JP3860634B2 - ラックバーの高周波直接通電焼入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラックバーの歯面或いは背面を高周波直接通電焼入法により焼入れする高周波直接通電焼入装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図15は従来より一般的に用いられているステアリング用ラックバー1を示すものであって、このステアリング用ラックバー1は片側面に軸線に対して角度θをなす斜歯2を有し、この斜歯2の歯面3とは反対側の面が背面(円筒面)4となされている。従来においては、この種のステアリング用ラックバー1の歯面3を焼入するために図16に示される高周波直接通電焼入装置5が用いられ、その背面4を焼入れするために図17に示される高周波直接通電焼入装置6が用いられている。
【0003】
これらの装置5或いは6は、図16,図17に示すように、電気的絶縁材7,7′を介して第一導体8,8′と第二導体9,9′が組み合わされ、被焼入体であるステアリング用ラックバー1の歯面3側或いは背面4側に対向して配接される単位導体10,10′と、この単位導体10,10′の第一導体8,8′に接続され、前記歯面3或いは背面4の長手方向の一端に当接配置される第一接触電極11,11′と、前記単位導体10,10′の第二導体9,9′に接続され、前記歯面3或いは背面4の長手方向の他端に当接配置される第二接触電極12,12′と、前記第一導体8,8′に接続されて前記単位導体10,10′の第一接触電極11,11′と第二接触電極12,12′との間の領域において前記歯面3或いは背面4に近接して配設され、かつこの歯面3或いは背面4に冷却水を噴出しうる冷却手段13,13′を備えた近接導体14,14′と、前記一対の第一導体8,8′と第二導体12,12′が接続される高周波電源15,15′とをそれぞれ具備している。さらに、ラックバー押圧用の一対の油圧シリンダ16,16′も備えられている。
【0004】
次に、従来の焼入装置5,6の作用につき、図16及び図17に基いて説明する。まず、ステアリング用ラックバー1の歯面3を焼入れする際には、ステアリング用ラックバー1を図16に示す如く高周波直接通電焼入装置5の第一及び第二接触電極11,12上に載置し、ステアリング用ラックバー1の長手方向における歯面3の両端部に各電極11,12を接触配置すると共に、これらの両端部間の歯面3に近接導体14を近接配置する。そして、一対の油圧シリンダ16にてステアリング用ラックバー1を下方に押圧して前記歯面3を前記第一及び第二接触電極11,12に圧着させた状態とする。この状態の下で、高周波電源15より高周波電流を供給して通電すると、高周波電流I1 は、第一導体8から第一接触電極11を通ってラックバー1の歯面3、第二接触電極12を経て、第二導体9、近接導体14の表面を通って、再び第二導体12から高周波電源15へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。
【0005】
また、ステアリング用ラックバー1の背面4を焼入れする際には、ステアリング用ラックバー1を図17に示す如く高周波直接通電焼入装置6の第一及び第二接触電極11′12′上に載置し、ステアリング用ラックバー1の長手方向における背面4の両端部に各電極11′12′を接触配置すると共に、これらの両端部間の背面4に近接導体14′を近接配置する。そして、一対の油圧シリンダ16′にてステアリング用ラックバー1を下方に押圧して前記背面4を前記第一及び第二接触電極11′,12′に圧着させた状態とする。この状態の下で、高周波電源15′より高周波電流を供給して通電すると、高周波電流は、第一導体8′から第一接触電極11′を通ってラックバー1の背面4、第二接触電極12′を経て、第二導体9′、近接導体14′の表面を通って、再び第二導体12′から高周波電源15′へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。
【0006】
ここで、高周波電源15,15′より供給される電流をI1 ,ステアリング用ラックバー1の歯面3或いは背面4に流れる直接電流をI1 ′,第二接触電極12,12′からの電流をI2 とする(図16及び図17参照)。前記歯面3或いは背面4に沿って流れる電流I1 ′と近接導体14,14′に流れる電流I2 とは、発生する磁束が最小(回路インピーダンスが最小)になるように、相互にひっぱりあって接近して流れるように電流密度は分布する。また、前記歯面3或いは背面4と近接導体14,14′とで一つのコイルを形成し、歯面3或いは背面4に誘導電流も流れる。かくして、ステアリング用ラックバー1の歯面3或いは背面4には、直接電流I1 ′とうず電流I1 ′′とを加算した合成電流(I1 ′+I1 ′′)が流れ、ワーク(ラックバー1)は均一に加熱される。しかる後に、前記歯面3或いは背面4が所定の焼入温度に達したら高周波電源15,15′からの電流供給を遮断し、近接導体14,14′の噴射孔17,17′より焼入冷却水を噴射し、歯面3或いは背面4を急速冷却する。これによって、歯面3或いは背面4に所要焼入硬化層が得られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如き従来の高周波直接通電焼入装置5,6では、ラックバー1の焼入に際してこのラックバー1と第一接触電極11,11′及び第二接触電極12,12′との接触を確実なものとすべく対応部分のラックバー部分を上方より押圧し得るように油圧シリンダ16,16′を配設するようにしているため、次のような問題点があった。すなわち、前記第一及び第二接触電極11,11′及び12,12′は優れた耐摩耗性を有し、かつ電気抵抗が比較的低いクロム銅より構成するようにしているのであるが、大量のラックバー1を繰り返し焼入するのに伴って第一及び第二接触電極11,11′及び12,12′が摩耗して接触面積が変化する。これに伴い、加熱時にラックバー1の歯面3或いは背面4との接触が不完全となって単位接触面積当たりの電流値が大きくなり、前記歯面3或いは背面4と第一及び第二接触電極11,11′及び12,12′との接触部において発熱してワーク表面及び接触電極表面が溶解し、凹部が生じワークと接触電極とが非接触状態となりスパークを生じることがある。また、前記第一接触電極11,11′と第二接触電極12,12′のどちらか一方が、ワークと加熱開始時或いは加熱中での加熱によるワークの膨張によるワークの反りより、ワークと接触電極との間に非接触状態となる箇所が発生し、接触電極とワークとの間でスパークを生じることがある。或いは、上述したワークと接触電極を密着させるための油圧シリンダ16,16′の押圧力の低下による非接触状態の発生により、スパークを生じることがある。
【0008】
また、高周波電源15,15′がトランジスタを用いた電源タイプのものである場合には、上述のようなスパーク現象を生じると、スパークによりトランジスタへ過電圧がかかり、トランジスタの破損を引き起こすこととなる。このような事態を生じると当然、高周波電源は使用不能の状態となる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解消すべくなされたものであって、その目的は、高周波直接通電焼入のための通電時に被焼入体であるラックバー(ワーク)と接触電極とが非接触状態となっても、高周波電流がラックバーと接触電極と間に流れるのを防止でき、従ってラックバーと接触電極との間にスパークを発生することのないようなラックバーの高周波直接通電焼入装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明では、
(a) 電気的絶縁材を介して第一導体と第二導体とを組み合わせて成り、被焼入体であるラックバーの歯面或いは背面に対向して配置される単位導体と、
(b) 前記単位導体の第一導体に接続され、前記歯面或いは背面の長手方向の一端に当接配置される第一接触電極と、
(c) 前記単位導体の第二導体に接続され、前記歯面或いは背面の長手方向の他端に当接配置される第二接触電極と、
(d) 前記第一導体に接続されて前記単位導体の第一接触電極と第二接触電極との間の領域において前記歯面或いは背面に近接して配設され、かつ前記歯面及び背面に冷却水を噴出しうる冷却手段を備えた近接導体と、
(e) 前記一対の第一導体と第二導体とが接続される高周波電源と、
をそれぞれ具備し、高周波直接通電焼入によりラックバーの歯面或いは背面を焼入するラックバーの高周波直接通電焼入装置において、
(f) 前記第一導体から分岐され、前記ラックバーの歯面及び背面の側面に対しその長手方向に沿って間隙をもって対向配置され、この長手方向に延びる前記単位導体の第二導体の他端に接続される分岐導体、
をさらに具備せしめるようにしている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例に付き図1〜図14を参照して説明する。なお、図1〜図14において図15〜図17と同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0012】
図1及び図2は本発明をそれぞれ適用した高周波直接通電焼入装置20,21を示すものであって、本例の装置20,21はステアリング用ラックバー1(図15参照)を高周波焼入れするためのものである。なお、図1に示す装置20はステアリング用ラックバー1の歯面3を焼入れする歯面焼入装置であり、図2に示す装置21はステアリング用ラックバー1の背面4を焼入れする背面焼入装置である。また、図3はステアリング用ラックバー1の歯面3を高周波直接通電焼入れする際の実施態様を示し、図4はステアリング用ラックバー1の背面4を高周波直接通電焼入れする際の実施態様を示している。
【0013】
上述の焼入装置20,21は、図1〜図4に示す如く、第一導体8,8′と第二導体9,9′との間に電気的絶縁材7,7′を介在させてサンドイッチ状に組み合わせて成る単位導体10,10′と、第一導体8,8′より分岐して第二導体9,9′に接続する分岐導体41,42、41′,42′と、第一接触電極11,11′と、第二接触電極12,12′と、冷却手段13,13′を有する近接導体14,14′とトランジスタから成る高周波電源15,15′とから構成されている。さらに具体的に述べると、前記単位導体10,10′は、短尺の第一導体8,8′と長尺の第二導体9,9′とを電気的絶縁材7,7′を介して一体に組み合わされて成り、被焼入体であるステアリング用ラックバー1の歯面3の側、或いは背面4の側に対向して配設される。また、前記分岐導体41,42、41′,42′は、第一接触電極11,11′に隣接しかつ第一接触電極11,11′より高周波電源15,15′の側の第一導体8,8′部分において互いに反対方向に分岐された2本の直角分岐部43,44、43′,44′と、これら分岐部43,44、43′,44′に延設されかつラックバー1の歯面3及び背面4の長手方向の両側に対して所要の間隔をもって対向配置されるように延設された平行分岐部45,46、45′,46′と、これらの平行分岐部45,46、45′,46′の他端において屈曲されて互いに連絡されると共に前記第二導体9,9′に接続された連絡分岐部47,48、47′,48′とから構成されている。従って、上述の分岐導体41,42、41′,42′は、その一端において、第一導体8,8′に接続されると共に、その他一端において第二導体9,9′に接続されている。
【0014】
なお、前記分岐導体41,42、41′,42′は、前記第一導体8,8′及び第二導体9,9′にろう付などで固着されている。また、第一接触電極11,11′は、第一導体8,8′に電気的に接続され、ラックバー1の歯面3或いは背面4の長手方向の一端が第一接触電極11,11′の先端部(上端部)に当接配置されるようになっている。また、第二接触電極12,12′は、長尺の第二導体9,9′のうち、第一導体8,8′との組み合わせ部分とは反対側の端部に接続され、ラックバー1の歯面3或いは背面4の長手方向の他端が第二接触電極12,12′の先端部(上端部)に当接配設されるようになっている。一方、第一接触電極11,11′は、第一導体8,8′及び第二導体9,9′にビス50もしくはろう付などで固着され、第二接触電極12,12′は、第二導体9,9′にビス51もしくはろう付などで固着されている。
【0015】
また、近接導体14,14′は、図3,図4,図5,図6,図7及び図8に示す如く、銅材にてラックバー1の歯面3或いは背面4の形状・寸法にそれぞれ対応した中空箱形に形成されており、歯面3或いは背面4に対向する面には、焼入冷却水噴射孔71,71′が多数穿設されている。さらに、近接導体14,14′の一側面には、焼入水導入パイプ72,72′及び焼入水導出パイプ73,73′が溶着されている。
【0016】
上述の近接導体14,14′は、第二導体9,9′に接続され、かつ冷却水噴射孔71,71′はラックバー1の歯面3或いは背面4に近接されて対向配設されるようになっている。
【0017】
なお、図3及び図4において、16,16′は流体圧シリンダで、ステアリング用ラックバー1と一対の第一接触電極11,11′及び第二接触電極12,12′との接触を確実なものにするため、これらに対応するラックバー1部分を上方より押圧し得るように配設されている。また、高周波電源15,15′は一対の第一導体8,8′及び第二導体9,9′に接続されている。
【0018】
次に、上述の如き構成の高周波直接通電焼入装置20,21の作用について説明する。まず、ステアリング用ラックバー1の歯面3を焼入れする場合には、ラックバー1を図3に示す如く所定位置に設置した後に、高周波電源15より高周波電流を通電すると、高周波電流i1 は、第一導体8から第一接触電極11の手前において3方向、すなわち、第一導体8及び一対の分岐部43,44の3つの経過に分岐される。分岐後、ラックバー1の歯面3へは高周波電流i1 ′が第一接触電極11を通ってラックバー1の歯面3、第二接触電極12を順次経て第二導体9及び近接導体14の表面を通って再び第二導体9から高周波電源15へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。一方、分岐導体41,42には所定の分岐電流i1 ′′がそれぞれ流れ、単位導体10の第二導体9の他端へ接続された近接導体14の表面を通って再び第二導体9から高周波電源15へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。但し、上述の分岐電流i1 ′′はラックバー1の歯面3に流れる高周波電流i1 ′よりも可成り小さな値である。
【0019】
ここで、図9に示すように、高周波電源15より供給される電流をi1 、歯面3或いは背面4に流れる電流をi1 ′、分岐導体41,42に流れる分岐電流をi1 ′′、復帰後の電流をi2 とする。ラックバー1の歯面3に沿って流れる電流i1′と近接導体14に流れる電流i2 とは、発生する磁束が最小(回路インピーダンスが最小)になるように、相互にひっぱりあって接近して流れるように電流密度は分布する。
【0020】
また、ラックバー1の歯面3と近接導体14とで一つのコイルを形成し、図3に示すように歯面3に誘導電流(うず電流i1 ′′′)も流れる。一方、ラックバー1と分岐導体41,42とで一つずつのコイルを形成し、ラックバー1の側面(ワーク側面)にも誘導電流が流れることとなるが、分岐導体41,42にそれぞれ対向するラックバー1の側面に沿って流れるうず電流は、分岐導体41,42と前記ラックバー1の側面とは適度に大きな間隙をもって対向されているので、これらの分岐導体41,42へ分岐電流i1 ′′が流れても、発生する単位面積当たりの磁束は小さくなり、従ってワーク側面へ流れるうず電流は小さく、僅かな温度上昇があるのみである。
【0021】
図9及び図10は、ラックバー1の歯面3、近接導体14及び分岐導体41,42における高周波電流の流れを概念的に示している。図9において、誘導うず電流i1 ′′′は誘導電流の先端効果(凸部に磁束が集中して凸部にうず電流が多く流れる作用)により歯先に多く発生し、歯先には直接電流i1 ′とうず電流i1 ′′′の合成電流(i1 ′+i1 ′′′)が流れる。高周波電流の特徴である先端効果と近接効果とにより、歯面3における電流密度は、歯先は高く歯底は低くなり、歯面3の凸部は均一に加熱される一方、歯底は薄く加熱される。
【0022】
歯面3が所要の焼入温度に達したら、高周波電源15を遮断して高周波電流の供給を停止し、近接導体14の噴射孔71より焼入冷却水を前記歯面3に噴射し、この歯面3を急速冷却する。これに伴い、歯面3に所要の焼入硬化層を得ることができる。
【0023】
ステアリング用ラックバー1の背面4を焼入れする場合には、ラックバー1を図4に示す如く所定位置に設置した後に、高周波電源15′より高周波電流を通電すると、高周波電流i3 は、第一導体8′から第一接触電極11′の手前において3方向、すなわち、第一導体8′及び一対の分岐部43′,44′の3つの経過に分岐される。分岐後、ラックバー1の背面4へは高周波電流i3 ′が第一接触電極11′を通ってラックバー1の背面4、第二接触電極12′を順次経て第二導体9′及び近接導体14′の表面を通って再び第二導体9′から高周波電源15′へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。一方、分岐導体41′,42′には所定の分岐電流i3 ′′がそれぞれ流れ、単位導体10′の第二導体9′の他端へ接続された近接導体14′の表面を通って再び第二導体9′から高周波電源15′へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。但し、上述の分岐電流i3 ′′はラックバー1の背面4に流れる高周波電流i3 ′よりも可成り小さな値である。
【0024】
ここで、図11に示すように、高周波電源15′より供給される電流をi3 、背面4に流れる電流をi3 ′、分岐導体41,42に流れる分岐電流をi3′′、復帰後の電流をi4 とする。ラックバー1の背面4に沿って流れる電流i3 ′と近接導体14′に流れる電流i4 とは、発生する磁束が最小(回路インピーダンスが最小)になるように、相互にひっぱりあって接近して流れるように電流密度は分布する。
【0025】
この場合、ラックバー1の背面4と近接導体14′とで一つのコイルを形成し、図12に示すように背面4に誘導電流(うず電流i3 ′′′)も流れる。一方、ラックバー1と分岐導体41′,42′とで一つずつのコイルを形成し、ラックバー1の側面にも誘導電流が流れることとなるが、分岐導体41′,42′にそれぞれ対向するラックバー1の側面に沿って流れるうず電流は、分岐導体41′,42′と前記ラックバー1の側面とは適度に大きな間隙をもって対向されているので、これらの分岐導体41′,42′へ分岐電流i3 ′′が流れても、発生する単位面積当たりの磁束は小さくなり、従ってワーク側面へ流れるうず電流は小さく、僅かな温度上昇があるのみである。
【0026】
図11及び図12は、ラックバー1の歯面3、近接導体14及び分岐導体41,42における高周波電流の流れを概念的に示している。図11において、誘導うず電流i3 ′′′は誘導電流の先端効果(凸部に磁束が集中して凸部にうず電流が多く流れる作用)により歯先に多く発生し、歯先には直接電流i3 ′とうず電流i3 ′′′の合成電流(i3 ′+i3 ′′′)が流れる。
【0027】
図11及び図12に示すように、背面12においては、誘導うず電流i3 ′′′と直接電流i3 ′との合成電流(i3 ′′+i3 ′′′)が流れ、ワークは高周波電流の近接効果により背面4の電流密度は均一となり、ワークは均一に加熱される。一方、分岐導体41′,42′にはi3 ′′ずつの高周波電流が流れラックバー1の側面には直接電流i3 ′ずつが流れるが、分岐導体41′,42′と前記側面とが所要の間隙をもって大きくとられているため、この間隙に発生する磁束は粗となる。従って、高周波電流の近接効果は小さく、ラックバー1の側面に発生するうず電流は少なく、ラックバー1の側面の電流密度は低くこれらの両側面を僅かに加熱するに止まる。
【0028】
背面4が所要の焼入温度に達したら、高周波電源15を遮断して電周波電流の供給を停止し、近接導体14′の噴射孔71′より焼入冷却水を前記背面4に噴射し、この背面4を急速冷却する。これに伴い、背面4に所要の焼入硬化層を得ることができる。
【0029】
図13は、ステアリング用ラックバー1を軸線方向に切断した場合の焼入硬化層Tのパターンを示し、図14は図13においてW−W線(前記軸線方向に直交する面)にて切断した場合の焼入硬化層Tのパターンを示している。
【0030】
以上は本発明の焼入装置20,21によりステアリング用ラックバー1(ワーク)と第一及び第二接触電極11,12、11′,12′間とが接触状態を保っている場合の加熱時における作用につき説明したが、以下においては、本発明の焼入装置20,21においてステアリング用ラックバー1と第一及び第二接触電極11,12、11′,12′とが非接触状態となった場合の加熱時における作用につき、歯面3の焼入を例に説明する。
【0031】
ステアリング用ラックバー1を所定位置に設置し、高周波電源15より高周波より高周波電流の通電時にステアリング用ラックバー1と第一接触電極11或いは第二接触電極12のいずれか一方、もしくは両方の接触電極が非接触状態となった時、高周波電流i1 はラックバー1へは流れず2方向に分岐される。分岐後、各々1/2i1 ずつの高周波電流が分岐導体41,42へ流れ、単位導体10の他端の第二導体9へ接続された近接導体14の表面を通って再び第二導体9から高周波電源15へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。すなわち、ここで、高周波電源15より供給される電流をi1 、分岐後の電流を1/2i1 とし、復帰後の電流をi2 とすると、上述した如くラックバー1と第一又は第二接触電極11,12とが非接触状態になった時、前記高周波電流i1 ′はラックバー1へ流れず、分岐導体41,42のみに流れ、近接導体14を通って高周波電源15へと流れるか、またはその逆の経路で交互に流れることになる。
【0032】
この際には、分岐導体41,42と近接導体14とでコイルが形成され、分岐導体41,42に対向するラックバー1の側面、近接導体14に対向する歯面3には誘導電流が流れ、ラックバー1を誘導加熱することとなる。従って、ラックバー1への高周波電流の通電時或いは通電中にラックバー1と第一及び第二接触電極とが非接触状態になったとしても、これらの間でスパークの発生は起こらず、高周波電源15を構成するトランジスタの破損を未然に防ぎ得る。以上については背面12についても同じ作用となる。
【0033】
以下に前記実施例の具体的な加工条件を述べる。
加工条件
(1) ラックバーの寸法
〈ア〉全長 : 620mm
〈イ〉焼入部: 175mm
〈ウ〉外径 : 32mm
〈エ〉歯高 : 5mm
〈オ〉歯幅 : 18mm
(2) 高周波焼入条件
加熱条件
〈ア〉高周波電源 : トランジスタ・インバーター
〈イ〉周波数: 200kHZ
〈ウ〉出力 : 歯面及び背面ともに182kW
〈エ〉加熱時間:歯面及び背面ともに5.0秒
冷却条件
〈ア〉冷却数: ユーコンクエンチャント10%
〈イ〉流量 : 歯面及び背面ともに60 l/min
〈ウ〉冷却時間:歯面及び背面ともに12秒
【0034】
また、本発明に係る焼入装置20,21と従来型の焼入装置5,6とを用いてステアリング用ラックバー1の歯面3及び背面4を高周波焼入れした場合の比較例を以下に示す。なお、この比較例は、同一の焼入れ深さの焼入れパターンを得るようにした場合である。
【0035】
この実験結果から、本発明の装置によれば、従来の装置の場合に比べて1割台の比較的少ない電力アップにて稼働することができることが確認された。
【0036】
以上、本発明の一実施例につき述べたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施例では、被焼入体であるステアリング用ラックバー1の両側面に沿って延びる一対の分岐導体41,42(又は41′,42′)を設けるようにしたが、場合によっては、一方の分岐導体41又は41′のみ、或いは42又は42′のみを設けるようにしても良い。また、本発明はステアリング用ラックバー1に限らず、各種の用途のラックバーの焼入にも適用できることは言う迄もない。
【0037】
【発明の効果】
以上の如く、本発明は、第一導体から分岐され、前記ラックバーの歯面及び背面の側面に対しその長手方向に沿って間隙をもって対向配置され、この長手方向に延びる前記単位導体の第二導体の他端に接続される分岐導体、を付設したものであるから、本発明の構成によれば、ラックバー(ワーク)とこのラックバーに接触配置される接触電極とが非接触状態となっても、高周波電流はラックバーに流れることなく分岐導体へ流れることとなる。このため、ラックバーと接触導体との間でスパークを発生することがなくなり、従って、高周波電源がトランジスタにて構成される場合にはこのトランジスタの損傷を防止することができる。よって、本発明に係る高周波直接通電焼入装置は、実用的で利用価値が高く、産業上極めて有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波直接通電焼入装置を示すものであって、ステアリング用ラックバーの歯面を焼入れするための装置の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る高周波直接通電焼入装置を示すものであって、ステアリング用ラックバーの背面を焼入れするための装置の構造を示す斜視図である。
【図3】図1の高周波直接通電焼入装置(表面焼入装置)の側面図である。
【図4】図2の高周波直接通電焼入装置(背面焼入装置)の側面図である。
【図5】図3におけるA−A線断面図である。
【図6】図3におけるB−B線断面図である。
【図7】図4におけるX−X線断面図である。
【図8】図4におけるY−Y線断面図である。
【図9】ラックバーの歯面、近接導体及び分岐導体にそれぞれ流れる高周波電流を示す拡大断面図である。
【図10】図9におけるM−M線断面図である。
【図11】ラックバーの背面、近接導体及び分岐導体にそれぞれ流れる高周波電流を示す拡大断面図である。
【図12】図11におけるN−N線断面図である。
【図13】本発明に係る焼入装置にて焼入れされたラックバーの焼入硬化層パターンを示すラックバーの断面図である。
【図14】図13におけるW−W線断面図である。
【図15】被焼入体であるステアリング用ラックバーの側面図である。
【図16】従来の高周波直接通電焼入装置(表面焼入装置)の側面図である。
【図17】従来の高周波直接通電焼入装置(背面焼入装置)の側面図である。
【符号の説明】
1 ステアリング用ラックバー
2 斜歯
3 歯面
4 背面
7,7′ 電気的絶縁材
8,8′ 第一導体
9,9′ 第二導体
10,10′ 単位導体
11,11′ 第一接触電極
12,12′ 第二接触電極
13,13′ 冷却手段
14,14′ 近接導体
15,15′ 高周波電源
16,16′ 油圧シリンダ
20,21 高周波直接通電焼入装置
41,42,41′,42′ 分岐導体
71,71′ 焼入冷却水噴射孔
Claims (1)
- (a) 電気的絶縁材を介して第一導体と第二導体とを組み合わせて成り、被焼入体であるラックバーの歯面或いは背面に対向して配置される単位導体と、
(b) 前記単位導体の第一導体に接続され、前記歯面或いは背面の長手方向の一端に当接配置される第一接触電極と、
(c) 前記単位導体の第二導体に接続され、前記歯面或いは背面の長手方向の他端に当接配置される第二接触電極と、
(d) 前記第一導体に接続されて前記単位導体の第一接触電極と第二接触電極との間の領域において前記歯面或いは背面に近接して配設され、かつ前記歯面及び背面に冷却水を噴出しうる冷却手段を備えた近接導体と、
(e) 前記一対の第一導体と第二導体とが接続される高周波電源と、
をそれぞれ具備し、高周波直接通電焼入によりラックバーの歯面或いは背面を焼入するラックバーの高周波直接通電焼入装置において、
(f) 前記第一導体から分岐され、前記ラックバーの歯面及び背面の側面に対しその長手方向に沿って間隙をもって対向配置され、この長手方向に延びる前記単位導体の第二導体の他端に接続される分岐導体、
をさらに具備せしめたことを特徴とするラックバーの高周波直接通電焼入装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP34684196A JP3860634B2 (ja) | 1996-12-26 | 1996-12-26 | ラックバーの高周波直接通電焼入装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP34684196A JP3860634B2 (ja) | 1996-12-26 | 1996-12-26 | ラックバーの高周波直接通電焼入装置 |
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JPH10183234A JPH10183234A (ja) | 1998-07-14 |
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Family Applications (1)
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JP34684196A Expired - Lifetime JP3860634B2 (ja) | 1996-12-26 | 1996-12-26 | ラックバーの高周波直接通電焼入装置 |
Country Status (1)
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-
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- 1996-12-26 JP JP34684196A patent/JP3860634B2/ja not_active Expired - Lifetime
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