JPH066449U - 高周波焼入コイル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は工作機械のベッド等のアリ形案内面
の高周波焼入コイルを提供する。 【構成】 アリ形案内面の上面，エッジ部，傾斜面，谷
部，水平面に沿う焼入コイル１１の谷部に対応する鋭角
屈曲部の内側を切込みＵ字形銅板１２で蓋をして溶接
し、テフロンシート１３で絶縁する。またコイルをエッ
ジ部に対応する部位を逃がした状態に形成して、この部
に磁束消去板１４を片側でコイルに溶接する。さらに前
記屈曲部には梯形のフエライトコアを接着する。そして
２本の取付プレート１１ｃ，１１ｘより別々に冷却水を
通して、切込みを入れた１個所の屈曲部を通して別々に
排出部１１ｊ，１１ｍより排水する。切込みとフエライ
トコアにより谷部側の磁束密度を集中させ、磁束消去板
でエッジ部の磁束を拡散させて焼入部の加熱を均一化し
て所期の硬化域をうる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は工作機械のベッドの硬度を必要とするアリ形案内面に焼入を施すため の高周波焼入コイルに関する。

【０００２】

【従来の技術】

工作機械のベッド等の案内面は寿命を長くし且傷がつきにくくするために高周 波焼入が行われている。単純平坦面での焼入ではむらなく均質に焼入されうるが 、図５のようにアリ形案内面１ではエッジ部１ａがあり、基部の谷部１ｂの奥の 深い角部があるので焼入加熱時に熱拡散が異なりハッチング部分に指定通りの硬 度に焼入が行われ難く焼入コイルの形状を種々工夫しても未だ満足できるものが 得られなかった。 従来は図５に示すような焼入面に沿わせた形状の焼入コイル３を未硬化部分を 少なくするように径の小さいパイプで作製して被焼入面の近くに磁束集中度を高 めるようにし且、エッジ部には磁束消去板を装着し、谷部にはコイル内にコア４ を装着して磁束密度を調整して均等加熱するように努力されていた。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら加熱幅を稼ぎ硬化域のむらを少なくする為に焼入コイルのパイプ 径を小さなものにすると強度が弱く作業の安定性が悪くなる他、また高周波電流 が流れ難くなり、過負荷による焼入コイルの破壊が起こりうる可能性を有すると いう問題がある。 本考案は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みなされたもので、その目 的とするところはアリ形案内面の熱拡散の異なるエッジ部と谷部との多面同時に 均一高周波焼入できる焼入コイルを提供しようとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

上述の目的を達成するために本考案は、比較的太い銅パイプ材により被焼入材 のアリ形案内面に沿う形状に形成され中心に冷却水を通すようにされた高周波焼 入コイルのアリ基部の谷に対応する鋭角屈曲部の内側より焼入面側に高い電流密 度を形成する切込みを設けたものである。 さらに高周波焼入コイルの２個所の給電端のそれぞれより冷却水を通しアリ基 部の谷位置を通過した冷却水を別々に排出させる短絡系路を形成したものである 。

【０００５】

【作用】

請求項１は焼入コイルを流れる高周波電流はアリ基部の鋭角屈曲部で切り込み により電流の通路が焼入面側に近づけられるので焼入面が誘導加熱され易く熱拡 散の大きい深部の昇温加熱が効率的となる。 請求項２は焼入コイルの切込み屈曲部の冷却水通路の断面積縮小による流路抵 抗の増大を通路の短絡により補って冷却効率を上昇させ焼入コイル内を循環する 冷却水の昇温が喰い止められる。

【０００６】

【実施例】

以下本考案の実施例を図１〜図４にもとづき説明する。 焼入コイル１１はアリ形案内面１のエッジ部１ａと谷部１ｂに沿うように角形 中空の銅パイプ本例では１辺１０ｍｍで中心に冷却水を流すようにつくられてい る。即ち高周波焼入装置の発振機の給電端子と接続される取付端１１ａ，１１ｙ の一方の取付端１１ｄの下面に接続され冷却水入口１１ｂを側面に開口した中空 プレート１１ｃより角形中空パイプのリード部１１ａが下方に伸び、直角に曲げ られた水平部１１ｅがエッジ部１ａとの結合度を弱めるためエッジ部１ａを数ｍ ｍ下方に逃げる位置からエッジ部１ａと谷部１ｂとの間の傾斜面１ｃの裏に沿っ て数ｍｍ離れて傾斜部１１ｆが斜めに伸びる。

【０００７】 次いで谷部１ｂにつづく水平面１ｄに沿って鋭角に屈曲し数ｍｍ離れて水平部 １１ｇが伸び、水平面１ｄをわずかに越えた長さから直角にアリ形案内面１と数 ｍｍ離れてその長手方向に平行部１１ｈが伸びるとともに排出部１１ｊが分岐し 、この先はカプラ１１ｋに続く。平行部１１ｈは更に分岐し排出部１１ｊと並行 する排出部１１ｍ、カプラに続く。平行部１１ｈの先は直角に曲がって水平部１ １ｇと平行且同じ長さの水平部１１ｏとなり、谷部１ｂに沿う傾斜部１ｃと数ｍ ｍ離れて傾斜部１１ｆと平行且同じ長さである傾斜部１１ｐ，水平部１１ｅと平 行且同じ長さの平行な平行部１１ｑと続く。平行部１１ｑの先はリード部１１ｄ と平行且平行部１１ｑと直角に立ち上がる垂直部１１ｒで途中からアリ形案内面 の上面１ｅと数ｍｍ離れて平行な水平部１１ｓとなり、アリ案内面の上面１ｅの 焼入範囲迄伸びる。

【０００８】 水平部１１ｓに直角にアリ形案内面の上面１ｅと数ｍｍ離れて平行で水平部１ １ｈと対応する長さの水平部１１ｔとなり、直角に曲がって水平面１１ｅ，１１ ｓと平行で上面１ｅと数ｍｍ離れて平行な水平部１１ｕとなる。リード部１１ｄ の手前において直角に立ち上がるリード部１１ｖとなり冷却水入口１１ｗを有す るプレート１１ｘに接続され他方の取付端面１１ｙに取付けられるループを描く コイルにつくられているものである。そして排出部１１ｊ，１１ｍが分岐した水 平部１１ｈの中間には冷却水通路を仕切る銅の仕切り壁１１ｚが接合されている 。

【０００９】 また谷部１ｂに対向する鋭角の屈曲部、即ち傾斜部１１ｆと水平部１１ｇとの 屈曲部及び水平部１１ｏと傾斜部１１ｐとの屈曲部には内側より数ｍｍ本例では 巾４ｍｍ，深さ１０ｍｍの切込み１１ｉ，１１ｎが削設されており、Ｕ字形の銅 板１２で蓋をして溶接で水密とされていて、そのＵ部にテフロンシート１３が挿 入されていて電気的絶縁がなされるとともに作業中磁石化した焼入コイルに切粉 等が切込み部に付着して導通変化及び切粉の赤熱を起こさないように保護してい る。さらにアリ形案内面のエッジ部１ａの電磁結合度を弱めて過熱をさけるため に逃がしループ部となる水平部１１ｑ，垂直部１１ｒ，水平部１１ｓで構成する コ字部にコ字形の銅板でなる磁束消去板１４が他方の逃がしループ部を形成する １１ｅ，１１ｄ，１１ｕとは数ｍｍ離れて片側で溶接されている。

【００１０】 傾斜部１１ｆと水平部１１ｇで形成する鋭角屈曲部及び傾斜部１１ｐと水平部 １１ｏで形成する鋭角屈曲部との間には梯形のフエライトコア１５が介挿されそ の両側が焼入コイルと絶縁，耐熱樹脂で接着され谷部１ｂの奥の磁束密度を増大 せしめている。そしてプレート１１ｃ，１１ｘの間，リード部１１ｄ，１１ｖの 間及び磁束消去板１４の下面とフエライトコア１５の上面との間には電気絶縁の ために厚いテフロンシート１６，１７，１８がそれぞれ介在されている。

【００１１】 このように構成された本考案の作用を説明する。 高周波焼入機に取付けた焼入コイル１１は焼入すべきアリ形案内面１に適合す るものが選択取付けられ、アリ形案内面の焼入部と焼入コイル１１とが数ｍｍの 隙間で対向しうるように調整位置決めされている。焼入コイル１１をアリ形案内 面１の焼入開始位置とし、冷却水入口１１ｂ，１１ｗよりそれぞれ冷却水を流す 。冷却水は図２，図３の矢印で示すように冷却水入口１１ｂ，プレート部１１ｃ ，リード部１１ｄ，水平部１１ｅ，傾斜部１１ｆ，切込み１１ｉで絞られ水平部 １１ｑ，平行部１１ｈを経て平行部１１ｈの仕切り壁１１ｚで遮られて分岐の排 出部１１ｊを通りカプラ１１ｋより排出される。

【００１２】 一方冷却水入口１１ｗより流す冷却水は図２の点線矢印、図３の矢印のように プレート部１１ｘ，リード部１１ｖ，水平部１１ｕ，平行部１１ｔ，水平部１１ ｓ，垂直部１１ｒ，水平部１１ｑ，傾斜部１１ｐ，切込み１１ｎで絞られ水平部 １１ｏ，平行部１１ｈより仕切り壁１１ｚで遮られて分岐した排出部１１ｍ，カ プラより排水される。 焼入コイル１１が冷却状態で性能２０ＫＨＺ発振の高周波焼入機の発振回路を 作動させると高周波が発振され取付端１１ａより高周波電流が１１ｃ，１１ｄ， １１ｅ，１１ｆ，１１ｇ，１１ｈ，１１ｏ，１１ｐ，１１ｑ，１１ｒ，１１ｓ， １１ｔ，１１ｕ，１１ｖ，１１ｘ，１１ｙと流れる。

【００１３】 高周波電流は谷部の焼入コイル屈曲部の切込みにより電流通路がアリ形案内面 側に近づけられているので、谷部に挿入される折り曲げ部に付設されたフエライ トコア１５との相乗効果により磁束密度を集中させる作用が一層発揮されて谷部 の奥に焼入条件を満たす過熱温度が得られる。 また冷却水通路が２個所の切り込み部１１ｉ，１１ｎの内の１個所のみを含む ように切込み場所の中間の排出通路により短縮されて、流路抵抗が減じられ狭め られた通路での流量減少による冷却作用の低下が改善される。

【００１４】

【考案の効果】

上述のようであるので本考案は以下の効果を奏する。 アリ谷部の深部の加熱が調整され図面指示により近い硬化域を得ることができ る。また電流密度の集中によるコイルの過熱は、冷却水通路の分岐短絡により流 路抵抗を小さくすることで冷却効果の減少が押さえられ、焼入コイルの寿命を伸 ばすことができる。また切込みによって太い焼入コイルで細い焼入コイルと同じ ように深部の加熱ができ太い強度のあるコイルにより作業の難度が改善されて作 業性が向上される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の焼入コイルの斜視図である。

【図２】図１のループの左側面図である。

【図３】図１のループの主要部分の磁束消去板テフロン
シート，フエライトコアを除いた斜視図である。

【図４】図２のＡ印の平面図である。

【図５】従来のアリ形案内面の焼入コイルの側面図であ
る。

【符号の説明】

１ アリ形案内面 １１ 焼入コ
イル １１ｉ 切込み部 １１ｚ 仕切
り壁 １１ｊ，１１ｍ 排出部 １４ 磁束消
去板 １６，１７，１８ テフロンシート

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 被焼入材のアリ形案内面に沿う形状に形
   成され中心に冷却水を通すようにされた高周波焼入コイ
   ルにおいて、アリ基部の谷に対応する高周波コイルの鋭
   角屈曲部の内側より焼入面側に高い電流密度を形成する
   切込みを設けたことを特徴とする高周波焼入コイル。
2. 【請求項２】 高周波焼入コイルの２個所の給電端のそ
   れぞれより冷却水を通しアリ基部の谷位置を通過した冷
   却水を別々に排出させる系路を形成した請求項１に記載
   の高周波焼入コイル。