JPH06296677A - 骨形成用移植体 - Google Patents

骨形成用移植体

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JPH06296677A
JPH06296677A JP5114072A JP11407293A JPH06296677A JP H06296677 A JPH06296677 A JP H06296677A JP 5114072 A JP5114072 A JP 5114072A JP 11407293 A JP11407293 A JP 11407293A JP H06296677 A JPH06296677 A JP H06296677A
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JP
Japan
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rhbmp
bone
collagen
human
transplant
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JP5114072A
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English (en)
Inventor
Yoshinori Kuboki
芳徳 久保木
Hiromu Kato
熈 加藤
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Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 各種の骨や軟骨の損傷などの治療に有用な、
抗原性の低い骨形成用移植体を提供する。 【構成】 コラーゲン担体が、ヒト由来の他のタンパク
質を実質的に含有しないヒト骨誘導因子(rhBMP)
を担持する。 【効果】 ヒトに移植しても免疫学的副作用がなく、安
全で、起炎性が低く、生体適合性に優れ、新生骨と生体
内既存骨との連続性も良好で、生体内で分解し、骨形成
後に移植体の除去手術を行う必要がない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種の骨(軟骨を含
む)の損傷、欠損あるいは形成不全などの治療に有用
な、生体分解性の骨形成用移植体に関する。詳しくは、
遺伝子組換え技術により製造される組換えヒト骨誘導因
子(rhBMP)とコラーゲン担体とからなる、生体分
解性の骨形成用移植体に関する。
【0002】
【従来の技術】骨誘導因子(bone morphog
enetic protein:BMP)は、皮下組織
又は筋組織内の未分化間葉系細胞に作用して、これを軟
骨芽細胞又は骨芽細胞に分化させ、軟骨又は骨を形成さ
せる活性タンパク質である。BMPは、ウシ脱灰骨基質
中に存在する異所性骨誘導活性を示す物質として発見さ
れたが、純粋に単離されず、具体的な構造は未解明のま
まであった。しかし、遺伝子工学の技術により、ヒトB
MPをコードする遺伝子がクローニングされ、アミノ酸
配列が明らかになった。また、ヒトBMPは、アミノ酸
配列が相同性を有する複数の近縁タンパク質からなる一
群のファミリーを構成することも判明し、数種類の組換
えヒト骨誘導因子(rhBMP)が創製されてきた〔S
cience Vol.242,pp.1528−15
34(1988);Proc.Natl.Acad.S
ci.USA Vol.87,pp.2220−222
4(1990);Progress in Growt
h Factor Research,Vol.1,p
p.267−280(1989);特表平2−5002
41号、特表平3−503649号、特表平3−505
098号、WO91/18098、WO92/0519
9の各公報〕。また、形質転換体による生産も行われて
いる。
【0003】前記のBMPを利用して、骨又は軟骨の損
傷、欠損あるいは形成不全などの治療を行う方法は、そ
のBMPの構造が未解明であった頃から、種々提案され
ていた。例えば、BMPとコラーゲンとの組合せからな
る移植体や組成物を治療部位に加えたり、移植する技術
が、多くの特許公報に記載されている(例えば、特開昭
60−253455号、特開昭62−16421号、特
開昭62−135431号、特開平1−158964
号、特開平2−182260号及び特表平3−5006
55号の各公報、並びに米国特許第4,394,370
号明細書)。
【0004】しかし、これらの特許公報に記載されてい
るBMPは、骨肉腫細胞やヒト以外の動物(例えば、ウ
シ)の骨組織から抽出して精製処理して得た粗製BMP
であり、複数種のBMPを含むことが知られている。ま
た、同様に骨組織中からの抽出成分としてBMP以外の
各種の骨形成関連タンパク質、例えば、形質転換生長因
子(TGF−β:transforming grow
th factorβ)、骨形成誘導因子(OIF:o
steoinductive factor)、インス
リン様生長因子(IGF:insulin deriv
ed growth factor)又は骨由来生長因
子(PDGF:platlet derived gr
owth factor)などが知られており、従来公
知の抽出粗製BMPは、実質的にこれらのタンパク質が
含有された混合物である可能性も示唆されている〔Pr
ogress in Growth Factor R
esearch,Vol.1,pp.267−280
(1989);The Journal of Bio
logical Chemistry Vol.26
4,No.32,pp.20805−20810(19
89);日本骨代謝学会雑誌7(3)p196(198
9)〕。
【0005】従って、前記の技術をヒトに適用すると、
免疫性の問題があるだけでなく、複数のタンパク質とコ
ラーゲンとの相互作用、あるいはそれらの組合せに起因
する副作用の有無なども不明であり、ヒトに対する臨床
的な使用には多くの問題があった。更に、前記の粗製B
MPは、その原料に由来する前記以外の多くの不純物を
含むので、ヒトに用いる際には免疫性や安全性の点でも
満足のできるものではなかった。また、微量抽出物であ
るため一定の規格を有する成分を大量に生産することが
困難であり、工業的生産が難しく、実用化には多くの問
題があった。
【0006】一方、rhBMPを利用する技術として
は、不活性化された同種由来脱ミネラル骨マトリックス
(IADBM:inactive allogenic
Demineralized bone matri
x)粒子を担体として用いたものが報告されている〔P
roc.Nat.Acad.Sci.USA,vol.
87,pp2220−2224(1990);J.Bo
ne Joint Surg.,vol.74−A,p
p659−671(1992);Arch.Otola
ryngol.Neck Surg.,vol.11
7,pp1101−1112(1991)〕。このIA
DBM粒子は、同種由来の脱ミネラル骨から活性因子を
含むタンパク質成分を除去して調製した粒子であり、骨
形成に適するコラーゲン様骨マトリックスをそのまま残
留して含んでいる。従って、抗原性もなく、従来より実
験室レベルの粗製BMPなどの骨形成用担体として繁用
されているものである。前記のrhBMPを担持したI
ADBM粒子の実験では良好な骨又は軟骨形成が観察さ
れている。
【0007】前記のrhBMPは、BMP以外の各種の
骨形成関連タンパク質(例えば、TGF−βやOIF)
を含まない単一成分であり、しかもヒト由来であるので
ヒトに適用しても免疫性や安全性の点では優れたもので
あった。しかし、ヒトへの臨床的な使用に際して同種由
来の脱ミネラル骨マトリックス(IADBM)を用いる
ためには、人骨を確保する必要があり、事実上困難であ
る。また、異種由来の脱ミネラル骨マトリックスを用い
ると、抗原性や病原体の感染などの免疫学的な問題が生
じる。更に、粒子状であるので、適用部位や適用量など
が制限されるなどの多くの欠点があった。
【0008】更に、rhBMPの別の利用法としては、
前記rhBMPと多孔性生体内分解性合成ポリマーと自
家血とからなる組成物が知られている(米国特許第5,
171,579号明細書)。しかし、この組成物は患者
の自家血を必須成分とするので、使用する際には常に患
者から採血する必要があり、更に、組成物の調製工程が
煩雑であるなど、なお難点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、rhB
MPを用いる従来法にも、主に担体に起因する多くの欠
点があるが、rhBMPは免疫性の点に問題がなく、臨
床上安定した薬理作用の発現や安全性が期待でき、実用
性の高いものである。従って、rhBMPに適する担体
の開発が望まれていた。また、天然物より抽出された粗
製BMPと種々の担体の組合せが知られていたが、前記
のように、その中に含まれている複数のタンパク質の相
互作用は解明されておらず、これらの生体内における骨
又は軟骨形成のメカニズムは未だ充分には解明されてい
ない。事実、それら複数のタンパク質の相互作用によ
り、骨又は軟骨形成が増強されるとの報告もある〔前出
のProgress in Growth Facto
r Research,Vol.1,pp.267−2
80(1989);The Journal of B
iological Chemistry Vol.2
64,No.32,pp.20805−20810(1
989)〕。従って、これらの担体を評価する際には、
その中に含まれている複数のタンパク質の相互作用、並
びにそれら複数のタンパク質と担体との相互作用の影響
を考慮する必要があった。一方、rhBMPの場合は単
独で使用するので、天然の状態とは異なり、複数のタン
パク質による骨又は軟骨形成の相互作用を期待すること
ができず、生体内における作用発現の環境が粗製BMP
の場合とは異なることが予想された。また、rhBMP
は担体の物理的及び化学的状態に対して感受性が高く、
担体の性質がその骨又は軟骨誘導作用に大きく影響す
る。従って、粗製BMPに関する技術をそのままrhB
MPに適用することはできず、別途rhBMPに適用す
ることのできる担体を開発する必要があった。
【0010】ところが、驚くべきことに、本発明者は、
生体内移植物質として既に広く用いられ、その安全性が
確認されているコラーゲンを、rhBMPの担体として
用いると、rhBMPによる骨又は軟骨誘導作用を有効
に発現させることのできる生体適用可能な実用性の高い
骨形成用移植体が得られることを見出した。従って、本
発明は、特に担体に起因する免疫性や調製煩雑性の問題
を回避することに成功したものである。本発明はこうし
た知見に基づくものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、コラ
ーゲン抗体が、ヒト由来の他のタンパク質を実質的に含
有しないヒト骨誘導因子を担持することを特徴とする、
骨形成用移植体に関する。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
移植体は、単体又は集合体として一定の形状を有し、生
体に移植して適用することのできる成形体であって、例
えば、多孔質体、ゲル状体、粘土状体、粒状体あるいは
それらの組合せであることができる。本発明の移植体
は、従来の同種の移植体と同様に、主に生体内で骨(軟
骨を含む)を形成すべき部位に移植して使用する。生体
内に移植すると、移植体内部に未分化細胞が取り込ま
れ、rhBMPの作用によって骨形成過程が進行する。
従って、本発明の移植体は、移植の初期段階において骨
形成を行う場を提供する。続いて、骨形成過程の進行に
伴い、コラーゲン担体が徐々に分解されて消失し、新た
に形成された骨(又は軟骨)と徐々に置き換わる。最後
に、骨形成の完了と共に、あるいは完了後に、移植体そ
れ自体は完全に分解されて消失し、移植当初に移植体が
占めていた空間にほぼ相当する空間は、新たに形成され
た骨(又は軟骨)で完全に置換される。従って、生体へ
の移植手術を1回だけ行えば充分であり、骨形成後の移
植体除去手術を行う必要はない。
【0013】本発明で使用することのできるヒト骨誘導
因子(ヒトBMP)は、ヒト由来の他のタンパク質を実
質的に含有しないヒト骨誘導因子であり、遺伝子組換え
技術により製造されたヒトBMPであればいずれでも良
い。すなわち、ヒト骨誘導因子をコードする塩基配列を
含む組換えDNAを含有する形質転換体(細胞又は微生
物)を培養し、それら形質転換体によって産生された組
換えヒト骨誘導因子を単離、精製して調製した組換えヒ
ト骨誘導因子(rhBMP)である。これらのヒト骨誘
導因子(rhBMP)としては、例えば、rhBMP−
2、rhBMP−1、rhBMP−3、rhBMP−4
(rhBMP−2Bともいう)、rhBMP−5、rh
BMP−6、rhBMP−7、rhBMP−8又はこれ
ら以外の組換えヒトBMP−2様タンパク質を単独で又
は2種以上の混合物として用いることができる。これら
のrhBMPは、哺乳動物細胞(例えば、CHO細
胞)、微生物(例えば、大腸菌)又は酵母細胞などで発
現したものであることができる。既に大量生産法及び精
製法が確立しているrhBMPとしてはrhBMP−2
があるが、その他のrhBMPを同様に製造・精製して
用いることはなんらさしつかえない〔Progress
in Growth Factor Researc
h,Vol.1,pp.267−280(198
9)〕。既に知られている精製rhBMP−2は、N末
端アミノ酸配列が異なる複数の単量体からなる成熟ペプ
チド分子量であって、約30,000の二量体タンパク
質である。それぞれの単量体は、Asn56残基にハイ・
マンノース型の糖鎖を有している〔Abstract
Sixth Interraction Sympos
ium of the Protein Societ
y,San Diego,CA(1992)〕。
【0014】本発明で用いるコラーゲン担体は、以下の
(a)〜(d)の条件を満たしているものであることが
好ましい。 (a)実質的に抗原性の除去されたアテロコラーゲン由
来である。 (b)生体内に移植された際に、生体内の細胞が入り込
める程度の空隙を有する多孔質体である。 (c)本発明の移植体を移植する、骨又は軟骨を形成す
べき部位において、骨又は軟骨形成を生じさせるのに十
分な期間、rhBMPを保持することができる。 (d)新生した骨又は軟骨と置換し、それ自体は消失す
るのに十分な程度の生体内分解性を有する。
【0015】前記のコラーゲンとしては、抗原性の除去
されたアテロコラーゲン(すなわち、ウシ又はブタな
ど、ヒト以外の動物組織由来のコラーゲンから抗原性の
あるテロペプチドを除去した非抗原性のもの)由来のも
のを用いるのが好ましい。コラーゲン担体が抗原性を有
すると、適用部位に異物反応が生じ、rhBMPによる
骨形成が阻害されることがある。更に好ましくは、可溶
化コラーゲン由来の再構成コラーゲンであって、線維状
又は架橋化線維状コラーゲンからなるコラーゲン担体で
ある。これらは、可溶化処理によって抗原性を除去した
後、再構成され生体内に存在する形に近い線維状に復元
されていることより、生体適合性に優れ、また、rhB
MPとの適合性も良好である。
【0016】移植された移植体における生体内での骨又
は軟骨形成の進行過程は複雑な多段階工程であり、具体
的には、担体への未分化間葉細胞の浸潤、rhBMPと
未分化間葉細胞との接触、担体へのフィブリン及びフィ
ブロネクチンの結合、細胞の移動、繊維芽細胞の増殖、
軟骨細胞への分化、軟骨形成、血管の進入、骨形成など
が多段階的に関与すると言われている。従って、本発明
による移植体においても、これらの各段階に必要な一定
期間、骨又は軟骨形成部位にrhBMPを存在させ、し
かもこれらの各段階が好適に進行するための場を提供す
ることが担体の重要な役割である。その骨形成の場とし
ての担体は多孔質状に成形され、多数の空隙を有するの
が好ましい。空隙の大きさは、好ましくは約1μm〜1
000μm、より好ましくは約5μm〜500μmであ
る。空隙の大きさが前記の範囲内にあると、移植体を生
体内に移植した際に、当該担体内部に未分化間葉細胞が
良好に浸潤することができる。前記の多孔質状担体とし
ては、線維構造体、フォーム状体、あるいは粒子連結体
などの担体を挙げることができる。粒子連結体は、粒子
が流動しないように生体分解性の粘着物などで接着する
か、あるいは生体分解性の膜などのカバーで覆って固定
することが必要である。
【0017】担体中に保持されたrhBMPは、生体内
の移植部位において、徐々に放出されてもよいが、少な
くともその一部が、担体上に一定期間保持され、骨形成
の作用を発現することが必要である。また、rhBMP
による骨又は軟骨の形成作用は、その形成の場を提供す
る担体に沿って発現することが、本発明者の研究によっ
て判明しており、従って、rhBMPを担持した担体が
生体内で移植部位から流動してしまうと、骨又は軟骨が
望ましくない部位や、あるいは望ましくない形状で形成
される恐れがある。従って、本発明による移植体は、骨
又は軟骨形成が期待される部位及び形状で、担体がrh
BMPを保持することが必要である。好ましくは、本発
明の移植体は、生体内に移植された際に、当該適用部位
において骨又は軟骨形成を生じさせるのに十分な期間、
rhBMPを一定形状に保持できるように成形されたも
のである。また、上記条件を満たす範囲において、生体
の動きに適応して担体が一定の柔軟性又は可撓性を有す
ることは適用部位への密着性の点で有利である。
【0018】上記の骨又は軟骨形成を生じさせるのに十
分な期間とは、前述の様にrhBMPが関与する骨又は
軟骨形成の工程が進行するのに必要とされる期間であっ
て、その適用部位、形成を必要とする骨又は軟骨の種
類、その量、形状などにより異なるが、rhBMP、特
にrhBMP−2の作用を十分に発現させる期間は数日
〜数週間である。
【0019】骨又は軟骨を形成すべき部位に移植された
移植体は、rhBMPによって誘導された骨又は軟骨形
成の進行と共に、形成された骨又は軟骨と置き換わるよ
うに生体内で徐々に分解・吸収されて消失し、最終的に
は新生の骨又は軟骨と全体的に置換されることが好まし
い。すなわち、本発明の移植体は、目的の部位に骨又は
軟骨が形成される迄の一時的な足場として作用し、生体
内で徐々に分解・吸収される。この分解の速度は骨又は
軟骨形成の速度との関連で決められる。rhBMP、特
にrhBMP−2の場合、移植体が完全に分解・吸収さ
れるまでの期間は、好ましくは少なくとも1週間以上、
更に好ましくは2週間以上である。分解が早すぎると好
ましい骨又は軟骨形成が十分に達成されない恐れがあ
る。一方、分解が遅すぎると骨又は軟骨形成が遅れる可
能性がある。
【0020】一般に使用されているコラーゲンは生体内
分解速度が比較的早く、1週間程度で分解されるものが
多い。本発明に用いるコラーゲンとしては、適応部位に
よっては、これらの一般的なコラーゲンを用いることも
できるが、好ましくは更に生体分解性を遅らせたもので
ある。移植体として1週間以上、更に好ましくは2週間
以上に渡り生体内に骨形成の足場として残存し、徐々に
分解・吸収されるものが好ましい。コラーゲン担体とし
て、可溶化コラーゲンから線維状に再構成したコラーゲ
ンを用いる場合は、線維の太さを調整することにより前
記の分解速度を遅らせ、また、その線維状コラーゲンに
架橋を導入することにより、分解速度を更に遅らせるこ
とができ、rhBMPに適する分解速度を有する好適な
担体を得ることができる。例えば、本発明の一態様であ
るrhBMP−2とコラーゲン膜からなる歯周疾患によ
る歯槽骨の欠損の再生用移植体の場合では、数日から数
週間程度、好ましくは2〜5週間程度で徐々に分解吸収
される再構成線維状コラーゲン又は架橋化再構成線維状
コラーゲンを担体として用いるのが好ましい。
【0021】本発明では、上記条件を満たすものであれ
ばいずれのコラーゲン担体を用いることもでき、これら
のコラーゲン担体は当業者に公知の方法によって製造す
ることができる。コラーゲン担体の形状は特に限定され
ない。上記条件を満たす範囲で任意の形状に成形するこ
とができる。好ましい形状としては、フィルム又はシー
ト状、布状、綿状、スポンジ状、板状、棒状、粒子状あ
るいはこれらの組み合わせが挙げられる。他の生体適合
性成分と組み合わせて粘土状あるいはゲル状にすること
もできる。例えば、再構成線維状又は架橋化再構成線維
状コラーゲンを、適宜当業者に公知の方法によって上記
の形状に加工して用いることができる。例えば、前記の
架橋化再構成線維状コラーゲン膜は、日本歯周病学会会
誌第33巻4号第864−871頁又は特開平2−15
6954号公報等に記載の方法によって調製することが
できる。
【0022】本発明による骨形成用移植体は、例えば、
コラーゲン担体へrhBMPを添加することによって調
製することができる。この添加方法に特に制限はなく、
例えば、rhBMP含有液による浸漬、含浸、噴霧、塗
布、滴下などの方法を用いることができるが、rhBM
Pの活性を失わせることなく、担体にほぼ均一に分散さ
せることができる方法が好ましい。例えば、各種の乾燥
されたコラーゲン担体に、適当な液体に溶解あるいは懸
濁されたrhBMP溶液(又は懸濁液)を添加し、続い
て乾燥(好ましくは凍結乾燥)して、所望の移植体を得
ることができる。
【0023】また、移植体の使用時に、コラーゲン担体
にrhBMP溶液(又は懸濁液)を添加し、そのまま移
植に用いることもできる。この場合、生体適用可能な溶
媒を用いることが必要である。また、コラーゲン担体か
らrhBMP含有液が容易に流れ出ることは好ましくな
いので、例えば、粘性又は接着性を有する生体適合性の
補助剤を用いてrhBMPを担体中に適度に吸着させ
て、担持を強化し、rhBMPを保持するのが好まし
い。また、コラーゲン担体を製造する任意の工程で、コ
ラーゲン材料にrhBMPを添加し、rhBMP含有コ
ラーゲン材料から所望の移植体を成形することもでき
る。好ましくは、成形過程のコラーゲン担体に一定量の
rhBMPを添加し、凍結乾燥などの乾燥方法で乾燥し
て所望の移植体を得る。
【0024】コラーゲン担体へのrhBMPの担持量
は、コラーゲン担体の形状、適用部位、適用量、好まし
い骨形成の速度などの種々の要因を考慮して適宜決定す
ることができる。例えば、本発明の一態様であるrhB
MP−2とコラーゲン膜からなる歯周疾患による歯槽骨
の欠損の再生用移植体の場合では、rhBMP−2の量
は、0.01〜1000μg/1mgコラーゲン担体
(乾燥時)、好ましくは1〜100μg/1mg程度で
ある。本発明の移植体は、rhBMPとコラーゲン担体
以外の成分を含んでいることができる。それらの所望成
分としては、具体的には、安定化剤、保存剤、増粘剤、
可溶化剤などを挙げることができる。また、骨又は軟骨
形成に有用な追加成分、例えば、リン酸カルシウム、ヒ
ドロキシアパタイトなどのミネラル成分、骨又は軟骨形
成補助因子などの作用促進成分、フィブロネクチン、オ
ステオネクチン、非抗原性のIBM(不溶性骨マトリッ
クス)などを含むこともできる。
【0025】こうして製造された移植体は、適用部位に
合わせて適当な形状に切断され、骨又は軟骨形成が必要
とされる部位に移植される。適用部位に合わせて担体を
適当な形状に成形又は切断した後にrhBMPを添加し
てもよい。粒子状のコラーゲン担体にrhBMPを吸着
させた移植体の場合には、その適量を患部に移植し、そ
れらの周りにコラーゲン膜などのカバーを施して使用す
るのが好ましい。本発明の移植体は、形成すべき骨又は
軟骨の形状にほぼ相当する形状に成形して、目的の部位
に移植するのが特に好ましい。また、本発明の好適な一
態様である歯科領域用移植体においては、歯槽骨あるい
はセメント質の破壊された部分に適用しやすいフィルム
又はシート状、スポンジ状あるいは粒状担体を膜で覆っ
た形状の移植体などが好ましい。
【0026】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に
説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものでは
ない。実施例1 (1)コラーゲン膜の調製 ウシ真皮由来コラーゲンをペプシンで処理し、凍結乾燥
して調製したアテロコラーゲンを、0.1M酢酸溶液に
溶解して0.3%溶液とし、0.15M塩化ナトリウム
を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)にて中
性透析を行った。更に、0.02MNa2 HPO4 (>
pH8)によるアルカリ透析を行い、遠沈によりアルカ
リ可溶性成分を除去した。エタノールを加え、吸引濾過
器にてテフロン膜上に線維を圧縮固定し、エタノールを
加えて完全に脱水した。10%ヘキサメチレンジイソシ
アネート(HMDIC)エタノール溶液中に浸潤し、室
温で2時間以上放置して架橋を導入した後、エタノール
及び水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0027】(2)rhBMP−2を配合した骨形成用
移植体の製造 rhBMP−2〔Progress in Growt
h Factor Research,Vol.1,p
p.267−280(1989)に記載の方法で製造;
山之内製薬(株)製〕12.5μgをPBS25μlに
溶解し、上記(1)で調製したコラーゲン膜〔0.5m
m×4.0mmに切断したもの(平均重量0.13m
g)〕上にオートマイクロピペットを用いて(a)5μ
l(rhBMP−2=2.5μg)、又は(b)10μ
l(rhBMP−2=5.0μg)を滴下し、凍結乾燥
した。こうして得られた移植体は、使用直前まで−70
℃にて保管した。
【0028】実施例2 (1)コラーゲン膜の調製 ウシ真皮由来コラーゲンをペプシンで処理し、凍結乾燥
して調製したアテロコラーゲンを、0.1M酢酸溶液に
溶解して0.3%溶液とし、0.15M塩化ナトリウム
を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)にて中
性透析を行った。冷却下に中性緩衝液を添加してコラー
ゲン溶液を1/100に希釈した後、穏やかに撹拌し、
十分均一にした。その後37℃で1日放置した。吸引濾
過器に100meshステンレス網をセットしてコラー
ゲン線維を膜上に凝集させた。NaBH4 (コラーゲン
量の1/30以上)を少量のN,N−ジメチルホルムア
ミドに溶解した溶液を、前記の膜状コラーゲンに添加し
て架橋させた後、水で洗浄し、凍結乾燥した。 (2)rhBMP−2を配合した骨形成用移植体の製造 前記の実施例2(1)で調製した架橋化コラーゲン膜を
用いること以外は、前記実施例1(2)と同様にして、
rhBMP−2を配合した移植体を得た。
【0029】薬理試験例:骨形成用移植の移植による
骨形成 (1)試験方法 12週令のWister系雄性ラット(平均体重400
g)の口蓋部の粘膜骨膜弁を、全身麻酔下〔ネンブター
ル(大日本製薬(株)製)注2.5g/V〕にて剥離
し、翻転して口蓋部を露出させた後、各群3匹のラット
に対して以下の処理を行った。 (a)右側の口蓋溝部に何も移植しない(コントロール
−1); (b)右側の口蓋溝部に実施例1(1)で調製したコラ
ーゲン膜(rhBMP−2不含)を移植(コントロール
−2); (c)左側の口蓋溝部に実施例1(2)(a)で調製し
た移植体(rhBMP−2を2.5μg配合)を移植; (d)左側の口蓋溝部に実施例1(2)(b)で調製し
た移植体(rhBMP−2を5.0μg配合)を移植。 なお、上記のコラーゲン膜としては、全て、平均重量が
0.13mgで、大きさが0.5mm×4.0mmのも
のを使用した。移植後、弁を戻して縫合した。3週間後
に屠殺し、10%中性(pH7.2)リン酸緩衝(0.
1M)ホルマリン液にて固定した後、脱灰処理(Pla
nk−Rychlo法)した。パラフィン包埋を行った
後、4μmに薄切し、ヘマトキシリン−エオジン重染色
を行ってから、光学顕微鏡にて観察した。
【0030】(2)結果 (a)何も移植しなかった部位(コントロール−1):
骨の変化はなく、動静脈及び神経にも変化はなかった。 (b)rhBMP−2を含まないコラーゲン膜のみを移
植した部位(コントロール−2): 骨の変化はなく、膜の周囲より著明な細胞浸潤が見ら
れ、それに伴うコラーゲン線維の吸収が担体の周囲に認
められたが、中心部にコラーゲン線維は残存していた。 (c)rhBMP−2(2.5μg)配合コラーゲン膜
を移植した部位:標本3例中の1例で、コラーゲン膜の
周囲に骨の形成が認められ、動静脈及び神経が外側に押
し出されるように転移していた。また、形成された骨の
一部は母床骨と連続していることが認められ、更に、残
存する担体のコラーゲン線維に連続するように骨形成が
生じていることも認められた。また、残存したコラーゲ
ン線維間への細胞の浸潤は少なく、多核巨細胞、リンパ
球、白血球などの炎症性細胞はあまり認められなかっ
た。 (d)rhBMP−2(5.0μg)配合コラーゲン膜
を移植した部位:標本全部(3例中3例)に骨の形成が
認められた。コラーゲン線維は残存しており、一部に前
記(c)と同様に線維に連続するように骨が形成してい
ることが認められた。前記(c)に比べ新生した骨の量
は多く、母床骨と連続し、膜を囲むような骨の形成が認
められた。炎症反応は前記(c)と同様に低かった。
【0031】これらの結果より、rhBMP−2を配合
したコラーゲン膜は起炎性が低く(炎症性の細胞の浸潤
が殆ど認められない)、生体親和性が非常に高いことが
分かる。また、口蓋部骨膜下において骨形成を誘導する
作用を有することが確認された。更に、rhBMP−2
の骨形成作用は濃度に依存して増加することも分かる。
【0032】
【発明の効果】本発明の移植体は、外傷、疾病又は先天
性の欠陥などによって引き起こされた各種の骨又は軟骨
の欠損を修復するために、当該分野に知られた方法で患
部に適用することができる。本発明移植体は生体内に移
植された際に、起炎性が低く生体適合性に優れている。
また、新生される骨と生体内の既存の骨との連続性も良
好であり、自然に近い状態で骨又は軟骨の修復が可能に
なる。更に、生体内で分解され、新生される骨と移植体
それ自体が置き換わるので、移植体の除去手術を行う必
要がない。本発明移植体は、各種の分野に適用すること
ができ、例えば、骨折などの外傷、腫瘍などの疾患に伴
う骨又は軟骨の欠損部位の修復、各種骨折の治癒促進、
人工関節、人工骨などの人工材料周囲への骨の再生、成
形外科分野における骨の補填、軟骨の再生、関節の再建
などの他、特に歯科領域での骨又は軟骨の修復に好適で
ある。例えば、歯周疾患、抜歯やその他の事故などによ
って破壊あるいは縮退した歯周組織、歯槽骨、セメント
質、歯根膜などの修復、吸収された顎堤の再建、歯科イ
ンプラント周囲での骨の再生、歯内療法における根管充
填剤としての使用、直接歯髄覆髄法への使用などを挙げ
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 37/02 ABJ 8314−4C

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コラーゲン担体が、ヒト由来の他のタン
    パク質を実質的に含有しないヒト骨誘導因子を担持する
    ことを特徴とする、骨形成用移植体。
  2. 【請求項2】 コラーゲン担体がアテロコラーゲンから
    なる請求項1記載の骨形成用移植体。
  3. 【請求項3】 コラーゲン担体が可溶化コラーゲンの再
    構成コラーゲンからなる請求項2に記載の骨形成用移植
    体。
  4. 【請求項4】 コラーゲン担体が可溶化コラーゲンの架
    橋化再構成線維状コラーゲンからなる請求項3記載の骨
    形成用移植体。
  5. 【請求項5】 生体内に移植された際に、生体内の細胞
    が入り込める空隙を有する請求項1〜4のいずれか一項
    に記載の骨形成用移植体。
  6. 【請求項6】 生体内の移植部位において骨形成を生じ
    させるのに十分な期間、一定形状を保持して前記のヒト
    骨誘導因子を担持する請求項1〜5のいずれか一項に記
    載の骨形成用移植体。
  7. 【請求項7】 ヒト由来の他のタンパク質を実質的に含
    有しないヒト骨誘導因子が、ヒト骨誘導因子をコードす
    る塩基配列を含む組換えDNAを含有する形質転換体に
    よって産生された組換えヒト骨誘導因子(rhBMP)
    である請求項1〜6のいずれか一項に記載の骨形成用移
    植体。
  8. 【請求項8】 前記の組換えヒト骨誘導因子(rhBM
    P)が、rhBMP−2、rhBMP−3、rhBMP
    −4、rhBMP−5、rhBMP−6、rhBMP−
    7、rhBMP−8及びこれら以外の組換えヒトBMP
    −2様タンパク質からなる群から選んだ1種又は2種以
    上のrhBMPである請求項7記載の骨形成用移植体。
  9. 【請求項9】 前記のrhBMPがrhBMP−2であ
    る請求項8記載の骨形成用移植体。
  10. 【請求項10】 歯科用である請求項1〜9のいずれか
    一項に記載の骨形成用移植体。
  11. 【請求項11】 歯槽骨又はセメント質の修復用である
    請求項10記載の骨形成用移植体。
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