JP3161201B2 - 変圧器巻線 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、変圧器巻線に関し、特
にその巻線端部の静電シールドに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】変圧器の巻線の上下端部の静電（電界緩
和）シールドの絶縁構成は、誘電率整合を図って絶縁ス
ペーサを挿入した構造となっている。

【０００３】図２は巻線の上下端部の絶縁構成の説明図
で、図２において、高圧巻線１１および低圧巻線１２の
上下には、それぞれ静電シールド１３、１４、１５およ
び１６が配置されている。

【０００４】この静電シールド１３〜１６は、よく知ら
れているように丸味を付けた金属性のリング状、あるい
は表面のみ金属箔等で導電性にした非金属性のリング状
をなし、１部に切れ目が設けてある。

【０００５】図３は図２のＡ部の詳細を示す要部拡大図
で、図３において、高圧巻線１１の上部の静電シールド
１３はシールド本体１７の上部に絶縁スペーサ１８を配
置して前記シールド本体１７と絶縁スペーサ１８を一括
して絶縁被覆１９が巻回されて構成されている。同様
に、低圧巻線１２の上部の静電シールド１４はシールド
本体２０の上部に絶縁スペーサ２１を配置して前記シー
ルド本体２０とスペーサ２１を一括して絶縁被覆２２が
巻回されて構成されている。高圧巻線１１のシールド本
体１７は、低圧巻線１２のシールド本体１９よりも厚さ
が厚く、 ［ｔ₁（高圧用の厚さ）＞ｔ₂（低圧用の厚さ）］であ
り、端部の曲率半径が大きく、 ［Ｒ₁（高圧用の曲率半径）＞Ｒ₂（低圧用の曲率半
径）］である。なお、２３は垂直方向冷却ダクトで、２
４は主絶縁である。

【０００６】前記高圧巻線１１および低圧巻線１２とそ
れぞれの静電シールド１３および１４の間には、それぞ
れの巻線の円周上に等間隔で配置されたダクトピース２
５および２６により水平方向冷却ダクトが形成されてい
る。また、前記高圧巻線１１の静電シールド１３および
低圧巻線１２の静電シールド１４の上部は絶縁リング２
７および２８が配置され、この絶縁リング２７および２
８に貼付けられた絶縁ピース２９および３０を介して高
圧巻線１１および低圧巻線１２がその軸線方向に締め付
けられている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このような変圧器の巻
線上下端部の静電シールドの絶縁構成においては、下記
のような課題があった。

【０００８】（１）ＳＦ₆ガス誘電率が１．０であり、
このＳＦ₆ガスを使用した絶縁変圧器の巻線端部の静電
シールドの絶縁スペーサは、誘電率整合の観点から比誘
電率の低い素材が少なく、機械強度や熱的性能の優れた
ものになるとさらに少ない。さらに、静電シールドの形
状に合った成形品を得るには、非常に高価なものになっ
てしまう。

【０００９】（２）静電シールドの形状（一般に巻線の
形に合わせてリング状）に合わせるため、柔軟性に富む
素材の成形品が用いられるが、素材が高価であり、機械
的強度が小さく、絶縁ピースによって圧縮されたとき、
静電シールドの絶縁スペーサが巻線の幅方向に膨らみ冷
却通路を狭め、冷却効果を低下させる。

【００１０】即ち、図４（Ａ）の断面図に示すように、
絶縁ピース２９（３０）によって圧縮された静電シール
ド１３（１４）の絶縁スペーサ１８（２１）が巻線の幅
（半径）方向に膨らみ冷却通路を狭める。同図（Ｂ）は
その通路の展開図で、斜線の部分が冷却通路を狭める部
分を示している。

【００１１】（３）図５に示すように、絶縁スペーサ３
１に低誘電率プラスチック素材の押出し成形品を使用し
た場合、金型が必要となりコストアップになる。また、
低誘電率プラスチック素材として弗素系、シリコン系な
どがあるが、一般に高価である。

【００１２】本発明は、以上のような点に鑑みてなされ
たもので、電界緩和効果が大きく、機械的強度に優れた
静電シールドを備えた変圧器巻線を提供することを目的
とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明の変圧器巻線の静電シールドは、リング状で
断面矩形状をなし、少なくとも巻線と反対側の角部を円
弧状としたシールド本体に絶縁テープをトロイダルコイ
ル状に巻回するとともに、巻回するとき前記円弧部に積
層クレープテープを挟み込んで断面ほぼ矩形状に形成
し、この絶縁被覆されたシールドリング本体の円弧部側
に絶縁リングを配設し、該絶縁リングと絶縁被覆された
シールド本体とを一体として絶縁テープを巻回して絶縁
被覆を形成したことを特徴とする。

【００１４】

【作用】本発明の構成の変圧器巻線の静電シールドは、
絶縁テープを巻回するとき比誘電率が小さい絶縁物であ
る積層クレープテープを、シールド本体の円弧状部の巻
回間に充填して絶縁被覆を施し、機械力の加わる巻線支
持側に強度の大きい絶縁物を充填したので、電界緩和効
果が大きくなり、機械的強度も優れている。また、積層
クレープテープの幅を適宜選択すれば、シールドの曲率
にも合わせることができ、挿入箇所の内外の周長が違っ
てもフィットし、無理が生じない。

【００１５】

【実施例】本発明の変圧器の巻線の静電シールドでは、
従来のシールド本体の円弧状部に絶縁テープの巻回間に
適宜の幅の積層クレープテープを挿入しながら、抄紙
（素材は天然繊維、合成繊維または両者の複合した繊
維）またはプラスチックフィルムなどの絶縁テープを巻
回して絶縁被覆として断面がほぼ矩形（長方形）の被覆
されたシールド本体を形成し、この被覆されたシールド
本体の巻線支持側に機械的強度の大きい絶縁リングを合
わせて、絶縁テープを巻回して絶縁被覆を構成し、静電
シールドの周辺の電界を緩和する構成である。

【００１６】以下、本発明の変圧器巻線の静電シールド
の実施例を、図１に基づいて説明する。図１は本発明の
変圧器巻線の静電シールド部分の実施例の要部断面図
で、図１において、シールド本体１の円弧状空間２には
絶縁テープ３の巻回間に適宜の幅の積層クレープテープ
４を挿入しながら、抄紙（素材は天然繊維、合成繊維ま
たは両者の複合した繊維）またはプラスチックフィルム
などの絶縁テープ３をトロイダルコイル状に巻回して絶
縁被覆５とし、断面がほぼ長方形の絶縁被覆されたシー
ルド本体１を形成し、この絶縁被覆されたシールド本体
１に機械強度の大きい絶縁リング６を合わせて一体と
し、絶縁テープ３をトロイダルコイル状に巻回して絶縁
被覆７とし、静電シールド８を構成している。

【００１７】前記絶縁テープ３としては、油入変圧器の
場合はクラフト・マニラ紙テープなどを使用し、ＳＦ₆
ガス絶縁変圧器の場合はポリエステルフィルムテープ、
ポリミド抄紙テープなど使用する。

【００１８】

【発明の効果】以上のように、本発明の変圧器巻線の静
電シールドは、シールド本体の円弧状空間には絶縁テー
プの巻回間に適宜の幅の積層クレープテープを挿入しな
がら、抄紙（素材は天然繊維、合成繊維または両者の複
合した繊維）またはプラスチックフィルムなどの絶縁テ
ープを巻回して絶縁被覆として断面がほぼ長方形の絶縁
被覆されたシールド本体を形成し、この絶縁被覆された
シールド本体に機械的強度の大きい絶縁リングを一体と
して、絶縁テープを巻回して絶縁被覆して構成したの
で、 （１）比誘電率が小さい絶縁物である積層クレープテー
プ（クレープの素材では比誘電率が１．５〜１．８）を
シールド本体の円弧状空間の絶縁テープの巻回間に充填
したので、電界緩和が大きく絶縁破壊強度が大きい。

【００１９】（２）機械力の加わる箇所に強度の大きい
絶縁物を充填したので、機械強度に優れている。

【００２０】（３）積層クレープテープの幅を適宜選択
すれば、いかなるシールトの曲率にも合わせることがで
きる。

【００２１】（４）クレープテープ素材であるので、挿
入箇所の内外の周長が違ってもフィットし、無理がな
い。

【００２２】（５）安価なクレープ素材の積層で構成で
きるので、経済的である。

【００２３】などの優れた効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の変圧器巻線の静電シールド部分の実施
例の要部断面図。

【図２】巻線端部の絶縁構成を示す構造図。

【図３】図２のＡ部の詳細を示す要部断面図。

【図４】絶縁スペーサにより変圧器の巻線を締付けたと
きの状態を示す要部断面図。

【図５】絶縁スペーサ用の低誘電率プラスチック素材の
押し出し成形品の斜視図。

【符号の説明】

１…シールド本体 ２…円弧状空間 ３…絶縁テープ ４…積層クレープテープ ５、７…絶縁被覆 ６…絶縁リング ８…絶縁シールド

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 高圧巻線および低圧巻線の上下に、シー
   ルド本体を絶縁被覆した静電シールドを備えた変圧器巻
   線において、前記静電シールドは、リング状で断面矩形
   状をなし、少なくとも巻線と反対側の角部を円弧状とし
   たシールド本体に絶縁テープをトロイダルコイル状に巻
   回するとともに、巻回するとき前記円弧部に積層クレー
   プテープを挟み込んで断面ほぼ矩形状に形成し、この絶
   縁被覆されたシールドリング本体の円弧部側に絶縁リン
   グを配設し、該絶縁リングと絶縁被覆されたシールド本
   体とを一体として絶縁テープを巻回して絶縁被覆を形成
   したことを特徴とする変圧器巻線。