JPH06451U - インスリン投与用注射器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 注射時に刺針が血管に入っていないことを容
易に確認することができ、インスリンを確実に皮下注射
することを可能にする。 【構成】 先端側にゴムキャップ１１を備えた本体ハウ
ジング１０筒状の有底ハブ１３を取付け、その内部に内
筒１４を設け、移動具１７を介して前後に移動可能に取
付けられたガスケット１５、ハウジング１０に連通した
第１の刺針１２、外部に連通した第２の刺針１９を有す
るフラッシュバック確認容器１８を備えた注射器であっ
て、フラッシュバック確認容器１８を透明弾性材料によ
り形成して、ガスケット１５の動きに対応して伸縮する
ように構成し、有底ハブ１３および内筒１４を透明硬質
材料から形成する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、糖尿病患者にインスリンを投与するために用いる注射器の改良に 関し、さらに詳しくは、注射時に刺針が血管に入っていないことを容易に確認す ることができ、インスリンを確実に皮下注射することが可能なインスリン投与用 注射器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

糖尿病患者にとっては、体内におけるインスリン作用の不足を補なうために、 医師によって決められた種類および量（単位）のインスリンを、毎日決められた 時間に皮下注射することからなる、いわゆるインスリン療法を行う必要がある。

【０００３】 そして、このインスリン療法は、主として患者自身が注射器を操作して、イン スリンを体内へ投与することにより行われており、このための注射器としては、 プラスチック製の使い捨て型注射器、ガラス製注射器、携帯性を付与したペン型 注射器、カートリッジ型注射器、およびこれらに定量分与機能を付与した注射器 などが従来から使用されていた。

【０００４】 例えば、図３は従来使用されている使い捨て型注射器の断面図であり、この注 射器は、本体ハウジング１の先端固定部２に刺針３を取付け、前記本体ハウジン グ１内にピストン４およびこのピストン４に連結した押子５を摺動可能に収納す ると共に、本体ハウジング１の外周面に単位数などの目盛りを形成することによ って構成されている。

【０００５】 このような注射器を用いてインスリンの投与作業を行うに際しては、まず注射 器の押子５を引いて、インスリンの投入量と同量の空気を、本体ハウジング１内 に吸い込み、刺針３をインスリン容器のゴムキャップに突き通してから、本体ハ ウジング１内に吸入した空気をインスリン容器の中へ送り込む。

【０００６】 次に、インスリン容器を逆さにして、刺針３の先端をインスリン液の中に入れ ると、必要量のインスリンが本体ハウジング１内に吸引されるので、刺針３をイ ンスリン容器のゴムキャップから引き抜き、これをアルコール消毒した皮膚に刺 挿し、押子５によりピストン４を押し込むことにより、インスリンの投与が行わ れる。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上述したような糖尿病患者に対するインスリンの投与は、患者の皮 下にインスリンを注射することが原則であり、間違って静脈などの血管にインス リンを注射した場合には、例えば急激な血糖低下などの弊害を生じ、患者に冷汗 、めまい、ふるえおよび意識損失などの症状を招く恐れがある。

【０００８】 したがって、患者が自身でインスリンの投与操作を行う場合には、まず注射器 の刺針３を皮膚に刺挿した後、押子５を操作してピストン４を軽く引くことで、 注射器の本体ハウジング１内を陰圧となし、刺針３から本体ハウジング１内に血 液が逆入（フラッシュバック）しないことを確認してから、改めて押子５により ピストン４を押し、インスリンを皮下に注射する必要があった。

【０００９】 すなわち、上記のインスリン投入操作において、フラッシュバックを生じ、本 体ハウジング１内に血液が逆入した場合には、刺針３が誤って血管に刺挿された ものと判断し、刺針３を皮膚から引き抜き、改めて別の個所にインスリン投与操 作を行うことで、血管内へのインスリンの注入を防止していたのである。

【００１０】 しかしながら、上述のフラッシュバック確認作業は、患者にとって苦痛を伴う 面倒な作業であり、しかも慣れない場合には、フラッシュバックを確認すること 無く、誤って血管内にインスリンを投与し、上記のような弊害を招くという不具 合があった。

【００１１】 この考案は、上述した従来のインスリン投与用注射器が有する問題点を解決す るために検討した結果、達成されたものである。

【００１２】 したがって、この考案の目的は、注射時に刺針が血管に入っていないことを容 易に確認することができ、インスリンを確実に皮下注射することが可能なインス リン投与用注射器を提供することにある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】

上記の目的を達成するために、この考案のインスリン投与用注射器は、先端側 にゴムキャップを備えた本体ハウジング、この本体ハウジングの先端外縁に開口 側が着脱自在に取付けられた筒状の有底ハブ、この有底ハブの内部に位置し、一 端側が前記有底ハブの底部に連結され、他端側が前記本体ハウジングの先端から 離間した内筒、この内筒内に、支持具およびこの支持具の一端側が当接し、他端 側が前記有底ハブの底部を摺動可能に貫通して外部に突出した移動具を介して前 後に移動可能に取付けられたガスケット、このガスケットに一端側が貫通し、他 端側が前記ゴムキャップを貫通して前記本体ハウジングに連通した第１の刺針、 および前記有底ハブ内の底部と前記ガスケットとの間に位置し、内部に前記第１ の刺針が連通すると共に、その内部から前記有底ハブの底部を貫通して外部に連 通した第２の刺針を有するフラッシュバック確認容器を備えた注射器であって、 前記フラッシュバック確認容器を透明弾性材料により形成して、前記ガスケット の動きに対応して伸縮するように構成すると共に、少なくとも前記有底ハブおよ び内筒を透明硬質材料から形成したことを特徴とする。

【００１４】

【作用】

この考案のインスリン投与用注射器を用いてインスリンの投与を行うに際して は、まず本体ハウジングおよびフラッシュバック確認容器内にインスリンを満た し、第２の刺針をアルコール消毒した皮膚に刺挿する。

【００１５】 すると、外部に突出している移動具の先端が皮膚に当たり、ガスケットを本体 ハウジング側へと移動せしめるため、透明弾性材料からなるフラッシュバック確 認容器が、前記ガスケットの移動に応じて弾性膨脹し、その体積増加により内部 が陰圧化する。

【００１６】 そして、フラッシュバック確認容器内の状況は、有底ハブ、内筒およびフラッ シュバック確認容器の構成材料の透明性を利用して、外部から容易に確認できる ため、第２の刺針が正しく皮下に刺挿されている場合には、フラッシュバック確 認容器内に何らの変化も認められないが、もし間違って第２の刺針が血管に刺さ れている場合には、フラッシュバック確認容器内に血液が逆入し、フラッシュバ ックを確認することができる。

【００１７】 したがって、第２の刺針の操作が誤りであることを確実に確認することができ 、この場合には、第２の刺針を皮膚から引き抜き、再度他の個所へ上記投与作業 を繰り返すことで、インスリンを血管内に投与する誤動作を効果的に防止するこ とができる。

【００１８】 また、従来の注射器と相違し、先端にフラッシュバックの確認構造が予め取付 けられており、患者にフラッシュバック確認作業を促す構造となっていることか らも、患者がフラッシュバックを確認することを忘れ、誤って血管内にインスリ ンを投与することなどを確実に防止することができる。

【００１９】 したがって、この考案のインスリン投与用注射器によれば、注射時に刺針が血 管に入っていないことを容易に確認することができ、インスリンを確実に皮下注 射することが可能で、患者にとって苦痛や面倒のないインスリン療法を実現する ことができる。

【００２０】 さらに、この考案のインスリン投与用注射器は、有底ハブが本体ハウジンクに 対して着脱自在であることから、ゴムキャップにて先端が閉鎖された注射器に対 し、フラッシュバック確認機構を容易に取付けることができる。

【００２１】

【実施例】

以下、図面を参照しつつ、この考案のインスリン投与用注射器の実施例につい て詳細に説明する。

【００２２】 図１はこの考案のインスリン投与用注射器の一実施例を示し、本体ハウジング およびフラッシュバック確認容器内にインスリンを満たした状態の先端拡大断面 図、図２は図１のインスリン投与用注射器の第２の刺針を皮膚に刺挿した状態を 示す先端拡大断面図である。

【００２３】 図１に示した実施例において、この考案のインスリン投与用注射器は、本体ハ ウジング１０の先端に、ゴムキャップ１１を具備しており、さらに前記本体ハウ ジング１０の先端外縁に、第１の刺針１２、有底ハブ１３、内筒１４、ガスケッ ト１５、フラッシュバック確認容器１８および第２の刺針１９を取付けることに より構成されている。

【００２４】 ここで、本体ハウジング１０とは、例えばプラスチック製の使い捨て型注射器 の本体部、ガラス製注射器のガラス本体部、携帯性を付与したペン型注射器の本 体部、カートリッジ型注射器のカートリッジ本体、およびこれらに定量分与機能 を付与した注射器の本体部などを意味し、図示していないが、これら本体ハウジ ング１０内にはピストンおよびこのピストンに連結した押子が摺動可能に収納さ れている。

【００２５】 第１の刺針１２は、その両端がゴムキャップ１１およびガスケット１５をそれ ぞれ貫通して、かつ本体ハウジング１０およびフラッシュバック確認容器１８に それぞれ連通している。

【００２６】 有底ハブ１３は、例えばポリメチルメタクリレートおよびスチレン系ポリマー などの透明硬質ポリマーにより形成された有底筒状体からなり、その開口側（嵌 合部）１３ａが、本体ハウジング１０の先端外縁に、嵌合、ねじ止め、接着など の手段で着脱自在に取付け固定されている。

【００２７】 また、有底ハブ１３の底部１３ｂ側には、後述する移動具１７を貫通するため の貫通孔１３ｃおよび第２の刺針１９を貫通するための貫通孔１３ｄが形成され ている。

【００２８】 有底ハブ１３の内部には、同じく例えばポリメチルメタクリレートおよびスチ レン系ポリマーなどの透明硬質ポリマーにより形成された内筒１４が配置されて いる。

【００２９】 内筒１４の一端側（連結部１４ａ）は、有底ハブ１３の底部１３ｂに連結固定 され、他端側は本体ハウジング１０の先端から間隔を置いて離間しており、この 本体ハウジング１０から離間した他端側は、後述する移動具１７による支持具１ ６の動きを制御するストッパーとしての役目を果たす。

【００３０】 内筒１４の内部には、ガスケット１５が支持具１６および移動具１７を介して 前後に移動可能に取付けられている。

【００３１】 ここで、支持具１６の幅は、ガスケット１５の幅よりも大きく、その両端に移 動具１７の端部が当接可能となっている。

【００３２】 移動具１７は、その一端側が支持具１６の両端に当接し、他端側が有底ハブ１ ３の底部１３ｂに形成した貫通孔１３ｃを摺動可能に貫通して外部に突出してお り、この突出した他端側を押せば、一端側が支持具１６に当接し、支持具１６に 固定したガスケット１５を本体ハウジング１０側に移動せしめるように構成され ている。

【００３３】 また、ガスケット１５の内部には、第１の刺針１２が貫通しており、この第１ の刺針１２はさらに後述するフラッシュバック確認容器１８に連通している。

【００３４】 そして、有底ハブ１３内の底部１３ｂと、ガスケット１５との間には、内部に 第１の刺針１２が連通すると共に、その内部から有底ハブ１３の底部１３ｂに形 成した貫通孔１３ｄを貫通して外部に連通した第２の刺針１９を有するフラッシ ュバック確認容器１８が設けられている。

【００３５】 フラッシュバック確認容器１８は、その全体がポリエステルエラストマー、ポ リアミドエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーなどのゴム弾性を 有する透明弾性材料からなり、内筒１４内のガスケット１５との間に気密に配置 されている。

【００３６】 したがって、上記の構造からなるフラッシュバック確認容器１４は、前記透明 弾性材料の特性からして、ガスケット１５の移動量に応じて伸縮し、ガスケット １５が本体ハウジング１０側に移動した場合には内部が陰圧となり、かつ外部か ら有底ハブ１３および内筒１４を通して内部の状況を確認できるようになってい る。

【００３７】 また、フラッシュバック確認容器１４はオレフィン系ポリマーなどの透明ポリ マーで形成することもでき、この場合にはガスケット１５をゴム弾性を有する弾 性材料から形成することによって、上記と同様の作用を得ることができる。

【００３８】 次に、上記のインスリン投与用注射器を用いるインスリン療法の一例について 図１および図２にしたがって説明する。

【００３９】 まず、図示していない押子を引いてインスリンの投入量と同量の空気を本体ハ ウジング１０およびフラッシュバック確認容器１８内に吸い込み、第２の刺針１ ９をインスリン容器のゴムキャップに突き通してから、本体ハウジング１０およ びフラッシュバック確認容器１８内に吸入した空気をインスリン容器の中へ送り 込む。

【００４０】 次いで、インスリン容器を逆さにして、第２の刺針１９の先端をインスリン液 の中に入れると、必要量のインスリンが本体ハウジング１０およびフラッシュバ ック確認容器１８内に吸引されるので、第２の刺針１９をインスリン容器のゴム キャップから引き抜き、本体ハウジング１０およびフラッシュバック確認容器１ ８内にインスリンを満たした状態となす（図１）。

【００４１】 そして、第２の刺針１９をアルコール消毒した皮膚に刺挿すると、図２に示し たように、外部に突出している移動具１７の先端が皮膚Ｌに当たり、ガスケット １５を本体ハウジング１０側へと移動せしめるため、透明弾性材料からなるフラ ッシュバック確認容器１８が、前記ガスケット１５の移動に応じて弾性膨脹し、 その体積増加により内部が陰圧化する。

【００４２】 このフラッシュバック確認容器内の状況は、有底ハブ１３、内筒１４およびフ ラッシュバック確認容器１８の構成材料の透明性を利用して、外部から容易に確 認できるため、第２の刺針１９が正しく皮下に刺挿されている場合には、フラッ シュバック確認容器１８内に何らの変化も認められないが、もし間違って第２の 刺針１９が血管に刺されている場合には、フラッシュバック確認容器１８内に血 液が逆入し、フラッシュバックを確認することができる。

【００４３】 したがって、第２の刺針１９の操作が誤りであることを確実に確認することが でき、この場合には、第２の刺針１９を皮膚から引き抜き、再度他の個所へ上記 投与作業を繰り返すことで、インスリンを血管内に投与する誤動作を効果的に防 止することができるのである。

【００４４】 なお、上述の構成において、フラッシュバック確認機構は本体ハウジング１０ に対して着脱自在であるため、ゴムキャップにて先端が閉鎖された注射器に対し 、フラッシュバック確認機構を取付けて使用することができるばかりか、例えば とくにフラッシュバックの確認を必要としない場合や、刺針の交換を必要とする 場合などには、フラッシュバック確認機構を本体ハウジング１０から取外すこと ができる。

【００４５】

【考案の効果】

以上説明したように、この考案のインスリン投与用注射器によれば、注射時に 刺針が血管に入っていないことを容易に確認することができ、インスリンを確実 に皮下注射することが可能で、患者にとって苦痛や面倒のないインスリン療法を 実現することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１はこの考案のインスリン投与用注射器の一
実施例を示し、本体ハウジングおよびフラッシュバック
確認容器内にインスリンを満たした状態の先端拡大断面
図である。

【図２】図２は図１のインスリン投与用注射器の第２の
刺針を皮膚に刺挿した状態を示す先端拡大断面図であ
る。

【図３】図３は従来の使い捨て型インスリン投与用注射
器を示す断面図である。

【符号の説明】

１０ 本体ハウジング １１ ゴムキャップ １２ 第１の刺針 １３ 有底ハブ １３ａ 嵌合部 １３ｂ 底部 １３ｃ 貫通孔 １３ｄ 貫通孔 １４ 内筒 １４ａ 連結部 １５ ガスケット １６ 支持具 １７ 移動具 １８ フラッシュバック確認容器 １９ 第２の刺針

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 先端側にゴムキャップを備えた本体ハ
   ウジング、この本体ハウジングの先端外縁に開口側が着
   脱自在に取付けられた筒状の有底ハブ、この有底ハブの
   内部に位置し、一端側が前記有底ハブの底部に連結さ
   れ、他端側が前記本体ハウジングの先端から離間した内
   筒、この内筒内に、支持具およびこの支持具の一端側が
   当接し、他端側が前記有底ハブの底部を摺動可能に貫通
   して外部に突出した移動具を介して前後に移動可能に取
   付けられたガスケット、このガスケットに一端側が貫通
   し、他端側が前記ゴムキャップを貫通して前記本体ハウ
   ジングに連通した第１の刺針、および前記有底ハブ内の
   底部と前記ガスケットとの間に位置し、内部に前記第１
   の刺針が連通すると共に、その内部から前記有底ハブの
   底部を貫通して外部に連通した第２の刺針を有するフラ
   ッシュバック確認容器を備えた注射器であって、前記フ
   ラッシュバック確認容器を透明弾性材料により形成し
   て、前記ガスケットの動きに対応して伸縮するように構
   成すると共に、少なくとも前記有底ハブおよび内筒を透
   明硬質材料から形成したことを特徴とするインシュリン
   投与用注射器。