JPH0654535B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は磁気記録媒体に関し、より詳細には錆を生じ
ず、かつ低湿での耐スクラツチ性にすぐれた金属薄膜型
の磁気記録媒体に関する。

〔従来技術〕

磁気記録媒体としては、従来より強磁性体粉末を有機バ
インダー中に分散させた磁性塗料を非磁性基体上に塗布
し乾燥させて得た塗布型のものが広く使用されている。
しかしながら、この塗布型磁気記録媒体は、強磁性体粉
末として主として金属酸化物粉末を用いているために飽
和磁化が小さく、有機バインダーを含むために磁性層中
の強磁性体の濃度を上げられず、それにより高密度記録
には適しておらず、また製造工程が複雑であるなどの欠
点を有する。

近年高密度記録への要求が高まり、これに対応して金属
薄膜を非磁性基体上に形成した磁性記録媒体が開発さ
れ、これは真空蒸着、スパツタリング、イオンプレーテ
イング等のベーパーデポジシヨン法、あるいは電気メツ
キ、無電解メツキ等のメツキ法によつて金属薄膜を非磁
性基体上に形成するもので、磁性体としては金属に限ら
れないものであるが、金属が代表的であるので、以下こ
れを有する磁気記録媒体を金属薄膜型磁気記録媒体とい
う。また、この型式のものは有機バインダーを含有しな
いので非バインダー型磁気記録媒体とも呼ばれる。

この金属薄膜型磁気記録媒体においては飽和磁化の大き
い強磁性金属をバインダーを含有しない状態で薄膜とし
て形成させることができるので、塗布型に比して高保磁
力化と薄膜化が行われ、かつ短波長域での減磁の影響が
小さく高密度記録が実現され、しかも製造工程が簡単化
されるため、注目を集めている。

しかし、金属薄膜型磁気記録媒体の金属薄膜は見かえは
均一で平滑な金属の面を有しているが、微細構造では粗
なもので金属粒子が並んでいるような構造を有している
ために、腐蝕され易く、このためこの型の磁気記録媒体
は塗布型磁気記録媒体と比較して耐候性及び耐蝕性が劣
つている。特にカセツトテープやビデオテープ等として
用いられる磁気記録媒体は記録、再生時に該媒体表面が
磁気ヘツドで擦られるため、金属薄膜上に極めてわずか
に腐食物が存在していても、摩擦によりそれが脱落して
ヘツドに目詰まりが生じ、それによりヘツド及び磁気記
録媒体に傷がつく。

さらに、金属薄膜型磁気記録媒体は耐久性が劣るという
問題がある。この型の磁気記録媒体では金属薄膜が平滑
であるため摩擦が大きくハリツキを起り易いなどの問題
があり、ＶＴＲにおけるスチル耐久性等において塗布型
のものに比して劣つている。

このような金属薄膜型磁気記録媒体の耐候性及び耐久性
を改良するために、イオンプレーテイングにより表面窒
化処理を施す方法（特開昭５０−３３８０６号）、スパ
ツタリングにより窒化ケイ素膜を設ける方法（特開昭５
３−３０３０４号）、磁性膜を窒素ガス等の雰囲気中で
の放電にさらして比磁性表面層を形成する方法（特開昭
５３−８５４０３号）、磁性金属薄膜上に窒化された金
属薄膜を設ける方法（特開昭５４−１４３１１１号）等
が知られている。また、耐候性にすぐれた非バインダー
型磁気記録媒体としてヨーロツパ特許８３２８号、或い
は特開昭５９−８７８０９号に開示されているような窒
化鉄或いは鉄及び窒化鉄よりなる磁性薄膜がある。さら
に本出願人は先に非磁性基体上に酸化窒化鉄を主成分と
する磁性薄膜を設けてなる磁気記録媒体（特開昭６１−
５４０２３号）を提案し、この磁性薄膜は次の組成式 Ｆｅ_1-x-yＮｘＯｙ （ただし０．２５≦ｘ＋ｙ≦０．６０） で表わされる組成を有するものであつた。

〔本発明が解決しようとする問題点〕

しかしながら前述の方法による時は耐候性は大きく向上
し、かつ窒化酸化鉄構造にすることで耐久性もある程度
向上したが、未だ低湿下での耐スクラツチ性に問題を残
し、磁性層がもろい、という欠点があつた。

したがつて、本発明の目的は、とくに低湿下での耐スク
ラツチ性にすぐれる窒化鉄薄膜磁気記録媒体を提供する
ことにある。

〔問題点を解決するための手段〕 本発明の磁気記録媒体は、薄膜磁性層が鉄、窒素、酸素
を含む窒化酸化鉄よりなり、かつ該薄膜磁性層が柱状粒
子の集合体より成るものであるが、該柱状粒子内の元素
分布につき検討を加え、前記問題点を解決するにいたつ
た。

すなわち本発明は、非磁性基体上に形成された鉄、窒
素、酸素を主成分とする強磁性薄膜を磁性層として設け
てなる磁気記録媒体において、該強磁性薄膜が柱状粒子
の集合体によりなり、かつ該柱状粒子の表面において柱
状粒子内部よりも窒素含有量が大であることを特徴とす
る磁気記録媒体、に関する。

本発明の鉄、窒素、酸素を主成分とする強磁性薄膜磁性
層は純鉄、酸化鉄、および窒化鉄を主成分とする複雑な
混合体である。例えば、窒化鉄に関して云えば、ε−Ｆ
ｅ_2-3Ｎ、γ−Ｆｅ₄Ｎ、Ｆｅ₁₆Ｎｅ等の結晶構造を取り
うるものである。さらに、他の金属元素としてコバル
ト、ニツケル等を含めばその酸化物、窒化物も含まれる
こととなる。但し、金属成分中には鉄を５０ｗｔ％以上
含むことが好ましい。本発明ではさらに磁性薄膜が柱状
粒子の集合体よりなる。このことは、例えば走査型電子
顕微鏡による磁性膜直上からの観察、あるいはまた薄膜
を縦切り超薄切片とし透過型電子顕微鏡による観察によ
り確認しうるものである。モブチヤン等の理論によれば
薄膜は柱状粒子集合体の形態のみならず、例えば繊維状
構造、多孔質構造等の構造を取りうるものであり、これ
はスパツタ膜のみならず真空蒸着膜にも適用されうる
が、柱状粒子集合体の形態が磁気記録媒体には最も適し
ている。更に本発明者らは、該柱状粒子表面において柱
状粒子内部よりも窒素含有量が大であるよう窒素原子が
偏析している媒体は優れた特性をもつことを見出した。
酸素含有量については、一様であつてもあるいはまた窒
素と同様に、柱状粒子表面にて含有量大となるようして
もよい。こういつた構造の確認には、例えば薄膜試料を
ミクロトームにて縦切りし、超薄切片とした上でマイク
ロ・オージエ分光法のより柱状粒子表面、柱状粒子内部
の元素含有量を測定することにより行なう。模式的には
第１図の如きものであり、基体上に成長した柱状粒子２
において、表面側で窒素含有率が大きい。

本発明の柱状粒子を作製する方法は、種々の方法が考え
られるが、その条件は装置により異なる。一例として、
鉄蒸気流と窒素および酸素混合イオンビームを同時に非
磁性基体に差し向ける際、該基体を加熱状態にしておく
方法があげられる。

本発明での磁性層の厚さはは一般には０．０２〜５．０
μｍ、好ましくは０．０５〜２．０μｍである。

本発明で用いられる非磁性基体としては、ポリエチレン
テレフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリ塩化ビ
ニール、三酢酸セルロース、ポリカーボネート等のプラ
スチツクス基体が用いられる。

本発明の磁気記録媒体における磁性層上に潤滑層を形成
してもよく、潤滑層としては炭素数１２〜１８個の脂肪
酸、前記脂肪酸の金属塩、シリコーンオイル、炭素数２
〜２０個の一塩基脂肪酸と炭素数３〜１２個の一価アル
コールからなる脂肪酸エステル等が代表的なものであ
る。添加量としては磁性層上に０．５〜２０mg／ｍ^２存
在させるのが良い。

本発明の磁気記録媒体においては、必要により非磁性基
体の磁性層側と反対の面にバツク層を設けてもよい。

また、金属薄膜の磁性層と非磁性基体との間に有機物あ
るいは無機物からなる層を設けてもよい。

〔実施例〕

以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発
明はこの実施例に限られるものではない。

第２図に示した装置を用いて磁性薄膜を作成した。基体
２はポリイミドフイルム（１３μｍ厚）を使用し、入射
各は８０゜９９．９％Ｆｅを電子ビーム９により溶解蒸
発する。同時に水晶発振式膜厚モニターにより蒸発速度
をモニターし、５Å／Ｓ一定となるようにした。同時に
イオン銃に５０％Ｎ_２＋５０％Ｏ_２ガスを導入し作動せ
しめた。この時、加速電圧０．３ｋＶ、イオン電流値５
ｍＡであり、真空度はこの状態で３×１０^−５Ｔorr で
あり、膜厚２０００Å成膜を行なつた。

この時、基板ホルダー１は常温に保つた。このとき得ら
れたサンプルをＡとする。

その他の条件は同一で、基板温度を１４０℃に加熱した
条件で成膜を行なつた（真空度は若干変化している）。
得られたサンプルをＢとする。

マイクロ・オージエ装置を用いて、サンプルＢが本発明
で云うような表面に窒素が偏析した構造であることを確
認した。こうしてできた薄膜試料を８mm×１００mmの大
きさで切り取り、前後にリーダーテープを接合した上で
スチル耐久性を測定した。試験機は富士フイルム製ＦＵ
ＪＩＸ−８の改造機である。２３℃１０％ＲＨ雰囲気下
でスチル時間を測定すると、サンプルＢが６０分以上も
つのに対し、サンプルＡでは１５分しかもたず、低湿下
での耐スクラツチ性の向上がみられた。

〔発明の効果〕

本発明の磁気記録媒体は耐錆性にすぐれ、かつ低湿での
スチル耐久性も向上した窒化鉄系薄膜磁気記録媒体であ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の磁気記録媒体の模式図である。 １：基体、２：柱状粒子 第２図は本発明の磁気記録媒体を作成するための装置で
ある。 ２：基体、３：イオン銃 ６：蒸着材料、９：基板加熱ユニツト

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−289920（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−54020（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】非磁性基体上に形成された鉄、窒素、酸素
   を主成分とする強磁性薄膜を設けてなる磁気記録媒体に
   おいて、該強磁性薄膜が柱状粒子の集合体よりなり、か
   つ該柱状粒子の表面の窒素含有量が柱状粒子内部よりも
   大であることを特徴とする磁気記録媒体。