JPH0651603B2 - 滅菌剤混合物及び滅菌方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は概して滅菌の分野に関し、より詳細にはエチレ
ンオキシドの使用に基づく滅菌に関する。

［従来の技術及び発明が解決しようとする課題］ 滅菌されるべき物品に沸騰水または蒸気を適用すること
による滅菌は長年実施されてきた。最近、医療または宇
宙探査のような所定の分野では、これらの分野で用いら
れる所定の物品は蒸気滅菌に関する温度または湿度に絶
えることが出来ないという理由から、種々の滅菌剤を用
いる必要性が生じている。

有効な滅菌剤であるだけでなく滅菌剤の残渣を滅菌した
物品から比較的素早く揮発することが出来るという理由
から、広く用いられるに至った滅菌剤の一つにエチレン
オキシドがある。エチレンオキシドを単独で用いて滅菌
を実行し得るが、これはエチレンオキシドがきわめて引
火性であるという理由から一般に行なわれない。その代
わりに、エチレンオキシド滅菌剤は一般に難燃剤と混合
して用いられる。しかしながら、難燃剤はエチレンオキ
シドの性質を補足しなければならず、さもないとエチレ
ンオキシドの有利な効果は失なわれる。過去20年に渡っ
て、滅菌剤混合物中でエチレンオキシドと一緒に用いる
のに選ばれた難燃剤は、工業上CFC12として知られてい
るジクロロジフルオロメタンであった。最も普通に用い
られた滅菌剤混合物は27.3モル％（12重量％）のエチレ
ンオキシドと72.7モル％（88重量％）のCFC12から構成
される。この混合物は工業界で、通常、12−88と呼ばれ
る。

近年、CFC12は大気圈上部のオゾン層に重大な損傷を生
じると考えられているクロロフルオロカーボンの一つで
あるので、CFC12の使用における問題が生じている。し
たがって、CFC12の使用を世界的に低減または減少する
ことが進められている。これはエチレンオキシドを滅菌
剤として使用することに関する問題を生じる。

上記のように、エチレンオキシドは滅菌剤として単独で
用い得る。しかしながら、単独使用は爆発の危険性があ
り、そのことはエチレンオキシドを、常時、間に合うよ
うに経験のある取扱者または知識のある取扱者がいる場
所で比較的わずかな用途にしか受け入れられなくする。

エチレンオキシドと一緒に用いるものとして知られてい
る難燃剤の一種は二酸化炭素である。しかしながら、二
酸化炭素の性質の理由から、不難燃性エチレンオキシド
−二酸化炭素の混合物は12−88がそうであると同様に、
単位体積当たり40％未満のエチレンオキシドを含む。し
たがって、滅菌はより高い圧力またはより長い接触時間
のいずれかで実行しなければならない。更にエチレンオ
キシドと二酸化炭素との蒸気圧力の大きな差は混合物を
貯蔵タンクまたはシリンダーから回収する際に分離さ
せ、滅菌しない二酸化炭素に富む滅菌剤混合物または爆
発性のあるエチレンオキシドに富む滅菌剤混合物を送出
する危険性を生じる。

従って、本発明の目的は、既知の滅菌剤の欠点を解決す
る、エチレンオキシドを用いる改良された滅菌混合物を
提供することにある。

本発明の別の目的は、既知の滅菌方法の欠点を解決す
る、エチレンオキシドを用いる滅菌剤混合物を使用する
改良された滅菌方法を提供するものである。

［課題を解決しようとする手段］ 発明の要約 この開示を読むことにより当業者に明らかになるであろ
う上記目的及び他の目的は、本発明により達成される。
本発明の一態様は、15〜30モル％のエチレンオキシドな
らびに70〜85モル％の1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフル
オロエタン及び／または１−クロロ−1,2,2,2−テトラ
フルオロエタンを含む滅菌剤混合物である。

本発明の別の態様は、15〜30モル％のエチレンオキシド
ならびに70〜85モル％の1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフ
ルオロエタン及び／または１−クロロ−1,2,2,2−テト
ラフルオロエタンを含む有効量の滅菌剤混合物を物品に
接触させることをから構成される滅菌方法である。

詳細な説明 本発明は滅菌剤混合物及び滅菌剤混合物を用いて物品を
滅菌する方法である。滅菌剤混合物は一般に気体または
蒸気として用いられる。

本発明の滅菌剤混合物は、15〜30モル％、好ましくは20
〜26モル％のエチレンオキシドならびに70〜85モル％、
好ましくは74〜80モル％の1,1−ジクロロ−2,2,2−トリ
フルオロエタン及び／または１−クロロ−1,2,2,2−テ
トラフルオロエタンを含む。エチレンオキシドは活性な
滅菌剤として作用し、もし混合物が用いられるならばハ
ロゲン化合物は難燃剤として作用する。難燃剤の濃度が
特定の下限未満では、十分な難燃性が混合物中に現われ
ず、潜在的に危険な状況を避けることができず、難燃剤
の濃度が特定の上限を超えるときには有効な難燃性は望
ましくない高温度、高圧及び／または長時間の接触時間
を使用せずには得られない。1,1−ジクロロ−2,2,2−ト
リフルオロエタンの工業上の略称はCFC123であり、１−
クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタンの工業上の略
称はCFC124である。

本発明の好ましい滅菌剤混合物は、エチレンオキシド並
びに、CFC123及びCFC124の一方または両方だけを含む。
しかしながら、滅菌剤混合物に、クロロジフルオロメタ
ンを更に含めて滅菌剤混合物の蒸気圧を増加しまたは費
用を節約させ得る。増大した蒸気圧は、滅菌混合物を滅
菌容器中に臨機な方法で推進させるためのいくつかの滅
菌システムにおいて望ましく、特に滅菌剤貯蔵器温度を
21゜C（70゜F）または約21゜C（70゜F）に維持することがで
きない状況では望ましい。

本発明の滅菌剤混合物中に存在し得る他の成分は、不活
性窒素ガスを含み、該ガスもまた滅菌剤混合物を滅菌容
器に推進するために滅菌剤貯蔵器内の圧力を増加するの
に用い得る。

本発明の滅菌剤混合物を用いて非常に多くの物品を滅菌
し得る。滅菌し得る医療用装置及び材料の例は、診断用
内視鏡；注射器、グローブ、試験管、培養器及びペース
メーカのようなプラスチック製品；チューブ類、カテー
テル及びシート類のようなゴム製品；針、メス及び酸素
試験のような器具；拡張器、ポンプ、モーター及び眼内
レンズのような他の品目を含む。更に本発明の滅菌剤混
合物を医療分野以外の品目用の燻蒸剤として用い得る。
これらの品目は、スパイスのような所定の食料品、毛
皮、寝具類、紙製品、並びに、飛行機、列車及び船舶の
貨物域のような輸送装置を含む。

本発明の滅菌剤混合物は、あらゆる形態の生体、特に、
望まない昆虫、バクテリア、ウィルス、カビ、糸状菌、
及び他の微生物に対して有効である。ほとんどの場合、
死滅させることが困難な生物体はB.Subtilus sbs.のニ
ゲル生殖細胞（niger spores）であるが、これらの生体
でさえも本発明の滅菌剤混合物により有効に破壊され
る。

本発明の滅菌剤混合物は、当業者に周知の有効な混合技
術を用いて調整され得る。例えば、混合物の各々の化合
物を重量測定して連結官を通じて滅菌剤貯蔵器にポンプ
で送り、該貯蔵器を回転して化合物を内部混合して均質
混合物にし得る。あるいは、化合物をポンプで混合タン
クに送り、十分な均質混合物が形成されるまでタンク内
で再循環させ、次いで混合タンクからポンプで滅菌剤貯
蔵器中に送る。

本発明の滅菌剤混合物は好適な形の任意のガス貯蔵容器
中に収容し得、例えば、米国運輸省（DOT）仕様第4BA30
0、第4BA300、第4BW240または作業圧力に好適な他のDOT
仕様のシリンダーまたはトレーラーのようなものがあ
る。また、滅菌剤混合物を米国機械技師協会（ASME）の
貯蔵容器に収容することも出来る。

ガス貯蔵シリンダーは、21゜C（70゜F）にて一般に約2.0a
tm（30）〜約3.4atm（50ポンド／平方インチ）（絶対
圧）（psia）の圧力で滅菌剤混合物を保持する使用者側
に配送され得、そして一連の弁、調節弁、気化器及び適
当な管を介して滅菌が実施される滅菌器と給合され得
る。

本発明のガス混合物は、当業界に既知である任意の通常
用いる滅菌器を利用し得る。斯かる滅菌器の一つを第１
図中に斜視図で示した。

第１図を参照すると、滅菌される物は扉２を介して滅菌
容器１内に配置される。第１図に示したような滅菌器は
机上型からルームサイズ型及びさらにより大きな寸法に
渡り得る。品目を滅菌容器１中に配置した後、扉２を閉
め、該容器を一般に54゜C（130゜F）〜60゜C（140゜F）の範
囲の温度に加熱する。一般に温度が高い程、必要な暴露
時間は短い。容器の温度を引き上げた後、真空ポンプ９
により排出口８を介して空気を排出して容器内に不完全
真空にする。空気を除去することは、滅菌剤混合物の希
釈防止及び暴露圧力の低下の両方に作用する。いくつか
の物品は突然の圧力変化により損傷を受けるので、適当
な減圧をもたらすには一般に滅菌されるべき物品に依存
して約５分から約45分かかる。湿性微生物は滅菌剤の作
用に一層敏感であるので、水蒸気を用いる。第１図にお
いて、蒸気源10からの水蒸気を管11を介して容器１中に
注入する。水蒸気を用いて容器内を30〜80％の範囲の比
較的多湿を生じさせる。

滅菌混合物を、シリンダー３のような源から管４及びフ
ィルター５を通じて気化器６に送り、そこで蒸気に変化
させる。滅菌剤混合物を気化器６から管７を介して滅菌
用の滅菌容器１中に送る。容器１中で滅菌が起こる圧力
を約0.5〜2.2atm（７〜33psia）にし得る。滅菌時間
は、温度、圧力、湿度レベル、用いる特定の滅菌混合物
及び滅菌される材料に依存して変わる。例えば、任意の
多孔性の物品はポリエチレンバック中に封止された物品
に比べて必要な暴露時間は一層短い。更にいくつかのバ
クテリアは特に抵抗性であり、したがってその破滅には
一層長い時間を要する。

必要な暴露時間の後、滅菌剤混合物を、入り口12を通じ
て空気、窒素、蒸気または二酸化炭素でフラッシング
し、管８を通じてポンプ９により連続的に脱気して抜き
取る。滅菌した材料を扉２を介して容器１から取り出
し、もし必要ならば、使用前に、残った滅菌剤を除去す
るために空気で通気する。すべての滅菌操作をモニター
して制御板13を通じて制御し得る。

以下の実施例及び比較例はさらに本発明を説明しかつ明
確にするのに働く。それらは本発明を限定するものでは
ない。

［実施例及び比較例］ それぞれ、CFC123及びCFC124と内部混合したエチレンオ
キシドに関する燃焼曲線を求めるために一連の燃焼試験
を実施した。操作を以下のようにした。エチレンオキシ
ド、空気及び難燃剤をすべて測定した濃度で、５の球
形容器中に１気圧、45゜Cで混合した。熱いニクロム線を
容器の中央に配置して混合物に発火エネルギーを提供し
た。火炎の伝播、すなわち混合物が発火して火炎が伝播
したか否かは容器壁上の温度及び圧力センサーにより決
定した。種々の混合物に関するデータをCFC123混合物に
関して第２図にそしてCFC124混合物に関して第３図中に
示した。その特定混合物に関して白抜きのデータ点は発
火しないことを示し、一方、塗りつぶしたデータ点は発
火したことを示す。第２図及び第３図に示した曲線は各
々の混合物に関する燃焼曲線を示す。

滅菌剤混合物に関して不燃焼性になるには、すべての空
気濃度、すなわち０〜100％の空気濃度で不燃焼性でな
ければならない。従って、０〜100％空気を示す直線は
燃焼曲線より下部を横切ることができない。燃焼曲線に
ちょうど接しているがその下部を横切らない０〜100％
空気の直線は、混合物の不燃焼性を維持しながら最高の
エチレンオキシド濃度を示す。かかる直線は第２図及び
第３図中に引かれ、エチレンオキシド／CFC123及びエチ
レンオキシド／CFC124混合物の両方に関して、エチレン
オキシド濃度が23モル％までにすることができるが、そ
れでも混合物はすべての空気濃度に関して不燃焼性を維
持する。

比較の目的で、CFC123及びCFC124の代わりに1,2,2,2−
テトラフルオロエタン（CFC134a）を用いた以外は上記
操作を繰り返した。CFC134aは一般にCFC12に最も類似し
た代替品として受け入れられている。このデータを第４
図中に報告する。該データによって示したように、エチ
レンオキシドとCFC134aとの混合物は、空気濃度の全範
囲に渡ってエチレンオキシド濃度で最大で12％まで不燃
焼性であるに過ぎない。

上記実施例及び比較例は本発明の滅菌剤ガス混合物が、
CFC12用の広く知られた代替品と一緒に構成した混合物
の不難燃性のほぼ２倍の不燃焼性を示すことを立証して
いる。

【図面の簡単な説明】 第１図は本発明の方法が用いられる滅菌装置の一つを表
わした斜視図である。 第２図は本発明の滅菌剤混合物の一具体例に関する燃焼
試験を表わしたグラフである。 第３図は、本発明の滅菌剤混合物の別の具体例に関する
燃焼試験を表わしたグラフである。 第４図は、CFC12の代替品として一般に受け入れられて
いる化合物と配合したエチレンオキシド混合物に関する
燃焼試験を表わすグラフである。

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】15〜30モル％のエチレンオキシド並びに70
   〜85モル％の1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタ
   ン及び／または１−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロ
   エタンを含む滅菌剤混合物。
2. 【請求項２】クロロジフルオロメタンをさらに含む請求
   項１の滅菌剤混合物。
3. 【請求項３】窒素を更に含む請求項１の滅菌剤混合物。
4. 【請求項４】物品を、15〜30モル％のエチレンオキシド
   並びに70〜85モル％の1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフル
   オロエタン及び／または１−クロロ−1,2,2,2−テトラ
   フルオロエタンを含む有効量の滅菌剤混合物に接触させ
   ることを含む物品の滅菌方法。
5. 【請求項５】滅菌剤混合物がさらにクロロジフルオロメ
   タンを含む請求項４の方法。
6. 【請求項６】滅菌剤混合物が更に窒素を含む請求項４の
   方法。
7. 【請求項７】滅菌剤混合物が物品に接触するときに、滅
   菌剤混合物が気体状である請求項４の方法。