JPH0657468A - 金属等加工物の洗浄方法及びその装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱浴焼入れ油のような高粘度で低蒸気圧の油
分の洗い落としに有効で、しかも安全かつ無公害な金属
等加工物の洗浄方法及び装置を提供する。 【構成】 金属等加工物を高沸点芳香族炭化水素化合物
からなる洗浄液で洗浄し、その後減圧洗浄室３内におい
て前記洗浄液６を蒸発除去する方法及び高沸点芳香族炭
化水素化合物からなる洗浄液６を有する前洗浄槽２、該
前洗浄槽２に連接され発熱体９を有し金属等加工物４に
付着した洗浄液６を蒸発させる減圧洗浄室３、前記前洗
浄室２に連結された洗浄液浄化循環装置１１及び前記減
圧洗浄室３から設けられた設けられた洗浄液回収装置２
１からなり、さらに該洗浄液回収装置２１を前記洗浄液
浄化循環装置１１に連結し、前記回収した洗浄液６を前
記洗浄液浄化循環装置１１を介して前記前洗浄槽２に循
環させる装置。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、特に熱浴焼入れ油のよ
うな高粘度で低蒸気圧の油分の洗い落としに有効な金属
等加工物の洗浄方法及びその装置に関し、洗浄効果が優
れているとともに安全かつ無公害であることを特徴とす
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、油分の付着した金属等加工物の洗
浄方法として、水あるいは水蒸気、または界面活性剤あ
るいはアルカリを含んだ水あるいは水蒸気を利用して前
洗浄する方法（特開平３−１４０４８５号公報等）が提
案されているが、洗浄能力が低く、被洗浄物にシミが発
生したり、さらに廃液処理に費用がかかる等の問題が残
されていた。

【０００３】また、低沸点溶剤（引火点 摂氏３５度）
を利用して前洗浄する方法（特公平３−４９６３３号公
報等）も行われているが、爆発に対する安全対策にコス
トがかかり、かつその安全対策の信頼性にも問題が残さ
れている。

【０００４】その他、洗浄能力の高い塩素系溶剤、フッ
素系溶剤を利用する洗浄方法も提案されているが、環境
汚染等の公害をひきおこすおそれがあり、その使用が制
限されつつあるのが現状である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みなされたもので、大気開放状態で実施でき、しかも洗
浄効果に優れ、安全かつ無公害の金属等加工物の短時間
洗浄方法及びその装置を提供することを目的とする。

【０００６】

【問題を解決しようとする手段】前記目的を達成するた
め、本発明の方法の発明は、金属等加工物を高沸点芳香
族炭化水素化合物からなる洗浄液への浸漬あるいは該洗
浄液の噴霧により洗浄し、その後減圧室内において前記
洗浄液を蒸発除去するものであり、さらに装置の発明は
高沸点芳香族炭化水素化合物からなる洗浄液を有する前
洗浄槽、該前洗浄槽に連接され発熱体を有し金属等加工
物に付着した洗浄液を蒸発させる減圧洗浄室、前記前洗
浄槽に連結された洗浄液浄化循環装置及び前記減圧洗浄
室から設けられた洗浄液回収装置からなり、さらに該洗
浄液回収装置を前記洗浄液浄化循環装置に連結し、前記
回収した洗浄液を前記洗浄液浄化循環装置を介して前記
前洗浄槽に循環させる構成としたものである。

【０００７】

【作用】前洗浄槽２の前扉５が開かれて油分が付着した
金属等加工物４が前洗浄槽２内のエレベ−タ（図示せ
ず）上に供給される。つぎにエレベ−タが下降させら
れ、前記金属等加工物４が高沸点芳香族炭化水素化合物
からなる洗浄液６中に浸漬される。

【０００８】該浸漬は金属等加工物４に付着した油分が
完全に洗い落とされるに十分な時間行われ、その後エレ
ベ−タで引き上げられ、さらに中間扉８を開いて金属等
加工物４が減圧洗浄室３に供給される。

【０００９】つぎに中間扉８が閉じられて減圧洗浄室３
が気密状態とされ、減圧洗浄室３内が真空ポンプ２４に
よって減圧される、同時に発熱体９によって加熱され
る。その結果、洗浄液６が金属等加工物４から蒸発除去
される。

【００１０】その後、減圧洗浄室３内に蒸発させられた
洗浄液６が気体とともに水冷コンデンサ２３に供給さ
れ、該水冷コンデンサ２３により洗浄液６が凝縮回収さ
れるとともに、分離気体が真空ポンプ２４によって外部
に排出される。

【００１１】一方、前洗浄槽２内の洗浄液６中には金属
等加工物４から洗い落とされた油分が混合しており、洗
浄能力の低下を防止するために、油分の混合率等を検出
して管路１２にあるバルブ１６を開き、圧送ポンプ１４
を駆動させられる。

【００１２】その結果、油分を含んだ洗浄液６が加熱器
１３に供給されて所定の温度に加熱され、さらに真空ポ
ンプ１９で真空排気されている分留器１５に供給されて
洗浄液６が真空蒸発させられて油分が分留器１５の下部
に貯められる。同時に真空ポンプ１９により排気された
蒸気状の洗浄液６が水冷コンデンサ１６で凝縮回収さ
れ、分離気体が真空ポンプ１９によって外部に排出され
る。

【００１３】その後、圧送ポンプ１７の駆動及びバルブ
操作により回収された洗浄液６が管路１８を通って前洗
浄槽２に循環させられる。さらに本発明の装置では前記
減圧洗浄室３側の水冷コンデンサ２３に回収された洗浄
液６も該水冷コンデンサ２３から設けられた配管２５を
通って圧送ポンプ１７により前洗浄槽２に循環させられ
てつぎの洗浄に利用される。なお、分留器１５で分留さ
れた油分はドレン２０から排出処理される。

【００１４】

【実施例】以下に本発明の一実施例を図面について説明
する。図中１は洗浄槽であり、具体的には前洗浄槽２
と、該前洗浄槽２に連接された減圧洗浄室３により構成
されている。

【００１５】前洗浄槽２は被洗浄物である金属等加工物
４を送り込むための前扉５とを有し、さらに内部の略下
半部には高沸点芳香族炭化水素化合物からなる洗浄液６
が充填され、図示しないが前記前扉５から送り込んだ金
属等加工物４を前記洗浄液６に浸漬するためのエレベ−
タが設けられている。図中７は洗浄時間短縮のため設け
られる発熱体であり、必要に応じ前記洗浄液６を摂氏１
５０度以下に加熱するものである。

【００１６】つぎに前記前洗浄槽２には中間扉８を介し
て前記減圧洗浄室２が連接される。この減圧洗浄室２は
前記中間扉８部を含めて気密構造に構成され、内部に発
熱体９が設けられ、金属等加工物４に付着している洗浄
液６の蒸発時間短縮を図っている。図中１０は洗浄完了
後の金属等加工物４を取り出す後扉である。

【００１７】なお、前記減圧洗浄室２を二重壁ジャケッ
ト構造として、その間に温水あるいは加熱空気等を供給
すれば、金属等加工物４に対する加熱効果が高められる
とともに内壁に洗浄液６が凝縮付着することが防止さ
れ、洗浄液の蒸発時間の短縮を図ることができる。

【００１８】さらに前記前洗浄槽２には洗浄液浄化循環
装置１１が連結される。詳細を述べると、前洗浄槽２か
ら設けた配管１２に洗浄液６を加熱器１３に送るための
圧送ポンプ１４が設けられる。この加熱器１３は洗浄液
６を気化し易くするために該洗浄液６を加熱するもので
ある。

【００１９】つぎに、前記加熱器１３に続いて加熱され
た洗浄液６を真空蒸発させ、油分を分留するための分留
器１５が設けられる。該分留器１５は加熱保温されてお
り、供給された洗浄液６が真空蒸発させられ、油分と分
離される。

【００２０】さらに前記分留器１５に続いて蒸発させら
れた洗浄液６を凝縮回収するための水冷コンデンサ１６
が設けられる。そして該水冷コンデンサ１６で回収され
た洗浄液６が圧送ポンプ１７によって配管１８を介して
前記前洗浄槽２に循環させられる。図中１９は分離気体
を排出するための真空ポンプ、２０は分留器１５で分離
された油分を排出するドレンである。

【００２１】さらに前記減圧洗浄室３から洗浄液回収装
置２１が設けられる。詳細に述べると、前記減圧洗浄室
３から設けた配管２２に減圧洗浄室３において蒸発させ
た洗浄液６を凝縮回収するための水冷コンデンサ２３が
設けられ、分離気体が真空ポンプ２４によって外部に排
出される構成となっている。

【００２２】さらに本発明の装置では前記水冷コンデン
サ２３によって凝縮回収された洗浄液６が前記洗浄液浄
化循環装置１１を介して前記前洗浄槽２に循環させられ
る。すなわち、水冷コンデンサ２３から設けた配管２５
が前記圧送ポンプ１７に連結されている。図中２６はそ
れぞれ適時に開閉されるバルブである。

【００２３】図２は洗浄効率を高めるため、前洗浄槽２
を二槽にした例であり、その他の部分は図１の実施例と
同様である。さらに前記洗浄液浄化循環装置１１をそれ
ぞれの前洗浄槽２に設けても良いものである。

【００２４】本発明で洗浄液６として使用される高沸点
芳香族炭化水素化合物は、少なくとも分子中に一個以
上、好ましくは二個以上の芳香族環を有するものであ
り、その沸点は、好ましくは摂氏２００度以上、より好
ましくは摂氏２５０度以上である。

【００２５】上記化合物は、たとえば「日石ハイゾ−ル
ＳＡＳ−２９６」や「日石ハイゾ−ルＳＡＳ−ＬＨ」の
商品名（日本石油化学株式会社製）として提供されてい
る。これらの化合物は一般に石油化学の主要原料である
ナフサ等を原料として合成法により製造される液体で、
重金属類等の有害物質を一切含んでおらず、その特性は
化学的、物理的に安定であり、しかも耐薬品性、絶縁性
に富み、優れた溶解性、可塑性を示す。本実施例で洗浄
液６として使用した高沸点芳香族炭化水素化合物は、１
−フェニル−１−キシリルエタンを主成分とする前記
「日石ハイゾ−ルＳＡＳ−２９６」であり、その性状は
下記の通りである。 既存化学物質番号 （４）−３８ 外 観 無色液体 密 度 （摂氏１５度） ０．９８９ 粘 度 （摂氏４０度、Ｃｓｔ） ５．０ （摂氏１００度、Ｃｓｔ）１．６ 蒸留範囲（摂氏） ２９０〜３０５ 引火点（ＰＭＣＣ、摂氏） １５０ 前記商品は、引火点が高く、安全性が得られ、また蒸留
範囲の幅が摂氏１５度のため分留が容易な特性を有す
る。また、金属等加工物４に付着した油分を洗い落とす
温度は常温で十分であるが、洗浄効率を高めるため加熱
すると洗浄時間の短縮が可能である。もっとも、装置の
コストを考えた場合には前洗浄液６は加熱する必要はな
い。

【００２６】なお、洗浄液６による洗浄方法は、前記浸
漬にかぎらず、シャワリング、さらに洗い落とし効果を
高めるため、洗浄液６をバブリングあるいは攪拌しても
よく、さらにまた逆に金属等加工物４を振動させてもよ
い。

【００２７】また、減圧洗浄室３における洗浄液６の蒸
発除去は、摂氏１５０度以下（すなわち、熱処理品の焼
き戻し温度以下）、１３３０ｐａｓｃａｌ（１０ｔｏｒ
ｒ）以下の圧力で行われる。この時、温度は常温より高
いほど、また圧力は１３３０ｐａｓｃａｌ（１０ｔｏｒ
ｒ）より低いほど短時間で蒸発除去が完了する。

【００２８】なお、減圧洗浄室３における加熱の際に
は、加熱時間短縮のため大気または雰囲気ガスを攪拌フ
ァンを用いて攪拌するとよく、また鋼の焼入れ品を洗浄
する場合には減圧洗浄室３における洗浄液６の蒸発除去
と焼き戻し工程を兼用でき、その場合には減圧洗浄室内
を焼き戻し温度に適した温度に加熱し必要な時間保持す
ればよい。

【００２９】また、洗浄液浄化循環装置１１で凝縮回収
された洗浄液６及び前洗浄槽２中の洗浄液６は別に設け
た回収タンクに貯蔵し、洗浄に必要な時にのみ前洗浄槽
２に導入するようにしてもよい。さらにこの回収タンク
を二槽にすることによって、一次洗浄用、二次洗浄用と
して使い分け、前洗浄槽２を一槽にし、洗浄液浄化循環
装置１１をスペックダウン、コストダウンがはかられ
る。

【００３０】

【発明の効果】本発明によれば、熱浴焼入れ油のような
高粘度で低蒸気圧の油の洗浄にも優れた効果が得られ、
しかも安全かつ無公害である効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の装置の概略回路図である。

【図２】本発明の装置の他の実施例を示す概略回路図で
ある。

【符号の説明】

２ 前洗浄槽 ３ 減圧洗浄室 ４ 金属等加工物 ６ 洗浄液 ９ 発熱体 １１ 洗浄液浄化循環装置 ２１ 前洗浄液回収装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 十良沢 英寿 神奈川県横浜市港北区綱島西５ー15ー20 第５協栄ハイム203

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属等加工物を高沸点芳香族炭化水素化
   合物からなる洗浄液で洗浄し、その後減圧洗浄室内にお
   いて前記洗浄液を蒸発除去することを特徴とする金属等
   加工物の洗浄方法。
2. 【請求項２】 洗浄液による金属等加工物の洗浄が洗浄
   液中への浸漬、あるいは洗浄液の噴霧であることを特徴
   とする請求項１記載の金属等加工物の洗浄方法。
3. 【請求項３】 高沸点芳香族炭化水素化合物からなる洗
   浄液を有する前洗浄槽、該前洗浄槽に連接され発熱体を
   有し金属等加工物に付着した洗浄液を蒸発させる減圧洗
   浄室、前記前洗浄槽に連結された洗浄液浄化循環装置及
   び前記減圧洗浄室から設けられた洗浄液回収装置からな
   り、さらに該洗浄液回収装置を前記洗浄液浄化循環装置
   に連結し、前記回収した洗浄液を前記洗浄液浄化循環装
   置を介して前記前洗浄槽に循環させることを特徴とする
   金属等加工物の洗浄装置。