え、氷冷下、24時間攪拌した。反応終了後、
反応系をクロロホルムとpH2の塩酸で分液抽出し、ク
ロロホルム層を水で1回洗浄し、芒硝乾燥後、濃縮した
後、メタノールと水で再結晶し、黄白色の結晶である M
alonic acid methylester N-1-adamantylamido(下記化
合物(19))(640mg、収率77.0%)を得
た。尚、この化合物(19)のNMRを測定した。1 H−NMR:δ=1.62〜1.75(m,6H,H-6),1.95〜2.13
(m,9H,H-4,H-5),3.23(s,2H,H-2),3.74(s,3H,H-1),6.6
5〜6.80(br,1H,H-3)
【0051】
【化32】
【0052】上記得られた化合物(19)(640m
g、2.55mmol)をメタノール10ml/水5mlの
混合溶液中に加え、水酸化リチウム(210mg、5.
1mmol)を加えて室温で15時間攪拌した。反応終了
後、反応系を濃縮し、水に溶かしてpH2程度になった
らクロロホルムで逆抽出を3回行った。クロロホルム層
を水で洗浄し、芒硝乾燥後、濃縮して、黄白色の結晶で
側鎖となる Malonic acid N-1-adamantylamido(下記化
合物(20))(383mg、収率63.6%)を得
た。この化合物(20)のNMRを測定した。1 H−NMR:δ=1.63〜1.80(m,6H,H-6),1.96〜2.17
(m,9H,H-4,H-5),3.22(s,2H,H-2),5.60〜5.70(b
r,1H,H−3)
【0053】
【化33】
【0054】次に、アザクラウン環に上記得られた側鎖
を導入する。上記得られた化合物(20)(270m
g、1.14mmol)を無水塩化メチレン溶液9ml中に
加え、攪拌しながらトリエチルアミン(0.32ml、
2.29mmol)を加えた。15分後、BOP(291m
g、1.14mmol)を加え、さらに15分後、クリプト
フィックス(下記化合物(21))(150mg、0.
57mmol)を加え、氷冷下、2日間攪拌を続けた。反応
終了後、反応系を濃縮し、クロロホルムとpH1の塩酸
で2回分液抽出を行い、クロロホルム層を水で洗浄して
芒硝乾燥後、濃縮した。続いて高速液体クロマトグラフ
ィ(HPLC)(溶離液:メタノール)を用いて分取を
15分間行い、黄白色針状結晶の下記化合物(22)
(320mg、収率80.0%)を得た。この生成物
(22)のNMRを測定した。1 H−NMR:δ=1.60〜1.80(m,12H,H-8),1.93〜2.13
(m,18H,H-6,H-7),3.20〜3.30(m,4H,H-4),3.54〜3.80
(m,24H,H1〜3),7.25〜7.30(br,2H,H-4) 赤外線分光を測定した。 IR(cm-1):νas(C-O)=1111.0,δs(CH)=1454.5,δ
s(NH)=1548.1,νs(C=0)=1634.8,νs(CH2)=2851.0,ν
as(CH2)=2907.5,νs(NH)=3313.4 さらに、元素分析を行なったところ、化合物(h)の計
算値が、C:65.1%、H:8.63%、O:18.3
%であるのに対し、生成物(22)の実測値は、C:6
5.3%、H:8.7%、O:18.1%であった。生成
物(22)が化合物(h)であることが確認された。
【0055】
【化34】
【0056】新規化合物(k)の合成例を以下に示す。
側鎖部分を合成する。マロン酸モノメチルエステルカリ
ウム塩(3.0g、19.2mmol)を無水塩化メチレン溶
液(20ml、6倍量)中に懸濁させ、0℃で塩化チオニル
を滴下し2時間攪拌することによって、マロン酸モノメ
チルエステルクロライド(下記化合物(23))を合成
した。続いて、反応残渣の塩化カリウムを吸引ろ過、濃
縮し、ラウリルアミン(下記化合物(24))(3.56
g、19.2mmol)の無水塩化メチレン溶液(20ml)中に加
え、0℃、3時間攪拌した。反応終了後、反応系を、ク
ロロホルムとpH2の塩酸で分液抽出し、水で1回洗浄
してクロロホルム層を芒硝乾燥後、濃縮し、メタノール
−水で再結晶することによって、淡黄色結晶の Malonic
acid methylester N-dodecylamide(下記化合物(2
5))(540mg、収率10%)を得た。化合物(25)の
NMRを測定した。1 H−NMR(ppm):δ=0.83(t,3H,H-15),1.22(m,18H,H-
6〜H-14),1.49(t,2H,H-5),3.21(q,2H,H-4),3.38(s,2H,H
-2),3.69(s,3H,H-1),7.35〜7.35〜7.48(br,1H,H-3)
【0057】
【化35】
【0058】上記得られた化合物(25)(540mg、1.8
9mmol)をメタノール15ml/水5ml混合液に加え、水酸化
リチウム(0.16g、3.78mmol)を加えて0℃で、15時
間攪拌した。反応系を濃縮し、水に溶かしてpH2程度
になったらクロロホルムで3回逆抽出して水で数回洗浄
し、クロロホルム層を芒硝乾燥後、濃縮して側鎖となる
Malonic acid N-dodecylamide(下記化合物(26))
(486mg、収率95%)を得た。化合物(26)のNMRを
測定した。1 H−NMR:δ=0.87(t,2H,H-14),1.27(m,18H,H-5〜1
3),1.53(t,2H,H-4),3.22(m,4H,H-1,H-3),6.88〜7.00(b
r,1H,H-2)
【0059】
【化36】
【0060】次に、アザクラウン環に上記得られた側鎖
を導入する。上記得られた化合物(26)(206.9mg、
0.76mmol)を無水塩化メチレン溶液7ml中に加え、攪拌
しながらトリエチルアミン(0.32ml、2.2mmol)を加え
た。15分後、BOP(194mg、0.76mmol)を加え、さ
らに15分後、クリプトフィックス(化合物(21))
(100mg、0.38mmol)を加え、氷冷下、2日間攪拌を続け
た。反応終了後、反応系を濃縮し、クロロホルムとpH
1の塩酸で2回分液抽出を行い、クロロホルム層を水で
洗浄して芒硝乾燥後濃縮した。続いてHPLC(溶離
液;メタノール)を用いて分取を28分間行い、白色結
晶の下記化合物(27)(128mg、収率43.7%)を得た。な
お、今後イオノフォアとして用いる化合物はすべて、p
H1の塩酸で脱塩し、水で洗浄した。この生成物(2
7)のNMRを測定した。1 H−NMR:δ=0.88(t,6H,H-25,J=6.95Hz),1.15〜1.
40(m,36H,H-16〜24),1.40〜1.57(m,4H,H-15),3.24(q,4
H,H-14,J=7.27Hz),3.34(d,4H,H-13),3.50〜3.75(m,24H,
H1〜12),7.63〜7.77(br,2H,H-A) 赤外線分光を測定した。 IR(cm-1):νas(C-O)=1116.5,δs(NH)=1567.5,ν
s(C=0)=1639.5,νs(CH2)=2849,νs(CH2)=2917.2,νs(N
H)=3273.9 元素分析を行なったところ、化合物(k)の計算値が、
C:65.59%、H:10.48%、N:7.28%であるのに対し、
生成物(27)の実測値は、C:65.54%、H:10.22%、
N:7.19%であった。生成物(27)が化合物(k)で
あることが確認された。
【0061】
【化37】
【0062】化合物(l)の合成例を以下に記す。側鎖
となる部分を以下の方法により調製した。無水ジグリコ
ール酸(下記化合物(28))(1.16mg、10mmol)と1
−アダマンタンアミン(化合物(18))(1.51g、10m
mol)を無水ピリジン30ml中に加え、95℃で3日間加
熱還流した。反応終了後、反応系を濃縮してピリジンを
充分に除去し、ジエチルエーテルとpH2の塩酸で3回
分液抽出した。ジエチルエーテル層を洗浄後、芒硝乾燥
して濃縮し、メタノールと水で再結晶を試み、白色粉末
結晶の Diglycolic acid N-1-adamntylamide(下記化合
物(29))を得た。この化合物(29)のNMRを測定
した。1 H−NMR:δ=1.63〜1.77(m,6H,H-6),1.95〜2.15
(m,9H,H-4,H-5),4.04(s,2H,H-2),4.28(s,2H,H-1),6.48
〜6.52(br,1H,H−3)
【0063】
【化38】
【0064】次に、アザクラウン環に上記得られた側鎖
を導入する。上記得られた化合物(29)(174.5
mg、0.65mmol)を6mlの無水塩化メチレン溶液中に加
え、さらに攪拌しながらトリエチルアミン(0.18ml、1.
31mmol)を加えた。15分後、BOP(166mg、0.65mmo
l)を加え、さらに15分後、クリプトフィックス(下
記化合物(30))(0.093ml、0.33mmol)を加え、氷冷
下、2日間攪拌を続けた。反応終了後、反応系を濃縮
し、クロロホルムとpH1の塩酸で3回分液抽出を行
い、クロロホルム層を水で洗浄して、芒硝乾燥後濃縮し
た。続いてHPLCを用いて分取を15分45秒間行な
い、粘性油状の下記化合物(31)(88.5mg、収率33.7
%)を得た。生成物(31)のNMRを測定した。1 H−NMR:δ=1.62〜1.85(m,12H,H-13),1.97〜2.13
(m,18H,H-11,H-12),3.45〜3.72(m,28H,H-1〜7),3.93
(s,4H,H-9),4.31(m,4H,H-8),6.95〜7.05(br,2H,H-10) 赤外線分光を測定した。 IR(cm-1) νas(C-O)=1105.5,δs(NH)=1531.7,νs(C=0)=1660.7,ν
s(CH2)=2854.2,νas(CH2)=2912.7 元素分析を行なったところ、化合物(l)の計算値が、
C:62.67%、H:8.51%、N:6.96%であ
るのに対し、生成物(32)の実測値は、C:62.7
%、H:8.6%、N:6.9%であった。生成物(3
2)が化合物(l)であることが確認された。
【0065】
【化39】
【0066】イオン選択性配位分子(m)の合成例を以
下に記す。側鎖となる部分を以下の方法のように調製し
た。無水ジグリコール酸(化合物28)(1.16mg、10mm
ol)とラウリアミン(化合物24)(1.48g、8mmol)を
無水ピリジン30ml中に加え、95℃で3日間加熱還流し
た。反応終了後、反応系を濃縮してピリジンを充分に除
去し、ジエチルエーテルとpH1.2の塩酸で3回分液
抽出した。ジエチルエーテル層を水で洗浄した後、芒硝
乾燥して濃縮し、エタノールと水で再結晶を試み、白色
結晶の Diglycolicacid N-dodecylamide(下記化合物
(32))を得た。化合物(32)のNMRを測定した。1 H−NMR(溶媒;CD3OD):δ=0.89〜(t,3H,H-14,J=
6.46),1.20〜1.60(m,20H,H-4〜H-13),3.26(t,2H,H-3,J=
8.15),4.05(s,2H,H-2),4.17(s,2H,H-3)
【0067】
【化40】
【0068】アザクラウン環に上記得られた側鎖を導入
する。上記得られた化合物(32)(197mg、0.65mmo
l)を4.5mlの無水塩化メチレン溶液中に加え、攪拌し
ながらトリエチルアミン(0.18ml、1.31mmol)を加え
た。15分後、BOP(166mg、0.65mmol)を加え、さ
らに15分後、クリプトフィックス(化合物30)(0.093
ml、0.33mmol)を加え、氷冷下、2日間攪拌を続けた。
反応終了後、反応系を濃縮し、クロロホルムとpH1の
塩酸で3回分液抽出を行い、クロロホルム層を水で洗浄
して芒硝乾燥後、濃縮した。続いてHPLCを用いて分
取を行い、粘性油状の下記化合物(33)(30mg、収率10.
5%)を得た。生成物(33)のNMRを測定した。1 H−NMR:δ=0.88(t,6H,H-1),1.15〜1.40(m,36H,H
-2〜10),1.43〜1.62(m,4H,H-11),3.28(q,4H,H-12),3.41
〜3.75(m,28H,H-16〜29),4.06(s,4H,H-13),4.34(m,4H,H
-14),7.50〜7.65(br,2H,H-A15) 赤外線分光を測定した。 IR(cm-1) νas(C-O)=1123.1,νs(C=O)=1653.0,νs(CH2)=2851.5,
νs(CH2)=2921.4 元素分析を行なったところ、化合物(m)の計算値が、
C:63.27%、H:10.16%、N:6.42%であるのに対し、
生成物(33)の実測値は、C:63.21%、H:9.97%、
N:6.42%であった。生成物(33)が化合物(m)で
あることが確認された。
【0069】
【化41】
【0070】〔使用例〕図1は、本発明の新規化合物を
感応物質として使用するイオンセンサの要部の一例であ
る。このイオンセンサは、塩化銀をメッキした電極線1
をポリ塩化ビニル等のプラスチックなどの管またはチュ
ーブ2で被覆し、電極線1の先端に感応膜3を形成した
ものである。感応膜3は、感応物質であるイオン選択性
配位分子(化合物(i)〜(iv)のいずれか1つ)と、
2−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)また
はセバシン酸(ジ−2−エチルヘキシル)(DEHS)
と、グラファイト粉末とを混合したものである。それぞ
れの含有量は、イオン選択性配位分子が1〜5重量%、
NPOEまたはDEHSが40重量%、グラファイト粉
末が55〜59重量%とされる。また、この感応膜3に
はテトラクロロフェニルボレイトをイオン選択性配位分
子に対して40モル%添加し、陰イオンの感応膜3への
応答(浸透)を防止するようにすることが望ましい。
【0071】図2は、本発明の新規化合物を感応物とす
るイオンセンサの他の例を示すものである。この例のイ
オンセンサは、ガラスあるいはプラスチック製の管4の
先端をポリ塩化ビニルでゲル化した感応膜5で封じ、こ
こにナトリウムイオンや選択性ニュートラルキャリアを
有する内部液6を溜め、内部液6に電極線7を浸漬して
作成したものである。感応膜5は、感応物質であるイオ
ン選択性配位分子(化合物(i)〜(iv)のいずれか1
つ)と、2−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPO
E)またはセバシン酸(ジー2−エチルヘキシル)(D
EHS)などの膜溶媒とをポリ塩化ビニルなどの合成樹
脂マトリックス中に分散させたものである。イオン感応
物質の含有量は0.5〜10重量%とされる。感応膜5
には、テトラクロロフェニルボレイトをイオン感応物質
に対して10〜30モル%添加し、陰イオンの感応膜5
への応答(浸透)を防止するようにすることが望まし
い。尚、本発明はイオンセンサに使用する感応物質に特
徴があるもので、イオンセンサの形状や構造には限定さ
れるものではなく、図示したもの以外にも公知の各種イ
オンセンサを適用することができる。
【0072】〔試験例〕本発明のイオンセンサのイオン
選択性能を試験した。イオンセンサのイオンに対する選
択性は、ポテンシオメトリーにより求められる。即ち、
イオンセンサと飽和塩化カリウム/銀−塩化銀電極の参
照電極とを組み合わせ、これらを測定対象イオン溶液に
浸漬し、電極間に生じる起電力をミリボルトメータで測
定する。測定対象イオン溶液としては、0.1〜0.00
01モル/lの、LiCl、NaCl、KCl、RbC
l、CsCl、NH4Cl、MgCl2、CaCl2、S
rCl2、BaCl2溶液等の塩化物溶液を使用する。測
定された起電力の値を下記ニコルスキーの式に導入して
選択性の指標となる選択係数を求める。
【数1】 式中、Rは気体定数、Tは絶対温度、Fはファラデー定
数、Zi,Zjはiイオンおよびjイオンの荷電数、
i,ajはiイオンおよびjイオンの活量,E°は活量
によらない電極電位、Kpot ijは選択係数である。選択
係数の値は、その測定が2種のイオン(目的イオンと妨
害イオン)を含む混合溶液で行われたか(混合溶液
法)、あるいは別々の溶液で行われたか(単独溶液法)
に依存し、またイオン濃度(活量)にも影響される。な
お、選択係数のより具体的な測定方法は、特開昭59−
163554号公報等に記載されている。
【0073】本実施例のイオン選択性配位分子(b)と
イオン選択性配位分子(c)を使い、図1に示したイオ
ンセンサにおいて、上記方法でリチウムイオンの各イオ
ンに対する選択係数を測定した。イオンセンサに使用し
た感応膜は、イオン選択性配位分子(b)または(c)
を3重量%と、カリウムテトラキスパラクロロフェニル
ポレイトを0.5重量%と、セバシン酸ジ(2−エチル
ヘキシル)を66.5重量%と、ポリ塩化ビニルを30
重量%含有したものである。結果を表1に示す。尚、表
1は、妨害イオン濃度0.1モル/lでの混合溶液法に
よる選択係数を示すものであり、logkpot ij(i=Li
+)はリチウムイオンの他イオンに対する選択係数を表
している。また、比較例として、上記文献に記載され
ているイオン選択性配位分子である6,6-Dibenzyl-14-
crown-4(ジベンゾ−14−クラウン−4:化合物(3
4))の選択係数も併記した。
【化42】
【0074】
【表1】
【0075】表1に示す結果から、リチウムイオンのナ
トリウムイオンに対する選択係数は、混合溶液法で−
3.0と−3.3であり、化合物(b)を使用したイオン
センサではナトリウムイオンに比べてリチウムイオンを
1000倍の感度で検出することができ、化合物(c)
を使用したイオンセンサではナトリウムイオンに比べて
リチウムイオンを約2000倍の感度で検出することが
できできることを意味する。また、本実施例の化合物
(b)(c)は共に比較例の化合物(34)よりも優れ
ていることが明らかである。従って、本発明のイオン選
択性配位分子(b)とイオン選択性配位分子(c)が感
応物質としてリチウムイオンに対して極めて高い選択性
を有していることがわかる。
【0076】次に、同様の測定方法にて、イオン選択性
配位分子(h)とイオン選択性配位分子(k)を用いた
イオンセンサを使用して、マグネシウムイオンの各イオ
ンに対する選択係数を測定した。イオンセンサの感応物
質は、イオン選択性配位分子(h)または(k)を3重
量%と、カリウムテトラキスパラクロロフェニルポレイ
トを2重量%と、2−ニトロフェニルオクチルエーテル
を68重量%と、ポリ塩化ビニルを27重量%含有した
ものである。結果を表2に示す。尚、表2は、濃度0.
1モル/lでの単独溶液法による選択係数を示すもので
あり、logkpot ij(i=Mg2+)はマグネシウムイオン
の他イオンに対する選択係数を表わしている。また、比
較例として、上記文献に記載されているイオン選択性
配位分子である N,N''-Octametylenebis(N'-heptyl-N'
-metyl-metylmalonamide)(ETH5214:化合物
(35))の選択係数も併記した。
【化43】
【0077】
【表2】
【0078】表2に示す結果から、マグネシウムイオン
のカルシウムイオンに対する選択係数は、単独溶液法で
−2.7と−1.5であり、イオン選択性配位分子(h)
を使用したイオンセンサであればカルシウムイオンに比
べてマグネシウムイオンを500倍の感度で検出するこ
とができ、イオン選択性配位分子(k)を使用したイオ
ンセンサであればカルシウムイオンに比べてマグネシウ
ムイオンを32倍の感度で検出できることを意味する。
また、比較例の化合物(35)よりも明らかに優れてい
ることがわかる。従って、本発明のイオン選択性配位分
子(h)と(k)が感応物としてマグネシウムイオンに
対して極めて高い選択性を有していることがわかる。
【0079】同様に、イオン選択性配位分子(l)とイ
オン選択性配位分子(m)を使ったイオンセンサのカル
シウムイオンの各イオンに対する選択係数を表3に示
す。イオン選択性配位分子(l)を使用したイオンセン
サの感応物質は、イオン選択性配位分子(l)を3重量
%と、カリウムテトラキスパラクロロフェニルポレイト
を1.8重量%と、2−ニトロフェニルオクチルエーテ
ルを68重量%と、ポリ塩化ビニルを27.2重量%含
有したものである。また、イオン選択性配位分子(m)
を使用したイオンセンサの感応物質は、イオン選択性配
位分子(m)を3重量%と、カリウムテトラキスパラク
ロロフェニルポレイトを1.7重量%と、2−ニトロフ
ェニルオクチルエーテルを68重量%と、ポリ塩化ビニ
ルを27.3重量%含有したものである。表3において
は、妨害イオン濃度0.1モル/lでの単独溶液法によ
る選択係数を示すものであり、logkpot ij(i=C
2+)はカルシウムイオンの他イオンに対する選択係数
を表わしている。また、比較例として、上記文献に記
載されているイオン選択性配位分子である N,N,N',N'-T
etracyclohexyl-3-oxapentanediamide(ETH129:
化合物(36))の選択係数も併記した。
【化44】
【0080】
【表3】
【0081】表3に示す結果から、カルシウムイオン
の、水素イオンを除くLi+、Na+、K+、Mg2+に対
する選択係数は、単独溶液法で全て−4以下であり、こ
れはカルシウムイオンをこれらのイオンに比べて約10
00倍の感度で検出できることを意味する。また、比較
例の化合物(36)よりも明らかに優れていることがわ
かる。従って、本発明のイオン選択性配位分子(l)と
イオン選択性配位分子(m)が感応物としてカルシウム
イオンに対して極めて高い選択性を有していることがわ
かる。
【0082】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の新規物
質である14クラウン4誘導体であるイオン選択性配位
分子(i)と(ii)はイオンセンサ用感応物質として、
特にリチウムイオンに対して高い選択性を発揮する。ま
た、アームドアザクラウン誘導体であるイオン選択性配
位分子(iii)はマグネシウムイオンに対して、イオン
選択性配位分子(iv)はカルシウムイオンに対して高い
選択性を有するイオンセンサ用感応物質である。これら
の分子を使用して作製される高選択性のイオンセンサ
(イオン電極)は極めて有用であり、工業プロセス、食
品、医療基礎研究等の分野において広く使用できるもの
である。また、本発明のイオン選択性配位分子を使用し
たイオンセンサは感度が極めて高いことから、イオンセ
ンサのさらなる小型化が可能となり、小型化されたイオ
ンセンサを注射針やカテーテルにつけて局所情報を得た
り、また多くのセンサを組み合わせて多機能化したり、
ハイブリッドにして新しい機能をもたせることが可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のイオン選択性配位分子を感応物
質として使用するイオンセンサの例を示す概略断面図で
ある。
【図2】図2は本発明のイオン選択性配位分子を感応物
質として使用するイオンセンサの例を示す概略断面図で
ある。
【符号の説明】
3 感応膜 5 感応膜

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(i)で示されるイオン選択
    性配位分子。 【化1】 但し、式(i)中、R1〜R6はそれぞれ独立して、Hま
    たは炭化水素基であって、R1〜R6の内の少なくとも1
    つは炭化水素基である。
  2. 【請求項2】 下記一般式(ii)で示されるイオン選択
    性配位分子。 【化2】 但し、式(ii)中、R7〜R9はそれぞれ独立して、Hま
    たは炭化水素基であって、R7〜R9の内の少なくとも1
    つは炭化水素基である。
  3. 【請求項3】 下記一般式(iii)で示されるイオン選
    択性配位分子。 【化3】 但し、式(iii)中、R10〜R13はそれぞれ独立して、
    Hまたは炭化水素基であって、R10〜R13の内の少なく
    とも1つは炭化水素基である。
  4. 【請求項4】 下記一般式(iv)で示されるイオン選択
    性配位分子。 【化4】 但し、式(iv)中、R14〜R17はそれぞれ独立して、H
    または炭化水素基であって、R14〜R17の内の少なくと
    も1つは炭化水素基である。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のイオン
    選択性配位分子を感応物質として使用することを特徴と
    するイオンセンサ。
JP23239692A 1992-08-31 1992-08-31 イオン選択性配位分子およびイオンセンサ Expired - Lifetime JP3307687B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23239692A JP3307687B2 (ja) 1992-08-31 1992-08-31 イオン選択性配位分子およびイオンセンサ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23239692A JP3307687B2 (ja) 1992-08-31 1992-08-31 イオン選択性配位分子およびイオンセンサ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0673045A true JPH0673045A (ja) 1994-03-15
JP3307687B2 JP3307687B2 (ja) 2002-07-24

Family

ID=16938588

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP23239692A Expired - Lifetime JP3307687B2 (ja) 1992-08-31 1992-08-31 イオン選択性配位分子およびイオンセンサ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3307687B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002050006A3 (en) * 2000-12-21 2002-11-07 Shell Int Research Branched primary alcohol compositions and derivatives thereof
WO2002099409A1 (en) * 2001-06-05 2002-12-12 The Robert Gordon University Ion sensitive electrodes based on oxa-azamacrocycles as ionophore for the determination of nitrate, salicylate or periodate anions
JP2004004045A (ja) * 2002-04-23 2004-01-08 Japan Organo Co Ltd 水処理用薬品の濃度管理方法及び濃度管理装置
US7105095B2 (en) 2003-04-17 2006-09-12 Organo Corporation Method and apparatus for controlling concentration of water treatment chemicals
JP2010261745A (ja) * 2009-04-30 2010-11-18 Japan Organo Co Ltd リチウムイオン選択性電極
JP2012012368A (ja) * 2010-07-05 2012-01-19 Shin-Etsu Chemical Co Ltd 希土類金属抽出剤の合成方法
WO2015045606A1 (ja) * 2013-09-30 2015-04-02 株式会社日立ハイテクノロジーズ イオン選択電極

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7148375B2 (en) 2000-12-21 2006-12-12 Shell Oil Company Branched primary alcohol compositions and derivatives thereof
US6891056B2 (en) 2000-12-21 2005-05-10 Shell Oil Company Branched primary alcohol compositions and derivatives thereof
US6909020B2 (en) 2000-12-21 2005-06-21 Shell Oil Company Branched primary alcohol compositions and derivatives thereof
US7071364B2 (en) 2000-12-21 2006-07-04 Shell Oil Company Branched primary alcohol compositions and derivatives thereof
WO2002050006A3 (en) * 2000-12-21 2002-11-07 Shell Int Research Branched primary alcohol compositions and derivatives thereof
WO2002099409A1 (en) * 2001-06-05 2002-12-12 The Robert Gordon University Ion sensitive electrodes based on oxa-azamacrocycles as ionophore for the determination of nitrate, salicylate or periodate anions
JP2004004045A (ja) * 2002-04-23 2004-01-08 Japan Organo Co Ltd 水処理用薬品の濃度管理方法及び濃度管理装置
US7105095B2 (en) 2003-04-17 2006-09-12 Organo Corporation Method and apparatus for controlling concentration of water treatment chemicals
JP2010261745A (ja) * 2009-04-30 2010-11-18 Japan Organo Co Ltd リチウムイオン選択性電極
JP2012012368A (ja) * 2010-07-05 2012-01-19 Shin-Etsu Chemical Co Ltd 希土類金属抽出剤の合成方法
WO2015045606A1 (ja) * 2013-09-30 2015-04-02 株式会社日立ハイテクノロジーズ イオン選択電極
JP2015068796A (ja) * 2013-09-30 2015-04-13 株式会社日立ハイテクノロジーズ イオン選択電極
US9885683B2 (en) 2013-09-30 2018-02-06 Hitachi High-Technologies Corporation Ion-selective electrode

Also Published As

Publication number Publication date
JP3307687B2 (ja) 2002-07-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AnthonyáMcKervey Selective alkali-metal cation complexation by chemically modified calixarenes. Part 4. Effect of substituent variation on the Na+/K+ selectivity in the ester series and X-ray crystal structure of the trifluoroethyl ester
JP3307687B2 (ja) イオン選択性配位分子およびイオンセンサ
Kataky et al. Comparative study of mono-and di-substituted 14-crown-4 derivatives as lithium ionophores
Dovesi et al. Functionalizable Alkylidenes: Tungsten Complexes of Phosphanyl‐, Amino‐, Alkynyl‐, and Tinalkylidenes and Their Dimetallic Derivatization
JP3364313B2 (ja) ポルフィリン/インジウム錯体及び陰イオン感応膜
Zeng et al. Synthesis of a tweezer-like bis (arylthiaalkoxy) calix [4] arene as a cation sensor for ion-selective electrodes: an investigation of the influence of neighboring halogen atoms on cation selectivity
Faulkner et al. Lithium selective ionophores based on pendant arm substituted crown ethers
Ouchi et al. Silver and thallium (I) complexation with dibenzo-16-crown-4
Morfin et al. Bismuth (III) coordination to cyclen and cyclam bearing four appended groups
Huber et al. Lariat ethers with a novel proton-ionizable group. Synthesis and solvent extraction of alkali metal cations
BANACH et al. Lower Rim Substituted tert-Butylcalix [4] arenes (I). The Structure and Complexing Properties in Ion-Selective PVC Membrane Electrodes
Bocheńska et al. Lower rim substituted tert-butyl calix [4] arenes (I). The structure and complexing properties in ion-selective PVC membrane electrodes
Bocheńska et al. Lower Rim Substituted tert‐Butyl Calix [4] Arenes (Part IV). Calix [4] Arene‐Crown Ethers as Ionophores in Plasticized PVC‐Membrane Electrodes
KR100271124B1 (ko) 콜란산 고리를 포함하는 4-트리플루오로아세토페논 유도체, 그의 제조방법 및 용도
JPH08245617A (ja) ナトリウムイオン選択性配位分子およびイオンセンサ
JP2783440B2 (ja) リチウムイオン選択性高分子膜
JPH07206852A (ja) カリックスアレーン誘導体
Yang et al. Synthesis of Tetra-N-substituted 1, 10-dioxa-4, 7, 13, 16-tetraazacyclooctadecanes and their Application as Lead (II) Selective Electrodes. X-ray Crystal Structure of 4, 7, 13, 16-tetrathenoyl-1, 10-dioxa-4, 7, 13, 16-tetraazacyclooctadecane
KR100257373B1 (ko) 티아졸 고리를 포함하는 벤조 크라운 에테르 유도체,그의 제조방법 및 용도
JP2764560B2 (ja) 窒素固定化能をもつルテニウム三級ポリアミン錯体
JPS5810132B2 (ja) 酸素吸脱着剤
Moriuchi et al. Synthesis and characterization of novel palladium (II) complexes with ferrocenes bearing podand N-heterocyclic coordination sites
KR100372559B1 (ko) 칼륨이온을 선택적으로 흡착하는 새로운 발색성 칼릭스[4]아렌 아자크라운 에테르 유도체
Costero et al. Azacrownlactams derived from biphenyl. Study of their conformations, complexation ability and electrochemical behavior
JP3181979B2 (ja) オロチン酸誘導体含有組成物並びに機能薄膜

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20020409

S201 Request for registration of exclusive licence

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R314201

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S201 Request for registration of exclusive licence

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R314201

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080517

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110517

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110517

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130517

Year of fee payment: 11

EXPY Cancellation because of completion of term
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130517

Year of fee payment: 11