JPH066153B2 - 創傷被覆材 - Google Patents

創傷被覆材

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JPH066153B2
JPH066153B2 JP2089487A JP8948790A JPH066153B2 JP H066153 B2 JPH066153 B2 JP H066153B2 JP 2089487 A JP2089487 A JP 2089487A JP 8948790 A JP8948790 A JP 8948790A JP H066153 B2 JPH066153 B2 JP H066153B2
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KATAKURA CHITSUKARIN KK
Koken Co Ltd
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KATAKURA CHITSUKARIN KK
Koken Co Ltd
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は創傷被覆材に関するものである。更に詳しくは
透湿性の優れたポリウレタン樹脂フィルム(以後ポリウ
レタンフィルムと略す)と、人工皮膚として組織細胞の
生育に効果があるキトサン誘導体とコラーゲン誘導体か
らなる生体由来材料シートの2層からなる創傷被覆材に
関する。
〔従来の技術〕
創傷被覆材として主として要求される性能は密着性、
柔軟性、耐久性、取扱いの簡便性、保存性、
細菌遮断性、細胞との親和性、止血性、水分蒸発
制御性等である。
しかしながら、従来、創傷被覆材としては、例えばキト
サン、コラーゲン、キトサン−コラーゲン複合材料等が
用いられているがある面では要求性能を満足しても、他
面では要求を満足できないという欠点を有していた。
(特開昭61−253065) 〔発明が解決しようとする課題〕 例えばキトサン誘導体やコラーゲン等からなる生体由来
材料だけのシートでは、湿潤時に於ける機械的強度が低
く、このため一部が使用中に割れたり、更には縫合部の
針穴から欠落したりする。また使用後の剥離が悪く、無
理をして創面を損傷することもある。又、生体由来材料
シートとシリコーン膜を複合化したシートにおいては水
分蒸発制御性に乏しく、被覆材下に滲出液の貯留をまね
く危険性が大きい。これを改良するため薄膜化すること
も可能であるが、取扱いの簡便性に欠ける。
〔発明の目的〕
本発明は生体由来材料だけのシートの欠点と複合シート
にすることにより生ずる欠点を解決することを目的とす
る。即ち、密着性、柔軟性、耐久性、取扱いの
簡便性、保存性、細菌の遮断性、細胞との親和
性、止血性、水分蒸発制御性、縫合性、創傷面
からの剥離性等の創傷被覆材として要求される性能を全
部満足する創傷被覆材を提供する事を目的とする。
更に詳しくは、創傷被覆材使用初期には、滲出液の発生
が多く、このドレナージ(浸出液の排出)を良くするた
め、複合シートに機械的に小さな穴を開け浸出液の貯留
を防止する。創傷被覆材使用後、しばらくすると滲出液
の発生が少なくなり、この液の固化により、穴は閉ざさ
れる。このためそれ以降複合シート自体に高い透湿性が
要求される。
具体的には例えば熱傷の場合、創面からの水分のロスは
熱傷I度で300gHO/m2・24hrs,II度で4
300gHO/m2・24hrs,III度では3400
gHO/m2・24hrsと言われている。(L.O.
Lamke Burns. P159〜165) 従来、柔軟性、耐久性、取扱い性を満足し、しかも、透
湿性として前記透湿度を満足させる物はない。例えば創
傷被覆材に使用されているシリコーン樹脂膜においては
1000〜1700gHO/m2・24hrsであり、
充分な透湿性能を有していない。
キトサンは、キチンを濃アルカリ処理により脱アセチル
化したものであり、N−アセチル−D−グルコサミンと
D−グルコサミンからなる複合多糖類であって、脱アセ
チル化の程度によってN−アセチル−D−グルコサミン
とD−グルコサミンの比率の種々異なったものが調製で
きる。
牛皮あるいは豚皮由来のコラーゲンは生体の結合組織の
主要成分であり、細胞の基質として最も適しているため
に、生体適合性が極めて優れている材料である。また、
コラーゲンは抗原性が比較的低いので、医用材料として
広く使用されている。さらに、これらの不溶性コラーゲ
ン(トロポコラーゲン)を蛋白質加水分解酵素で処理
し、分子末端の非ヘリックス部分(テロペプタイド)を
除去したものは抗原性が極めて低く、アテロコラーゲン
と呼ばれる。アテロコラーゲンは、その抵抗原性のため
に、現在使用されている医用材料のうちで、その生体適
合性が最も優れているなどの際だった特徴を有する。
キトサンとコラーゲンの特徴を生かして、それぞれの欠
点を補なうために、キトサン−コラーゲン複合材料が知
られている。(特開昭56−133344号公報) しかしながらキトサンは生体に存在しない多糖類であ
り、生体にとって明らかに異物であるので、これをその
まま生体に適用すると、コラーゲンに比べて大きな異物
反応が起る。それ故キトサン単独では、医用材料として
の応用が困難であり、キトサンを化学修飾して得られる
キトサン誘導体、あるいはコラーゲンとの複合化により
生体適合性を向上する方法が検討されている。
キトサンを化学的に修飾したキトサン誘導体、なかでも
N−サクシニル化キトサンは医用材料として充分に使用
できることを見出し、さらにこれらのキトサン誘導体と
コラーゲンを組合せると、臨床的に実用しうることが見
出されている。
以上より、密着性、柔軟性、耐久性、取扱いの簡便性、
保存性、細菌遮断性、細胞との親和性、止血性、良好な
縫合性、創傷面からの剥離性を有し、しかも、水分蒸発
制御性を有する創傷被覆材を提供することを目的とす
る。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明は、創傷被覆材として、透湿性の優れ
たポリウレタンフィルムを表面材とし、キトサン誘導体
とコラーゲンとからなるスポンジ状シートを創面接触材
として貼合せた複合材を用いるものである。その要旨は
エチレンオキサイド単位を20〜80重量%含有し数平
均分子量が800〜3000であるテトラヒドロフラン
とエチレンオキサイドとのランダム共重合物をジイソシ
アネートと反応させ、鎖延長剤で鎖延長し、得られるポ
リウレタン樹脂を製膜してなるフィルムとキトサン誘導
体とコラーゲンを含有するスポンジ状シートとの2層を
有する創傷被覆材に存する。
本発明における上記エチレンオキサイド単位とは、テト
ラヒドロフランとエチレンオキサイドに対するエチレン
オキサイドの割合を重量百分率で表したものである。
本発明のポリウレタンフィルムに用いるポリウレタン樹
脂は、ポリオール成分としてテトラヒドロフラン(以後
THFと略す)とエチレンオキサイド(以後EOと略
す)とのランダム共重合物を必須とする。この共重合物
は水やエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等
の短鎖ジオールを開始剤としてTHFとEOとの混合物
を三フッ化ホウ素エーテル錯塩等のルイス酸触媒の存在
下で開環共重合することによって合成される。
THFとEOとのランダム共重合物中に占めるEO単位
の含有率は、ポリウレタンとした場合の吸水時の膨潤お
よび物性低下を小さくするため20〜80重量%であ
り、好ましくは30〜70重量%である。更に好ましく
は40〜60重量%である。THFとEOとのランダム
共重合物の数平均分子量としては800〜3000のも
のを用いる。数平均分子量が800より小さいとポリウ
レタンフィルムが硬く、3000より大きいと粘着性が
大きく吸水による膨潤も増大する。最も良好な皮膜物性
を得るには数平均分子量は1000〜2500のものが
好ましい。
また、必要によりTHFとEOのランダム共重合物にポ
リテトラメチレンエーテルグリコール(以後PTMGと
略す)を混合して用いてもよい。この場合加えるPTM
Gの数平均分子量としては800〜3000のものを使
用し、ポリオール混合物の数平均分子量は800〜30
00、更に物性のバランスのとれたポリウレタンフィル
ムを得るには1000〜2500とするのが好ましい。
なお、前述のTHFとEOとのランダム共重合物は重合
時に生じる部分的なブロック共重合構造を一部ポリオー
ル鎖中に含んでいても本発明の意に反するものではな
い。
THFとEOとの共重合物としては、上記の他にTHF
を開環重合したPTMGへEOを付加したり、またはE
Oを開環重合したポリエチレングリコール(以後PEG
と略す)へTHFを付加してブロック共重合物を得るこ
ともできるが、これらのブロック共重合物を用いたポリ
ウレタンは構造中に親水性の強いEOのホモポリマー長
鎖を含むことによりPTMGにPEGを混合して用いた
場合と同様にポリウレタン全量に占めるEO含有率の増
加に伴って吸水による膨潤が著しく増大する傾向があり
実用上問題である。
前述のTHFとEOとのランダム共重合物をポリウレタ
ンのポリオール成分に使用すると驚くべきことにTHF
とEOのブロック共重合物やPTMGとPEGの併用系
に比べEO単位の増加による吸水率の増加が少ないにも
かかわらず高い透湿性を示すことを見い出したものであ
る。
本発明で目的とするポリウレタン樹脂を得るには上記特
定のポリオールに対し過剰当量のジイソシアネートを7
0〜120℃で反応させ、末端にイソシアネート基をも
つウレタンプレポリマーとした後、有機溶媒中で20〜
100℃において鎖延長剤により鎖延長する方法が通常
用いられる。ここで、ウレタンプレポリマーにおけるジ
イソシアネートとポリオールとの当量比は通常1.5〜
6:1であるが、良好な物性と透湿性を兼備させるには
1.8〜4.5:1とすることが好ましい。
本発明で用いられるジイソシアネートとしては4,4′
−ジフェニルメタンジイソシアネート,2,4−および
2,6−トリレンジイソシアネート,1,5−ナフタレ
ンジイソシアネート,m−およびp−フェニレンジイソ
シアネート等の芳香族ジイソシアネート,イソホロンジ
イソシアネート,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジ
イソシアネート,1,4−シクロヘキシレンジイソシア
ネート,トリレンジイソシアネートの水添加物等の脂環
式ジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート
等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
これらのうち無黄変で機械的物性が良好な点で好ましい
のは脂環式ジイソシアネートである。これらは通常単独
で用いるが、2種以上を併用してもかまわない。また、
脂環式ジイソシアネートの中では、4−4′−ジシクロ
ヘキシルメタンジイソシアネートから得られるフィルム
の機械的物性と透湿性のバランス上から最も好ましい。
本発明で用いられる鎖延長剤としては、エチレングリコ
ール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,
1,4−ブタンジオール,1,6−ヘキサンジオール等
の低分子ジオール,エチレンジアミン,1,2−プロパ
ンジアミン,テトラメチレンジアミン,ヘキサメチレン
ジアミン等の脂肪族ジアミン,イソホロンジアミン,
4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン,3,3′
−ジメチル−4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミ
ン,1,4−シクロヘキシレンジアミン等の脂環式ジア
ミン,含水ヒドラジン,水等が挙げられる。
これらのうちポリウレタン溶液の安定性、得られるフィ
ルムの耐熱性が良い点で脂環式ジアミンが好ましく、単
独または2種以上を併用して用いることができる。更
に、フィルムの機械的物性、耐熱性等をあまり低下させ
ない範囲で上記の低分子ジオールを併用してもかまわな
い。脂環式ジアミンの中では溶液安定性、フィルムの諸
物性のバランスからイソホロンジアミンが特に好まし
い。
本発明のポリウレタン合成に用いる有機溶媒としてはジ
メチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,ジメチル
スルホキシド等の溶解力の強い溶媒が適するが、これら
は単独またはトルエン,キシレン等の芳香族系溶媒、メ
チルエチルケトン,アセトン,シクロヘキサノン等のケ
トン系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチル等の酢酸エステル
系溶媒、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロ
フラン,ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール,
イソプロパノール等のアルコール系溶媒の中から選ばれ
る1種または2種以上と混合して用いることもできる。
以上のようにして得られるポリウレタン樹脂はエチレン
オキサイド単位をポリウレタン全量中に15〜60重量
%含有することが好ましく、エチレンオキサイド単位が
15重量%より少ないと皮膜の透湿性が不十分であり、
60重量%より多いと吸水時の膨潤による寸法変化や物
性低下が大きいため好ましくない。
また、本発明においてポリウレタン合成時に必要により
トリエチレンジアミン等の第3級アミンやジブチルチン
ジラウレート等の有機スズ化合物のような通常ウレタン
化反応の促進に使用される触媒を存在させてもよい。
更に、本発明のポリウレタン樹脂の耐久性を向上させる
目的でヒンダードフェノール系酸化防止剤,ベンゾフェ
ノン系またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,ヒン
ダードアミン系安定剤を1種または2種以上を予め含有
させてもよい。この場合、各添加剤はポリウレタン固形
分に対し0.05〜3重量%加えるが、少量で良好な効
果を得るには0.2〜1重量%が好ましい。本発明のポ
リウレタンにおいてはヒンダードアミン系安定剤が特に
有効で滅菌処理時の酸化劣化及び加水分解等に対しても
物性の低下を小さくすることが可能である。
製膜方法について言及すると、多孔化により透湿性の高
いポリウレタン膜が得られることは公知であり、その方
法として、 (1) 支持体上にポリウレタン樹脂溶液を塗布し、凝固
浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法 (2) ポリウレタン樹脂の油中水型エマルジョンを支持
体上に塗布し、加熱乾燥により多孔質膜を得る方法 等がある。
ポリウレタン樹脂溶液から非多孔性フィルムを得るには
この溶液を支持体や離型紙に塗布し、加熱乾燥により乾
式製膜することで安定した透湿性を再現よく得ることが
でき、単独膜でも実用上十分な強度,伸び,耐久性のあ
るものが得られる。したがって、異物の透過を嫌う医療
用粘着フィルムや衛生材料、その他透湿性素材として極
めて有用である。
乾式製膜する際に用いる支持体としては特に限定されな
いが、ポリエチレン又はポリプロピレンフィルム,フッ
素系あるいはシリコーン系の離型剤を塗布した離型紙あ
るいは布綿等が用いられる。
本発明のシート状物の透湿性能はフィルムの厚みと逆相
関にあり、均一な厚みを有する離型紙を用いるのが望ま
しい。塗布方式は特に限定されないが、ナイフコータ
ー、ロールコーターの何れも利用できる。乾燥温度は乾
燥機の能力により任意に設定できるが、乾燥不十分、あ
るいは急激な脱溶媒がおこらない温度範囲を選ぶ事が必
要である。好ましくは60〜130℃の範囲である。
形成されるフィルムの厚みは通常10〜200μm、好
ましくは10〜80μmである。10μm以下では塗布
の際ピンホールができやすく、またフィルムがブロッキ
ングしやすく取り扱いにくい。80μm以上では十分な
透湿性を得にくい傾向がある。更につけ加えると本発明
のフィルムは透湿性の膜厚依存性が、他のウレタン系フ
ィルムと比べて小さいことが特徴である。
本発明のフィルムは、透湿度が、10〜80μmの厚み
において2,000g/m2・24hr以上、好ましくは
3,000g/m2・24hr以上を有し、(JIS Z
0208による測定)、高い透湿性能を有する。これ以
下では皮フに貼付した際ムレを生じ不快感を与えるので
好ましくない。また100%モジュラスは20kg/cm2
以上であり、好ましくは30kg/cm2以上である。10
0%モジュラスが20kg/cm2以下ではフィルムの粘着
性が大きく、フィルム同志がブロッキングを起こし易
い。また80kg/cm2以上では柔軟性に乏しくなり、透
湿性も低下する傾向がある。
本発明のキトサン誘導体およびコラーゲンとからなる生
体由来材料シートの一成分であるキトサン誘導体は、キ
トサンをサクシニル化することによって得られるが、N
−サクシニル化キトサンの調製に使用するキトサンは、
キチンを濃アルカリによる脱アセチル化して得られたも
のであって、酸に溶解するものであれば、いかなるもの
であっても、これを使用することができるが、脱アセチ
ル化度が少なくとも45%であるものを使用するのが好
ましい。
N−サクシニル化キトサンは、キトサンをカルボン酸無
水物と反応させて、キトサンのN−サクシニル化を行な
うことによって調製されるが、キトサンにコラーゲンを
加えた後に、キトサンのN−サクシニル化を行なうこと
によって調製することもできる。更にN−アシルキトサ
ンおよびコラーゲンの複合材におけるN−アシルキトサ
ンは、キトサンのアミノ基を炭素数1〜32の飽和また
は不飽和脂肪酸、および/または炭素数2〜8のジカル
ボン酸で修飾したキトサン誘導体であることができ、ま
たこのN−アシルキトサンはN−アセチルキトサンまた
はN−サクシニルキトサンであることもできる。
本発明のキトサン誘導体およびコラーゲンとからなるス
ポンジ状シートにおけるコラーゲンは、生体適合性を向
上したアテロコラーゲン、またはコラーゲンに化学的な
処理を施したコラーゲン誘導体のいかなるものであって
も、これを使用することができる。たとえばコラーゲン
をコハク酸無水物で処理したサクシニル化コラーゲンは
抗血栓性に優れており、またコラーゲンを無水メタノー
ルで処理したメチル化コラーゲンは、血小板との反応を
増大するなどのそれぞれに特有の特性を有するので、そ
の特性に応じて目的に適った医用材料を得ることができ
る。
コラーゲンの化学的修飾は、コラーゲンと種々の化学試
薬との反応によって行なわれるが、コラーゲンをキトサ
ン誘導体と混合した後に行なうこともできる。そしてコ
ラーゲンの化学的修飾を行なう試薬がカルボン酸無水物
である場合は、キトサンにコラーゲンを加えて得た複合
材料をカルボン酸無水物と反応させてキトサンのN−サ
クシニル化とコラーゲンのN−サクシニル化を同時に行
なうこともできる。
コラーゲンの化学的修飾は、主としてコラーゲンのアミ
ノ基またはカルボキシル基に対して行なわれるが、コラ
ーゲンのアミノ基またはカルボキシル基に対して5〜1
00%(好ましくは30〜100%)の化学的修飾を施
すのが好ましい。
本発明のキトサン誘導体およびコラーゲンからなるスポ
ンジ状シートに、コンドロイチン、コンドロイチン−4
−硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン−6−硫酸ま
たはヒアルロン酸を加えることによってさらに保水性を
付与することができる。これらのムコ多糖類は皮膚など
に含まれていて、水分の保持に重要な役割を果してい
る。
また本発明のキトサン誘導体およびコラーゲンのスポン
ジ状シートにフイブロネクチンまたはフイブリンを加え
ることによって創傷部の修復を促進することができる。
さらに本発明のキトサン誘導体およびコラーゲンのスポ
ンジ状シートにヘパリンまたはプロタミンを加えること
によって血液との反応を制御することができる。
新しい医用材料を開発するには、生体適合性を向上する
ことが必要であって、これまでに説明した化学的修飾や
生体の有用成分の添加は、この点において目的に適って
いる。
本発明の複合材料は、以上に説明したキトサン誘導体お
よびコラーゲンの溶液、分散液またはゲルを乾燥するこ
とによって造られるが、前記の複合材の溶液または分散
液をガラス板などの基体の表面に塗布した後乾燥する
と、フィルム状(シート状)または膜状の材料を造るこ
とができ、また前記の複合材料を凍結乾燥すると、スポ
ンジ状のシート材料を造ることができる。
本発明のキトサン誘導体およびコラーゲンのシートの複
合材料を二官能性の架橋剤で処理するか、または放射線
を照射することによって架橋し、それによって材料の強
度や吸水性を向上することができる。
当複合材料の架橋における二官能性の架橋剤は、二以上
の官能基を有するものであれば、いかなるものであって
も、これを使用することができるが、ヘキサメチレンジ
イソシアナート、グルタルアルデヒド、あるいはポリエ
ポキシ化合物を使用するのが好ましい。本発明で使用す
るポリエポキシ化合物とは親水性架橋剤であってグリセ
ロール(重合度1〜3)のジグリシジルエーテル、ポリ
オールのポリグリシジルエーテル、特にグリセロールジ
グリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエー
テル、ジグリセロールテトラグリシジルエテール及びエ
チレングリコールグリシジルエーテルが好ましい。キト
サン誘導体およびコラーゲンの混合体をフィルム状、膜
状またはスポンジ状に成形した後、成形品を架橋剤の溶
液に浸漬するか、あるいは成形品に放射線を照射し、そ
れによって架橋反応を行なわせる。放射線としては、紫
外線、ガンマ線またはアルファ線などの粒子線のいかな
るものであっても、これを使用することができるが、紫
外線またはガンマ線を使用するのが好ましい。
本創傷被覆材において、抗菌剤を担持させることによ
り、抗菌効果を持たせた創傷被覆材としても良い。抗菌
剤を担持させる方法として、例えば、生体由来材料のシ
ートを作製する際、生体由来材料中に、予め、抗菌剤を
所定量分散させ生体由来材料シートを作製する方法や、
ポリウレタンフィルム中に抗菌剤を所定量分散させる方
法、ポリウレタンフィルムと生体由来材料の中間層に何
らかの方法、例えばポリウレタンフィルムと同じウレタ
ン樹脂中に抗菌剤を所定量分散させて、ポリウレタンフ
イルム/抗菌剤分散ポリウレタン層/生体由来材料の三
層構造でも良い。抗菌剤としてはサルファ剤系、セファ
ロスポリン系、ペニシリン系、ナリジキシン酸系のもの
が使用できる。
複合シートの作製方法としては、ポリウレタンフィルム
の表面を適度に膨潤させる有機溶媒、例えばメタノール
等のアルコール類、その他の溶媒で膨潤させた後に生体
由来材料シートと貼合せて乾燥させる方法が通常用いら
れる。
本複合シートは創傷面に生体由来材料面を当てて使用す
る。本材料は優れた生体適合性を有するので創傷面と密
着性が良く、なおかつ生体細胞の本機構への過度の進入
が無いため、治癒後は創傷面を傷めず剥すことが出来
る。特に皮膚移植を必要とする場合、適切な移植床を作
る事が出来る。更にポリウレタンフィルム中、生体由来
材料中又はウレタンフィルムと生体由来材料中間層に含
まれる抗菌剤が徐々に放出されるので外部からの菌の進
入を阻止し創傷面の感染を抑止する。
〔実施例〕
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例
の内容に限定されるものではない。
<製造例1〜4>THF・EOランダム共重合物の製造 表−1に示す処方によりオートクレーブ中で開始剤にエ
チレングリコール、酸触媒にBF・エチルエーテル錯
塩を用い、THFとEOとを常圧、30℃においてラン
ダム共重合させた。重合後、生成物中の酸触媒をアルカ
リ中和処理し、沈澱物をろ過し、更に100℃で乾燥窒
素を吹込むことにより脱水した。
得られたA,B,C,Dの4種類のTHF・EOランダ
ム共重合物(以後ポリオールと呼ぶ)は全て無色透明な
液体であり、数平均分子量及びEO含有率は表−1に示
す通りであった。
尚、数平均分子量はOH価測定により算出、EO含有率
は仕込量から算出した。
<製造例5〜8>ポリウレタン樹脂の製造 a)ポリウレタン溶液の製造 表−1に示されるA,B,C,Dのポリオールを用い、
表−2に示す処方により4,4′−ジシクロヘキシルメ
タンジイソシアネートと各ポリオールを乾燥窒素下にお
いてフラスコ中で100℃で6時間反応させ末端にイソ
シアネート基をもつウレタンプレポリマーとした後、ジ
メチルホルムアミド溶媒中で鎖延長剤にイソホロンジア
ミンを用い温度30℃に保ちながら2時間鎖延長反応を
行ないポリウレタン固形分濃度25wt%の無色透明で粘
稠なポリウレタン溶液を得た。これらの温度25℃での
粘度は各々、35,000cps,20,000cp
s,15,000cps,16,000cpsであっ
た。
b)ポリウレタンフィルムの作製 上述のポリウレタン溶液を1wt%濃度になるようにメタ
ノールで希釈し、このメタノール溶液にシルバースルフ
ァジアジン、ゲンタマイシン、あるいはポリミキシンB
などの抗菌剤を0.01wt%〜0.1wt%の濃度範囲で
混合する。この混合溶液をスペーサーを設けたガラス板
上に流し、ガラス棒により引き伸ばし均一な厚さに塗布
した後、80℃で一昼夜乾燥させ無色透明なポリウレタ
ン乾式フィルムを得た。この時、フィルムの厚さは約3
0μとなるようスペーサーによって調節した。また、フ
ィルム厚の変化による透湿度の差を調べる場合は10〜
100μの間で厚さの異なるフィルムを別に作製した。
得られたフィルムは性能試験のため23℃、60%RH
の恒温恒湿室で養生させた。
<製造例9>キトサンの調整 紅ズワイガニの甲羅の粉砕品200gを5%塩酸2に
入れて、室温において、5時間撹拌した後、溶液を濾過
し、残さの固形物を水洗した。この固形物を5%水酸化
ナトリウム水溶液2に入れ、撹拌しながら90℃に
2.5時間加熱した後、溶液を濾過し、残さの固形物を
水洗した。
ここに得られたキチンを50%水酸化ナトリウム水溶液
2に入れ、撹拌しながら90℃に2.5時間加熱した
後、溶液を濾過し、沈降した固形物を充分に水洗し、そ
して95℃において乾燥し、脱アセチル化度99%のキ
トサン41gを得た。
<製造例10>N−サクシニルキトサンの調製 製造例9のキトサン2gを8%酢酸水溶液40mlに溶
解した後、これを160mlのメタノールへ希釈した。
これとは別にコハク酸無水物1.4g(キトサンのアミ
ノ基1モルに対して0.98モルに相当する)をアセト
ン50mlに溶解し、得られたコハク酸無水物のアセト
ン溶液の全量を前記のキトサン溶液に加え、一夜放置し
た。沈デン物を濾過した後、乾燥してN−サクシニルキ
トサンの粉末2gを得た。このN−サクシニルキトサン
のアミノ基の修飾率は35%であった。
<製造例11>コラーゲンの調製 新鮮な子牛の真皮を微細に粉砕し、この微細粉100g
を0.1M酢酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した
後、水洗して不溶性コラーゲンを得た。
<製造例12>スポンジの調整 前述したN−サクシニルキトサン2.625gをパイロ
ジェンフリー水に溶解し、1N塩酸でpH3に調整し12
5gとした。
前記で得られた不溶性コラーゲン1.125gをパイロ
ジェンフリー水に懸濁し1N塩酸でpH3に調整し125
gとした両液を混合しよく撹拌した後、トレイに分注し
凍結乾燥して100mm×100mm×2mmのスポンジ12
枚を得た。
本スポンジをメタノール、第二りん酸ナトリウム混合液
中で中和後、ヘキサメチレンジイソシアネートを溶解し
たメタノール中に浸漬して架橋を導入した。本スポンジ
を再度凍結乾燥後、スチレンオキサイドガスで滅菌を行
ないサクシニル化キトサンと不溶性コラーゲン複合体の
多孔シートを得た。
<製造例13>ポリウレタンフィルムとスポンジとの貼
り合せ 前記のようにして得られたキトサン誘導体とコラーゲン
とからなるスポンジ状シートにメタノールを少量吸収さ
せた後、(製造例5〜8)の(b)で得られた25μ厚の
ポリウレタンフィルムと貼り合せ乾燥させる事により複
合シートを得た。このシートを剣山を用い穴を開け、多
孔複合シートにした。
<実施例1〜3> 前記で得た貼り合せ多孔複合シートをエチレンオキサイ
ドガスで滅菌処理した後、以下の試験に供した。
ラット(SPラット6〜8週齢)の背部皮膚全層欠損創
(直径35mm)を外科的に作成し、0.4mmφ太さのス
テンレスリングを縫合(16針)した。ここに得られた
複合シートを当て、その上に保湿性パットと脱脂綿を当
て、エステックバンドで包帯した。1週及び2週後に生
体密着性、真皮層の再建を組織学的に検討し、有効性を
確認した。
それらの結果を表−5に示すが、治癒効果はいずれも良
好であり、創傷被覆材として適当であることがわかっ
た。
(発明の効果) 本発明の創傷被覆材は密着性,柔軟性,耐久性,取扱い
の簡便性,保存性,細菌遮断性,生体との親和性,止血
性,水分蒸発制御性等に優れ、実用上大変優れたもので
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神波 康夫 東京都千代田区丸の内2丁目5番2号 三 菱化成株式会社内 (72)発明者 宮田 暉夫 東京都目黒区中根2丁目11番21号 高研バ イオサイエンス研究所内 (72)発明者 水田 陽一 東京都千代田区大手町1丁目2番3号 片 倉チッカリン株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エチレンオキサイド単位を20〜80重量
    %含有し数平均分子量が800〜3000であるテトラ
    ヒドロフランとエチレンオキサイドとのランダム共重合
    物をジイソシアネートと反応させ、鎖延長剤で鎖延長
    し、得られるポリウレタン樹脂を製膜してなるフィルム
    とキトサン誘導体とコラーゲン誘導体を含有する多孔シ
    ートとの2層を有する創傷被覆材。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載の創傷被覆材に
    おいて、ポリウレタン樹脂フィルム又はキトサン誘導体
    とコラーゲン誘導体を含有するシートに抗菌剤を含有さ
    せた創傷被覆材。
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