JPH0633485B2 - 水素発生用陰極の製造方法 - Google Patents

水素発生用陰極の製造方法

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JPH0633485B2
JPH0633485B2 JP61127260A JP12726086A JPH0633485B2 JP H0633485 B2 JPH0633485 B2 JP H0633485B2 JP 61127260 A JP61127260 A JP 61127260A JP 12726086 A JP12726086 A JP 12726086A JP H0633485 B2 JPH0633485 B2 JP H0633485B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は食塩の電解、水の電解等の陰極として用いられ
る新規な水素発生用陰極の効率的な製造方法に関するも
のである。
〔従来技術およびその問題点〕
従来、アルカリ金属塩水溶液の電解、特にイオン交換膜
法による塩化ナトリウム水溶液の電解により塩素と水酸
化ナトリウムとを得る技術等の開発が進み、益々高い電
流効率と低い電圧による電解、即ち電力原単位の向上が
図られている。これらの技術動向のうち、電流効率の向
上は主としてイオン交換膜の改良として、また電圧の低
下については、イオン交換膜の改良と並行して電極にお
ける電解時の過電圧を低下させる検討が行なわれてい
る。このうち陽極にあってはすでに種々の優れた提案が
なされており、ほとんど陽極過電圧が問題とならない電
極が工業的に用いられている。
しかるに陰極、即ち水素発生用陰極にあっては、一般に
軟鉄或いはニッケル製のものが工業的に使用されてお
り、例えば400ミリボルト(mV)程度の高い水素過電圧
を許容しているため、その改善の必要性が指摘されてい
る。近年、水素過電圧の低減を目的とした陰極につい
て、種々の特許出願がなされている。例えば特開昭55
−164491号、特開昭55−131188号、特開
昭56−93885号、特開昭58−167788号公
報などに示された電極にあっては電極基体上にニッケ
ル、コバルト、銀等の粒子またはこれらの金属とアルミ
ニウムその他の金属との合金の粒子を溶着あるいは銀、
亜鉛、マグネシウム、スズなどの保持用金属層中に一部
露出するように埋没させ、場合によっては保持用金属層
の一部を化学的に浸食させて多孔化した微粒子固定形の
電極、また特開昭54−60293号の如く、含硫黄ニ
ッケル塩を含むメッキ浴を用いて電極基体上に電気メッ
キを行なう活性金属の電析法により水素過電圧を低くさ
せた水素発生用陰極が提案されている。
これらの提案により比較的低い水素過電圧の陰極を得る
ことは可能であるが、より低い過電圧とすること及び陰
極性能の持続性を大きくすること、或いはより廉価にす
ることなど種々改良の必要性が工業的には望まれる。例
えば前記した微粒子固定形の陰極にあっては、微粒子金
属自体が高価であったり、その調製が容易でない等に加
えて、一般に製法が複雑であり、得られた製品である陰
極の性能がバラツキやすいなど性能安定性に欠ける傾向
にある。また後者の含硫黄のニッケル浴による電気メッ
キにあっては、水素過電圧を十分に低くすることに難が
あり、場合によっては耐久性が小さいなどの欠点があ
る。
したがって、本発明の目的は比較的安価な原材料を用
い、極めて容易な手段で水素過電圧の低い例えば30A
/dm2の電流密度において水素過電圧が200mV以下、
特に110mV以下であり、しかも長期間安定して持続さ
れる水素発生用陰極を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、上記に鑑み鋭意研究の結果、導電性電極
基体に特定した活性物質を特定した電気メッキ手段によ
り存在させることにより、目的とする水素発生用陰極が
容易に得られることを見出し、本発明を提案するに至っ
たものである。即ち、本発明は陰イオン交換膜により陽
極を分離した陰極室において、ニッケルイオンおよびク
ロムイオンを主成分として含有するメッキ浴を用いて、
導電性電極基体の表面にクロム含有率が16〜65重量
%の割合のニッケル−クロム合金を電析させることを特
徴とする水素発生用陰極の製造方法である。
本発明に用いる電極基体は、導電性物質であればよく、
一般に水素発生用陰極として使用する環境下に耐久性の
ある金属を用いる。従ってアルカリ金属塩、特にハロゲ
ン化アルカリ金属の電解や水の電解に用いる場合には電
極基体として軟鉄やニッケルを用いるのが好ましい。し
かしながら、銅或いは銅合金の如き良導電性金属、場合
によってはチタン等も使用することができる。また、電
極形状は、電極基体の形状によって定まるものであり該
形状は本発明において特に限定されるものではなく、一
般に電解槽における陰極として使用される形状のものが
用いられる。例えば平板状、網状、パンチドメタル、エ
キスパンドメタル、スダレ状等である。該電極基体は電
気メッキを施すに先立って脱脂、エッチング等の前処理
を施すことが好ましく、その方法は通常のメッキ時に行
われる公知の方法が特に制限なく用いられる。
本発明において電極基体の表面に被覆させる活性物質で
あるニッケルおよびクロムの特定割合から成る合金層
は、必ずしも電極基体の全表面を覆っていることは必須
ではないが、電極の有効面積を増大させる意味からは全
表面を覆う方法が有利である。また、電極基体が例えば
銅などを用い、それ自体陰極の使用環境下に腐蝕の恐れ
のある場合には、当然に該基体の全面(溶液中に浸漬さ
れる部分の全面)を被覆するべきである。また本発明に
おいて、電極基体の表面に被覆させる活性層の組成は、
水素過電圧に対して極めて重要な意味を有し少なくとも
ニッケルとクロムよりなる合金であり、特にニッケルお
よびクロム、場合によってその他に表面積を増すための
第三の成分を加えることも有効であり、さらに不可避的
に混入される他の元素又は化合物を含むことも可能であ
る。この活性層中におけるニッケル(Ni)とクロム(C
r)との割合、即ち は16〜65(重量%)の範囲である必要がある。クロ
ムの含有率がこの範囲をはずれると驚く程に水素過電圧
が増大する。このように、ニッケルとクロムの特定割合
の合金に限って何故に斯くも水素過電圧が低くなるのか
本発明者等も十分に説明しないが、電気メッキ手段によ
りニッケルとクロムとを特定の比率の範囲内に共析させ
るとき、特殊な結晶あるいは形態をとって基体上に付着
し、微結晶或いは結晶の歪をもたらすことにより、触媒
能を向上させるためでないかと推察している。実際、該
共析物をX線回析において分析すると、非常にブロード
なピークが得られ、それが活性と関連しているのではな
いかとも考えられる。
本発明は、特定した組成割合のニッケルおよびクロムよ
りなる活性物質を電気メッキ手段により電極基体の表面
に被覆させて、目的とする水素過電圧の低い水素発生用
陰極を得るために、陰イオン交換膜で陽極を分離した陰
極室において該電気メッキを実施することが極めて重要
である。即ち、本発明の製造方法によれば、陰イオン交
換膜を用いることのない(陽極を分離することなく)通
常の電気メッキ法に比べて、電極基体とメッキ層との密
着性(耐久性)が良好で水素過電圧が低い水素発生用陰
極を得ることが出来るばかりでなく、またメッキ浴の寿
命が向上するため、目的の水素発生用陰極を効率よく多
量に得ることが出来る。このような本発明において発揮
される作用効果は、陽極が陰イオン交換膜により分離さ
れているため、該陽極で発生する酸素及び陽極によって
陰極室におけるメッキ浴のクロムイオンCr3+がCr6+に酸
化されないこと、またメッキ浴中のジメチルホルムアミ
ド(DMF)など非水溶媒が酸化されないことなどに起因
すると推察される。
本発明において用いる陽極としては、一般に例えばチタ
ン、チタン−パラジウム合金などによりなる不溶性陽極
が好ましく用いられる。また、陰イオン交換膜として
は、陰イオン選択透過性を有する公知のイオン交換膜が
特に制限なく用いられる。
本発明に用いるメッキ浴の主成分であるニッケルイオン
としては、例えば塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニ
ッケル、臭化ニッケル等で、またクロムイオンとしては
例えば塩化クロム、硫酸クロム、フッ化クロム、硝酸ク
ロム等である。
電気メッキは、上記した電気メッキ装置の陰、陽極室
に、ニッケルイオン及びクロムイオンを含有するメッキ
浴を供給し、クロム含有率が16〜65重量%の割合で
ニッケル−クロム合金を電析させることにより行なわれ
る。
この際、一般にニッケルイオンとクロムイオンは析出
(還元)電位に差があるため、通常両イオンの存在下で
基体上に電析を行うとクロムはほとんど析出しない。従
って、このとき得られるものを陰極として用いた場合に
は、水素過電圧は250mV以上で極めて高い値となる。
従って、ニッケルとクロムの合金メッキを行うために
は、両者の還元電位を接近させることが必要となる。ニ
ッケルとクロムの合金メッキ浴については種々の研究が
行われているが、実用化されたものはほとんどないとい
ってよい。これらの合金メッキ浴としては、「ジャーナ
ル・オブ・エレクトロケミカル・ソサエティ」(J.El
ectrochem.Soc.)誌118巻1563頁(1971)
に示されているようにアセトアミド−ホルムアミド浴が
ありその他にも「トランス・インスト・メタル・フィニ
ッシング」(Trance.Inst.Metal.Finishing)誌14
8巻(1971)に示されているようにジメチルホルム
アミド浴、その他メタノール浴、ホウフッ化浴、硫酸浴
等がある。その他にも種々存在するが、特に水溶液系で
は析出物中のクロム含有率は一般に低い。したがって、
クロムの含有率を高めるためには、メッキ浴中にジメチ
ルホルムアミド等の非水溶媒を添加して析出物中のクロ
ム含有率を高めることが好ましい。
本発明においては、析出物中のクロム含有率を16〜6
5重量%近くまで高められる浴であればよく、特に限定
されるものではなく第1表に示すものなどが用いられ
る。尚、第1表における溶媒は、水:ジメチルホルムア
ミド=1:1の混合物である。
本発明において特定した所望のクロム含有率を得るため
には、一般にメッキ浴中のニッケルイオンとクロムとの
割合を変化させたり、或いは電流密度を変化させること
により達成される。即ち、基体上に電析させる被覆物中
のクロム含有率を多くしたい場合には、浴中のクロムイ
オン濃度を高くすればよい。浴組成と電着物中のクロム
含有率の関係は、用いる浴の種類によって異なるが、例
えばジメチルホルムアミド浴においてニッケルとクロム
の重量比を変えた場合には、メッキ浴中のクロム重量% と電析物中のクロム含有率(%)とはほぼ比例関係とな
る。このほか浴中のpH、温度、電流密度によっても多少
の相違は生ずるが、実施するにあたり予備的に調べるこ
とにより、容易にそれらの関係を知ることができる。例
えば他の条件が一定の場合、電流密度が小さいほど電析
物中のニッケル含有率が増す傾向にある。従って電流密
度は0.1〜30A/dm2の範囲を用いればよいが、浴中の
ニッケルイオンとクロムイオンのモル比(Cr/Ni)が小
さい場合には電流密度を高くし、前記モル比が大きい場
合には電流密度を小さくして実施すれば好結果をもたら
す。また、メッキ時のpH、温度は、例えばpH2、温度2
5℃付近で行なわれることが一般的であるが、該条件も
メッキ浴の種類等により適宜選定される。
電極基体上に電析させる被覆層の厚さは、特に限定され
ないが、あまりに薄い場合は当然効果は減少する。従っ
て、通常10〜150μの範囲、好ましくは15〜10
0μ程度とするのがよい。それ以上厚くしても性能は変
わらない。
上述の方法によってクロム含有率16〜65重量%、好
ましくは30〜60重量%、中でも35〜50重量%の
クロム含有率において驚異的に水素過電圧の低い陰極が
得られる。
〔作用及び効果) 本発明によれば、導電性を有する物質、好ましくは鉄、
ニッケル或いはこれらの金属を一成分とする合金等の金
属よりなる電極基体の表面にクロム含有率16〜65重
量%のニッケル−クロム合金よりなる活性物質を被覆す
るため、得られる陰極は極めて低い水素過電圧、例えば
30A/dm2の電流密度における水素過電圧を100mV
以下とすることも可能で且つ耐久性にも優れる。かかる
作用効果を生ずる理由は必ずしも明らかではないが、前
記したように陰イオン交換膜を用いることによりメッキ
時にクロムイオンCr3+やDMF等の非水溶媒が酸化される
ことが防止され、ニッケルにクロムが混入することによ
り、ニッケルの結晶に歪が生じたり、或いは微細な結晶
の生成をもたらし、これが陰極とした場合に水素過電圧
の驚異的な低下という作用効果を生ずるものと推察され
る。
また、本発明によれば陽極で発生する酸素及び陽極によ
ってCr3+が酸化することによるCr6+の蓄積やDMF等の非
水溶媒が酸化されることが防止されるため、メッキ浴の
寿命も長く、Cr3+、Ni2+の不足分を補うことにより電着
物の付着強度を低下させることなく、効率的に陰極を製
造することが出来る。
陰イオン交換膜を使用しない場合は、クロムの3価イオ
ン(Cr3+)の量は、電析した分の他に、陽極及び陽極で
発生する酸素によってCr6+に酸化された分も減少する。
従って、陰イオン交換膜を使用しないとメッキ本数を重
ねるにつれてCr6+が蓄積し、同一の電気量を流しても電
着量が減少するし、電着物中のNiとCrの比も不安定とな
りやすい。
また、DMF等の非水溶媒も酸化されて蓄積するため、電
析物の付着強度が低下する。そのため、電析物中のNiと
Crの比が16〜65重量%であっても、メッキ本数を重
ねるにつれて、電析物の付着強度が低下するため、水素
過電圧が上昇し、耐久性も低下する。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を示すが本発明はこれらの実施例
に限定されるものではない。
実施例1 第2表に示すメッキ浴を1調整し、陰イオン交換膜を
介して陽極室と陰極室を有する電気メッキ装置の陰極室
及び陽極室に入れた。
陰イオン交換膜としては徳山曹達(株)製陰イオン交換
膜、NEOSEPTA ACLE−5P、陽極にはTi−Pt電極を用い
て、0.5dm2の大きさの軟鋼製エキスパンドメタル(SW
3mm、LW6mm、板厚1.5mm)にNi−Cr合金メッキを施し
た。電流密度は5A/dm2で電気量は20,000Qとした。
この場合のメッキ本数と陰極室中のNi2+、Cr3+、Cr6+
濃度変化の関係を第1図、又、メッキ本数と合金組成
(Cr含有率)、電析量および得られた電極の水素過電圧
(90℃、11N NaOH、30A/dm2時)の関係を第3表
に示した。更にこのようにして得られた1本目と5本目
の電極の上記環境下(90℃、11N NaOH、30A/dm2
時)における耐久性試験結果を第2図に示した。即ち1
本目が該図中の最も下の線であり、5本目が下から3番
目の線で表される。
比較例1 陰イオン交換膜を用いない事以外は実施例1と同様にし
て行なった。
メッキ本数とメッキ浴中のNi2+,Cr3+,Cr6+の関係を第
3図に、又、メッキ本数と合金組成、電析量及び得られ
た陰極の水素過電圧(90℃、11NNaOH、30A/dm
2時)の関係を第4表に示す。更にこのようにして得ら
れた1本目と2本目の電極を実施例1と同様な方法で耐
久性試験を行なった。その結果を第2図に示した。即ち
1本目が該図中の下から2番目の線であり、2本目が最
も上の線で表される。2本目にあっては、すでにメッキ
浴が劣化したことにより、得られた電極がより好ましく
ないものとなっている。
陰イオン交換膜を使用しない場合、Cr3+の量は電析した
分の他にCr6+に代わった分も減少するため、電着物中の
NiとCrの比も陰イオン交換膜を使用する場合と異なるこ
と、またCr6+が増すと、同じ電気量を流しても電着量が
減少すること、その他DMF等が陽極で酸化され電析物の
付着強度も低下する。したがって電析物のNiとCrの比が
ほぼ同じでも水素過電圧の値が異なるのは、電析量と付
着強度が異なるためであると推定される。
比較例2 実施例で用いたものと同じ0.5dm2のエキスパンドメタ
ルを用い、これを常法によりアルカリ浴によって、銅メ
ッキし、次いで十分洗滌後120g/のロダンニッケ
ルを含有する溶液中で白金を陽極としてロダンニッケル
メッキし、陰極(これをBとする)を得た。
他方、陰極と同形のエキスパンドメタルに酸化ルテニウ
ムをコーティングした陽極を用い、陰極として、それぞ
れ実施例1の最初の電極(これを陰極Aとする)及び陰
極Bを用いた電解セルに隔膜として、ナフィオン(デュ
ポン社商品名)を用い、陽極室に5N食塩水を供給し、
陰極室に6N苛性ソーダとなるよう水を供給しつつ75
〜80℃、30A/dm3の電流密度で電解を行ない、各
陰極の過電圧を測定した。結果を第5表に示す。
【図面の簡単な説明】
第1図、第2図および第3図は、実施例及び比較例の方
法によって得られた電極性能を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−24970(JP,A) 特開 昭57−114678(JP,A) 特開 昭58−153793(JP,A) 特開 昭60−46387(JP,A) 特開 昭55−131190(JP,A) 特開 昭60−92496(JP,A) 特開 昭55−100987(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】陰イオン交換膜により陽極を分離した陰極
    室において、ニッケルイオンおよびクロムイオンを主成
    分として含有するメッキ浴を用いて、導電性電極基体の
    表面にクロム含有率が16〜65重量%のニッケル−ク
    ロム合金を電析させることを特徴とする水素発生用陰極
    の製造方法。
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