JPH0650324A - シリンダブロックのメインベアリングハウジング構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 アッパハウジングとシリンダブロックの結合
剛性を高め、エンジン高速運転および高負荷運転時でも
メインベアリングハウジング全体の変形や倒れなどの発
生を最小限に抑える。 【構成】 中空貫通ピン３０を、メインベアリングアッ
パハウジング１６にその両端がそれぞれ所定量だけ突出
するように圧入してボルト通し孔を形成し中空貫通ピン
３０の一方の突出部のしまり嵌始め圧入によりメインベ
アリングアッパハウジング１６をシリンダブロックに結
合し、他方の突出部を介してメインベアリングアッパハ
ウジング１６にメインベアリングロワハウジング１７を
嵌め付け中空貫通ピン３０に固定ボルト１８を挿通して
これらのハウジングをシリンダブロックに共締する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明はシリンダブロックのメ
インベアリングハウジング構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】シリンダブロックのメインベアリングハ
ウジング構造としては一般的に、図４のようにシリンダ
８の前後を仕切るバルクヘッド９（メインベアリングア
ッパハウシングを一体形成）に、ベアリングビーム３の
各ベアリングキャップ１０（メインベアリングロワハウ
シング）をカラー２にて嵌め合わせると共に、これらを
通しボルト４で締着することによりクランクシャフトの
ジャーナルを軸穴で支持するようになっている。７はベ
アリングビーム３内に形成する給油通路の盲プラグ、５
と６はスカート部下面のオイルパンに設けられるオイル
レベルガイドとオイルレベルゲージを示す。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、エンジンの
小型軽量化を図るため、シリンダブロックとシリンダヘ
ッドを一体鋳造で製作することが考えられる。その場
合、当然のことながらシリンダブロックのアッパデッキ
ならびにシリンダヘッドのロワデッキ、ヘッドガスケッ
トおよびヘッドボルトなどを省略でき、しかもヘッドガ
スケットの吹き抜けの心配がないので、シリンダボアの
ボア間ピッチを極限まで小さくできることになる。しか
し、従来と同じメインベアリングハウジング構造ではシ
リンダボアのボア間ピッチが小さくなると、ピストンが
メインベアリングアッパハウジングと干渉して組み立て
ることができなくなってしまう。

【０００４】その対策としてメインベアリングアッパハ
ウジングをシリンダブロック側と別体に形成すると共
に、ピストン組み立て後にこれをメインベアリングロワ
ハウジングと一体に通しボルトによってシリンダブロッ
クに共締するようにすれば良いのだが、通しボルトが従
来より長くなるためにベアリングアッパハウジングとシ
リンダブロックとの結合力が弱まり、ピストンからコン
ロッドを介してクランクシャフトが大きな圧力を受ける
とこれらの間にクリアランスを発生、つまりハウジング
全体がエンジンの前後方向への変形や倒れなどを起こし
やすく、したがって高速運転および高負荷運転時などで
のエンジン振動および騒音が大きくなるという心配があ
った。

【０００５】この発明はこのような問題点を簡単な対策
手段により解決することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】そのため、この発明はシ
リンダブロックと別体のメインベアリングアッパハウジ
ングにボルト通し穴として中空貫通ピンをその両端がシ
リンダブロック側ならびにメインベアリングロワハウジ
ング側の取付面からそれぞれ所定量だけ突出するように
圧入形成し、その一方の突出部をシリンダブロック側に
しまり嵌めで圧入してメインベアリングアッパハウジン
グをシリンダブロックに結合し、他方の突出部を介して
メインベアリングアッパハウジングにメインベアリング
ロワハウジングを嵌め付け、メインベアリングロワハウ
ジングのボルト通し穴およびメインベアリングアッパハ
ウジングの中空貫通ピンを通して固定ボルトにてこれら
のハウジングをシリンダブロックに共締したものであ
る。

【０００７】

【作用】これによると、中空貫通ピンはメインベアリン
グアッパハウジングに圧入で、かつシリンダブロックに
対して一方の突出部にてしまり嵌めで圧入のため、アッ
パハウジングとシリンダブロックを強固に結合すること
になる。つまり、中空貫通ピンとアッパハウジングおよ
びシリンダブロックとの間ではエンジンを高速運転およ
び高負荷運転させてもクリアランスが発生しない。した
がって、固定ボルトが従来に較べて長くても中空貫通ピ
ンによりハウジング全体のエンジン前後方向へ変形や倒
れなどを最小限に抑えることができる。なお、中空貫通
ピンはメインベアリングロワハウジングに対して従来の
カラーに準じる寸法に嵌め付けられる。

【０００８】

【実施例】図１において、シリンダブロック５０とシリ
ンダヘッド１１は軽合金（アルミ合金）で一体鋳造によ
って製作される。２６はシリンダボア２２を冷却するウ
ォータジャケット、２８はシリンダヘッド１１側の燃焼
室、２７は燃焼室２８を冷却するウォータジャケット、
２３は吸気ポート、２４は排気ポートで、シリンダブロ
ック５０のバルクヘッド１９にはクランクシャフト（図
示せず）のジャーナルを支持するメインベアリングハウ
ジング１２が、後述するように軽合金製のアッパハウジ
ングとロワハウジングにより形成される。２１はメイン
ベアリングハウジング１２の軸穴、２５はオイルポンプ
からの潤滑油が流れるメインギャラリ、１３および１４
はスカート２０下面を覆うオイルパンで、１５はオイル
パン１４の内部に設けたバッフルプレートを示す。

【０００９】メインベアリングハウジング１２のアッパ
ハウジング１６はシリンダボア２２のボア間ピッチを最
小限に抑えているので、ピストン（図示せず）の組み付
けを干渉しないようにバルクヘッド１９と別体に形成さ
れる。アッパハウジング１６には図２，図３のようにボ
ルト通し穴として中空貫通ピン３０がバルクヘッド１９
側ならびにロワハウジング１７側の取付面からそれぞれ
突出するように圧入される。そして、アッパハウジング
１６は中空貫通ピン３０の上側突出部３０ａをバルクヘ
ッド１９側にしまり嵌めで圧入することにより結合さ
れ、中空貫通ピン３０の下側突出部３０ｂに嵌合するロ
ワハウジング１７と一体に通しボルト１８でバルクヘッ
ド１９に共締一体化される。なお、ロワハウジング１７
は複数個をビームでつなぐベアリングビーム形状に作ら
れる。

【００１０】図３において、中空貫通ピン３０の外径を
ｄｍｍ、バルクヘッド１９側への突出量をＨｍｍ、ロワ
ハウジング１７側への突出量をＨＬｍｍで表す。中空貫
通ピン３０の中央部はアッパハウジング１６の下穴に所
定の締め代（３／１０００ｄｍｍ程度）で、上側突出部
３０ａはバルクヘッド１９側の下穴に所定の締め代（２
／１０００ｄ程度）でそれぞれ強く圧入される。また、
下側突出部３０ｂはロワハウジング１７の下穴に従前の
カラーに準じる寸法で嵌め付けられる。

【００１１】なお、中空貫通ピンのバルクヘッド側への
突出量Ｈｍｍ（圧入寸法）はＨ≧ｄに、ロワハウジング
側への突出量ＨＬｍｍ（圧入寸法）はＨＬ≧０．６ｄに
することが好ましい。Ｈ＝０．６〜０．８ｄの場合には
長時運転で合金製バルクヘッド１９の下穴がこじられて
拡大し、エンジン振動および騒音性能の劣化を生じるよ
うである。

【００１２】一方、メインギャラリ２５からの潤滑油を
メインベアリングハウジング１２の軸受面に供給するた
め、バルクヘッド１９には片側の下穴が中空貫通ピン３
０の圧入寸法Ｈｍｍより少し深く形成され、ボルト１８
の外周に適当な通路空間４０を確保している。この空間
４０からメインギャラリ２５に向けて通路２９が形成さ
れ、メインギャラリ２５からの潤滑油は空間４０から中
空貫通ピン３０内へと導かれる。中空貫通ピン３０の内
径はボルト１８の外径より幾分か大きく作られ、これら
の間隙を潤滑油が流れるようになっている。アッパハウ
ジング１６には軸受面から中空貫通ピン３０の外周へ延
びる通孔３２が形成され、中空貫通ピン３０にその内部
を通孔３２に開口する小穴３３が設けられる。

【００１３】このような構成により、中空貫通ピン３０
は既述のようにメインベアリングアッパハウジング１６
に圧入で、かつバルクヘッド１９に対して突出部３０ａ
にてしまり嵌めで圧入のため、アッパハウジング１６と
バルクヘッド１９を強固に結合することになる。つま
り、中空貫通ピン３０とアッパハウジング１６およびバ
ルクヘッド１９との間ではエンジンを高速運転および高
負荷運転させてもクリアランスが発生しない。したがっ
て、固定ボルト１８がアッパハウジング１６の構成上、
従来に較べて長くても中空貫通ピン３０によりメインベ
アリング１２全体のエンジン前後方向へ変形や倒れなど
を最小限に抑えることができる。

【００１４】メインギャラリ２５からの潤滑油は通路２
９を介して空間４０に、さらに中空貫通ピン３０内の間
隙を経て、小穴３３から通孔３２を通して軸受面へ供給
されるのであり、アッパハウジング１６とバルクヘッド
１９との合わせ面、アッパハウジング１６とロワハウジ
ング１７との合わせ面およびボルト１８の座面は共締め
により高い面圧に保持され、したがって潤滑油漏れによ
る圧力低下もほとんど発生しない。また、潤滑油の供給
通路の一部として中空貫通ピン３０内の間隙を利用する
ので、メインギャラリ２５から軸受面に至る通路の形成
が容易になる。なお、この実施例ではシリンダヘッド１
１とシリンダブロック５０のほか、メインベアリングハ
ウジング１２のアッパハウジング１６とロワハウジング
１７をすべてアルミ合金製とするが、アッパハウジング
１６あるいはロワハウジング１７に熱膨張の異なる金属
を使用する場合には当然のことながら各部の寸法を見直
すことになる。

【００１５】

【発明の効果】以上要するにこの発明によれば、シリン
ダブロックと別体のメインベアリングアッパハウジング
にボルト通し穴として中空貫通ピンをその両端がシリン
ダブロック側ならびにメインベアリングロワハウジング
側の取付面からそれぞれ所定量だけ突出するように圧入
形成し、その一方の突出部をシリンダブロック側にしま
り嵌めで圧入してメインベアリングアッパハウジングを
シリンダブロックに結合し、他方の突出部を介してメイ
ンベアリングアッパハウジングにメインベアリングロワ
ハウジングを嵌め付け、メインベアリングロワハウジン
グのボルト通し穴およびメインベアリングアッパハウジ
ングの中空貫通ピンを通して固定ボルトにてこれらのハ
ウジングをシリンダブロックに共締したので、シリンダ
ブロック側にメインベアリングアッパハウジングも中空
貫通ピンを介して強固に結合できるため、エンジン高速
運転および高負荷運転時でもメインベアリングハウジン
グ全体の変形や倒れなどの発生を最小限に抑えることが
可能となり、エンジン振動および騒音の低減が得られる
という効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】エンジンの断面図である。

【図２】メインベアリングハウジングの構成図である。

【図３】メインベアリングアッパハウジングの断面図で
ある。

【図４】従来技術を説明するシリンダブロックの分解斜
視図である。

【符号の説明】

１２ メインベアリングハウジング １６ アッパハウジング １７ ロワハウジング １８ 通しボルト １９ バルクヘッド ３０ 中空貫通ピン ３０ａ，３０ｂ ピン突出部 ５０ シリンダブロック

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダブロックと別体のメインベアリ
   ングアッパハウジングにボルト通し穴として中空貫通ピ
   ンをその両端がシリンダブロック側ならびにメインベア
   リングロワハウジング側の取付面からそれぞれ所定量だ
   け突出するように圧入形成し、その一方の突出部をシリ
   ンダブロック側にしまり嵌めで圧入してメインベアリン
   グアッパハウジングをシリンダブロックに結合し、他方
   の突出部を介してメインベアリングアッパハウジングに
   メインベアリングロワハウジングを嵌め付け、メインベ
   アリングロワハウジングのボルト通し穴およびメインベ
   アリングアッパハウジングの中空貫通ピンを通して固定
   ボルトにてこれらのハウジングをシリンダブロックに共
   締したことを特徴とするシリンダブロックのメインベア
   リングハウジング構造。