JPH0645840Y2 - 溶融金属の可搬式撹拌装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、溶融金属とくにアルミニウム溶湯を攪拌する
ために有用な可搬式の攪拌装置に関する。

〔従来の技術〕

溶融金属に攪拌管を挿入し吸引または吹き出し操作によ
って攪拌する方式の装置としては、炉壁の上部に攪拌管
を25〜60°の角度範囲で貫通固定する構造（特開昭52-1
53802号公報）、炉壁の下方部に設けた開口部に立上り
管を接続した構造（特開昭58-185730号公報）等が知ら
れている。

ところが、これら装置はいずれも攪拌管が固定されてい
るために操作過程で種々のトラブルを惹起する欠点があ
る。すなわち、前者の構造の場合には溶融するための固
形金属材料を炉内に装入する際に衝突、衝撃などを受け
て攪拌管の先端部位が破損したり、溶解中の高速熱流が
管を直撃して劣化させる等の問題が起きるうえ、炉内に
挿入されている管が邪魔になって、滓寄せ、滓取り操作
の効率を減退させる難点もある。また、後者の構造にあ
っては、出湯の繰り返しで滓が開口部の入口に堆積し、
ついには開口部が閉塞して炉の操業停止に至る事態が発
生する問題点がある。

このような固定管方式の欠点を解消するため、本考案者
らは既に攪拌管を炉の側壁に設けた挿入口に挿入したの
ち、傾転用装置を用いて攪拌管を傾斜させて先端部分を
溶融金属中に没入させる機構の攪拌装置を開発し（実開
昭63-95099号）、更に前記装置に改良を加え、炉壁に設
けた傾斜挿入口に攪拌管を傾転挿入手段を介して挿入す
る機構の攪拌装置を提案した（特開平3-186192号）。

〔考案が解決するための課題〕

これら先行技術による攪拌装置によれば、攪拌管が着脱
自在の構造であるため、例えば固形金属材料の装入、ま
たは滓寄せ、滓取り作業などの段階では炉外に取り外す
ことができる。したがって、攪拌管に損傷を受けること
はなく、滓除去の作業能率も大幅に向上させることが可
能となる。

しかしながら、前記の攪拌装置は常に炉の近傍に固定的
に設置される構造型式である関係で、複数の溶解炉をも
つ工場では炉と同数の攪拌装置を設置しなければなら
ず、コスト、スペースおよび稼働率などの面で大きな損
失を招く問題点がある。また、炉内に挿入する攪拌管を
炉壁の形状あるいは炉内の滓状況に応じて調整する機能
にも解決すべき課題が残されていた。

本考案はこれらの課題を解決するために開発されたもの
で、その目的は傾転機構を介して攪拌管を着脱自在に炉
内に傾斜セットする装置機構において、攪拌管の先端部
に可動伸縮の自由度を与え且つ装置全体を容易に位置移
動することができる構造の可搬式攪拌装置を提供するこ
とにある。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的を達成するための本考案による溶融金属の可
搬式攪拌装置は、攪拌管を傾転機構手段と接続する支持
フレーム上に受支ロールを介して載置し、前記攪拌管の
基端部側を片持ち支持点で軸支するとともに、該軸支部
位を攪拌管の長手方向に沿って進退させるための位置調
整手段を装備した機構を備え、これら部材を必要な操作
ユニットと共に移動可能な基台に搭載設置してなること
を構成上の特徴とするものである。

本考案の可搬式攪拌装置は、傾転機構を介して攪拌管を
着脱自在に炉内にセットできる実願昭61-189931号（実
開昭63-95099号）および特願平1-325481号（特開平3-18
6192号）の攪拌装置に対して改良化が可能であり、炉壁
に設置された横方向もしくは一定角度に傾斜する挿入口
をもつ溶解炉の脇に移動して攪拌操業を実施することが
できる。

〔作用〕

本考案の装置によれば、攪拌管が基端部側において片持
ち支持点で軸支された受支ロールを介して支持フレーム
上に載置され、同時に前記軸支部位が位置調整手段によ
り長手方向に進退する機構を備えるため、攪拌管を炉内
に傾斜挿入した際この先端部分に傾斜角度ならびに伸縮
の自由度が付与される。したがって、例えば炉壁に付着
した滓や壁形状の変形等で挿入時に攪拌管の先端部分が
接触しても強い当接を巧みに避けて損傷を防止する。ま
た、炉床の深さが相違したり攪拌管の浸漬位置を変動さ
せるような場合には、位置調整手段を用いて攪拌管を所
望の位置に調整することができる。

そのうえ、全ての部材および操作ユニットが移動可能な
基台に搭載設置されているから、攪拌工程に入る炉脇に
移動させて操業を消化することにより１装置で数基の炉
に対応させることができ、操業の効率を大幅に改善する
ことが可能となる。

〔実施例〕

以下、本考案を図示の実施例に基づいて詳細に説明す
る。

第１図は本考案による溶融金属の可搬式攪拌装置を示し
た縦断面図、第２図はその外観斜視図であり、これらの
図において、１は攪拌管、２は傾転機構手段、３は支持
フレームそして４は基台である。攪拌管１は先端部分が
炉内の溶融金属に浸漬するに十分な長さを有する長尺管
状部材で、支持フレーム３に設置された受支ロール５の
上に載置された状態で基端部側が片持ち支持点６により
軸支されており、その基端部は蛇腹管７を介して吸引ユ
ニット８に接続している。また、攪拌管１には、先端部
分を炉内に傾斜セットした場合に炉壁に攪拌管挿入口を
覆って閉塞するための鍔部９が付設されている。

前記の片持支持点６における軸支部位は、攪拌管１の長
手方向に沿って進退する機構の位置調整手段10に係合し
ている。第１図では位置調整手段10の機構がハンドル回
転による螺進構造になっているが、この構造に限られる
ものではなく電動式などの方式を採用することもでき
る。

傾転機構手段２は例えば電動シリンダーのような伸縮自
在装置から構成され、これに接続する支持フレーム３を
押し上げることによって攪拌管１を所定角度に傾斜させ
る機能をなす。

上記の攪拌管１、傾転機構手段２、支持フレーム３のほ
か、吸引ユニット８、制御盤11、計器類12など必要な操
作ユニットは全て基台４の上部に搭載設置されており、
また電源、ガス供給源などと接続するための配線、配管
用のターミナルも基台４に設置されている。

基台４には、底部にホークリフト用のホーク差込み孔1
3、上面にクレーン用のフック14等が設置され移動可能
な構造を形成している。

第２図の状態から傾転機構手段２を作動して攪拌管１を
傾斜させると、第３図のようになる。また、傾斜した攪
拌管１の先端部分を炉内に挿入した状態を示した断面略
図が第４図であり、炉内へ攪拌管の所要長を突出させる
にはフォークリフト、クレーン等で基台４を吊支して炉
内へ攪拌管の所要長を突出させた後、基台４を床面に設
置する。攪拌管１は炉壁の挿入口15から一定の傾斜角度
で溶融金属16の内部に挿入されるが、炉床に滓17などが
付着している場合には攪拌管１の先端部が自然に可動し
て強固な当接を回避する。また、位置調整手段10で攪拌
管１を進退させることにより攪拌管１の先端と炉床との
位置関係あるいは前記滓17との接触を避けることが可能
となる。

攪拌管１による繰り返し吸引・吐出の攪拌操作が完了し
たら、攪拌管１を平行にして第２図の状態に戻したの
ち、基台４をホークリフト、クレーン等で後退させ攪拌
管を炉内から引き抜いて次に攪拌工程をおこなう炉脇に
移動し同様の攪拌操作に移る。

なお、この例の場合、攪拌管の所要長を炉内に突出させ
るには前記するように基台４の設置位置をフォークリフ
ト、クレーン等で操作するが位置調整手段による攪拌管
の移動距離を大きくするか、支持フレームと攪拌管の間
に前記位置調整手段とは別体の挿入手段を介在させ、炉
内への攪拌管の挿入を位置調整手段又は該挿入手段によ
り行なうようにしてもよい。また、このようにすると攪
拌管を傾動した後に炉内へ挿入することもできるので炉
壁の挿入口が傾斜して設けられる炉に対しても共用する
ことができる。

〔考案の効果〕

以上のとおり、本考案によれば傾転機構を介して攪拌管
を着脱自在に炉内に傾斜セットし得る装置機構に加え、
攪拌管に調整可能な可動機能を与え且つ装置全体が移動
できる機構構造を備える可搬式の攪拌装置が提供される
から、常に適性な条件と効率的な炉回転により量産性の
よい溶融金属の攪拌操業が保証される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の１実施例を示す可搬式攪拌装置の縦断
面図、第２図はその外観斜視図、第３図は攪拌管を傾斜
させた状態を示した外観斜視図、第４図は傾斜攪拌管を
炉内にセットした状態を示す断面略図である。 １……攪拌管、２……傾転機構手段 ３……支持フレーム、４……基台 ５……受支ロール、６……片持ち支持点 ７……蛇腹管、８……吸引ユニット ９……鍔部、10……位置調整手段 11……制御盤、12……計器類 13……ホーク差込み孔、14……フック 15……挿入口、16……溶融金属 17……滓

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】攪拌管を傾転機構手段と接続する支持フレ
   ーム上に受支ロールを介して載置し、前記攪拌管の基端
   部側を片持ち支持点で軸支するとともに、該軸支部位を
   攪拌管の長手方向に沿って進退させるための位置調整手
   段を装備した機構を備え、これらの部材を必要な操作ユ
   ニットと共に移動可能な基台に搭載設置してなることを
   特徴とする溶融金属の可搬式攪拌装置。
2. 【請求項２】攪拌管に、炉の攪拌挿入口を閉塞するため
   の鍔部を付設した請求項１記載の溶融金属の可搬式攪拌
   装置。