JPH0658211A - 排気還流制御装置の故障診断方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 この発明は、ＥＧＲバルブ等に格別なセンサ
類を付設することなく、又、エンジンの運転状態を損な
うことなく、簡単且つ早期にＥＧＲ系の故障を診断でき
る排気還流制御装置の故障診断方法を得る。 【構成】 エンジンの減速中に排気還流制御バルブを一
時的に開閉して、所定時間Δｔ内に吸気通路内の圧力変
動量が所定値ΔＰｏに達したか否かを判定するステップ
Ｓ３及びＳ４を設け、圧力変動量が所定時間内に所定値
に達しなかった場合にＥＧＲ系の故障を判定する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、主として自動車エン
ジンに適用される排気還流(ＥＧＲ)制御装置の故障診断
方法に関し、特にドライバビリティ(運転条件)等を損な
うことがなく信頼性の高い排気還流制御装置の故障診断
方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、自動車用エンジンでは、吸気系
と排気系とを排気還流通路（以下、ＥＧＲ通路という）
を介して連通させると共に、このＥＧＲ通路を介して排
気ガスの一部を吸気系に還流することにより、燃料の最
高燃焼温度を抑制し、排気ガス中に含まれるＮＯｘの生
成を低減する、いわゆるＥＧＲ制御を行うようにしてい
る。

【０００３】その際、エンジン運転中、絶えず排気ガス
を吸気系に還流するのではなく、ＥＧＲ通路に介設した
排気還流制御バルブ（以下、ＥＧＲバルブという）の作
動をエンジンの運転条件に応じて制御することにより、
排気ガスの還流を実行する時期、及び排気ガスの還流量
を制御するようにしている。

【０００４】例えば、燃料の燃焼状態が良好ではなく、
ＮＯｘの生成も比較的少ないエンジンの低負荷領域で
は、排気ガスの還流を止めるようにしており、又、排気
ガスの還流を施す場合は、吸気中に含まれる排気ガスが
ほぼ一定比率となるように排気ガスの還流量を制限して
いるのが通常である。

【０００５】ところが、ＥＧＲバルブやこのＥＧＲバル
ブの作動を制御するモジュレータ等の作動誤差又は作動
不良等に起因して、所期のＥＧＲ制御が行われ得ない場
合がある。かかる不具合に対処するために、ＥＧＲバル
ブの作動位置を直接検出することにより、ＥＧＲバルブ
を故障診断を行うようにしている例がある。

【０００６】しかしながら、このような方法によると、
ＥＧＲバルブの作動位置を検出するための格別な検出装
置を設ける必要があるだけではなく、この検出装置から
送られる情報を処理する制御回路等を含めたシステム構
造が複雑となり、好ましいとは言えない。

【０００７】このような不具合に対処するための先行技
術として、例えば特開昭63-11127号公報に示されるもの
がある。即ち、排気通路と吸気通路とを連通させるＥＧ
Ｒ通路に介設されたＥＧＲバルブを、エンジン負荷が安
定状態にあることを条件として、ＥＧＲ実行中に一時的
に開閉させると共に、この開閉前後の吸気圧の変動が一
定範囲内にあるか否かを検出し、この検出結果に基づい
て排気還流系が故障しているか否かを判定する方法であ
る。

【０００８】この故障診断方法は、ＥＧＲバルブが実際
に作動した場合には、吸気圧に変動が生じるという事実
に着目して開発されたもので、ＥＧＲバルブの作動を司
る負圧の供給状態を切換えて、この切換前後の吸気圧変
動を調べることにより、ＥＧＲバルブ及びその周辺機器
の故障を発見しようとするものである。

【０００９】ところが、この故障診断方法は、エンジン
負荷が安定していることを１つの条件として、ＥＧＲバ
ルブを一時的に開閉操作しているため、エミッションや
ドライバビリティの悪化を招くことになる。即ち、中速
〜高速運転時におけるエンジン負荷の安定時において
は、混合気の空燃比もほぼ一定値に保たれているのがほ
とんどである。従って、エンジン負荷が安定状態にある
場合に、ＥＧＲバルブを開閉操作すると、排気ガスの還
流量を制限しているとはいえ、混合気の空燃比にバラツ
キが生じて、上述した不具合を招くことになる。

【００１０】しかも、この故障診断方法では、エンジン
負荷が安定状態にあることを前提としているので、診断
頻度が少なくなる。従って、異常状態の早期発見を目標
とした場合、改善すべき余地がある。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】従来の排気還流制御装
置の故障診断方法は以上のように、エンジン負荷が安定
していることを前提としてＥＧＲバルブを一時的に開閉
操作しているため、ドライバビリティ等の悪化を招くう
え早期発見が困難となり、診断信頼性を向上させること
ができないという問題点があった。

【００１２】この発明は上記のような問題点を解決する
ためになされたもので、ＥＧＲバルブ等に格別なセンサ
類を付設することなく、又、エンジンの運転状態を損な
うことなく、簡単且つ早期にＥＧＲ系の故障を診断でき
る排気還流制御装置の故障診断方法を得ることを目的と
する。

【００１３】

【課題を解決するための手段】この発明に係る排気還流
制御装置の故障診断方法は、エンジンの減速中に排気還
流制御バルブを一時的に開閉して、所定時間内に吸気通
路内の圧力変動量が所定値に達したか否かを判定するス
テップを設け、圧力変動量が所定時間内に所定値に達し
なかった場合にＥＧＲ系の故障を判定するようにしたも
のである。

【００１４】

【作用】この発明においては、エンジン減速中の燃料カ
ット時に、ＥＧＲバルブを開放してＥＧＲ通路をオンと
し、所定時間経過しても吸気圧の増加量が所定値に達し
ない場合に、ＥＧＲ通路が正常に開通していないものと
して、ＥＧＲ系の故障と判定する。

【００１５】

【実施例】

実施例１．以下、この発明の実施例１を図について説明
する。図１はこの発明が適用される自動車用エンジンを
概略的に示す構成図である。図において、１はエンジン
本体、２はエンジン本体１の燃焼室３に連通して大気Ａ
を吸入する吸気通路、４は燃焼室３からの排気ガスＥを
排出する排気通路、５は吸気通路２内のスロットルバル
ブ10の上流の大気圧ＰＡを連通する電磁弁、６は吸気通
路２内のスロットルバルブ10の下流の吸気圧ＰＢを連通
する電磁弁、７は運転条件Ｄ等に応じて電磁弁５及び６
を適宜にオンオフ制御するＥＣＵである。

【００１６】マイクロコンピュータからなるＥＣＵ７
は、運転条件を示す各種センサ等からの信号Ｄを入力情
報として、燃料噴射量の制御をはじめ種々の制御を行う
ものであり、ＣＰＵ、メモリ及び入出力インタフェース
を備えている。

【００１７】吸気通路２はＥＧＲ通路８を介して排気通
路４に連通しており、ＥＧＲ通路８には、大気圧ＰＡと
吸気圧ＰＢとの圧力偏差により作動するＥＧＲバルブ９
が介設されている。ＥＧＲバルブ９は、電磁弁５及び６
が開放されている通常動作中においては、エンジンの運
転条件（圧力偏差）に応じたバルブ開度により、排気通
路４内の排気ガスＥの一部を吸気通路２内に導くもので
あり、ＥＧＲ系の主要部をなしている。

【００１８】ＥＧＲバルブ９の圧力室9aは、電磁弁５及
び６の共通通路11と連通しており、大気圧ＰＡと吸気圧
ＰＢとの圧力偏差を導入するようになっている。従っ
て、電磁弁５が開放されて大気圧ＰＡが圧力室9aに導入
されると、圧縮バネ9bの付勢により弁体9cがＥＧＲ通路
８を閉成する。又、電磁弁６が開放されて吸気圧ＰＢが
圧力室9aに導入されると、圧縮バネ9bの付勢力に抗した
負圧により弁体9cが開放し、ＥＧＲ通路８を連通する。

【００１９】ＥＧＲバルブ９にはポジションセンサ13が
設けられており、バルブ開度に対応した位置信号ＦをＥ
ＣＵ７に入力している。又、スロットルバルブ10の下流
側には、吸気通路２内から連通された管が伸びており、
圧力センサ15が接続されている。圧力センサ15は、吸気
圧ＰＢを検出してＥＣＵ７に入力している。

【００２０】図２はＥＣＵ７内の故障判定機能を示すブ
ロック図であり、21は吸気圧ＰＢの偏差量の所定値ΔＰ
ｏを設定する吸気圧所定値設定部、22は所定時間Δｔを
設定する所定時間設定部、23は吸気圧ＰＢ、所定値ΔＰ
ｏ及び所定時間Δｔに基づいてＥＧＲ系の故障を判定す
る故障判定部である。故障判定部23は、所定時間Δｔ内
に吸気通路２内の圧力(吸気圧)ＰＢの変動量が所定値Δ
Ｐｏに達したか否かを判定し、所定値に達しなかった場
合にＥＧＲ系の故障と判定する。

【００２１】次に、図１及び図２と共に、図３のフロー
チャート及び図４の吸気圧特性図を参照しながら、この
発明の実施例１について説明する。図３の故障診断ルー
チンは、ＥＣＵ７で実行される処理であり、予めメモリ
内にプログラムとして内蔵されている。

【００２２】まず、燃料噴射量、スロットル開度及び回
転数等の運転条件Ｄに基づいて、エンジンが減速中か否
かを判定し(ステップS1)、減速中でなければ、ＥＣＵ７
は故障診断を行わずに終了する。減速中か否かは、例え
ば、燃料噴射がカットされているか否かにより判定する
ことができる。

【００２３】もし、減速中であって燃料カット状態であ
れば、電磁弁６を開放してＥＧＲバルブ９を開放し、Ｅ
ＧＲ通路８をオンする(ステップS2)。これにより、ＥＧ
Ｒ通路８が正常に連通していれば、排気ガスＥの一部が
吸気通路２に還流され、吸気圧ＰＢは図４のように上昇
する。

【００２４】続いて、ＥＣＵ７は、圧力センサ15で検出
された吸気圧ＰＢを参照し、ＥＧＲバルブ９の開放前後
の吸気圧ＰＢの増分即ち偏差量ΔＰＢが所定値ΔＰｏ以
上に達したか否かを判定する(ステップS3)。もし、偏差
量ΔＰＢが所定値ΔＰｏより小さければ、ＥＧＲバルブ
９の開放から所定時間Δｔ以上経過したか否かを判定し
(ステップS4)、所定時間Δｔ以上経過していなければ、
ステップS3に戻り、ΔＰＢ≧ΔＰｏを満たすか否かを再
度判定する。

【００２５】もし、所定時間Δｔ以上経過する前に、Δ
ＰＢ≧ΔＰｏが判定されれば、ＥＧＲ通路８は正常であ
ると判定し(ステップS5)、電磁弁６を閉成してＥＧＲ通
路８をオフし(ステップS6)、故障診断を終了する。一
方、所定時間Δｔ以上経過するまでに、ΔＰＢ≧ΔＰｏ
を満たさない場合には、ＥＧＲ通路８が正常に連通して
いないものとし、ＥＧＲ通路８は故障であると判定し
(ステップS7)、ステップS6に進む。

【００２６】なぜなら、ＥＧＲ通路８が正常であれば、
吸気圧ＰＢは急峻に立ち上がり、偏差量ΔＰＢは所定時
間Δｔ内に所定値ΔＰｏ以上に達するが、ＥＧＲ通路８
が十分に連通していなければ、還流量が少なくなって吸
気圧ＰＢが徐々に上昇するため、偏差量ΔＰＢは所定時
間Δｔ内に所定値ΔＰｏに達することができないからで
ある。

【００２７】通常、ＥＧＲバルブ９の故障は外観的に容
易に診断することができるが、ＥＧＲ通路８内の故障診
断は困難である。しかし、上述したように、この発明の
方法によれば、容易に故障判定することができる。又、
もし通常運転中に強制的に排気ガスＥを還流すると、空
燃比を最適制御することができなくなるが、この発明の
ように燃料カット中の減速時に故障診断すれば、還流さ
れた排気ガスＥが燃焼に寄与しないので何ら支障は生じ
ない。

【００２８】

【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、エンジ
ンの減速中に排気還流制御バルブを一時的に開閉して、
所定時間内に吸気通路内の圧力変動量が所定値に達した
か否かを判定するステップを設け、圧力変動量が所定時
間内に所定値に達しなかった場合にＥＧＲ系の故障を判
定するようにしたので、ＥＧＲバルブ等に格別なセンサ
類を付設することなく、又、エンジンの運転状態を損な
うことなく、簡単且つ早期にＥＧＲ系の故障を診断でき
る排気還流制御装置の故障診断方法が得られる効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明が適用される排気還流制御装置を示す
構成図である。

【図２】図１内のＥＣＵの機能を示すブロック図であ
る。

【図３】この発明の実施例１を示すフローチャートであ
る。

【図４】この発明の実施例１を説明するための吸気圧変
化を示す特性図である。

【符号の説明】

１ エンジン本体 ２ 吸気通路 ４ 排気通路 ８ 排気還流(ＥＧＲ)通路 ９ 排気還流制御(ＥＧＲ)バルブ １５ 圧力センサ Ｄ 運転条件 ＰＢ 吸気圧 ΔＰｏ 所定値 Δｔ 所定時間 Ｓ１ エンジンの減速中を判定するステップ Ｓ２ ＥＧＲ通路をオンするステップ Ｓ３ 所定値以上に達したかを判定するステップ Ｓ４ 所定時間以上経過したかを判定するステップ Ｓ７ ＥＧＲ系を故障と判定するステップ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 排気通路と吸気通路とを連通させる排気
   還流通路に、前記排気還流通路を開閉する排気還流制御
   バルブを介設し、前記排気還流制御バルブの開閉前後で
   の前記吸気通路内の圧力変動に基づいて、排気還流系の
   故障の有無を診断する排気還流制御装置の故障診断方法
   において、 エンジンの減速中に前記排気還流制御バルブを一時的に
   開閉して、所定時間内に前記吸気通路内の圧力変動量が
   所定値に達したか否かを判定するステップを設け、 前記圧力変動量が前記所定時間内に前記所定値に達しな
   かった場合に前記排気還流系の故障を判定することを特
   徴とする排気還流制御装置の故障診断方法。