JPH0653126U - 複厚フィルム製造装置 - Google Patents

複厚フィルム製造装置

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JPH0653126U
JPH0653126U JP067194U JP6719493U JPH0653126U JP H0653126 U JPH0653126 U JP H0653126U JP 067194 U JP067194 U JP 067194U JP 6719493 U JP6719493 U JP 6719493U JP H0653126 U JPH0653126 U JP H0653126U
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實美 新本
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 長手方向に走る適数の厚肉部を有する複厚フ
ィルムを、高い精度で製造しうる装置を提供する。 【構成】 ダイ本体2bに、狭幅のリング状のダイリップ
2aを設け、その外周に、発熱を個々に制御しうる多数の
加熱素子5を、互いに密接して円周方向に並べて設け、
かつ任意の複数の加熱素子5のための側温素子6と、側
温素子の発熱量を制御する演算装置7と、完成されたフ
ィルム3aを引出し方向と直角に適当な長さで切断した環
状のサンプルフィルム3bの厚さを、切口に沿って測定す
るフィルム厚測定装置8とを設ける。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で使用される合成樹 脂フィルム製手提袋等の原材料となるフィルムにおいて、その縦方向(長手方向) の引っ張り強度を増すために、縦方向に走る適数の厚肉部を設けてなる複厚フィ ルムの製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フィルム製の手提袋の原材料としては、加工の容易性から、インフレー ション成形によるフィルム(以下インフレーションフィルムと称する。)が多く使 用されている。 この種の目的に使用されるインフレーションフィルムの中には、手提袋の縦方 向の引っ張り強度を増すために、フィルムの厚さを、その製造時のバブルの周方 向の複数箇所で、縦方向すなわち軸線方向に走る厚肉のものと複厚フィルムがあ る。
【0003】 このような複厚フィルムを製造するには、従来は、エアーリングの冷却効果を 、バブルの周方向に不均衡として、バブルの膜厚を部分的に異ならせていた。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
合成樹脂製フィルムの製造過程において、フィルムの肉厚が決定される要因は 多々あり、この肉厚は、構成各部の寸法や形状、材料の物性、溶融温度や引き出 し速度、エアーリングにおける冷却風の温度や速度等をパラメータとして変化す る。 エアーリングにおける冷却風の温度や速度等は、変化し易く、かつ絶対値レベ ルでの再現性はあまり良くない。
【0005】 一方、引き出し成形によるフィルム製造に際しては、肉厚や偏肉の調節中であ っても、フィルムの引き出しを停止することはできず、その調節期間中に作られ たフィルムは、不良品となる。そのため、肉厚の調節に要する時間、及び調節さ れた各パラメータの完成品に対する応答時間は、できる限り短いことが望ましい 。
【0006】 特に、フィルム製造装置の作働開始時の各部の設定は、速やかに済ませて、所 望の仕様のフィルムが短時間に製造できるようにしなければ、歩留りが悪くなり 、フィルム価格を増大させることになる。
【0007】 また、多種少量の生産を行なうときには、フィルム製造装置の作動を停止させ ないで、フィルム仕様を変更することもあり、このような場合にも、所望の仕様 の製品が製造できるように、速やかに所要の調節が行われることが望まれる。
【0008】 このようなことから、従来のエアーリングによる肉厚の制御手段では、周方向 の任意の箇所で肉厚を変化させ、かつ各部の肉厚を高精度に制御することが困難 である。
【0009】 また、フィルムの厚さが一定でない複厚フィルムを、2次加工の原材料として 提供する場合には、フィルムの厚さを、絶対的な値として表示しなければならな い。
【0010】 複数のフィルムの厚さを個々に表示するためには、フィルム各部の厚さの精度 を高くしなければならないが、従来の複厚フィルムの製造手段では、表示するに 足る精度が得られなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本考案の装置は、成形ダイスのダイ本体の中央の孔に嵌合されたマンドレルと 、マンドレルの上端部外周に、ダイリップを形成するための間隔をあけて嵌装し たリップ調節リングと、リップ調節リングの上方に設けたフィルムの空冷用のエ アーリングと、上記ダイリップの外周に接近させて、かつ互いに密接させて円周 方向に設けた、発熱量を個々に制御しうる多数の加熱素子と、任意の複数加熱素 子の近くの温度を絶対レベルで計るべく、これら加熱素子に近接して設けた複数 の測温素子と、各加熱素子における発熱量を、所要に制御するための演算装置と 成形ダイスのダイリップから出たフィルムが所要に冷却された後に、これを折り たたんで完成されたフィルムとするニップロールのと、完成されたフィルムを引 出し方向と直角に適当な長さに切断した帯環状のサンプルフィルムを、その切口 に沿って連続的に移動させながら、その厚さを順次測定するとともに、この膜厚 測定データを、サンプルフィルムの移動方向フィルムの引き出し方向と直交する 方向)の測定位置データと対応させて、演算装置に入力させるフィルム厚測定装 置と、演算装置における所要のデータや指示を表示するCRTモニタ装置と、演 算装置に所要の機能コードや数値データ等を入力するキー装置とを備えてなるこ とにより、上述の課題を解決するものである。
【0012】
【作用】
ダイリップの周辺に設けた多数の加熱手段を制御することにより、安定した厚 さの複数の異なる膜厚が得られる。 膜厚の測定結果を、各加熱手段に速やかに反映させて、複数の膜厚を、速やか に、かつ高精度で調節することができる。
【0013】
【実施例】
図1は、溶融押出式フィルム成形装置、例えばインフレーションフィルム成形 装置に、本発明を適用した一実施例を示すものである。 (1)は押出機、(2)はフィルム成形ダイス、(3)は、ダイス(2)から引き出さ れたフィルム、(4)は、フィルム(3)を引き出すニップロールである。
【0014】 (5)は、図2に示す如く、ダイス(2)における狭幅の円環状のダイリップ(2a) の外周に接近させて、円周方向に設けた多数の加熱素子である。
【0015】 (6)は、同じく図2に示す如く、いずれか任意の複数の加熱素子(5)の近傍の 温度を計るべく、これら加熱素子(5)に近接して設けた測温素子である。
【0016】 (7)は、各加熱素子(5)における発熱量を、所要に制御するための演算装置で ある。 演算装置(7)の周辺には、成形ダイス(2)から出たフィルム(3)が所要に冷却 された後に、ニップロール(4)(4)で偏平に折りたたまれて完成されたフィルム (3a)の厚さを測定し、その測定データを演算装置(7)に入力するためのフィルム 厚測定装置(8)と、演算装置(7)における所要のデータを表示したり、所要の指 示を表示したりするCRTモニタ装置(9)と、演算装置(7)に所要の機能コード や数値データ等を入力するキー装置(10)が設けられている。
【0017】 各加熱素子(5)の発熱量は、個々に制御しうるようになっており、実施例では 、セラミックシース型の電気ヒータが用いられている。この加熱素子(5)は、環 状のダイリップ(2a)の外周辺に、素子同士を接近させて、密に設けられている。
【0018】 測温素子(6)は、加熱素子(5)に接近して配置され、対応する加熱素子(5)の 近傍の温度を、絶対レベルで計測する。 実施例における測温素子(6)は、等間隔で4個配置され、各測温素子(6)は、 それに最も接近した加熱素子(5)の温度を計るとともに、すべての加熱素子(5) を4等分した加熱素子グループの代表温度をも計っている。
【0019】 図3に示すように、ダイス(2)のダイ本体(2b)の中央の孔には、マンドレル(2 c)が嵌合され、マンドレル(2c)の上端部(2d)の外周には、ダイリップ(2a)を形成 するための間隔をあけて、リップ調節リング(2e)が嵌装されている。リップ調節 リング(2e)の上方には、ダイリップ(2a)から引き出されたフィルム(3)(インフ レーション成形の場合にはバブルと称される。)を空冷するためのエアーリング( 2f)が設けられている。
【0020】 なお、インフレーション成形においては、バブルの内圧を発生するためのイン サイドマンドレルや、バブルの外周を案内するためのバブルガイド等が設けられ るが、これらは、本考案と直接には関連しないので、図示を省略してある。
【0021】 ダイ本体(2b)及びリップ調節リング(2e)の外周には、バンドヒータ(2g)が巻回 されている。これによるダイス(2)の加熱温度は、ダイス本体(2b)に設けた測温 素子(2h)で計測して制御される。
【0022】 リップ調節リング(2e)は、調節ねじ(2i)によって、マンドレル(2c)の対して芯 合わせされ、ダイリップ(2a)の間隔を、全周に亘って均一に保っている。
【0023】 前記各加熱素子(5)は、ダイリップ(2a)に接近させて、かつダイス(2)の軸線 方向へ向けて、リップ調節リング(2e)に埋設されている。 加各熱素子(5)は、ダイリップ(2a)の開口部付近のみではなく、溶融樹脂通路 に至る深部まで、温度を制御しうるようになっている。
【0024】 測温素子(6)は、加熱素子(5)と同様に、リップ調節リング(2e)に埋設されて いる。測温素子(6)は、熱電対、白金抵抗体、その他適宜の感温式のものでもよ いが、実施例では熱電対が用いられている。
【0025】 なお、実施例においては、4個の測温素子(6)を用いているが、これは、発熱 体(5)を電気ヒータとして、発熱量を比例制御式で電力制御する場合に適してい る。
【0026】 比例制御の際には、発熱体(5)の温度を知ることは、必ずしも必要ではなく、 ダイリップ(2a)の温度を知ることによって、温度をパラメータとして、偏肉を生 じさせる他の要素の経時的な温度保償が行なえるので、4個の測温素子(6)を設 けるのが適当である。
【0027】 発熱素子(5)の発熱量を、温度に基いて制御することも可能である。この場合 には、各発熱素子(5)に対して、測温素子(6)を、1対1に対応させて設けると よい。 電気ヒータの発熱量を比例制御によって制御する場合に比して、これを温度に 基いて制御するようにした方が、フィードバック制御になるので、応答性が高い 。
【0028】 演算装置(7)は、図4に示す如く、マイクロプロセッサユニット(以下MPU とする)(11)を主要素として構成したマイクロコンピュータである。
【0029】 フィルム厚測定装置(8)は、完成フィルム(3a)を、引き出し方向と直角に適当 な長さ(10〜20mm程度)に切断した帯環状のサンプルフィルム(3b)の厚さを、その 切口に沿って、連続的に測定するものである。 すなわち、フィルム厚測定装置(8)においては、帯環状のサンプルフィルム(3 b)を、切口に沿って連続的に移動させながら、膜厚を順次測定するとともに、こ の膜厚測定データを、サンプルフィルム(3b)の移動方向(フィルムの引き出し方 向と直交する方向)の測定位置データと対応させて、演算装置(7)に入力させる 。
【0030】 フィルム厚測定装置(8)は、図4に示すように、ロータリーエンコーダ(8a)を 備える駆動ローラ(8b)と、案内ローラ(8c)と、テンションローラ(8d)からなる環 状テープ走行手段に、サンプルフィルム(3b)を掛け回して、サンプルフィルム(3 b)を切口に沿って走行させるとともに、ロータリーエンコーダ(8a)で、走行方向 の測定位置データ(P)を検出するようにしたものである。
【0031】 駆動ローラ(8b)と案内ローラ(8c)の間には、膜厚検知センサ(8e)が設けられ、 走行中のサンプルフィルム(3d)の厚さを、位置毎に連続的に測定する。この測定 出力がアナログ出力の場合には、アナログ・ディジタル変換器(12)を介して、デ ィジタルの膜厚データ(D)に変換される。
【0032】 位置データ(P)と膜厚データ(D)は、MPU(11)に取り込まれ、位置データ( P)をアドレスに対応させたテーブル状の1次元配列データ、もしくは位置デー タ(P)と膜厚データ(D)を1対として、別途に連続したアドレスに対応させた2 次元配列データとして、所要の作業メモリ(M1)に記憶される。
【0033】 帯環状のサンプルフィルム(3b)の位置データ(P)は無限に循環するので、予め 基準点を設定して、位置データ(P)の始端と終端を定める。
【0034】 前述したように、インフレーション成形によるフィルム(3)は、ニップロール (4)で引き出されるとともに、偏平に折りたたまれて、完成フィルム(3a)として 巻き取られる。
【0035】 ニップロール(4)によってフィルム(3)が折りたたまれるときの折目(3c)(3c' )は、ダイリップ(2a)の開口部の一定の位置に対応する。すなわち、ニップロー ル(4)の接触面を、直下のダイス(2)に投影すると、図2におけるX−X'線が これに相当し、このX−X'線とダイリップ(2a)の交差するところが基準位置に なる。
【0036】 折目(3c)(3c')は、サンプルフィルム(3b)にも残っており、いずれか一方の折 目(3c')を基準点とする。 サンプルフィルム(3b)をサンプリングするとき、一方の折目(3c')にマークを 付けるとともに、フィルム(3)の引き出し方向である前後方向もマークする。
【0037】 これによって、サンプルフィルム(3b)の位置データ(P)は、マークされた折目 (3c')が1巡する間を、所要の位置データ(P)として区切ることができる。
【0038】 このようにして得られる位置データ(P)の始点と終点が、折目(3c')に対応す るため、位置データ(P)は、ダイリップ(2a)の開口周縁に対応し、かつダイリッ プ(2a)に接近して設けられた各加熱素子(5)に対しても対応する。
【0039】 図6〜図12は、本考案の位置によって製造された複厚フィルムを原材料とし て作った手提袋(20)を示す。 6図に示すように、手提袋(20)は、チューブ状にインフレーション成形された 複厚フィルム(21)を、一定の長さで、フィルムの引出し方向(X)と直交する線で 切断し、かつ後方の切断縁を熱接着して作られる。
【0040】 前方の切断縁(22)は、開口していて袋の出し入れ口(23)となり、後方の切断縁 の溶着部(24)は、袋の底(25)となる。 出し入れ口(23)の表裏面の中央部には、手提孔(26)が設けられる。
【0041】 重いものを入れた手提袋(20)は、フィルムの引出し方向(X)に引っ張られるが 、複厚フィルム(21)を原材料として使用しているため、引っ張り強度は増してい る。
【0042】 複厚フィルム(21)は、フィルムの引出し方向(X)に延伸している薄肉部(A)と 厚肉部(B)を備えている。 薄肉部(A)の肉厚は、従来の一般的な均一の肉厚の手提袋用のフィルムと同じ 厚さである。 厚肉部(B)の肉厚は、手提袋(20)の吊り下げ方向、すなわち方向(X)への引っ 張り強度を増すために、薄肉部(A)よりも厚くしてある。
【0043】 本考案の装置により製造された複厚フィルムの薄肉部(A)と厚肉部(B)の肉厚 の精度は高い。
【0044】 また、従来は、厚肉部(B)を成形するための肉厚制御が、エアーリングによっ て行なわれるため、図8に示すように、手提孔(26)が設けられる表面(27)と裏面 (28)の2箇所の部分にのみ、比較的幅広の、厚肉部(B)が作られるだけであった 。 しかし、本考案の装置によれば、図9〜図12に示すように、薄肉部(A)と厚 肉部(B)は、フィルムの引出し方向(X)を向き、かつそれと直交する方向に並ん でいる複厚フィルム(21a)(21b)が製造される。
【0045】 なお、図10及び図12には、特殊な折りたたみ方で、図6及び図7に示す手 提袋(20)の折込部(29)を容易に形成しうるように、薄肉部(A)と厚肉部(B を配置した例が示されている。 しかし、以下の説明では、図8に示すインフレーションフィルムの一般的な折 りたたみ方をもって、完成フィルム(3a)を偏平に折りたたむものとして説明す る。
【0046】 図5は、サンプルフィルム(3b)の位置データ(P)と、それに対応する膜厚デー タ(D)に対して、折目(3c)(3c')の位置と、ダイリップ(2a)の開口周縁の位置、 並びにその開口周縁に接近して設けられた各加熱素子(5)に、マークする折目(3 c')に対応する基準点(X')から、反時計廻りに付設した素子番号(N)に対応させ たグラフを示す。
【0047】 図8は、複厚フィルム(21)と相当する完成フィルム(3a)に、素子番号(N)を 付して示している。
【0048】 図5に示す如く、素子番号(N)が付された各加熱素子(5)に対して、測定され た膜厚データ(D)が対応し、これにより、複数の膜厚を得るための、各加熱素子 (5)に要求される制御値(E0)が演算可能となる。
【0049】 例えば、完成フィルム(3a)に要求される複厚フィルムの膜厚基準値(C)(以下 設定値とする。)と測定膜厚データ(D)の大小を、位置データ(P)に応じて比較 して、その偏差値(B=C−D)を求める。
【0050】 これにより、予め設定した設定値(C)と測定値が一致した膜厚データ(D)に 対応する加熱素子(5)、例えば、図5における1、6、9、16、19番目等の 加熱素子(5)は、現在の制御状態で良いことがわかる。
【0051】 また、設定値(C)よりも膜厚データ(D)が大きくて、厚さが増している部分に 対応する加熱素子(5)、例えば、7、8、13、14、20、21番目等の加熱 素子(5)の発熱量を増すことにより、その近傍のダイリップ(2a)の温度を高めて 、膜生成時の膜厚を小さくすればよい。
【0052】 この際における加熱素子(5)の発熱量の増加の程度は、加熱素子(5)に対応す る膜厚データ(D)の設定値(C)からの偏差値(B)に正比例する。
【0053】 また、設定値(C)より膜厚データ(D)が小さく、厚さが不足している部分に対 応する加熱素子、例えば3、4、11、17、18番目等の加熱素子(5)の発熱 量を減少させることにより、その近くのダイリップ(2a)の温度を下げて、膜生成 時の膜厚を大とすればよい。 この場合にも、発熱量の増加のときと同様に、対応加熱素子(5)の発熱量の減 少の程度は、加熱素子(5)と対応する膜厚データ(D)の設定値(C)からの偏差値 (B)に正比例する。
【0054】 なお、設定値(C)に対して偏差値(B)は正負の値をとるので、加熱素子(5)の 制御変更量(△E)は、一般的に、加熱素子(5)に対応した膜厚データ(D)と設定 膜厚値(C)の差に正比例すると言うことができる。 制御変更量(△E)は、後述する加減データ(△d)と同じものである。
【0055】 これにより、膜厚を制御するために必要な各加熱素子(5)の制御変更量(△E) は、絶対レベルではなく、相対レベルで求めうる。 すなわち、発熱量は、各加熱素子(5)のサンプルフィルム(3b)を成形したとき (以下この時点を現在とする。)の発熱量、例えば、加熱素子(5)が電気ヒータで あるとすれば、現在の消費電力が、実際にどの程度であるかに拘わりなく、消費 電力の現在値に対する増加分又は減小分の電力値として求められる。
【0056】 電気ヒータの抵抗の温度係数が、零もしくは極く小さいとき、消費電力すなわ ち発熱量は、電流又は電圧の2乗に正確に比例するので、電気ヒータの比例制御 は容易であり、かつ温度保償を必要としない。なお、ニクロム線等は温度係数が 極く小さい。
【0057】 以上の如く、各加熱素子(5)毎の発熱の加減データ(△d)は、複数の基準膜厚 に応じた設定値(C)、位置データ(P)、及び膜厚データ(D)から、位置データ( P)に従って、△d=D−CをMPU(11)が演算して求められる。
【0058】 このMPU(11)によって作られた位置データ(P)に加減データ(△d)を対応さ せたテーブルに基き、位置データ(P)上で、各加熱素子(5)に付設された素子番 号(N)が対応付けされて、素子番号(N)と加減データ(△d)を対応させた加熱素 子制御テーブル(Tx)が作られる。 この制御テーブル(Tx)は、作業用のメモリ(M1)に一旦格納される。
【0059】 演算装置(7)は、不揮発性のメモリ(M2)、例えばROMもしくは電池でバック アップされたRAM等によるメモリエリアを備えており、メモリ(M2)には、加熱 素子基準制御テーブル(Tf)が格納されている。
【0060】 加熱素子基準制御テーブル(Tf)は、ダイリップ(2a)の間隔寸法の偏りや各加熱 素子の発熱特性のバラツキ等、ダイス(2)の製造時やダイリップ(2a)の間隔調整 時に、予め定まってしまうダイス固有のクセによって生じる偏肉成分を除去して 、フィルム全体の膜厚を均一にするデータである。
【0061】 例えば、試験運転等による初期調整において、各加熱素子(5)を、制御範囲の 中心に近い一定値で加熱制御しておき、かつ、フィルム仕様や運転状態を標準的 な状況に設定して、フィルム(3)を成形し、その際に得られるサンプルフィルム (3b)の測定データに基いて、前述の加熱素子制御テーブル(Tx)は作られる。
【0062】 次に、加熱素子制御テーブル(Tx)に基いて、各加熱素子(5)の制御値に変更を 加える。すなわち、最初の各素子同一の一定基準値に、複厚フィルム(21)の膜厚 に応じて、各素子に対応する加減データ(△d)を加える。
【0063】 各加熱素子(5)の制御に変更が加えられて発熱量が変更した後、変更があった 加熱素子(5)の熱平衡を待って、次のサンプルフィルム(3b)を採集する。 以下同様に、サンプルフイム(3b)に偏肉がなくなるか、もしくは、偏肉成分が 所要の基準値以内に小さくなるまで、この調整を繰返えす。
【0064】 このサンプリングフィルム(3b)の採集による繰返し調整は、実質的に、自動制 御における帰還制御である。その帰還量には、加減データ(△d)が相当し、帰還 量が負帰還であれば、すなわち、偏肉を除去する方向に作用していれば、長周期 的に偏肉成分は零に収束する。
【0065】 上述の調整の結果、偏肉が除去されて、膜厚の均一なフィルム(3a)が得られる ようになった時点で、その時点の制御テーブル(Tx)を制御基準テーブル(Tf)とし 、それを不揮発メモリ(M2)に格納する。
【0066】 なお、制御基準テーブル(Tf)における、各加熱素子(5)の制御データ(d)に係 る部分は、加減データ(△d)と同様の基準値に対する相対値、もしくは、加熱素 子の発熱量(又は消費電力)と対応する絶対レベルの値のいずれであってもよい。
【0067】 基準制御テーブル(Tf)の作成は、ダイス(2)の組立て時、及びダイリップ(2a) のリップ間隔調節時に行なえばよい。
【0068】 次に、新規な複厚フィルムの成形開始に際しては、最初に、基準制御テーブル (Tf)を決めたときの一定膜厚値と複厚フィルムの基準値(C)の差から、前記加減 データ(△d)と同様の制御変更値(△E)を求め、さらに、制御変更値(△E)と基 準制御テーブル(Tf)の差から、制御値(E0)を求めて、各加熱素子(5)が制御さ れる。
【0069】 しかし、偏肉を生じるパラメータは多く、かつ温度が関係するので複雑である 。また、基準制御テーブル(Tf)の作成時の膜厚と複厚フィルムの膜厚は異なるの で、偏肉を生じることがある。
【0070】 そのため、フィルム成形の開始時に、前記制御値(E0)によって予熱し、ダイ ス(2)が熱平衡した後、フィルム(3)が安定して成形しうる状態になると、フィ ルムの成形を開始して、サンプルフィルム(3b)を抽出し、そのサンプルフィルム (3b)を、前述のように、フィルム厚測定装置(8)に装着して膜厚を測定し、位置 データ(P)と膜厚データ(D)を採集する。
【0071】 この位置データ(P)と膜厚データ(D)により、そのときの制御値(E0)に対す る変動分が演算され、各加熱素子(5)の発熱量が、速やかに再設定される。
【0072】 MPU(11)によって演算された加熱素子番号(N)と、それに対応する制御デー タ(d)は、デイジタル・アナログ変換部(13)と電力制御部(14)を介して、各加熱 素子(5)を制御する。
【0073】 また、各測温素子(6)の測定値は、温度測定部(15)とアナログ・デイジタル変 換部(16)を介して、適時にMPU(11)に取り込まれ、この温度は、必要に応じて 絶対レベルの温度制御に利用される。
【0074】 前記加熱基準制御テーブル(Tf)は、入出力特性や検出温度特性のバラツキを除 去する成分を含み、新規な仕様の複厚フィルム成形の開始初期には、前述の如く 制御テーブル(Tf)を利用して、制御値(E0)を算出して各加熱素子(5)を制御し 、ダイス(2)が十分に予熱され、熱的に安定してからフィルム成形を開始する。
【0075】 このようにすると、新規な仕様の複厚フィルムであっても、作業開始の第1回 目のサンプル抽出による調節によって、偏肉が少なく、かつ複数の膜厚が精密に 制御された良質のものが、速やかに製造される。
【0076】 日常的なフィルムの製造に際して、複厚フィルムの種類や厚さ、幅、その引き 出し速度等の各データは、キー装置(10)からMPU(11)に入力される。
【0077】 フィルム製造中において、良質の複厚フィルムが安定して得られるようになっ たところで、サンプルフィルム(3b)を採集して確認し、そのときの各加熱素子( 5)の制御データ(d)を、加熱素子番号(N)と対応させて、複厚フィルム仕様に 応じた制御テーブル(T1)として、不発揮メモリ(M3)に記憶させる。
【0078】 複厚フィルムの仕様が変更された際、その度毎に、複厚フィルム仕様に対応す る制御テーブル(T2)(T3)…として記憶し、かつ、同一フィルム仕様であっても、 最新のものに更新記憶する。
【0079】 フィルム仕様に応じた制御テーブル(T1)(T2)…は、稼動初期にMPU(11)に入 力される複厚フィルム仕様のデータに基いて選択され、稼動開始時に各加熱素子 を制御する。 これにより、複厚フィルム仕様に応じ、かつ常に最新の制御テーブル(T1)(T2) …により、複数の膜厚が制御できる。
【0080】 上記制御テーブル(T1)(T2)…(Tn)を記憶する不揮発メモリ(M3)は、着脱自在の ICカードとすることもある。 ICカードによる場合は、1個のICカードに1つの制御テーブルを、また、1個 のICカードに、フィルム仕様や発注先特注、仕様等の特定な要素に関連させて、 複数の制御テーブルを記録しておいてもよい。
【0081】
【考案の効果】
薄肉部及び厚肉部共に偏肉が少なく、かつ均一な厚さを有する複厚フィルムを 、高精度で得ることができる。
【0082】 複数の膜厚を制御するための調節を、速やかに行ないうるため、調節の間に生 成される不良品が少なく、歩留まりが向上する。
【0083】 複厚フィルム仕様の変更にも、速やかに対処できる。そのため、フィルムの多 種小量生産が容易となり、また膜厚の調節に熟練を要しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の複厚フィルム製造装置の一例を示す略
【図2】図1のII−II線におけるダイスの拡大平面図
【図3】図2のIII−III線における拡大縦断面図
【図4】図1に示す演算装置のブロック図
【図5】サンプルフィルムの位置データとそれに対応す
る膜厚データのグラフに、ダイリップ開口周縁に設けた
各加熱素子の位置関係を対応させて示す図、
【図6】本考案の装置によって製造された、厚肉部が2
か所の複厚フィルムによって作られた手提袋の斜視図、
【図7】図6のVI−VI線断面図、
【図8】図6の手提袋の原材料の状態の複厚フィルムの
断面図、
【図9】厚肉部が6か所の複厚フィルムによる手提袋の
正面図、
【図10】図9のX−X線断面図、
【図11】厚肉部が多数の複厚フィルムによる手提袋の
正面図、
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【符号の説明】
(1)押出機 (2)(20)フィルム成形ダイス (2a)(20a)ダイリップ (2b)ダイ本体 (2c)マンドレル (2d)上端部 (2e)リップ調節リング (2f)エアーリング (2g)バンドヒータ (2h)測温素子 (2i)調節ねじ (3)フィルム (3a)(3a')完成フィルム (2b)サンプルフイム (3c)折目 (4)ニップロール (5)(5')加熱素子 (6)(6')測温素子 (7)演算装置 (8)(8')フィルム厚測定装置 (8a)ロータリーエンコーダ (8b)駆動ローラ (8c)案内ローラ (8d)テンションローラ (8e)(8e')膜厚検知センサ (8f)(8f')投光器 (9)CRTモニタ装置 (10)キー装置 (11)MPU (12)(16)アナログ・デイジタル変換部 (13)デイジタル・アナログ変換部 (14)電力制御部 (15)温度測定部 (16)アナログ・デイジタル変換部 (20)(20a)(20b)手提袋 (21)(21a)(21b)複厚フィルム (22)切断端部 (23)出し入れ口 (24)溶着部 (25)底 (26)手提孔 (27)前面 (28)後面 (29)折込部 (A)薄肉部 (B)厚肉部 (d)制御データ (D)膜厚データ (P)位置データ (X)引出し方向

Claims (1)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成形ダイス(2)のダイ本体(2b)の中央の
    孔に嵌合されたマンドレル(2c)と、 マンドレル(2c)の上端部外周に、ダイリップ(2a)を形成
    するための間隔をあけて嵌装したリップ調節リング(2e)
    と、 リップ調節リング(2e)の上方に設けたフィルム(3)の空
    冷用のエアーリング(2f)と、 上記ダイリップ(2a)の外周に接近させて、かつ互いに密
    接させて円周方向に設けた、発熱量を個々に制御しうる
    多数の加熱素子(5)と、 任意の複数加熱素子(5)の近くの温度を絶対レベルで計
    るべく、これら加熱素子(5)に近接して設けた複数の測
    温素子(6)と、 各加熱素子(5)における発熱量を、所要に制御するため
    の演算装置(7)と、 成形ダイス(2)のダイリップ(2a)から出たフィルム(3)
    が所要に冷却された後に、これを折りたたんで完成され
    たフィルム(3a)とするニップロールの(4)(4)と、 完成されたフィルム(3a)を引出し方向と直角に適当な長
    さに切断した帯環状のサンプルフィルム(3b)を、その切
    口に沿って連続的に移動させながら、その厚さを順次測
    定するとともに、この膜厚測定データを、サンプルフィ
    ルム(3b)の移動方向(フィルムの引き出し方向と直交す
    る方向)の測定位置データと対応させて、演算装置(7)
    に入力させるフィルム厚測定装置(8)と、 演算装置(7)における所要のデータや指示を表示するC
    RTモニタ装置(9)と、 演算装置(7)に所要の機能コードや数値データ等を入力
    するキー装置(10)とを備えてなる複厚フィルム製造装
    置。
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