JPH066507B2 - 耐摩耗材およびその製造方法 - Google Patents

耐摩耗材およびその製造方法

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JPH066507B2
JPH066507B2 JP61013185A JP1318586A JPH066507B2 JP H066507 B2 JPH066507 B2 JP H066507B2 JP 61013185 A JP61013185 A JP 61013185A JP 1318586 A JP1318586 A JP 1318586A JP H066507 B2 JPH066507 B2 JP H066507B2
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和一 小林
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Ube Corp
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KOKUSAI KEISO KK
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の分野] 本発明は、新規な耐摩耗材およびその製造方法に関す
る。
[発明の背景] 従来から、粉体あるいは粉体を取り扱う装置、プラント
などにおいては、粉体あるいは粉体との接触による摩耗
を防止することを目的として耐摩耗材が随所に使用され
ている。このような目的で使用されている耐摩耗材は、
金属性耐摩耗材と非金属耐摩耗材とに大別することがで
きる。
金属性耐摩耗材としては、鋳鋼および鋳鉄が主に使用さ
れ、非金属性耐摩耗材としてはタングステンカーバイド
などの炭化物、アルミナ磁気などの焼結体、岩石を熔融
して鋳型に注湯したのち熱処理して製造される鋳造石、
ゴムあるいはプラスチックなどの高分子材料などが使用
されている。
耐摩耗材は、良好な耐摩耗性を有するものであることが
要求されることは勿論であるが、更に、優れた耐腐食性
および耐熱性を有するものであること、そして安価に製
造することができるものであることなどが要求される。
上記のような耐摩耗材の中で、特に鋳造石は、良好な耐
摩耗性を示すと共に耐腐食性および耐熱性においても優
れており、更に他の耐摩耗材と比し安価に製造すること
ができるとの利点を有している。
従来、鋳造石の製造には玄武岩質岩石などの天然の鉱石
が原料として使用されていたが(特公昭45−2746
2号公報)、原料の均質化および環境上の問題などから
次第に高炉鉱滓あるいはフライアッシュなどの人工物を
原料とすることが多くなっている。
たとえば、特公昭54−22456号公報には高炉鉱滓
を主な原料として使用した耐摩耗性鋳造石の発明が開示
され、また、特公昭57−30831号公報にはフライ
アッシュを主な原料とする耐摩耗性鋳造石の製造方法の
発明が開示されている。
しかしながら、本発明者の検討によると上記の公報に開
示されている耐摩耗材は、耐摩耗性に関しては良好な特
性を有するものの、耐衝撃性が充分でないので衝撃が加
わることにより破損するとの問題があることが判明し
た。
一方、特公昭46−38972号公報には、炭酸石灰、
バイライトシンダ、マグネシアなどを用いて、これを熔
融し、結晶化し灰長石または長石を主体とする長石固溶
体よりなる、結晶が相互にガラス質の非晶質で充填され
た窯業体に関する発明が開示されている。この発明にか
かる窯業体は改良された耐摩耗性を示すものであるが、
本発明者の検討によると曲げ強度などの機械的強度に関
しては未だ改善の余地を残すものである。
ところで、近年、水性ガスの製造に石油に代わり石炭が
使用されている。このような石炭の使用により水性ガス
をより安価に供給できると共に、この技術は我が国のよ
うに石油資源の乏しい国にとっては石油に対する依存度
を低減することができ好ましい技術であるが、半面多量
の残滓が排出されるとの問題がある。この残滓は従来わ
ずかに埋立などに用いられていたに過ぎず、有効な利用
方法は開発されていなかった。
本出願人は、この残滓を有効に利用すべく研究を重ね、
この残滓とを有効に利用した発明に関して既にに出願を
している(特願昭60−35066号、同60−940
47号、同60−94048号、同60−94049
号、同60−204673号)。
本発明は、上述した従来の耐摩耗材よりもさらに優れた
特性等を有する耐摩耗材を提供すると共に、上記の残滓
の有効な利用法を提供するとの側面をも有する。
[発明の目的] 本発明は、良好な耐摩耗性を有すると共に、従来の耐摩
耗材と比し強度が高い耐摩耗材およびその製造方法を提
供すること目的とする。
さらに本発明は、従来有効な用途が見い出されていなか
った石炭ガス化装置から排出される非晶質残滓を有効に
利用した耐摩耗材およびその製造方法を提供することを
目的とする。
[発明の要旨] 本発明は、SiO、Al、CaO、MgOおよ
びFeを含む耐摩耗材であって、該耐摩耗材のS
iOの含有率が65重量%以下、Alの含有率
が20重量%以上、CaOの含有率が5重量%以上、M
gOの含有率が18重量%以下、そしてFeの含
有率が3重量%以下であり、かつ耐摩耗材が結晶性成分
として、対陰極として銅を用いた場合に29〜31度の
間に二つの特異的ピークおよび35〜37度の間に二つ
の特異的ピークを示し、そして25度以下に特異的ピー
クを示さないX線回折パターンを有する結晶性成分を含
有していることを特徴とする耐摩耗材にある。
本発明の耐摩耗材は、 (I)耐摩耗材のMgOの含有率が18重量%以下とな
るように混合された、石炭の部分酸化により得られた非
晶質残滓とマグネシウム含有原料と還元性成分とを含む
混合物を非酸化雰囲気にて加熱融解したのち、850℃
以下に冷却する工程、および、 (II)上記(I)工程で得られた固化物を加熱処理する
工程、 を含む工程を実施することにより工業的に有利に製造す
ることができる。
[発明の効果] 本発明の耐摩耗材は、非常に良好な耐摩耗性を示すと共
に、たとえば曲げ強度が通常は1000kgf/cm2
以上であるなど機械的強度が高く、また亀裂などが少な
いので衝撃により破損することが少ない。
さらに、結晶質原料と比較すると融点が低い非晶質の残
滓が主原料であるから製造の際の加熱温度を低く設定す
ることができる。
本発明の耐摩耗材は、石炭ガス化装置から排出される非
晶質残滓を原料として使用し、従来有効な利用方法が知
られていなかった非晶質残滓を有効に利用して製造する
ことができ、資源のリサイクルを図ることができる。
[発明の詳細な記述] 本発明の耐摩耗材は、基本的にはSiO、Al
、CaO、MgOおよびFeを含むもので
ある。そして、耐摩耗材のSiOの含有率が65重量
%以下(好ましくは30〜60重量%の範囲内)、Al
の含有率が20重量%以上(好ましくは20〜4
0重量%の範囲内)、CaOの含有率が5重量%以上
(好ましくは5〜30重量%の範囲内)、MgOの含有
率が18重量%以下(好ましくは5〜18重量%の範囲
内)、そしてFeの含有率が3重量%以下(好ま
しくは2重量%以下)である。
さらに、本発明の耐摩耗材は結晶性成分を含有してい
る。
第1図に本発明の耐摩耗材の代表的なX線回折パターン
の例(実施例1で製造した耐摩耗材)を示す。
本発明の耐摩耗材のX線回折を行なうと、第1図に示す
ように30度付近と30.7度付近、即ち29〜31度
の間に二つの特異的ピークが観察され、そして35.4
度付近と36.2度付近、即ち35〜37度の間に二つ
特異的のピークが観察される。さらに、前四つの特異的
ピークと比較すると強度は低いが、通常は、27.7度
付近、39.8度付近、41度付近、42.8度付近お
よび45度付近に特異的ピークが観察される。
さらに、本発明の耐摩耗材のX線回折パターンにおいて
特徴的なのは、25度以下に特異的ピークを示さないこ
とである。また、通常は前四つのピークの間に特異的な
ピークを示さない。
このようなX線回折パターンを示す結晶は、透輝石結晶
である。ただし、本発明の耐摩耗材の特異的ピークの位
置は純粋な透輝石結晶のピークの位置よりも0.2度程
度ずれるのが通常である。これは純粋の透輝石結晶の結
晶構成原子(例、Si、Mg)の一部がアルミニウム原
子で置換されている透輝石結晶を含むことに起因する。
すなわち、本発明の耐摩耗材の粉末を内部標準法を利用
した粉末のX線回折法により測定すると、ピークが純粋
な透輝石結晶のピークよりわずかにシフトすることおよ
び蛍光X線を用いたアルミニウムの配位数の測定より確
認することができる。また、分析電子顕微鏡により、結
晶中にアルミニウム原子の存在が確認される。
上記透輝石型結晶(アルミニウム原子が一部置換した透
輝石結晶を含む。以下同様)は、通常微細な結晶として
マトリックスであるガラス質(非晶質)中に存在してい
る。耐摩耗材中の当期石型結晶の存在量は、通常は50
重量%(好ましくは70重量%)以上である。透輝石型
結晶の存在率は偏光顕微鏡などを用いた耐摩耗材の観察
により測定することができる。
本発明の耐摩耗材は次のような方法により製造すること
ができる。
本発明の耐摩耗材は、石炭の部分酸化により得られた炭
素質を含む非晶質残滓およびマグネシウム含有原料を用
いて、これを加熱し熔融状態にしたのち特定温度以下に
冷却し、加熱処理することにより製造することができ
る。
非晶性残滓は、石炭の部分酸化により合成ガスを製造す
る際に発生する残滓として供給される。このような石炭
を用いた合成ガスの製造方法の例としては、ルルギ法、
ウインクラー法、コッパーズ・トチェック法およびオッ
ト・ルーメン法並びにKDV法、ルルギスラッジング
法、シンザン法、WH法、Uガス法、HYGAS法、石
炭技研法、加圧流動水添ガス化法、ハイブリッド法、H
TW法、BIGAS法、シェル(シェル・コッパーズ)
法、サアルバーク・オットー法、住友法およびテキサコ
法などによる石炭ガス化法を挙げることができる。特に
コッパーズ・トチェック法、オット・ルーメン法、シェ
ル(シェル・コッパーズ)法及びテキサコ法等のような
石炭の部分酸化をガス化炉にて石炭の軟化点以上の温度
で行なう石炭ガス化装置から排出される残滓を使用する
ことが好ましい。
例えばテキサコ法に於ては、石炭は水スラリーとして石
炭ガス化炉に投入され加圧下に灰分の軟化点以上の温
度、一般には1100℃〜1500℃に加熱され、部分
酸化される。この際、溶融状態もしくは半溶融状態の残
滓が生成し、通常この残滓は水等で冷却された後、必要
に応じて粉砕されて石炭ガス化炉から排出される。
なお、テキサコ法などの石炭ガス化方法の詳細は、「化
学経済」1981年八月号および九月号に詳細に記載さ
れている。
石炭の部分酸化により発生する残滓の組成は原料として
使用する石炭の種類により多少異るが、本発明の耐摩耗
材を製造する為には、石炭の種類にかかわりなく石炭ガ
ス化などの石炭の部分酸化の際に生成する残滓を使用す
る。
本発明の耐摩耗材の製造に使用する残滓は非晶質であ
る。従ってX線回折を行なっても特異なピークは観察さ
れない。
一般に上記のような非晶質残滓のSiOの含融率は6
5重量%以下(好ましくは30〜60重量%の範囲)、
Alの含有率が20重量%以上(好ましくは20
〜40重量%)、そしてCaOの含有率が5重量%以上
(好ましくは5〜30重量%の範囲)であり、さらに少
量の硫化物あるいは硫黄化合物を含有している。
そして、非晶質残滓は0.5重量%以上(好ましくは
0.5〜5重量%の範囲内)の炭素質を含有しているも
のを用いる。この炭素質は、非酸化性雰囲気における加
熱熔融の際に還元性成分として作用する。
また、非晶質残滓は、通常15重量%以下のFe
および5重量%以下のMgOを含有している。
なお、本発明の製造方法においては、特に新たに還元性
成分を加えることを要しないが、例えば酸化鉄成分の含
有量などを考慮して炭素粉末などの還元性成分を添加す
ることもできる。
使用する非晶質残滓の粒子径は、3mm以下であること
が好ましい。通常は、非晶質残滓の粒子径が3mm以下
になるように粉砕して使用する。
特に本発明で使用する残滓は、ブレーン比表面積が10
00cm2/g以上となるように粉砕したものであるこ
とが好ましい。
粉砕を行なう場合、粉砕装置などは通常のものを利用す
ることができる。
非晶質残滓と共に用いられるマグネシウム含有原料の例
としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭
酸マグネシウム、水滑石(主成分、Mg(OH))、
マグネサイト(主成分、MgCO)、ドロマイト(主
成分、CaCO・MgCO)および滑石(主成分、
MgSi10(OH))を挙げることができ
る。マグネシウム含有原料は単独で、あるいは混合して
使用する。
上記のマグネシウム含有原料は、非晶質残滓と同等の粒
子径を有するものであることが好ましい。すなわち、両
者の粒子径を揃えることにより、より均一な混合を行な
うことができる。
マグネシウム含有原料の添加量は、得られる耐摩耗材の
MgO成分の含有率が18重量%以下(好ましくは5〜
18重量%の範囲内)となるように添加量を調整する。
耐摩耗材中のMgO成分の含有率が18重量%より多く
なるようにマグネシウム含有原料を添加した場合には、
加熱処理によって生成する透輝石型結晶の生成量が多く
なり過ぎ、透輝石型結晶とガラス質との熱膨張係数など
の相違に起因して内部応力が発生して耐摩耗材を製造す
る際の加熱により変形、あるいは亀裂が生ずる。
非晶質残滓とマグネシウム含有原料は、V型混合機、リ
ボンミキサーなど粉体の混合に通常使用されている混合
装置を利用して行なう。また、非晶質残滓とマグネシウ
ム含有原料とを共にボールミルなどの粉砕装置に投入
し、粉砕と同時に混合を行なう方法を利用することもで
きる。ただし、上記のような混合装置等を使用すること
なく、それぞれ個別に熔融炉に投入することもでき、さ
らにショベル等を用いて混合して使用することも可能で
ある。しかしながら、一般に混合装置等を使用しない場
合には、混合装置等を使用して充分に混合を行なった場
合よりも熔融温度が若干高くなる傾向がある。
このようにして調製された混合物を次に加熱して熔融す
る。熔融は上記混合物を、この混合物中の非晶質残滓の
熔融温度より通常50℃〜250℃高い温度に加熱して
行なわれる。
また、熔融は、熔融炉内の雰囲気を非酸化雰囲気にして
行なう。
具体的には、特に酸素あるいは空気を吹込む操作を行わ
ずに、例えば黒鉛電極を用い発熱させるアーク炉を利用
して加熱することにより、非晶質残滓とマグネシウム含
有原料との混合物は、実質的に非酸化雰囲気にて熔融状
態となる。
このように非酸化雰囲気で熔融することにより酸化鉄成
分と非晶質残滓中に含有される炭素質とが反応して酸化
鉄成分が還元される。そして、酸化鉄成分が還元されて
生成した鉄は、熔融体の下部に沈降する。従って、酸化
鉄成分の含有率が低く、強度の高い耐摩耗材を製造する
ことができる。ただし、酸化鉄成分の含有率が過度に高
くなると、この工程で有効に酸化鉄成分が還元されない
ばかりでなく、還元の際に鉄と反応している酸素が炭素
と反応して二酸化炭素を多量に生成し、この二酸化炭素
が熔融物中に残存して耐摩耗材の気孔率を上昇させる傾
向を生じ、得られた耐摩耗材の強度が充分に向上しない
ことがあるので、熔融される混合物中の酸化鉄成分の含
有率はFe換算で15重量%以下(特に好ましく
は12重量%以下)とすることが好ましい。
また、酸化性雰囲気にて加熱熔融すると、酸化鉄成分の
還元による除去が充分に行なわれず、得られた耐摩耗材
の強度が充分に向上しない。
熔融に使用する熔融炉は上述した温度条件および雰囲気
にて熔融を行なうことができるものであれば特に制限は
ない。熔融炉の例としてはタンク窯(液体燃料或は機体
燃料を用いるもの等)、アーク炉(黒鉛質などの電極を
投入して通電し加熱熔融する窯)を挙げることができ
る。
このようにして加熱により熔融した熔融物は一旦冷却し
て固化する。冷却の方法などに特に制限はないが、通常
の鋳型などに流し込み成形(注湯)を行ないながら成形
と冷却とを同時に行なう方法を利用すると有利である。
冷却温度は、850℃以下(好ましくは800℃以下)
とする。冷却温度が850℃より高いと後の工程におけ
る加熱処理により透輝石型結晶が充分に析出しないこと
がある。これは、冷却が不充分であると結晶核の生成が
充分に行なわれないためであろうと推察される。
なお、熔融物を成形する場合に形状に特に制限はない。
次に上記工程で得られた固化物を加熱処理する。
加熱処理は結晶性成分を析出させることができる方法で
あれば特に制限はなく通常の方法を利用することができ
る。ただし、以下に記載するように加熱処理を二段階に
分けて行なう方法を利用することにより耐摩耗性および
強度などの諸特性において非常に優れた耐摩耗材を工業
的に有利に製造することができる。
加熱処理は、固化物を850℃未満(特に好ましくは5
00〜830℃の範囲内)の温度で加熱処理(第一加熱
処理)して、この温度範囲内で0.5〜12時間以上放
置したのち、850〜1100℃の範囲内の温度で10
分間〜6時間加熱処理(第二加熱処理)する方法を利用
すると微細な透輝石型結晶が生成し、より良好な耐摩耗
性を有し、かつより強度の高い耐摩耗材を得ることがで
き好ましい。
第一加熱処理温度が850℃より高いと、すなわち第一
加熱処理を行なうことなく第二加熱処理を行なうと透輝
石型結晶が充分に形成されないことがあり、従って、得
られた耐摩耗性が充分に向上しないことがあり、さらに
曲げ強度などの機械的強度が充分に向上しないことがあ
る。
一方、第二加熱処理の温度が850℃よりも低いと曲げ
強度などの機械的強度及び耐摩耗性が充分に向上しない
ことがあり、また、1100℃より高いと得られた耐摩
耗材に亀裂などが生じ、必然的に機械的強度が低くなる
ことがある。
加熱処理は、ロータリーキルンおよび電気炉などの通常
の加熱装置を利用して行なうことができる。
上記第一および第二加熱処理後、加熱処理物を400℃
以上の温度においては10℃/分以下の冷却速度で、4
00℃以下の温度においては、30℃/分以下の冷却速
度で徐冷することが好ましい。
このような条件で冷却することにより、冷却工程での熱
歪によるクラック等の発生を軽減することができる。
冷却後、得られた耐摩耗材の仕上げ処理を行なうなどの
必要な処理を施すこともできる。
このようにして得られた耐摩耗材は、良好な耐摩耗性を
示すと共に曲げ強度などの機械的強度も高い。すなわ
ち、本発明者の検討によると、本発明の耐摩耗材は、耐
摩耗性および機械的強度において灰長石結晶を含む耐摩
耗材よりも優れていることが判明した。
すなわち、本発明の耐摩耗材は、直径20mmの円筒状
の試料を研磨紙(80番)と連続的に接触させた際の摩
耗速度が1.0mm/時間以下と極めて優れて耐摩耗性
を示すと共に、曲げ強さが通常1000kgf/cm2
以上と非常に高い機械的強度を有している。
更に、嵩密度が2.75以上、気孔率が0.5容量%以
下であり、気孔が少なく非常に緻密な耐摩耗材である。
また、亀裂および変形が殆ど見られない。
次に、本発明の実施例および比較例を示す。
以下に記載する実施例および比較例で使用した非晶質残
滓およびマグネシウム含有原料などの組成を第1表に記
載する。
[実施例1] テキサコ法に基づく石炭ガス化炉から排出された非晶質
残滓を乾燥したのち、ボールミルを用いてブレーン比表
面積2000cm2/gになるように粉砕した。なお、
使用した非晶質残滓粒子のXに回折試験を行なったとこ
ろ、顕著なピークは観察されず非晶質であることが確認
された。
得られた粉砕物93重量部と水酸化マグネシウム10重
量部とを円筒形混合機を用いて混合し、この混合物20
kgを小型アーク炉(電気容量30kVA)を用いて1
700℃の温度で3時間加熱して熔融した。
得られた熔融物を内部寸法が100×200×30mm
の鋳鉄製の金型に鋳込み、室温まで冷却して脱型して成
形体を調製した。
得られた成形体を電気炉(電気容量15kVA)に入
れ、室温から5℃/分の昇温速度で650℃まで昇温
し、その温度で2時間加熱処理(第一加熱処理)を行な
ったのち、5℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し
て、この温度で、30分間加熱処理(第二加熱処理)を
行なった。
30分間経過後、5℃/分の速度で室温まで冷却して耐
摩耗材を製造した。
第1図に得られた耐摩耗材のX線回折パターンを示す。
なお、第1図に示すX線回折パターンは対陰極として銅
を用いて測定したものである(以下、同様)。
第1図から得られた耐摩耗材が透輝石型結晶を含有する
ことが確認された。ただし、X線回折ピークは純粋な透
輝石のピークと比較するとわずかにシフトしており、さ
らに蛍光X線によるアルミニウムの配位数測定の結果か
ら、透輝石型結晶を構成する原子の一部がアルミニウム
原子で置換されていることが確認された。
また、分析電子顕微鏡の測定結果からも、同様の結果が
得られ、さらに耐摩耗材は70重量%の透輝石型結晶を
含むものであることが確認された。
得られた耐摩耗材の化学組成を第2表に記載する。
さらに、得られた耐摩耗材の耐摩耗性、曲げ強度、嵩密
度および気孔率を第3表に記載する。
なお、本発明の実施例、比較例および参考例で行なった
耐摩耗性の測定は下記の方法および装置を用いて行なっ
た。
耐摩耗性 直径20mmの円筒状の試料に1kgの荷重を加えて、
研磨紙(80番)を装着した回転円盤と接触させ、磨耗
速度を測定した。
なお、比較のために水酸化マグネシウムを使用せずに非
晶質残滓のみを使用して同様にして熔融および加熱処理
等を行なって得られた処理物のX線回折パターンを第1
−a図に示す。
この図から明らかなように、この水酸化マグネシウム添
加を行なわなかった処理物中に含有される結晶は灰長石
型結晶(CaO・Al・2SiO)である。
[実施例2] 実施例1において、水酸化マグネシウムの使用量を20
重量部とした以外は同様にして耐摩耗材を製造した。
得られた耐摩耗材を成分組成を第2表に示し、さらに耐
摩耗性、嵩密度および気孔率を第3表に記載する。
なお、得られた耐摩耗材は実施例1と同様のX線回折パ
ターンを示した。
[実施例3] 実施例1において、水酸化マグネシウムの使用量を4重
量部とした以外は同様にして耐摩耗材を製造した。
得られた耐摩耗材の成分組成を第2表に示し、さらに耐
摩耗性、嵩密度および気孔率を第3表に記載する。
なお、得られた耐摩耗材は実施例1と同様のX線回折パ
ターンを示した。
[比較例1] 実施例1において、水酸化マグネシウムの使用量25重
量部とした以外は同様にして耐摩耗材を製造した。
得られた耐摩耗材の成分組成を第2表に示し、さらに耐
摩耗性、嵩密度および気孔率を第3表に記載する。
第2図に得られた耐摩耗材のX線回折パターンを示す。
得られた耐摩耗材は、酸化マグネシウムの含有率が高
く、更に第2図から明らかなように透輝石型結晶に起因
するピークの他に23度、33度、36度にピークが見
られ、透輝石型結晶とフォルステライト(2MgO・S
iO)が共存しているものであった。
従って、得られた耐摩耗材に変形が見られ、さらに曲げ
強度などの機械的強度が不充分である。
[比較例2] 実施例1において、さらに水酸化マグネシウムの外に、
酸化鉄10重量部を添加した以外は同様にして耐摩耗材
を製造した。
得られた耐摩耗材の成分組成を第2表に示し、さらに耐
摩耗性、嵩密度および気孔率を第3表に記載する。
第3図に得られた耐摩耗材のX線回折パターンを示す。
得られた耐摩耗材は、第3図に示すように透輝石型結晶
を含有するものであるが、Feの含有率が高いの
で耐摩耗性が充分でない。
[実施例4] 実施例1において、10重量部の水酸化マグネシウムの
代わりに7重量部のマグネシアを使用した以外は同様に
して耐摩耗材を製造した。
得られた耐摩耗材の成分組成を第2表に示し、さらに耐
摩耗性、嵩密度および気孔率を第3表に記載する。
なお、得られた耐摩耗材は実施例1と同様のX線回折パ
ターンを示した。
[実施例5] 実施例1において、10重量部の水酸化マグネシウムの
代わりに15重量部のマグネサイト(ブレーン比表面積
2000cm2/g)を使用した以外は同様にして耐摩
耗材を製造した。
得られた耐摩耗材の成分組成を第2表に示し、さらに耐
摩耗性、嵩密度および気孔率を第3表に記載する。
なお、得られた耐摩耗材は実施例1と同様のX線回折パ
ターンを示した。
[実施例6] 実施例1において、10重量部の水酸化マグネシウムの
代わりに22重量部の滑石粉(ブレーン比表面積200
0cm2/gを使用した以外は同様にして耐摩耗材を製
造した。
得られた耐摩耗材の成分組成を第2表に示し、さらに耐
摩耗性、嵩密度および気孔率を第3表に記載する。
なお、得られた耐摩耗材は実施例1と同様のX線回折パ
ターンを示した。
[参考例1] 第2表の参考例1の欄に示す組成の市販の耐摩耗材(鋳
造石系耐摩耗材、100×200×30mm)の耐摩耗
性、嵩密度および気孔率を測定した。
結果を第3表に示す。
[実施例7] 実施例1において、第一加熱処理温度を800℃とした
以外は同様にして耐摩耗材を製造した。
得られた耐摩耗材の耐摩耗性、嵩密度および気孔率を第
3表に記載する。
[実施例8] 実施例1に於て、第二加熱処理温度を1050℃とした
以外は同様にして耐摩耗材を製造した。
得られた耐摩耗材の耐摩耗性、嵩密度および気孔率を第
3表に記載する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の耐摩耗材が示す透輝石型結晶のX線
回折パターンの例(実施例1で製造した耐摩耗材)であ
る。 第1−a図は、灰長石型結晶を主成分とする無機物のX
線回折パターンの例である。 第2図は、比較例1で得られた耐摩耗材のX線回折パタ
ーンの例である。 第3図は、比較例2で得られた耐摩耗材のX線回折パタ
ーンの例である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】SiO、Al、CaO、MgOお
    よびFeを含む耐摩耗材であって、該耐摩耗材の
    SiOの含有率が65重量%以下、Alの含有
    率が20重量%以上、CaOの含有率が5重量%以上、
    MgOの含有率が18重量%以下、そしてFe
    含有率が3重量%以下であり、かつ該耐摩耗材が結晶性
    成分として、対陰極として銅を用いた場合に29〜31
    度の間に二つの特異的ピークおよび35〜37度の間に
    二つの特異的ピークを示し、そして25度以下に特異的
    ピークを示さないX線回折パターンを有する結晶性成分
    を含有していることを特徴とする耐摩耗材。
  2. 【請求項2】耐摩耗材に含有される結晶性成分が結晶構
    成原子の一部がアルミニウム原子で置換されている透輝
    石結晶であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記
    載の耐摩耗材。
  3. 【請求項3】耐摩耗材が30〜60重量%の範囲内のS
    iO、5〜30重量%の範囲内のCaO、20〜40
    重量%の範囲内のAl、5〜18重量%の範囲内
    のMgOおよび2重量%以下のFeを含有するこ
    とを特徴とする特許請求の範囲第1項もしくは第2項記
    載の耐摩耗材。
  4. 【請求項4】耐摩耗材が、結晶性成分を少なくとも50
    容量%含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載
    の耐摩耗材。
  5. 【請求項5】SiO、Al、CaO、MgOお
    よびFeを含む耐摩耗材を製造する方法であっ
    て、 (I)耐摩耗材のMgOの含有率が18重量%以下とな
    るように調製された、マグネシウム含有原料および石炭
    の部分酸化により得られた少なくとも0.5重量%の炭
    素質を含む非晶質残滓を含む混合物を、非酸化性雰囲気
    にて加熱して熔融状態にしたのち、850℃以下に冷却
    して固化する工程、および、 (II)上記(I)工程で得られた固化物を加熱処理する
    工程、 を含むことを特徴とする、対陰極として銅を用いた場合
    に29〜31度の間に二つのピークおよび35〜37度
    の間に二つのピークを示し、そして25度以下に特異的
    ピークを示さないX線回折パターンを示す結晶性成分を
    含有し、かつSiOの含有率が65重量%以下、Al
    の含有率が20重量%以上、CaOの含有率が5
    重量%以上、MgOの含有率が18重量%以下、そして
    Feの含有率が1重量%以下である耐摩耗材の製
    造方法。
  6. 【請求項6】非晶質残滓とマグネシウム含有原料とを含
    む混合物の加熱熔融を、還元雰囲気にて非晶質残滓の熔
    融温度よりも50〜250℃高い温度に加熱して行なう
    ことを特徴とする特許請求の範囲第5項記載の耐摩耗材
    の製造方法。
  7. 【請求項7】上記(II)工程が、第一工程で得られた固
    化物を850℃未満の温度で加熱処理する第一熱処理工
    程と、該第一熱処理工程で得られた加熱処理物を850
    〜1100℃の範囲内の温度にて加熱処理する第二熱処
    理工程と、前二工程を経て得られた加熱処理物を冷却す
    る冷却工程よりなることを特徴とする特許請求の範囲第
    5項記載の耐摩耗材の製造方法。
  8. 【請求項8】マグネシウム含有原料が、酸化マグネシウ
    ム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水滑石、
    マグネサイト、ドロマイトおよび滑石からなる群より選
    ばれた少なくとも一種類のマグネシウム含有物質である
    ことを特徴とする特許請求の範囲第5項記載の耐摩耗材
    の製造方法。
  9. 【請求項9】非晶質残滓のSiOの含有率が65重量
    %以下、Alの含有率が20重量%以上、CaO
    の含有率が5重量%以上、MgOの含有率が18重量%
    以下、Feの含有率が15重量%以下、そして炭
    素質が0.5重量%以上であることを特徴とする特許請
    求の範囲第5項記載の耐摩耗材の製造方法。
  10. 【請求項10】非晶質残滓のブレーン比表面積が、10
    00cm2/g以上であることを特徴とする特許請求の範
    囲第5項もしくは第7項記載の耐摩耗材の製造方法。
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