JPH0639823B2 - プレキャストコンクリート床版と梁との接合部構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 本発明は、プレキャストコンクリート床版（以下、ＰＣ
床版という）と梁との接合部構造に係り、特に中空部を
形成するためのリブ付きＰＣ床版と、このＰＣ床版の端
縁に接合される梁とを、梁からＰＣ床版上面に亘って一
連に打設される現場打ちコンクリートによって接合する
場合に、当該接合部の強度を十分に確保できるＰＣ床版
と梁との接合部構造に関する。

《従来の技術》 従来、中空ＰＣ合成床版が知られており、この合成床版
は、上面に縦横に上向きリブを突設したり、反対に上面
から陥没させた凹溝を設けたＰＣ床版を現場に搬入し、
そのリブ間や凹溝部分に蓋を被せた後にその上に現場打
ちコンクリートを打設することで施工され、このような
中空ＰＣ合成床版によれば、軽量化や設計荷重に応じた
スラブ厚の選択ができるなどの利点が得られる。

これについて、第４図を参照して説明すると、端縁を含
む全面に亘って縦横に上向きリブ１を設けたＰＣ床版２
を、図示しない支保工で下側から支え、且つその端縁を
図示しない梁成型用の型枠内に挿入配置しておく。そし
て、ＰＣ床版２の上向きリブ１間に掛け渡して図示しな
い蓋を設置して、上向きリブ１で囲まれる中空部４を形
成し、さらに梁成型用の型枠内部からＰＣ床版２の上向
きリブ１上に延出させて補強筋５を配筋する。その後、
梁成型用の型枠内からＰＣ床版２上面に亘って一連に現
場打ちコンクリート６を打設し、これにより図示のごと
き、ＰＣ床版２の端縁を梁３の側面に埋没させて、梁３
に架設した状態の中空ＰＣ合成床版７を得るようにして
いた。

《発明が解決しようとする問題点》 しかしながら、上記従来例では、ＰＣ床版２の端縁まで
上向きリブ１を形成したものを用いて中空ＰＣ合成床版
７を得るようにしていたため、ＰＣ床版２の上面から梁
３に亘って打設されて両者の接合部強度を確保する現場
打ちコンクリート６の断面積が小さくなってしまうとい
う問題があった。ここで、中空ＰＣ合成床版７自体に生
ずる応力としては、この応力をいかに負担するかという
観点で、２種類存在する。第１は、中空ＰＣ合成床版７
自体で発生した応力を当該中空ＰＣ合成床版７自身で負
担するもので、これには面内曲げ応力と面内剪断応力と
がある。この面内応力を生じさせるものには、例えば地
震力がある。他方、第２は、中空ＰＣ合成床版７自体で
発生した応力を梁３で負担させるもので、これには面外
曲げ応力と面外剪断応力とがある。この面外応力を生じ
させるものには、各種設備などの重量による長期荷重が
ある。そして、上記のように接合部の断面積が小さい
と、中空ＰＣ合成床版７自体に発生し、且つ梁３で負担
させるべき面外応力の梁３への伝達性能を十分に確保す
ることができず、構造的に不満足なものとなってしま
う。他方、この現場打ちコンクリート６を厚く打設する
ことで、充分な接合部強度を確保しようとすれば、床厚
が増大して中空ＰＣ合成床版７の本来的な効果を減殺し
てしまうことになる。

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その
目的は、梁とＰＣ床版との接合部の断面積を大きく、す
なわち肉厚を厚くすることなく、応力伝達に関与する接
合部の現場打ちコンクリートの断面積を大きく確保し
て、面外応力を円滑且つ有効に梁側へ伝達させることが
できるＰＣ床版と梁との接合部構造を提供するにある。

《問題点を解決するための手段》 上記目的を達成するために、本発明に係るＰＣ床版と梁
との接合部構造は、中空部を形成するためのリブ付きプ
レキャストコンクリート床版と、該プレキャストコンク
リート床版の端縁に接合れさる梁とを、該梁から該プレ
キャストコンクリート床版上面に亘って一連に打設され
る現場打ちコンクリートによって接合するようにした構
造において、上記プレキャストコンクリート床版は、そ
の梁側端縁から間隔を隔てた中央部上面に長手方向及び
幅方向に沿って井桁状に配列された複数の上向きリブを
一体的に備えて、これら井桁状配列の上向きリブの外回
りには、上記梁に臨ませて横向きに開放された、上記現
場打ちコンクリートと係合する係合部が複数区画形成さ
れ、これら係合部内には、これより上記梁に亘って配筋
される補強筋が配設されると共に、上記現場打ちコンク
リートが、上記梁から上記係合部を含む上記プレキャス
トコンクリート床版上面に亘って打設されることを特徴
とする。

《作用》 ＰＣ床版に関しては、その梁側端縁から間隔を隔てた中
央部に井桁状の上向きリブを形成するようにして梁と上
向きリブとの間にリブの存在しない部分を確保し、さら
に、この上向きリブの外回りには、縦横に井桁状に配置
した当該上向きリブを利用して、梁に臨んで横向きに開
放する現場打ちコンクリートとの係合部を複数区画し、
これら係合部から梁に亘って補強筋を配筋した上で、現
場打ちコンクリートを梁から係合部を含むＰＣ床版上面
に亘って打設するようにしたので、ＰＣ床版の梁側端縁
には、現場打ちコンクリートによる相当の厚さの接合部
を形成できると共に、この接合部は、その内側の上向き
リブで区画形成された係合部にまで達して、ＰＣ床版か
ら梁へ伝達すべき面外応力を円滑且つ有効に伝達するこ
とができる。

また、井桁状の上向きリブが構成する上記係合部は、床
の平断面に関し現場打ちコンクリートとＰＣ床版相互の
機械的接合強度を係合構造によってより強固なものとで
き、ＰＣ床版自身が負担すべき面内応力に対しても有効
に機能して、ＰＣ床版内での応力負担の合理化を図るこ
とができる。

《実施例》 以下、本発明の好適な実施例について図面を参照して詳
細に説明する。本実施例は基本的には、中空部４ａを形
成するためのリブ付きＰＣ床版９と、ＰＣ床版９の端縁
に接合される梁１０とを、梁１０からＰＣ床版９上面に
亘って一連に打設される現場打ちコンクリート１６によ
って接合するようにした構造において、ＰＣ床版９は、
その梁側端縁から間隔を隔てた中央部上面に長手方向及
び幅方向に沿って井桁状に配列された複数の上向きリブ
８を一体的に備えて、これら井桁状配列の上向きリブ８
の外回りには、梁１０に臨ませて横向きに開放された、
現場打ちコンクリート１６と係合する係合部３０が複数
区画形成され、これら係合部３０内には、これより梁１
０に亘って配筋される補強筋１３が配設されると共に、
現場打ちコンクリート１６が、梁１０から係合部３０を
含むＰＣ床版９上面に亘って打設されて構成される。

また、上向きリブ８のうち、梁１０に向かって形成され
た上向きリブ８上方に、これより梁１０側へ突出させて
主鉄筋１５が配筋される。

さらに、係合部３０を区画形成する上向きリブ８の側面
に、現場打ちコンクリート１６と係合するシャーキイ１
７が形成される。

第１図に概略の断面を示したように、９はＰＣ床版であ
り、このＰＣ床版９には、その梁側端縁から適宜の離隔
距離をもって縦横に上向きリブ８が一体的に形成され
る。殊に、これら上向きリブ８は、最外側のリブ８から
これに直交する他のリブ８の端部が突出する井桁状に配
列され、その外回りには、当該井桁状配列の上向きリブ
８によって、梁１０に臨ませて横向きに開放された係合
部３０が複数形成される。このＰＣ床版９は現場に搬入
されて、サポート２３で下方から所定高さ位置に支持さ
れる。他方、梁１０は、最終的には図示のように構築さ
れるが、ＰＣ床版９の現場搬入時には図示されない梁型
枠が設置されており、施工の最終段階でこの梁型枠から
ＰＣ床版９上面に亘って打設される現場打ちコンクリー
ト１６によって、中空ＰＣ合成床版２０上面と一体的に
梁１０が構築されることとなる。殊に梁型枠の側面に
は、その内部にＰＣ床版９の端縁を挿入することができ
るように開口部が形成されていて、この開口部を介して
ＰＣ床版９の端縁を梁型枠の内部に挿入できるようにな
っており、現場打ちコンクリート１６を打設して梁１０
を構築した際に、ＰＣ床版９の端縁が梁１０の側面に埋
没されて、梁１０側面の段付き部１１でＰＣ床版９を支
持するような形態で梁１０に架設した状態の中空ＰＣ合
成床版２０が得られるようになっている。

尚、ＰＣ床版９の上向きリブ８間には、これらに掛け渡
して図示されない蓋材が設置され、上向きリブ８で囲ま
れる中空部４ａが形成される。

また、梁１０は、通常の構成を備え、梁主筋１４，１４
ａの回りにスターラップ筋１２を巻回した鉄筋籠３２を
梁型枠内に落とし込んだ後、当該梁型枠内に現場打ちコ
ンクリート１６が打設されて構築されるようになってい
る。

このように構成される梁１０とＰＣ床版９に対しては、
一端が梁１０内に、他端がＰＣ床版９の上向きリブ８側
面、すなわち係合部３０内に延出させて補強筋１３，１
３が配筋されると共に、梁１０の上部側梁主筋１４上方
からＰＣ床版９の上向きリブ８上方へ延出させて主鉄筋
１５が配筋されている。その後、現場打ちコンクリート
１６は梁１０から、係合部３０を区画形成する最外側の
上向きリブ８の外側部分、さらにその上部を経て打設さ
れる。

そして、サポート２３は、現場打ちコンクリート１６が
硬化した後、撤去される。

第２図、第３図は更に詳細な断面であって、図のように
主鉄筋１５は、必ずしも梁１０のスターラップ筋１２上
方からＰＣ床版９の上向きリブ８上に延出しなければな
らないものではない。

また、係合部３０を区画形成する最も外側の上向きリブ
８の外側面には、上下二段で横方向へ互いに所定の間隔
を隔てて凹状のシャーキイ１７が複数穿設されているの
で、現場打ちコンクリート１６と上向きリブ８とが一体
化され、面内剪断応力などの面内応力がスムーズに伝達
される。更に各上向きリブ８には、これにより上方へ突
出するスタラップ１８が主鉄筋１５上に直交させた補助
鉄筋１９に掛け回してあり、ＰＣ床版９と現場打ちコン
クリート１６との付着乃至接合を強力にしている。

梁１０とＰＣ床版９との接合部は、現場打ちコンクリー
ト１６による断面の大きな継手構造となっており、これ
は係合部３０内、ひいてはシャーキイ１７まで達してい
て、さらにシャーキイ１７とスタラップ１８とが相俟っ
て梁１０側と強力に接合された中空ＰＣ合成床版２０を
得ることができる。

上向きリブ８に囲まれた中空部４ａに形成された孔は水
抜き孔２１である。現場打ちコンクリート１６を打設し
たときの滲出水を迅速に排出するものである。

《効果》 以上説明したように本発明によれば、ＰＣ床版に関して
は、その梁側端縁から間隔を隔てた中央部に井桁状の上
向きリブを形成するようにして梁と上向きリブとの間に
リブの存在しない部分を確保し、さらに、この上向きリ
ブの外回りには、縦横に井桁状に配置した当該上向きリ
ブを利用して、梁に臨んで横向きに開放する現場打ちコ
ンクリートとの係合部を複数区画し、これら係合部から
梁に亘って補強筋を配筋した上で、現場打ちコンクリー
トを梁から係合部を含むＰＣ床版上面に亘って打設する
構成としたので、梁とＰＣ床版との接合部の断面積を大
きく、すなわち肉厚を厚くすることなく、ＰＣ床版の梁
側端縁に、現場打ちコンクリートによる相当の厚さの接
合部を形成できてその断面積を大きく確保できると共
に、この接合部は、その内側の上向きリブで区画形成さ
れた係合部にまで達して、ＰＣ床版から梁へ伝達すべき
面外応力を円滑且つ有効に伝達することができる。

また、井桁状の上向きリブが構成する上記係合部は、床
版の平断面に関し現場打ちコンクリートとＰＣ床版相互
の機械的接合強度を係合構造によってより強固なものと
でき、地震等の際に生ずるＰＣ床版自身が負担すべき面
内応力に対しても有効に機能して、ＰＣ床版内での応力
負担の合理化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るＰＣ床版と梁との接合部構造を示
す概略縦断面図、第２図は第１図の配筋の詳細を示す平
面図、第３図は第２図のａ−ａ断面図、第４図は従来例
を示す縦断面図である。 ４ａ……中空部、８……上向きリブ ９……リブ付きＰＣ床版、１０……梁 １３……補強筋、１５……主鉄筋 １６……現場打ちコンクリート １７……シャーキイ、３０……係合部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】中空部を形成するためのリブ付きプレキャ
   ストコンクリート床版と、該プレキャストコンクリート
   床版の端縁に接合される梁とを、該梁から該プレキャス
   トコンクリート床版上面に亘って一連に打設される現場
   打ちコンクリートによって接合するようにした構造にお
   いて、 上記プレキャストコンクリート床版は、その梁側端縁か
   ら間隔を隔てた中央部上面に長手方向及び幅方向に沿っ
   て井桁状に配列された複数の上向きリブを一体的に備え
   て、これら井桁状配列の上向きリブの外回りには、上記
   梁に臨ませて横向きに開放された、上記現場打ちコンク
   リートと係合する係合部が複数区画形成され、 これら係合部内には、これより上記梁に亘って配筋され
   る補強筋が配設されると共に、 上記現場打ちコンクリートが、上記梁から上記係合部を
   含む上記プレキャストコンクリート床版上面に亘って打
   設されることを特徴とするプレキャストコンクリート床
   版と梁との接合部構造。
2. 【請求項２】前記上向きリブのうち、前記梁に向かって
   形成された上向きリブ上方に、これより該梁側へ突出さ
   せて主鉄筋を配筋した前記特許請求の範囲第１項記載の
   プレキャストコンクリート床版と梁との接合部構造。
3. 【請求項３】前記係合部を区画形成する前記上向きリブ
   の側面に、前記現場打ちコンクリートと係合するシャー
   キイが形成されている前記特許請求の範囲第１項または
   第２項記載のプレキャストコンクリート床版と梁との接
   合部構造。