JPH0631799A - 合成樹脂シートの成形方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】シート状の合成樹脂により簡便で安価に大型製
品を成形する方法。 【構成】真空吸引板５の上にキヤビテイ２から底面に達
する通気孔３を持つ型１を載せ、この型の上に載せた成
形用シート１０の周囲を押え枠１１で押え、押え枠内に
液体１４、特に好ましくは低融点合金の溶液を充填して
ヒータ１５で加熱し成形用シートを成形温度にし、真空
ポンプ８の作動により真空吸引板５を介して型の真空排
気を行い成形用シートを液体の重力と真空吸引力とでキ
ヤビテイに吸着させて成形し、最後にこの成形品を、冷
却、加熱、紫外線照射等の硬化処理する。 【効果】殆ど特別の装置を利用せず、かなり大型で複雑
な製品を安価に成形できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は合成樹脂の成形方法に係
り、特に繊維強化した合成樹脂シートの成形方法に関す
るものである。

【０００２】

【従来技術】ガラス繊維或は炭素繊維等の繊維で強化し
た合成樹脂の製品、いわゆるＦＲＰ製品が各種の分野で
広く利用されている。

【０００３】このようなＦＲＰ製品は、比較的小型の場
合は、ペレツトを用いての射出成形やバルク状のプリプ
レグを用いての圧縮成形等により成形され、大型の場合
は、ポリエステル、エポキシ等の液状熱硬化性樹脂を利
用してのハンドレイアツプやフイラメントワインデイン
グにより成形されていた。

【０００４】さらに最近は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹
脂、紫外線硬化性樹脂等の各種の合成樹脂をマトリツク
ス材とした繊維強化の合成樹脂シート、すなわちＦＲＰ
シートを用い、ボートの船底、自動車のボデイ部品等の
比較的単純な形状の大型部品を成形することが盛んに行
われている。

【０００５】従来の前記したようなＦＲＰシートの成形
は、金型を用いてのプレス装置によるホツトプレス成形
や、耐圧室内に配備された型のキヤビテイに加熱された
シートを圧搾空気で押し付けて成形する圧空成形等によ
り行われていた。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ＦＲＰ
シートを前記したようにプレス成形したり圧空成形した
りする場合には、非常に大型のプレス装置、金型、加熱
装置、或は耐圧室等を用意しなければならないので、設
備費や成形用治具等に非常にコストが掛かる欠点が有っ
た。

【０００７】本発明は前記したような従来技術の欠点を
解消し、ＦＲＰシートを用い大型の製品を簡便な装置で
低コストで成形する方法を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、真空
吸引板の上にキヤビテイから底面に達する通気孔を持つ
成形用型を載せ、この型のキヤビテイ面上に成形用シー
トを上下両面の開口した押え枠で周囲を上方から押えて
固定し、この押え枠内に液体を充填した後加熱して前記
成形用シートを成形温度に加熱し、真空吸引板を介して
型の真空排気を行い成形用シートを前記押え枠内の液体
の重力で加圧しつつ型のキヤビテー面に真空吸着させて
成形し、前記押え枠内に充填された液体を取り除いた
後、成形品に対して冷却、加熱、或は紫外線照射等の合
成樹脂の特性に応じた硬化処理を行い製品とし型から取
り出すことを特徴とする合成樹脂シートの成形方法であ
り、また、成形用シートに対する押え枠内に充填する液
体として底融点合金の溶液を用いて前記方法に基づいて
成形することを特徴とする合成樹脂シートの成形方法で
ある。

【０００９】

【発明の作用】本発明は以上のように構成され、成形用
のＦＲＰシートは、周囲を上方から押えて型に固定して
いる押え枠内に充填され液体の加熱により均一に加熱さ
れ素早く成形温度になる。

【００１０】この加熱されたシートは軟化されているの
で、押え枠内に充填された液体の重力で押圧しつつ真空
吸引力により型のキヤビテイ表面に吸着させることによ
り容易に成形でき、特に液体が低融点合金の溶液の場合
には、液体の比重が高いので液体の重力による押圧力が
効果的に作用し、一層容易に成形できる。

【００１１】このようにして形成された成形品は、マト
リツクス樹脂が熱可塑性の場合には冷却し、熱硬化性の
場合には赤外線等により加熱し、紫外線硬化性の場合に
は紫外線を照射するといったようにマトリツクス樹脂の
性質に応じた硬化処理を行えば完全な製品となる。

【００１２】このような成形法においては、特別高価な
装置を全く利用する必要がなく、また成形用の型も、特
別に圧力が掛かるわけでもないので、セラミツクスラリ
ーにより製品形状のマスターモデルを転写して容易に低
コストで形成できるので、大型製品を低コストで成形で
きる。

【００１３】

【実施例】次に図面に基づいて本発明の成形方法を説明
する。

【００１４】図１には成形用の型に成形用シートをセツ
トした状態が示され、１が成形用の型であり、この型１
には、キヤビテイ２と、キヤビテイ２から底面に達する
複数の通気孔３とが設けられ、さらに、側面には成形用
シートを固定するためのクランプ溝４が設けられてい
る。

【００１５】５は真空吸引板であり、この真空吸引板５
には、所定の深さの真空吸引溝６が彫られ、さらに真空
吸引溝６から底面に達する真空吸引穴７が設けられ、こ
の真空吸引穴７は真空排気管９を介して真空ポンプ８と
接続している。

【００１６】１０は成形用シートととしてのＦＲＰシー
トであり、１１は上下両面が開口しＦＲＰシート１０の
周囲を上方から型１のキヤビテイ面に押え付ける押え枠
であり、この押え枠１１の側面にもクランプ溝１２が設
けられており、１３はＦＲＰシート１０を押えた押え枠
１１を固定するためのクランプである。

【００１７】次に成形用シート１０を前記したような状
態で型１にセツトする手順を説明すると、まず真空吸引
板５の上に型１を通気孔３が真空排気溝６の上に来るよ
うにして載せる。

【００１８】続いて型１の上にＦＲＰシート１０を載
せ、さらにその上に押え枠１１を載せ、最後に複数のク
ランプ１３を型１のクランプ溝４と枠１１のクランプ溝
１２に嵌めてしっかりと締め、ＦＲＰシート１０を周囲
を押え枠１１で上方からしっかりと押えて型１に固着す
る。

【００１９】以上のようにしてＦＲＰシート１０を型１
にセツトしたなら、次は図２に示すように、押え枠１１
内に液体１４を充填し、この液体１４をヒータ１５で温
度センサー１６で制御しつつＦＲＰシート１０が成形温
度となるまで加熱する。

【００２０】この液体１４の加熱により、ＦＲＰシート
１０は非常に効果的に伝熱され均一に素早く成形温度に
なり、ＦＲＰシート１０が成形温度に達したなら真空ポ
ンプ８を作動させる。

【００２１】真空ポンプ８が作動されると、図３に示す
ように、加熱により軟化しているＦＲＰシート１０は液
体１４の重力で押されつつ真空吸引力を受けて変形し始
め、やがて型１のキヤビテイ２の表面に完全に吸着して
成形品１７が形成された状態になる。

【００２２】前記したようにして成形が終わったなら、
型枠内に充填された液体１４をポンプを用いて取り除い
た後成形品１７に対する硬化処理を行う。

【００２３】硬化化処理は、成形品１７を構成するマト
リツクス樹脂の性質に応じて行われ、マトリツクス樹脂
が、熱可塑性樹脂の場合には、自然放置或は強制的な冷
却を行い、熱硬化性の場合には、赤外線ランプによる赤
外線加熱を行い、紫外線硬化性の場合には、図４に示す
ように、紫外線ランプ１８による紫外線照射を行い、製
品１９を得る。

【００２４】硬化処理が終わったならクランプ１３を緩
めて押え枠１１を取り外した後製品１９を型１から取り
出し総ての成形作業を終わる。

【００２５】次に前記実施例のさらに詳細な説明とし
て、厚さ４ｍｍで成形温度７０〜８０℃のガラス繊維強
化紫外線硬化型ＦＲＰシート（ポリウレタン化成製、Ｌ
ＨＺ）を成形した例を説明する。

【００２６】押え枠には液体として８０℃のお湯を充填
し、２０ｔｏｒｒの真空度で吸引したところ約１分程度
の吸引で成形品が得られ、押え枠内のお湯を除いた後、
成形品に複数本の３０Ｗ蛍光ケミカルランプで３０ｃｍ
程度の距離から約７分紫外線を照射して硬化させ製品と
した。

【００２７】なお押え枠に充填する液体は、前記した説
明からも解るように、単にＦＲＰシートを成形温度に加
熱するだけでなく、成形の際に加圧する役目も持ってい
る。

【００２８】したがつて、製品が湾曲の度合が低い単純
形状で、しかもＦＲＰシートの成形温度が８０℃程度と
低い場合には前記したように水を利用しても良いが、Ｆ
ＲＰシートの成形温度が１００℃以上の高い温度の場合
或は、製品が比較的複雑形状の場合には低融点合金の溶
液の利用が好ましい。

【００２９】低融点合金は様々な融点の合金が開発され
ているのでＦＲＰシートの成形温度に対応した合金が選
べ、また比重も１０前後と高く成形時の押圧効果も高い
ので複雑形状の製品を成形するのに適している。

【００３０】このため、前記した紫外線硬化型のＦＲＰ
シートでの成形の際に、押え枠に充填する液体として、
融点７０℃の低融点合金であるセロベント７０（１０％
Ｃｄ−２６．７％Ｐｂ−５０％Ｂｉ−１３．３％Ｓｎ，
比重９．７４）を用いたところ、かなり複雑な形状の製
品も容易に成形できた。

【００３１】次に、前記成形に利用した型の製作方法に
ついて図５に基づいて説明する。

【００３２】まずプラスチツク、木材等の加工のし易い
材料で形成した製品形状のマスターモデル２０を用意
し、このマスターモデル２０を型枠２１で囲む。

【００３３】続いて製作される型にキヤビテイから底面
に達する通気孔を設けるために複数本の針金２２をマス
ターモデル２０の表面に垂直に立てる。

【００３４】その後セラミツクスラリー２３を型枠２１
内に流し込み２４時間程度養生してセラミツク成形体２
４を形成し、型枠２１を取り外した後セラミツク成形体
２４をマスターモデル２０から分離し、前記通気孔形成
のために挿入されている針金２２を取り除く。

【００３５】最後に、前記マスターモデル２０と分離し
たセラミツク成形体２４を乾燥炉中で１時間当たり３０
℃程度の昇温速度で１２０℃（型の最高使用温度）まで
加熱し、約１２時間この温度に保持して乾燥し、底面の
平滑加工等の適当な機械加工を行ってセラミツク型とす
る。

【００３６】なおここで利用したセラミツクスラリー２
３の配合例をしめすと次のようである。 Ｎｅｔ ｓｈａｐｅ ９００（セラダインサーモ社） ｐａｒｔ １ １００ 重量部 ｐａｒｔ ２ 〃 〃 水 ２６．５ 〃

【００３７】

【発明の効果】本発明は以上のような構成及び作用のも
のであり、殆ど特別の装置を必要としないばかりでな
く、利用する型も安価で容易に製作でき、かなり大型で
複雑な形状の製品でも、あらゆる種類の合成樹脂シート
を用いて容易かつ低コストで成形できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 成形用シートの型へのセツト状態、

【図２】 成形用シートの加熱状態、

【図３】 成形状態、

【図４】 成形品の硬化処理状態、

【図５】 成形用型の製作状態。

【符号の説明】

１ 型 ２ キヤビテイ ３ 通気孔 ５ 真空吸引板 ６ 真空排気溝 ８ 真空ポンプ １０ 成形用シート １１ 押え枠 １４ 液体 １５ ヒータ

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】真空吸引板の上にキヤビテイから底面に達
   する通気孔を持つ成形用型を載せ、この型のキヤビテイ
   面上に成形用シートを上下両面の開口した押え枠で周囲
   を上方から押えて固定し、この押え枠内に液体を充填し
   た後加熱して前記成形用シートを成形温度に加熱し、真
   空吸引板を介して型の真空排気を行い成形用シートを前
   記押え枠内の液体の重力で加圧しつつ型のキヤビテー面
   に真空吸着させて成形し、前記押え枠内に充填された液
   体を取り除いた後、成形品に対して冷却、加熱、或は紫
   外線照射等の合成樹脂の特性に応じた硬化処理を行い製
   品とし型から取り出すことを特徴とする合成樹脂シート
   の成形方法。
2. 【請求項２】成形用シート対する押え枠内に充填される
   液体が底融点合金の溶液であることを特徴とする請求項
   １記載の合成樹脂シートの成形方法。