JPH0659357B2 - 洗濯機の減速装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ （産業上の利用分野） 本発明は、モータにより駆動される入力軸の回転を遊星
歯車機構により減速して洗い用の攪拌体等に連結される
出力軸に伝達する洗濯機の減速装置に関する。

（従来の技術） 洗濯機におけるこの種の減速装置としては、例えば特開
昭５６−１２１５９２号公報に示されたものがあり、こ
れは、ケース内に内歯車，太陽歯車，遊星歯車及びこの
遊星歯車を支持する回転体を収納して予めユニット化し
ておき、組立時に入力軸を太陽歯車に連結すると共に、
出力軸を回転体に連結するという構成のものである。

（発明が解決しようとする問題点） しかしながら上記構成のものでは、ケース内に本来的に
径大な内歯車を収納する構成であるため、そのケースは
特に径方向に大形となり、ひいては減速装置全体が大形
となっている。然るに、洗濯機にあっては近時布傷み等
の防止のために高速回転形のパルセータに代えてこれよ
りも径大でしかも低速度で回転されるパルセータを使用
する傾向にあるため、減速装置の減速比を大きくしたい
という要求があるが、この要求を満たすには、上記内歯
車を更に径大にする必要があり、これによりケースひい
ては減速装置の大形化及び重量の増大化を招来する欠点
がある。

また、上記公報のものでは、歯車等（内歯車、太陽歯
車、遊星歯車、回転体）を収納するケースは上向きに開
放し、そのケースに対して蓋を上から取り付けるという
構成であるため、減速装置に対して水が上方から掛かっ
たような場合にケース内に水が浸入しやすいという欠点
がある。

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従って
その目的は、装置全体の小形化を図り得、装置全体の大
形化及び重量の増大化を回避しつつ減速比を大きくした
いという要求に対処でき、又、部品点数の削減も図るこ
とができ、さらには、防水性に優れた洗濯機の減速装置
を提供するにある。

［発明の構成］ （問題点を解決するための手段） 本発明は、モータにより駆動される入力軸の回転を減速
して洗い用の攪拌体等に連結される出力軸に伝達する洗
濯機の減速装置において、冷間鍛造にて成形され、下向
きに開放しブレーキドラムを兼用する中空状の本体ケー
スと、この本体ケースの成形時に該本体ケースの内面に
下端開口部側に位置させて一体に形成された内歯車と、
前記入力軸の先端部に一体に形成された太陽歯車と、前
記内歯車及び太陽歯車の双方に噛合する遊星歯車と、前
記出力軸に連結され前記遊星歯車を回転自在に支持して
該遊星歯車の遊星運動により回転する回転体と、前記入
力軸を回転自在に挿通支持して前記本体ケースに対し下
方から挿入されると共に、その本体ケースの下端部が内
側へかしめられることによって、本体ケースにこれの下
端開口部を閉塞するように固着された蓋と、前記本体ケ
ースの外面にあってブレーキ力が作用する位置が前記内
歯車と対応する位置に設定されたブレーキバンドと、を
具備したことを特徴とするものである。

（作用） 上記手段によれば、内歯車を本体ケースに共有化させる
ことができるので、内歯車を別体として必要とせず、よ
って本体ケースの外径寸法を小さくでき、しかも、太陽
歯車を入力軸に一体に形成することで、太陽歯車をも別
体として必要とせず、本体ケースの外径寸法を一層小さ
くすることが可能となる。また、内歯車を形成した本体
ケースがブレーキドラムを兼用するのであるから、ブレ
ーキドラムを別体として必要としない利点もある。

さらに、歯車等を収納する本体ケースは下向きに開放し
ており、また、この本体ケースの下面開口部を閉塞する
蓋は、入力軸を挿通支持して本体ケースに対し下方から
挿入され、本体ケースの下端部を内側へかしめることに
よって本体ケースに固着した構成としているので、本体
ケースに対して水が上方から掛かったとしても、本体ケ
ース内には水が浸入し難く、防水性に優れている。

加えて、ブレーキバンドによるブレーキ力が作用する位
置を内歯車と対応する位置に設定したことにより、本体
ケースにブレーキ力が作用したときに各歯車（内歯車、
遊星歯車、及び太陽歯車）同士が互いに突っ張り合う状
態となるので、本体ケースがねじれ難くなる利点もあ
る。

（実施例） 以下本発明を脱水兼用洗濯機に適用した一実施例につき
図面を参照して説明する。

まず第３図において、１は外箱であり、内部に水受槽２
を配設し、これを吊り棒機構３を介して揺動自在に弾性
支持している。４は水受槽２内に配設した洗い及び脱水
の両槽を兼用する回転槽で、内底部に比較的低速度で回
転する洗い用の攪拌体たる径大なパルセータ５を配設し
ている。６は動力制御機構であり、モータ７の回転力を
洗い時にはパルセータ５に減速して伝え、また脱水時に
は回転槽４及びパルセータ５に伝えて双方を一体的に回
転させるために第４図に示す如く減速装置８，クラッチ
機構９及びブレーキ機構１０等を内蔵している。ここ
で、１１は回転槽４に固定された脱水軸であり、この脱
水軸１１は外ケース１２に軸受１３を介して支持した筒
軸１４に嵌着され、更にこの筒軸１４は減速装置８の本
体ケース１５に嵌着されている。本体ケース１５は、下
向きに開放した中空状をなしいる。そして、筒軸１４に
は減速装置８の出力軸１６が軸受１７を介して挿通支持
されており、この出力軸１６の上端部にパルセータ５が
固定されている。１８は前記本体ケース１５の下面開口
部を閉塞する蓋１９に一体に形成した中空軸部で、これ
は外ケース１２に軸受２０を介して支持されており、こ
の中空軸部１８に減速装置８の入力軸２１が軸受２２を
介して挿通支持されている。そして、入力軸２１の下端
部にスリーブ２３を有した従動プーリ２４を嵌着し、こ
の従動プーリ２４とモータ７の駆動プーリ２５との間に
ベルト２６を掛け渡している。２７は前記クラッチ機構
９のクラッチスプリングで、中空軸部１８とスリーブ２
３とに跨って巻装され、下端部はクラッチケース２８に
係合している。２９は前記ブレーキ機構１０のブレーキ
バンドで、これは減速装置８の本体ケース１５をブレー
キドラムとしてその外周に巻装されている。３０は軸３
１を中心に回動可能なレバーであり、クラッチケース２
８の外周に多数設けたラチェット爪２８ａに係合してク
ラッチケース２８の回転を拘束するクラッチ側係合部３
０ａと、ブレーキバンド２９の一端部に折曲形成した係
止片２９ａに係合してブレーキバンド２９の回転を拘束
するブレーキ側係合部３０ｂとを具えている。

一方、前記減速装置８の詳細な構成を示す第１図及び第
２図において、３２は内歯車であり、これは、金属製で
ある上記本体ケース１５の内面に下端開口部側に位置さ
せて一体に形成されていて、例えば本体ケース１５を冷
間鍛造にて成形する際に同時に鍛造成形したものであ
る。そして、本体ケース１５の外面にあって上記ブレー
キバンド２９によるブレーキ力が作用する位置と、内歯
車３２の位置とを対応させている。３３は入力軸２１の
上端部に一体に形成した太陽歯車である。３４は内歯車
３２及び太陽歯車３３の双方に噛合する例えば四個の遊
星歯車であり、夫々に挿通された軸３５が回転体たる
上，下両ブラケット３６，３７に固着されていて、以て
これら上，下両ブラケット３６，３７間に回転自在に支
持されている。この場合、上，下両ブラケット３６，３
７は上ブラケット３６に突設したボス３６ａの下端部を
かしめることにより互に固着連結しており、これによっ
て各遊星歯車３４及び上，下両ブラケット３６，３７を
ユニット化している。又、上，下両ブラケット３６，３
７のうち上ブラケット３６の中央部には、前記出力軸１
６の下端部に形成したセレーション歯３８に嵌合するセ
レーション孔３９を形成し、一方、下ブラケット３７の
中央部には、太陽歯車３３が挿通される孔４０を形成し
ている。而して、組立てに際しては、本体ケース１５に
脱水軸１１を筒軸１４を介して固着一体化し且つ筒軸１
４に出力軸１６を挿通支持させておくと共に、本体ケー
ス１５の外周にブレーキバンド２９を巻装し、一方、蓋
１９の中空軸部１８には入力軸２１を挿通支持させてお
く。そして、上述の如くユニット化された遊星歯車３４
及び上，下両ブラケット３６，３７を本体ケース１５内
に挿入配置する。この挿入により、上ブラケット３６の
セレーション孔３９が出力軸１６下端部のセレーション
歯３８に嵌合して両者が連結され、又、各遊星歯車３４
が内歯車３２に噛合する。この後、入力軸２１の太陽歯
車３３を下ブラケット３７の孔４０から挿入して各遊星
歯車３４に噛合させ、そして蓋１９を、本体ケース１５
に対し下方から挿入して、本体ケース１５の下面に宛っ
た状態で本体ケース１５下端部に予め形成したかしめ部
４１を内側へかしめることによって固定する（第４図参
照）。

次に上記構成の作用を説明する。第４図は洗い時の状態
を示しており、レバー３０がクラッチ側係合部３０ａに
よりクラッチケース２８の回転を拘束すると共に、ブレ
ーキ側係合部３０ｂによりブレーキバンド２９の回転を
拘束している。従って、周知のようにクラッチスプリン
グ２７が巻締り不能となってモータ７の回転が中空軸部
１８に伝達されることの無いようにしていると共に、本
体ケース１５ひいては回転槽４に制動がかけられてい
る。洗い時にはこの状態でモータ７が正逆回転し、その
回転が従動プーリ２４から減速装置８の入力軸２１に伝
達されて太陽歯車３３が回転する。すると、該太陽歯車
３３及び内歯車３２の双方に噛合した遊星歯車３４が自
転しつつ太陽歯車３３の回りを遊星運動し、この遊星運
動に伴って上，下両ブラケット３６，３７が一体的に回
転する。そして、この両ブラケット３６，３７の回転に
より出力軸１６が回転しパルセータ５を低速度で回転駆
動する。

一方、脱水時にはレバー３０が回動して両係合部３０ａ
及び３０ｂによるクラッチケース２８及びブレーキバン
ド２９の拘束を解除するため、周知のようにクラッチス
プリング２７が巻締り自由になされると共に、本体ケー
ス１５ひいては回転槽４の制動が解除される。脱水時に
はこの状態でモータ７が一方向に回転し、その回転が従
動プーリ２４から入力軸２１は勿論のことクラッチスプ
リング２７を介して中空軸部１８にも伝達されるため、
回転槽４及びパルセータ５が一体的に高速回転する。

上記構成によれば、内歯車３２を本体ケース１５に一体
に形成したことにより、内歯車３２を本体ケース１５に
共有化させることができ、よって内歯車とケースとを別
体にて構成していた従来のものに比べ、本体ケース１５
の径方向の寸法を小さくでき、ひいては減速装置８全体
を小形化できる。ここで、減速装置８の減速比Ｓは内歯
車３２の歯数をＡ，太陽歯車車３３の歯数をＢとしたと
き、Ｓ＝１／（１＋Ａ／Ｂ）で表わされる。このことか
ら、太陽歯車３３の歯数Ｂを一定とした場合、内歯車３
２の歯数Ａが多い程、減速比Ｓは大きくなる。従って、
本実施例によれば、減速比を従来と同等とした場合に
は、内歯車３２の歯数は従来と同一で良いことから、上
述したように本体ケース１５の外径寸法を小さくでき、
重量もその分低減でき、逆に本体ケース１５の外径寸法
を従来と同等とした場合には、内歯車３２の径寸法を大
きくできてその分歯数を多くできることから、本体ケー
ス１５を大形化することなく減速比を大きくすることが
できる。加えて、内歯車３２を本体ケース１５に一体化
したことにより、その分の部品点数の削減を図ることが
でき、又、内歯車３２を本体ケース１５に組込む必要が
本来的に無くなるので、本体ケース１５と内歯車３２と
の芯ずれがなくて組立て精度の向上を図り得、更には、
内歯車３２を組込むためのねじ等の部品の削減を図り得
ると共に、そのねじ等を取付けるための加工も不要なら
しめ得る。しかも、太陽歯車３３を入力軸２１に一体に
形成しているので、太陽歯車３３をも別体として必要と
せず、本体ケース１５の外径寸法を一層小さくすること
が可能となる。また、内歯車３２を形成した本体ケース
１５がブレーキドラムを兼用するのであるから、その内
歯車３２としては本体ケース１５の中空円筒状をなす内
面を巧みに利用して形成することができるものであり、
これに伴い、内歯車３２、太陽歯車３３に加えてブレー
キドラムをも別体として必要としない利点もある。

加えて、内歯車３２は本体ケース１５を冷間鍛造にて成
形する際に一体に形成するようにしているので、内歯車
を切削加工で形成するような場合に比べて、加工が容易
にでき、これによっても製造コストの低減に寄与でき
る。

さらに、歯車等を収納する本体ケース１５は下向きに開
放しており、また、この本体ケース１５の下面開口部を
閉塞する蓋１９は、入力軸２１を挿通支持して本体ケー
ス１５に対し下方から挿入され、本体ケース１５の下端
部を内側へかしめることによって本体ケース１５に固着
した構成としているので、本体ケース１５に対して水が
上方から掛かったとしても、本体ケース１５内には水が
浸入し難く、防水性に優れている。

また、ブレーキバンド２９によるブレーキ力が作用する
位置を内歯車３２と対応する位置に設定したことによ
り、本体ケース１５にブレーキ力が作用したときに各歯
車（内歯車３２、遊星歯車３４、及び太陽歯車３３）同
士が互いに突っ張り合う状態となるので、本体ケース１
５がねじれ難く、ひいては入力軸２１と出力軸１６との
中心がずれるようなことを極力防止することができる。

［発明の効果］ 本発明によれば、次のような効果を得ることができる。

（イ）内歯車を本体ケースの内面に一体に形成すると共
に、太陽歯車を入力軸に一体に形成したことにより、本
体ケースひいては装置全体の外径寸法を小さくでき、装
置全体の大形化及び重量の増大化を回避しつつ減速比を
大きくすることができ、又、部品点数の削減を図ること
ができる。しかも、内歯車及び太陽歯車を本体ケースに
組込む必要が本来的に無くなるので、組立て精度の向上
を図り得ると共に、製造コストの低減化も図ることがで
きる。

（ロ）内歯車を形成した本体ケースがブレーキドラムを
兼用するものであるから、内歯車、太陽歯車に加えてブ
レーキドラムをも別体として必要としない利点もある。

（ハ）内歯車は本体ケースを冷間鍛造にて成形する際に
一体に形成するようにしているので、内歯車を切削加工
で形成するような場合に比べて、加工が容易にでき、こ
れによっても製造コストの低減に寄与できる。

（ニ）歯車等を収納する本体ケースは下向きに開放して
おり、また、この本体ケースの下面開口部を閉塞する蓋
は、入力軸を挿通支持して本体ケースに対し下方から挿
入され、本体ケースの下端部を内側へかしめることによ
って本体ケースに固着した構成としているので、本体ケ
ースに対して水が上方から掛かったとしても、本体ケー
ス内には水が浸入し難く、防水性に優れている。

（ホ）ブレーキバンドによるブレーキ力が作用する位置
を内歯車と対応する位置に設定したことにより、本体ケ
ースにブレーキ力が作用したときに各歯車（内歯車、遊
星歯車、及び太陽歯車）同士が互いに突っ張り合う状態
となるので、本体ケースがねじれ難くなり、ひいては入
力軸と出力軸との中心がずれるようなことを極力防止す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示すもので、第１図は要部の
分解縦断面図、第２図は要部の横断平面図、第３図は脱
水兼用洗濯機の破断側面図、第４図は同動力制御機構の
縦断面図である。 図中、４は回転槽、５はパルセータ（攪拌体）、７はモ
ータ、８は減速装置、１５は本体ケース、１６は出力
軸、１９は蓋、２１は入力軸、２９はブレーキバンド、
３２は内歯車、３３は太陽歯車、３４は遊星歯車、３
６，３７はブラケット（回転体）である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】モータにより駆動される入力軸の回転を減
   速して洗い用の攪拌体等に連結される出力軸に伝達する
   ものにおいて、 冷間鍛造にて成形され、下向きに開放しブレーキドラム
   を兼用する中空状の本体ケースと、 この本体ケースの成形時に該本体ケースの内面に下端開
   口部側に位置させて一体に形成された内歯車と、 前記入力軸の先端部に一体に形成された太陽歯車と、 前記内歯車及び太陽歯車の双方に噛合する遊星歯車と、 前記出力軸に連結され前記遊星歯車を回転自在に支持し
   て該遊星歯車の遊星運動により回転する回転体と、 前記入力軸を回転自在に挿通支持して前記本体ケースに
   対し下方から挿入されると共に、その本体ケースの下端
   部が内側へかしめられることによって、本体ケースにこ
   れの下端開口部を閉塞するように固着された蓋と、 前記本体ケースの外面にあってブレーキ力が作用する位
   置が前記内歯車と対応する位置に設定されたブレーキバ
   ンドと、 を具備したことを特徴とする洗濯機の減速装置。