JPH0647145B2 - ダイカスト用水溶性離型剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は金型汚れを防止するダイカスト用水溶性離型剤
に関するものである。

従来の技術 ダイカスト用離型剤は、不水溶性離型剤と水溶性離型剤
に大別されるが、不水溶性離型剤は引火の危険性や発煙
による作業環境の問題があるため、最近では、水溶性離
型剤の使用が主流になってきている。水溶性離型剤とし
ては鉱油、動植物油脂、ワックス、脂肪酸エステル等を
界面活性剤又は水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の
無機アルカリ性物質で乳化又は分散させた組成物が使用
されている。

水溶性離型剤としては、例えば、特公昭５８−１９３７
８号公報に開示された離型剤、および特開昭６１−１０
３６４２号公報に開示された離型剤がある。

特公昭５８−１９３７８号公報に開示された離型剤は、
ａ，ω−ポリブタジエンジカルボン酸およびマレイン化
ポリブタジエンの少なくとも１種を含むダイカスト用離
型剤である。

特開昭６１−１０３６４２号公報に開示された離型剤
は、平均分子量が５，０００以上のポリエチレンまたは
酸化ポリエチレンまたは酸化ポリエチレンのカリウム塩
を加熱残分中に１０重量％以上含有させたことを特長と
する水溶性ダイカスト用離型剤である。

上記水溶性離型剤の中で、特に融点の高い酸化ワックス
は無機アルカリによる中和物として用いられ、金型への
付着性に優れ、強固な付着膜を形成する。しかしなが
ら、ショット数が多くなるにしたがって、金型合わせ面
に酸化ワックスの無機アルカリ中和物が堆積しやすくな
り、溶湯の漏れが生じ、鋳造物の寸法精度が低下すると
いう欠点がある。金型への堆積物を除去するために、一
定のショット数ごとに、灯油、アルカリ溶液等の洗浄剤
で金型を洗浄しているが、酸化ワックスの無機アルカリ
中和物の融点が高いために、洗浄が不十分となり堆積物
が残存するという問題がある。

発明が解決しようとする問題点 本発明は前記した従来の水溶性離型剤の欠点を解消し、
金型への堆積物が少なく、かつ、堆積物が洗浄されやす
いダイカスト用水溶性離型剤を提供することを目的とす
る。

問題点を解決するための手段 この目的を達成するために、本発明者らは金型への堆積
性と洗浄性に関して鋭意研究を重ねた結果、酸化ワック
スの中和剤として沸点が２５０℃以下の水溶性アミンを
用いることによって、金型への堆積物が少なく、かつ洗
浄されやすいダイカスト用水溶性離型剤が得られること
を見い出した。

すなわち、本発明の趣旨とするところは、酸化パラフィ
ン、酸化ポリエチレン等の酸化ワックスを、沸点が２５
０℃以下の水溶性アミンの中和塩とした水溶性物質を含
有することを特徴とするダイカスト用水溶性離型剤に関
するものである。

以下に本発明の詳細を説明する。

（アルカリ性物質） 本発明においてアルカリ性物質として使用される沸点２
５０℃以下の水溶性アミンとしては、 モノエタノールアミン、 モルホリン、 メチルモルホリン、 エチルモルホリン、 Ｎ，Ｎ−ジエチルエタノールアミン、 Ｎ，Ｎ−ジメチルエタノールアミン、 モノイソプロパノールアミン、 エチレンジアミン、 ジエチレンジアミン、 ジエチレントリアミン、 ヘキサメチレンジアミン などがある。これらのアミン類は、いずれも２０℃にお
いて水と任意の割合に溶解する。しかしながら本発明に
おいては、このようなアミン類だけでなく、２０℃にお
いて水１００ｇに対して１０ｇ以上の溶解度をもつアミ
ン類でも使用することができる。

これらの水溶性アミンの添加量は、酸化ワックスの酸価
に対して０．８当量以上が必要である。

なお、沸点が２５０℃を越える水溶性アミンでは、高温
度の金型への付着性が低下するため離型性能が悪くな
る。

また、本発明においては、上記水溶性アミンのほかの公
知の無機アルカリ性物質として、水酸化カリウム、水酸
化ナトリウム、水酸化リチウム等を中和用アルカリとし
て併用しても良い。ただし、無機アルカリ性物質の添加
量は、酸化ワックスの酸価に対して０．２当量以下とす
ることが必要である。無機アルカリ性物質の添加量が
０．２当量を越えると、酸化ワックスの中和塩の融点が
高くなるため、金型付着物が溶剤系又はアルカリ系洗浄
剤で除去し難くなる。

（その他の成分） 本発明のダイカスト用水溶性離型剤は、上記のアルカリ
性物質以外の成分として、（イ）酸化ワックス、（ロ）
油脂およびまたは鉱油および（ハ）界面活性剤を含有す
る。上記の（イ）ないし（ハ）としては、従来のダイカ
スト用水溶性離型剤に用いられていたものを用いること
ができる。本発明のダイカスト用水溶性離型剤は、上記
の必須成分のほかに、合成エステル、シリコンーンオイ
ルなどを任意成分として含有することができる。

発明の作用 一般にアルミニウムダイカストの鋳造加工では、金型の
温度は最高３００℃となるが、本発明における水溶性ア
ミンは沸点が２５０℃以下であるため金型内で蒸発し、
金型堆積物は酸性物質すなわちカルボン酸の形で残存す
る。かつ、本発明における酸化ワックスの中和塩は、従
来技術の無機アルカリ中和塩と比較して融点が低くな
る。上記理由によって、金型堆積物はアルカリ系洗浄剤
によっても、また、溶剤系洗浄剤によっても除去されや
すくなる。

実施例 以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
ただし、本発明は下記の実施例によって何らの制限をも
受けるものではない。

実施例 １ないし１０ 第１表に示す成分を配合して、本発明のダイカスト用水
溶性離型剤を得た。第１表において組成を示す数値の単
位は重量％である。

比較例 １ないし４ 第２表に比較例を示す。第２表において組成を示す数値
の単位は重量％である。

第１表に示した実施例１ないし１０の離型剤と第２表に
示した比較例について、性能試験を行った結果を以下に
示す。

〈試験例 １〉 離型剤の１０倍の水希釈液を表面温度２３０ないし２５
０℃の試験鋼板に２０回スプレー塗布した後、第３表に
示す条件で洗浄した。

第４表に被洗浄率を測定した結果を示す。

〈試験例 ２〉 第１図に示す試験装置で離型剤付着物の堆積性を調べ
た。

試験条件を第５表に、試験結果を第６表に示す。

〈試験例 ３〉 離型剤の８０倍希釈水溶液について、ダイカスト鋳造を
行い、離型性、製品の仕上面及び金型の被洗浄性につい
て評価したところ、本発明による離型剤のうち実施例１
及び５は、第７表に示すとおり、従来技術である比較例
に比べて優れた結果を示した。

発明の効果 本発明の離型剤を使用すれば、金型面への堆積物量が少
なく、更に、洗浄されやすいために金型汚れが少なくな
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の離型剤を試験するために使用した離
型剤塗布試験装置の概念図である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（イ）酸化ワックス、 （ロ）油脂及びまたは鉱油、 （ハ）界面活性剤、及び （ニ）アルカリ性物質 からなるダイカスト用水溶性離型剤において、アルカリ
   性物質が２５０℃以下の沸点をもつ水溶性アミンである
   ことを特徴とするダイカスト用水溶性離型剤。