JPH063021B2 - 減圧調整可能な揚水井戸 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、建設現場等で地下の排水工事に用いられる揚
水井戸に関するものである。

［従来の技術］ 一般に、建設現場等で掘削工事を行なうに当たり、地下
水を排水するために揚水井戸が用いられる。この種の揚
水井戸は、止水工法を用いる場合であっても、地下に不
透水層による滞水層が存在し、特に土被りが小さい時に
は必ず使用される。

［発明が解決しようとする課題］ 従来の揚水井戸は、前記滞水層から排水するが、この滞
水層の水圧が前記土被りの圧力より大きい時には、滞水
層を減圧しなければならない。このため、排水ポンプを
下の方に設置して滞水層から排水して減圧を図るが、消
費電力を多く必要としたり、必要以上に多く排水してコ
スト高になる欠点がある。

このような欠点を回避するために、例えば排水量をバル
ブでコントロールすることが考えられるが、その場合に
は前記滞水層の水が、根切り底に回ってドライワークの
出来ない事態が生じることがある。

本発明は、このような従来の問題点を解決するためにな
され、前記滞水層の減圧を自動的に行えるようにした減
圧調整可能な揚水井戸を提供することを技術的課題とし
たものである。

［課題を解決するための手段］ この技術的課題を解決するための手段として、本発明
は、内部に隔壁を設けて上室と下室に分けた井戸本体
を、その下端が上下の不透水層間に溜った滞水層に位置
するようにして地中に立て込み、前記隔壁には長さ調節
可能なパイプを上向きに立設して前記上室と下室を連通
させ、かつ前記上室内の下部に排水ポンプを設けたこと
を要旨とするものである。

［作用］ 前記排水ポンプにより排水すると、上室内が負圧となっ
て前記下室内の滞水が前記パイプを介して上室内に流入
し、これにより前記滞水層の水圧を減圧することが出来
る。また、上室内に流入した水を排出するので、排水ポ
ンプによる排水量は従来より少量となり消費電力を減少
させることが出来る。

［実施例］ 以下、本発明の実施例を添付図面により詳説する。

第１図において、１は金属で円筒状に形成された井戸本
体であり、その内部の下方に近い部分に隔壁２が設けら
れて上室１ａと下室１ｂに分けられ、その隔壁２には長
さ調節可能なパイプ３が上向きに取り付けられ、前記上
室１ａと下室１ｂとが連通されている。前記井戸本体１
は建設現場等の地面10の中に立て込まれ、その下端部は
地中の上部不透水層11を貫通して下部難透水層12に臨む
位置、即ち滞水層13内に位置するようにしてある。この
時、前記上部不透水層11の孔と井戸本体１との間には、
グラウト14が充填されて止水される。前記パイプ３は例
えば第２図(イ)に示すように、前記隔壁２に固定した下
部パイプ31に上部パイプ32を嵌合し、この上部パイプ32
を移動させてパイプ３の全長を調節出来るように構成
し、或は同図(ロ)のように下部パイプ33と上部パイプ34
とをネジ嵌合方式となし、長さの異なる上部パイプを着
脱することによりパイプ３の全長を調節出来るように構
成することが出来る。

前記上室１ａと下室１ｂの内部の下方にはフィルター５
と６がそれぞれ装備され、また前記排水パイプ４は接続
管７を介して地表に設置されたバルブ８と連結されてい
る。９は前記バルブ８に接続された排水管である。尚、
15は山止め用の止水壁であり、16は井戸本体１の上端に
被せた蓋材である。

本発明に係る揚水井戸は上記のように構成され、前記排
水ポンプ４を駆動して井戸本体１の上室１ａに溜った水
を汲み上げ、前記排水管９から外部に排水することが出
来る。前記山止め用の止水壁15で囲まれた部分を掘削
し、その土被りによる圧力Ｗが前記滞水層13の水圧Ｐよ
り小さく（Ｗ＜Ｐ）なった場合には、滞水層13の水圧Ｐ
を減圧する必要があるが、前記のように排水ポンプ４の
排水により上室１ａ内の水圧が低くなると、前記下室１
ｂ内の滞水が前記パイプ３を介して上室１ａ内に流入す
るので、前記滞水層13の水圧Ｐを自動的に減圧すること
が出来る。この減圧分ΔＰが、滞水層13の水圧Ｐと前記
土被りの圧力Ｗとの差（ΔＰ＝Ｐ−Ｗ）となるように設
定すれば、滞水層13の水圧は（Ｐ−ΔＰ）を保ち、この
水圧より高くなると前記のように上室１ａ内に流入し、
この流入した分を前記排水ポンプ４で排水すれば良いこ
とになる。従って、滞水層13の降下水位は小さくなると
共に、排水ポンプによる排水量は従来に比べると激減
し、消費電力を減少させることが出来る。

尚、前記パイプ３はその長さを調整して被圧を目標に近
付けることが出来、パイプ径は滞水層13の水量によって
設定すると良い。

［発明の効果］ 以上説明したように、本発明によれば、内部に隔壁を設
けて上室と下室に分けた井戸本体を、その下端が上下の
不透水層間に溜った滞水層に位置するようにして地中に
立て込み、前記隔壁には長さ調節可能なパイプを上向き
に立設して前記上室と下室を連通させ、かつ前記上室内
の下部に排水ポンプを設けたので、前記排水ポンプの排
水により上室内が負圧になると、前記下室内の滞水が前
記パイプを介して上室内に流入し、これにより前記滞水
層の水圧を自動的に減圧調整することが出来る。また、
排水ポンプは上室内に流入した水を排水するので、その
排水量は従来より少量となり消費電力を減少させる効果
を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例を説明するための概略断面図、
第２図(イ),(ロ)は井戸本体内に設けるパイプの例をそれ
ぞれ示す斜視図である。 １…井戸本体、１ａ…上室 １ｂ…下室、２…隔壁 ３…パイプ、４…排水ポンプ ５，６…フィルター、７…接続管 ８…バルブ、９…排水管 10…地面、11…上部不透水層 12…下部難透水層、13…滞水層 14…グラウト、15…山止め用止水壁 16…蓋材

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】内部に隔壁を設けて上室と下室に分けた井
   戸本体を、その下端が上下の不透水層間に溜った滞水層
   に位置するようにして地中に立て込み、前記隔壁には長
   さ調節可能なパイプを上向きに立設して前記上室と下室
   を連通させ、かつ前記上室内の下部に排水ポンプを設け
   たことを特徴とする減圧調整可能な揚水井戸。