JPH065431A - リード線支持装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 絶縁強度及び機械的強度に優れ、特に、変圧
器に好適な、優れたリード線支持装置を提供する。 【構成】 絶縁媒体を充填してなるタンク１内に配置さ
れたリード線５を支持絶縁物１１，１２で支持する。支
持絶縁物１１，１２とリード線５との間に、弾性及び絶
縁性を有するフォーム材料層１５を介在させる。この場
合、フォーム材料としては、シリコン系、ウレタン系、
あるいはアクリル系などの弾性及び絶縁性の優れたフォ
ーム材料を使用可能であるが、支持絶縁物の誘電率より
も低い誘電率を有する材料を使用することが望ましい。
典型的には、フォーム材料シートを使用して、このフォ
ーム材料シートを、リード線の一部または全部に巻き付
け、このフォーム材料シートを介して、支持絶縁物によ
りリード線を挟み込んでこれを支持する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は変圧器などの高電圧機器
におけるリード線支持装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年の電力需要の増大と、変電所用地確
保の難しさから、変電設備は地下に設置される場合が多
くなってきた。このような地下変電所に設置される変圧
器としては、防災上の観点から、ＳＦ₆ ガスなどの不燃
性絶縁ガスを絶縁冷却媒体としたガス絶縁変圧器の採用
が望まれるようになっている。

【０００３】また、一般に、変圧器においては、タンク
内に収納された巻線から高圧のリード線が引き出され、
この高圧のリード線が、タンク内のガス空間を通して配
設され、その他端にてブッシング端子に接続される。こ
の場合、高圧のリード線は、ある程度の弛みを持たせて
配設され、変圧器中身などの接地構造物に対し、リード
線支持装置によって支持される。

【０００４】図３は、このようなリード線支持装置を含
むガス絶縁変圧器の一例を示す模式図である。この図３
に示すように、接地されたタンク１内には、ＳＦ₆ ガス
などの不燃性絶縁ガスが充填されると共に、鉄心２及び
この鉄心２に巻装された巻線３からなる変圧器中身が収
納されており、タンク１の上部には、タンク１を貫通す
る形でブッシング端子４が配置されている。また、巻線
３から引き出された高圧のリード線５は、タンク１内に
おいて、ある程度の弛みを持たせて配設されており、そ
の他端はブッシング端子４に接続されている。そして、
この高圧のリード線５は、タンク１内の鉄心クランプ６
などの接地構造物に対して、リード線支持装置７によっ
て支持され、タンク１や他の接地構造物から必要な絶縁
距離を保つように固定されている。

【０００５】図４は、このような図３のガス絶縁変圧器
に使用されている従来のリード線支持装置７の一例を示
す斜視図である。この図４に示すように、高圧のリード
線５を支持するリード線支持装置７は、リード線５を両
側から挟持する第１、第２の支持絶縁物１１，１２を備
えており、第１の支持絶縁物１１は、その一端にて鉄心
クランプなどの接地構造物に固定されている。この第
１、第２の支持絶縁物１１，１２の対向する面には、リ
ード線５の径に合わせた半円形状の窪み１３が形成され
ており、この両側の窪み１３によって形成される円形状
の空間部分にリード線５が配置されている。そして、こ
のように、第１、第２の支持絶縁物１１，１２の窪み１
３の間にリード線５が挟持された状態で、絶縁ボルト１
４によって第１、第２の支持絶縁物１１，１２間が締め
付けられており、この結果、リード線支持装置７が一体
に形成されると共に、リード線５とリード線支持装置７
とが固定されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ガス絶
縁変圧器において、以上のようなリード線支持装置７を
採用した場合には、次のような問題点を生じてしまう。

【０００７】すなわち、高圧のリード線５の絶縁強度
は、一般的に、リード線支持装置７によって支持されて
いない部分においては、リード線５とタンク１などの接
地構造物との間の距離で決まるリード線表面の電界強度
が、ＳＦ₆ ガスの絶縁破壊強度を越えないように設計す
ることによって、十分な裕度を有するように保たれてい
る。これに対し、リード線支持装置７によって支持され
た部分においては、リード線支持装置７が、リード線５
表面に接触するため、第１、第２の支持絶縁物１１，１
２の誘電率とＳＦ₆ ガスの誘電率との格差によって、リ
ード線５とリード線支持装置７とＳＦ₆ ガスの３種の絶
縁媒体の境界部分に、局部的に電界強度の高い部分が生
じる。一般にこのような部分は、トリプルジャンクショ
ンと呼ばれ、ＳＦ₆ ガス絶縁構造において、絶縁上の弱
点となることが知られている。

【０００８】図５は、図４のリード線支持装置のうち、
このようなトリプルジャンクションを含むリード線支持
部分を示す拡大断面図である。一般に、リード線支持装
置７を構成する支持絶縁物１１，１２は、その角が丸め
られているので、リード線５の表面と接する部分には、
矢印Ａで示すようなくさび状のガスギャップが存在す
る。このくさび状のガスギャップ部Ａの電界は、リード
線５の表面と支持絶縁物１１，１２との接点（トリプル
ジャンクション）に近付くにしたがって高くなり、大き
な電界集中が生じている。そのため、このガスギャップ
部Ａでは、リード線５の他の一般部分に比べて絶縁強度
が著しく低下し、一般部分で必要な寸法以上に余裕を持
った十分な絶縁距離をとる必要が生じ、この結果、タン
ク１の大型化を招いたり、リード線５部分の絶縁信頼性
の低下を招いたりする可能性がある。なお、以上のよう
なくさび状のガスギャップの他にも、支持絶縁物１１，
１２とリード線５との接触部分には、微小なギャップが
生じる場合があり、同様に、電界集中による絶縁強度の
低下の問題を生じている。

【０００９】また、以上のような問題点は、ガス絶縁変
圧器に限らず、油入変圧器においても同様に存在してい
る。すなわち、油入変圧器においては、やはり、リード
線支持部分に、くさび状ギャップや微小ギャップが形成
されることにより、同様に電界集中が生じ、絶縁強度の
低下が生じる。この場合、油入変圧器においては、絶縁
媒体が油であることから、固体絶縁物との誘電率との差
が、ガス絶縁変圧器に比べて小さいため、くさび状ギャ
ップ部への電界集中はガス絶縁変圧器ほど顕著ではない
ものの、電界集中による絶縁強度の低下の問題は同様に
存在している。

【００１０】さらに、以上のようなガス絶縁変圧器、油
入変圧器などの変圧器に限らず、高電圧機器一般におい
ては、同様に、高電圧のリード線部分を絶縁支持するた
めに、支持絶縁物を用いたリード線支持装置が使用され
ている。そして、このようなリード線支持装置において
は、前述のような絶縁強度面での問題に加えて、支持絶
縁物とリード線との間に滑りを生じることなどによりリ
ード線を強固に固定することができないという機械的強
度面での問題を生じている。また、リード線支持装置を
構成する支持絶縁物やリード線の絶縁被覆は、高電圧機
器の長期運転に伴ない、乾燥や枯れにより収縮するた
め、リード線支持部分のガタや緩みが生じ、このこと
が、機械的強度の低下や振動・騒音の原因となる問題も
ある。

【００１１】本発明は、以上のような従来技術の課題を
解決するために提案されたものであり、その目的は、絶
縁強度及び機械的強度に優れ、特に、変圧器に好適な、
優れたリード線支持装置を提供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明によるリード線支
持装置は、絶縁媒体を充填してなるタンク内に配置され
たリード線を支持絶縁物で支持するリード線支持装置に
おいて、前記支持絶縁物と前記リード線との間に、弾性
及び絶縁性を有するフォーム（ｆｏａｍ）材料層を介在
させたことを特徴としている。この場合、フォーム材料
としては、シリコン系、ウレタン系、あるいはアクリル
系などの弾性及び絶縁性の優れたフォーム材料を使用可
能であるが、特に、支持絶縁物の誘電率よりも低い誘電
率を有する材料を使用することが望ましい。さらに、フ
ォーム材料層としては、絶縁性ガスで発泡して形成され
るかまたは絶縁性ガスが内部に封入されたフォーム材料
層、あるいは、気泡間の連通性に優れ、絶縁媒体の透過
性に優れたフォーム材料層を使用することが望ましい。

【００１３】そして、典型的には、フォーム材料シート
を使用して、このフォーム材料シートを、リード線の一
部または全部に巻き付け、このフォーム材料シートを介
して、支持絶縁物によりリード線を挟み込んでこれを支
持する。あるいはまた、支持絶縁物上にフォーム材料層
を配置し、その上にリード線を固定して支持することな
ども可能である。一方、本発明は、裸の導体と絶縁被覆
を施された導体のいずれのリード線を支持する場合にも
適用可能である。

【００１４】

【作用】以上のように構成された本発明のリード線支持
装置においては、リード線表面とこれを固定する支持絶
縁物との間に生じるくさび状のギャップや微小なギャッ
プを、弾性を有するフォーム材料層によって埋めること
ができるため、リード線支持部分における電界集中をほ
とんどなくすことができる。従って、リード線支持部分
の絶縁強度を、リード線の他の一般部分と同等程度に高
くすることができる。

【００１５】さらに、フォーム材料層の圧縮力と弾性に
より、リード線と支持絶縁物との間の滑りがなくなり、
リード線を強固に固定することができる。そしてまた、
長期運転に伴なう支持絶縁物またはリード線の絶縁被覆
の収縮に対しても、ガタや緩みを生じることがなく、十
分な機械的強度を維持でき、振動・騒音の問題を生じる
こともない。

【００１６】また、フォーム材料として、支持絶縁物の
誘電率よりも低い誘電率を有する材料を使用した場合に
は、リード線と支持絶縁物と絶縁媒体との境界面での電
界集中をさらに緩和でき、絶縁強度をさらに向上でき
る。さらに、フォーム材料層として、絶縁性ガスで発泡
して形成されるかまたは絶縁性ガスが内部に封入された
フォーム材料層、あるいは、気泡間の連通性に優れ、絶
縁媒体の透過性に優れたフォーム材料層を使用した場合
には、絶縁性ガスまたはその他の絶縁媒体をフォーム材
料層内部に充填することができるため、フォーム材料層
自体の絶縁耐力を大幅に向上することができる。

【００１７】

【実施例】以下には、本発明を、図３のガス絶縁変圧器
のリード線支持装置として適用した一実施例について、
図１及び図２を参照して具体的に説明する。この場合、
図１はリード線支持装置を示す斜視図、図２は図１のリ
ード線支持装置のリード線支持部分を示す拡大断面図で
ある。

【００１８】図１に示すように、高圧のリード線５を支
持するリード線支持装置は、リード線５を両側から挟持
する第１、第２の支持絶縁物１１，１２を備えており、
第１の支持絶縁物１１は、その一端にて鉄心クランプな
どの接地構造物に固定されている。この第１、第２の支
持絶縁物１１，１２の対向する面には、リード線５の径
に合わせた半円形状の窪み１３が形成されており、この
両側の窪み１３によって形成される円形状の空間部分に
リード線５が配置されている。

【００１９】そして、本実施例においては、このように
第１、第２の支持絶縁物１１，１２によって支持される
リード線５の支持部分の周囲に、弾性及び絶縁性を有す
るフォーム材料からなる一定幅のフォーム材料シート
（フォーム材料層）１５が巻き付けられている。すなわ
ち、リード線５は、このフォーム材料シート１５を介し
て、第１、第２の支持絶縁物１１，１２によって挟持さ
れる形で支持されている。この場合、フォーム材料シー
ト１５としては、シリコン系、ウレタン系、あるいはア
クリル系などの弾性及び絶縁性の優れたフォーム材料か
らなる絶縁シートが使用されている。

【００２０】さらに、このように、第１、第２の支持絶
縁物１１，１２の窪み１３の間に、フォーム材料シート
１５を介してリード線５が挟持された状態で、絶縁ボル
ト１４によって第１、第２の支持絶縁物１１，１２間が
締め付けられており、この結果、リード線支持装置７が
一体に形成されると共に、リード線５とリード線支持装
置７とが固定されている。

【００２１】以上のように構成された本実施例の作用
は、次の通りである。すなわち、図２に示すように、リ
ード線５の支持部分においては、リード線５の表面と第
１、第２の支持絶縁物１１，１２との間に、弾性を有す
るフォーム材料シート１５が介在するため、絶縁ボルト
１４の締め付けによって、第１、第２の支持絶縁物１
１，１２がフォーム材料シート１５に食い込み、リード
線５と第１、第２の支持絶縁物１１，１２の間に、くさ
び状のギャップや微小なギャップが生じることはない。

【００２２】本実施例においては、このように、従来問
題となっていたリード線５と第１、第２の支持絶縁物１
１，１２との間の境界部分の電界集中箇所を除去するこ
とができるため、リード線支持部分の絶縁強度を従来に
比べて格段に向上できる。さらに、フォーム材料シート
１５の圧縮力と弾性により、リード線５を第１、第２の
支持絶縁物１１，１２の間に圧縮挟持できるため、リー
ド線５と第１、第２の支持絶縁物１１，１２との間に滑
りを生じることなく、リード線５を強固に固定すること
ができる。そしてまた、このようなフォーム材料シート
１５の圧縮力と弾性により、長期運転に伴なう第１、第
２の支持絶縁物１１，１２またはリード線５の収縮に対
しても、ガタや緩みを生じることがないため、従来に比
べて格段に機械的強度を向上でき、振動・騒音の問題を
生じることもない。

【００２３】なお、本発明は、前記実施例に限定される
ものではなく、リード線と支持絶縁物との間に介在させ
るフォーム材料層の具体的な形状、配置構成、及び材料
は自由に選択可能である。例えば、リード線の支持部分
だけでなく、リード線の全体にフォーム材料層を形成す
る構成や、支持絶縁物上にフォーム材料層を形成し、そ
の上にリード線を固定して支持する構成、あるいは、リ
ード線またはリード線の絶縁被覆と支持絶縁物との境界
面間でフォーム材料を発泡させ、フォーム材料層を直接
形成する構成などが可能である。また、支持絶縁物の具
体的な形状、配置構成、及び材料も適宜選択可能であ
る。

【００２４】さらに、前記実施例において、フォーム材
料シート１５を形成する際には、絶縁性ガスによりフォ
ーム材料を発泡させるか、あるいはまた、絶縁性ガスが
内部に封入されるようにフォーム材料を発泡させる。あ
るいはまた、絶縁性ガスまたはその他の絶縁媒体を内部
に充填できるように、気泡間の連通性に優れ、絶縁媒体
の透過性に優れたフォーム材料シート１５を形成する。
このようにしてフォーム材料シート１５を構成した場合
には、フォーム材料層自身の絶縁耐力を大幅に向上する
ことができるため、リード線支持部分の絶縁強度をさら
に向上できる。

【００２５】一方、前記実施例においては、フォーム材
料層の電気的特性については言及していないが、フォー
ム材料の誘電率を支持絶縁物の誘電率よりも小さくした
場合には、境界面での電界集中をさらに緩和でき、絶縁
強度をさらに向上できる。また、前記実施例において
は、リード線の絶縁被覆の有無についても言及していな
いが、本発明は、裸の導体と絶縁被覆を施された導体の
いずれのリード線を支持する場合にも適用可能であり、
優れた作用効果を得られるものである。

【００２６】さらに言及すれば、本発明のリード線支持
装置は、前記実施例のように、ガス絶縁変圧器に極めて
好適であるが、これに限らず、油入変圧器を含めた変圧
器一般に広く適用可能であり、さらに、支持絶縁物を使
用してリード線を支持するリード線支持装置を備えた高
電圧機器一般に同様に適用可能である。

【００２７】

【発明の効果】以上述べたように、本発明においては、
支持絶縁物とリード線との間に、弾性及び絶縁性を有す
るフォーム材料層を介在させることにより、絶縁強度及
び機械的強度に優れ、特に、変圧器に好適な、優れたリ
ード線支持装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を、図３のガス絶縁変圧器のリード線支
持装置として適用した一実施例を示す斜視図。

【図２】図１のリード線支持装置のリード線支持部分を
示す拡大断面図。

【図３】リード線支持装置を含むガス絶縁変圧器の一例
を示す模式図。

【図４】図３のガス絶縁変圧器に使用されている従来の
リード線支持装置の一例を示す斜視図。

【図５】図４のリード線支持装置のリード線支持部分を
示す拡大断面図。

【符号の説明】

１…タンク ２…鉄心 ３…巻線 ４…ブッシング端子 ５…リード線 ６…鉄心クランプ ７…リード線支持装置 １１…第１の支持絶縁物 １２…第２の支持絶縁物 １３…窪み １４…絶縁ボルト １５…フォーム材料シート（フォーム材料層）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 絶縁媒体を充填してなるタンク内に配置
   されたリード線を支持絶縁物で支持するリード線支持装
   置において、 前記支持絶縁物と前記リード線との間に、弾性及び絶縁
   性を有するフォーム材料層を介在させたことを特徴とす
   るリード線支持装置。