JPH0632827U - 組合せオイルリングのスペーサエキスパンダ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 疲労破損を生じにくくした組合せオイルリン
グのスペーサエキスパンダを提供する。 【構成】 スペーサエキスパンダ１は、一対の円周方向
に延びる上部片２と下部片とが軸方向に離間して配置
し、これらの外周端が連結部片４で接続され、内周端に
は外方に起立する一対のサイドレール押圧片５を備え
て、軸方向断面が略コ字状をなす。また、円周方向には
多数のオイル孔７と、オイル孔７間において一対の対向
する切欠部８が多数形成されている。このスペーサエキ
スパンダ１の両合口端面１０，１１はそれぞれ一つの傾
斜面で形成され、両合口端面１０，１１が軸方向から見
て外周から内周に向かってハ字状に広がっており、ピス
トンのオイルリング溝には両合口端面１０，１１の外周
端が突き合わされた状態で挿入される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は内燃機関に使用される組合せオイルリングにおける断面略コ字形スペ ーサエキスパンダの合口構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

組合せオイルリングは通常１ケのスペーサエキスパンダの上下面に各１ケのサ イドレールを配し、スペーサエキスパンダにより前記サイドレールをシリンダ内 壁面に押接して、潤滑油のかき上げ、かき下げ作用を行い、シリンダ内壁面に常 に適切な油膜を形成させて、ピストンリングとシリンダの摩耗を最小限にするも のである。

【０００３】 そして、スペーサエキスパンダとして、断面略コ字形のものが知られている。 このスペーサエキスパンダは円周方向に延びる上部片と下部片とが軸方向に離間 して配置し、これらの外周端が連結部片で接続され、前記上部片と下部片の内周 端にそれぞれ起立する一対のサイドレール押圧片を備え、円周方向に間隔をおい て多数のオイル孔を備えているものである。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

スペーサエキスパンダは、ピストンのオイルリング溝に装着されている状態で は両方の合口端部が突き合わされている。この場合、例えば図５に示されている ように、スペーサエキスパンダ１０１の両合口端面１００，１１１がそれぞれ一 つの傾斜面で形成され、両合口端面１００，１１１が軸方向から見て左右対称を なし、内周から外周に向かってハ字状に広がっていると、スペーサエキスパンダ １０１の両合口端部の突き合わせ時、合口端面１００，１１１の突き合わせ個所 が内周端となって中立線Ｎよりも内周側に位置するため、合口の隣りの山部部分 の強度の弱い外周端部２５に生じる応力が大きくなる問題がある。

【０００５】 本考案は上記点に鑑みてなされたもので、疲労破損を生じにくくした組合せオ イルリングのスペーサエキスパンダを提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

本考案の構成は、円周方向に延びる上部片と下部片とが軸方向に離間して配置 し、これらの外周端が連結部片で接続され、前記上部片と下部片の内周端にそれ ぞれ起立する一対のサイドレール押圧片を備え、円周方向に間隔をおいて多数の オイル孔を備えた組合せオイルリングの断面略コ字形スペーサエキスパンダにお いて、両合口端面における突き合わせ個所が中立線よりも外側に位置しているこ とを特徴とする。

【０００７】

【作用】

断面略コ字形スペーサエキスパンダの両合口端部が突き合わされた状態で、ピ ストンのオイルリング溝にスペーサエキスパンダが装着された時、両合口端面に おける突き合わせ個所は中立線よりも外側に位置しているので、スペーサエキス パンダの外周端部に作用するモーメントの腕の長さが短くなり、応力が低減する 。その結果、スペーサエキスパンダの特に合口付近の山部部分の外周端部に疲労 破損が生じにくくなる。

【０００８】

【実施例】

図１〜図３は本考案の一実施例を示し、図１はスペーサエキスパンダの合口付 近を示し、両合口端部が突き合わされた状態を示す平面図、図２はスペーサエキ スパンダの素材の一部分を示す平面図、図３はシリンダに挿入されたピストンの オイルリング溝に装着された組合せオイルリングを示す縦断面図である。

【０００９】 スペーサエキスパンダ１は、一対の円周方向に延びる上部片２と下部片３とが 軸方向に離間して配置し、これらの外周端が連結部片４で接続され、内周端には 外方に起立する一対のサイドレール押圧片５，６を備えて、軸方向断面が略コ字 状をなすものである。そして、上部片２と連結部片４と下部片３とにわたって設 けられたオイル孔７が円周方向に等間隔をおいて多数形成され、またオイル孔７ 間において上部のサイドレール押圧片５と上部片２と連結部片４とにかけて、並 びに下部のサイドレール押圧片６と下部片３と連結部片４とにかけて設けられた 一対の対向する切欠部８，９が、円周方向に等間隔をおいて多数形成されている 。このスペーサエキスパンダ１の両合口端面１０，１１はそれぞれ一つの傾斜面 で形成され、両合口端面１０，１１が軸方向から見て左右対称をなし、外周から 内周に向かってハ字状に広がっている。両合口端面１０，１１における内周端間 の間隔は例えば０．３ｍｍ程度とされる。

【００１０】 このスペーサエキスパンダ１は次のようにして形成される。 図２に示すように、スペーサエキスパンダ１の素材１２となる打ち抜き鋼帯は、 薄鋼帯の長手方向に等間隔をおいて亀甲状のオイル孔７を多数列設するとともに 、これらのオイル孔７の間に幅方向に対向して配置する一対の略Ｖ字状の切欠部 ８，９を設けたものである。亀甲状のオイル孔７の輪郭は、素材１２の長手方向 の縁辺に平行な一対の直線部７ａ，７ｂと、長手方向に対称的に配置する一対の く字状部７ｃ，７ｄとからなる。また略Ｖ字状の切欠部８の輪郭は、長手方向に 対向して配置する外広がりのハ字状の一対の直線部８ａ，８ｂと、それらの内端 部を接続し素材１２の長手方向の縁辺に平行な直線部８ｃと、ハ字状の一対の直 線部８ａ，８ｂの外端部から素材１２の長手方向の縁辺に垂直に縁辺まで延びる 一対の直線部８ｄ，８ｅとからなる。前記ハ字状の一対の直線部８ａ，８ｂは、 オイル孔７のく字状部７ｃ，７ｄの隣接する一辺と平行をなす。切欠部９は切欠 部８と対称形状をなしている。

【００１１】 この素材１２を長手方向に延びる一対の屈曲線Ａ−ＡおよびＢ−Ｂに沿って同 一方向に９０度屈曲して、屈曲線Ａ−ＡおよびＢ−Ｂ間で連結部片４が形成され る。次いで、屈曲線Ｃ−ＣおよびＤ−Ｄに沿って先端部を外方へ斜めに屈曲して 、屈曲線Ａ−ＡおよびＣ−Ｃ間、ならびに屈曲線Ｂ−ＢおよびＤ−Ｄ間で、上部 片２と下部片３が形成されるとともに、屈曲線Ｃ−Ｃおよび屈曲線Ｄ−Ｄよりも 先端部でサイドレール押圧片５，６が形成される。

【００１２】 次に、切断し、両端面を所定の傾斜面に研磨仕上げする。そして、長手方向に おける短辺側を内周側にしてリング状に形成することによりスペーサエキスパン ダ１が製造される。

【００１３】 このスペーサエキスパンダ１は図３に示されているように、ピストン２０のオ イルリング溝２１内に、両合口端部が突き合わされた状態で装着される。２２， ２３はスペーサエキスパンダ１の上下面に配設されたサイドレール、２４はシリ ンダで、スペーサエキスパンダ１のサイドレール押圧片５，６によってサイドレ ール２２，２３が押圧されて、シリンダ２４の内壁面に押接される。

【００１４】 ピストン２０のオイルリング溝２１内に装着されたスペーサエキスパンダ１は 、図１に示されているように、両合口端面１０，１１の外周端が突き合わされた 状態にあり、両合口端面１０，１１の突き合わせ個所が中立線Ｎよりも外側に配 置している。したがって、合口の隣りの山部部分の外周端部２５に生じる応力が 低減し、疲労破損が生じにくい。

【００１５】 図４は本考案の別の実施例を示すスペーサエキスパンダの合口付近を示し、両 合口端部が突き合わされた状態を示す平面図であり、合口端面の形状が上記実施 例におけるスペーサエキスパンダとは相違している。

【００１６】 この実施例におけるスペーサエキスパンダ１Ａの一方の合口端面１０Ａは、外 周端と内周端とからそれぞれ他方の合口端面１１Ａ側に向かって突出する一対の 傾斜面１３，１４で形成され、その突出先端１７が中立線Ｎよりも外側に位置し ている。もう一方の合口端面１１Ａも、外周端と内周端とからそれぞれ他方の合 口端面１０Ａ側に向かって突出する一対の傾斜面１５，１６で形成され、その突 出先端１８が中立線Ｎよりも外側に位置しており、両合口端面１０Ａ，１１Ａは 軸方向から見て左右対称をなしている。このスペーサエキスパンダ１Ａも上記実 施例におけるスペーサエキスパンダ１と同様にして製造される。

【００１７】 したがって、ピストン２０のオイルリング溝２１内に装着されたスペーサエキ スパンダ１Ａは、図４に示されているように両合口端面１０Ａ，１１Ａにおける 突出先端１７，１８が突き合わされた状態にあり、両合口端面１０Ａ，１１Ａの 突き合わせ個所が中立線Ｎよりも外側に配置しているので、合口の隣りの山部部 分の外周端部２５に生じる応力が低減し、疲労破損が生じにくい。

【００１８】

【考案の効果】

以上説明したように本考案によれば、組合せオイルリングの断面略コ字形スペ ーサエキスパンダにおいて、両合口端面における突き合わせ個所が中立線よりも 外側に位置していることにより、特に合口付近の山部部分の外周端部に生じる応 力が低減し、疲労破損が生じにくくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】スペーサエキスパンダの合口付近を示し、両合
口端部が突き合わされた状態の平面図である。

【図２】スペーサエキスパンダの素材の一部分を示す平
面図である。

【図３】シリンダに挿入されたピストンのオイルリング
溝に装着された組合せオイルリングを示す縦断面図であ
る。

【図４】別のスペーサエキスパンダの合口付近を示し、
両合口端部が突き合わされた状態の平面図である。

【図５】従来のスペーサエキスパンダの合口付近を示
し、両合口端部が突き合わされた状態の平面図である。

【符号の説明】

１、１Ａ スペーサエキスパンダ ２ 上部片 ３ 下部片 ４ 連結部片 ５、６ サイドレール押圧片 ７ オイル孔 ８、９ 切欠部 １０、１１、１０Ａ、１１Ａ 合口端面 １２ 素材 １３、１４、１５、１６ 傾斜面 １７、１８ 突出先端 ２０ ピストン ２１ オイルリング溝 ２２、２３ サイドレール ２４ シリンダ Ｎ 中立線

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 円周方向に延びる上部片と下部片とが軸
   方向に離間して配置し、これらの外周端が連結部片で接
   続され、前記上部片と下部片の内周端にそれぞれ起立す
   る一対のサイドレール押圧片を備え、円周方向に間隔を
   おいて多数のオイル孔を備えた組合せオイルリングの断
   面略コ字形スペーサエキスパンダにおいて、両合口端面
   における突き合わせ個所が中立線よりも外側に位置して
   いることを特徴とする組合せオイルリングのスペーサエ
   キスパンダ。
2. 【請求項２】 両合口端面がそれぞれ一つの傾斜面で形
   成され、両合口端面が軸方向から見て外周から内周に向
   かってハ字状に広がっていることを特徴とする請求項１
   記載の組合せオイルリングのスペーサエキスパンダ。
3. 【請求項３】 両合口端面がそれぞれ一対の突出する傾
   斜面で形成され、その突出先端が中立線よりも外側に位
   置していることを特徴とする請求項１記載の組合せオイ
   ルリングのスペーサエキスパンダ。