JPH06293011A - スリップキャスト加圧成形装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピンホールやひけ巣等が生じることなく、大
型厚肉のセラミック成形体を短時間で製造するスリップ
キャスト加圧成形装置を提供する。 【構成】 成形型１と、スラリータンク２と、スラリー
タンク２から成形型１のキャビティ11底部まで配設され
た第一のスラリー供給用管21と、スラリータンクから２
成形型１の上部まで配設された第二のスラリー供給用管
22と、コンプレッサー３と、コンプレッサー３から成形
型１の上部まで配設された加圧エア供給用管31とを有す
るスリップキャスト加圧成形装置であって、重力により
スラリー５をキャビティ11底部からキャビティ11内に注
入するとともに、成形型１の上部から吐出するエアによ
ってスラリー５を加圧し、スラリー５が所定量に不足し
た場合にも第二のスラリー供給用管22からスラリー５を
補給することのできるスリップキャスト加圧成形装置で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はスリップキャスト加圧成
形装置に関し、特に小型から大型厚肉のセラミック成形
体を、ひけ巣等を生じることなく製造するスリップキャ
スト加圧成形装置に関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】セラミ
ック成形体を製造する方法の代表的なものとして、スリ
ップキャスト成形法がある。このスリップキャスト成形
法は、通常石膏等の吸水性を有する材料からなる成形型
を用い、この成形型のキャビティ内に注入したスラリー
（セラミック粉末の懸濁液、スリップともいう）から水
分を吸収してスラリーを固化することにより行われてい
る。得られた成形体は脱脂処理の後、焼成して最終セラ
ミック部材とされる。この方法は、一般的に複雑形状の
成形体を製造するのに適しているが、厚肉の成形体を製
造するには時間がかかるため適していないという欠点が
ある。

【０００３】そこで、2.0 〜5.0kg/cm ²程度の圧力をス
ラリーにかけながらスリップキャスト成形を行う方法が
行われている。このスリップキャスト加圧成形法によれ
ば、強制的にスラリーを脱水することができ、比較的厚
肉の成形体を製造することができる。

【０００４】従来のスリップキャスト加圧成形装置の代
表的な一例を図２に示す。この装置は、成形型１と、ス
ラリータンク２と、スラリータンク２から成形型１のキ
ャビティ11底部まで配設されたスラリー供給用管21と、
コンプレッサー３と、コンプレッサー３からスラリータ
ンク２の上部まで配設された加圧エア供給用管31とを有
する。成形を行うには、コンプレッサー３によって加圧
したエアをスラリータンク２内に吐出してスラリータン
ク２内の圧力を高め、その圧力によりスラリー５をスラ
リー供給用管21を通して成形型１のキャビティ11内に注
入する。

【０００５】しかしながら、上記のようにスラリー５を
加圧エアにより押し出してキャビティ11内に注入する
と、スラリー５内にエアが巻き込まれる可能性が高い。
スラリー５がエアを巻き込んだまま固化すると、得られ
る成形体にピンホール等が生じるという問題が起こる。
また、スラリー５はキャビティ11に達する前に固化する
ことがあるが、スラリー５の固まりは上記のように圧力
をかけられるため、そのままキャビティ11内に入り、成
形体に混入してしまう。さらに、スラリー５がスラリー
供給用管21内で詰まった場合、キャビティ11内にスラリ
ー５の供給を十分に行うことができなくなり、得られる
成形体内部にひけ巣ができるという問題も生じる。

【０００６】したがって、本発明の目的は、ピンホール
やひけ巣等が生じることなく、大型厚肉のセラミック成
形体を短時間で製造するスリップキャスト加圧成形装置
を提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者らは、成形型のキャビティ底部にスラ
リー注入口を、成形型の上部にエア吹出し口を有するス
リップキャスト加圧成形装置を用い、スラリーを重力に
よりキャビティ内に注入した後上部からエアで加圧すれ
ば、圧力を確実に調節できるとともに、スラリー中にエ
アが巻き込まれるのを防止できることを発見した。ま
た、第二のスラリー注入口を成形型の上部に設けること
により、加圧後にもスラリーを補充することができ、そ
れによって成形体のひけ巣が防止できることを発見し、
本発明を完成した。

【０００８】すなわち、本発明のスリップキャスト加圧
成形装置は、成形型と、スラリータンクと、前記スラリ
ータンクから前記成形型のキャビティ底部まで配設され
たスラリー供給用管と、コンプレッサーと、前記コンプ
レッサーから前記成形型の上部まで配設された加圧エア
供給用管とを有するスリップキャスト加圧成形装置であ
って、重力によりスラリーを前記キャビティ底部から前
記キャビティ内に注入した後、前記成形型の上部から吐
出するエアによって前記スラリーを加圧することを特徴
とする。

【０００９】

【実施例及び作用】以下、本発明を添付図面を参照して
詳細に説明する。図１は本発明の好ましい一実施例によ
るスリップキャスト加圧成形装置を示す概略図である。

【００１０】本発明のスリップキャスト加圧成形装置
は、成形型１と、成形型１の上部に設置された窓部材12
と、スラリータンク２と、スラリータンク２から成形型
１のキャビティ11の底部まで設置された第一のスラリー
供給用管21と、スラリータンク２から窓部材12まで配設
された第二のスラリー供給用管22と、コンプレッサー３
と、コンプレッサー３から窓部材12まで配設された加圧
エア供給用管31とを有する。また、第一のスラリー供給
用管21及び第二のスラリー供給用管22は各々バルブ41、
42を有し、加圧エア供給用管31は減圧弁43を有する。

【００１１】窓部材12の内部は空洞になっており、その
空洞はキャビティ11に連通している。窓部材12まで配設
された第二のスラリー供給用管22及び加圧エア供給用管
31はキャビティ11に通じており、第二のスラリー供給用
管22の端部はスラリー注入口となり、加圧エア供給用管
31の端部はエア吹出し口となっている。窓部材12の素材
や形状は特に制限はなく、アルミニウム等からなる箱形
のものに透明なプラスチック等からなる窓を設けたもの
を使用すればよく、キャビティ11内の様子を観察できる
ように設置すればよい。

【００１２】本発明のスリップキャスト加圧成形装置で
は、重力によりスラリー５をキャビティ11内に注入する
ため、スラリータンク２の位置は成形型１よりも高い位
置に設置する必要がある。その高さは、キャビティ11の
体積や形状、あるいはスラリー５の粘度等を考慮して設
定する。

【００１３】本実施例によるスリップキャスト加圧成形
装置は第二のスラリー供給用管22を有する。このよう
に、第二のスラリー供給用管22を設けることにより、第
一のスラリー供給用管21の途中や、スラリー注入口付近
でスラリー５が固化して目詰まりを起こした場合でも、
スラリー５を供給することができるため、ひけ巣のない
成形体を得ることができる。また、第一のスラリー供給
用管21によるスラリー５の供給速度が低下した場合で
も、第二のスラリー供給用管22からスラリー５を補充す
れば、短時間でキャビティ11をスラリー５で満たすこと
ができる。

【００１４】なお、第二のスラリー供給用管22は基本的
にスラリー５の補充に使用するが、スラリー供給の前半
に第一のスラリー供給用管21を、後半に第二のスラリー
供給用管22を使用すれば、第一のスラリー供給用管21か
ら供給するスラリー５の量を減らすことができるため、
スラリータンク２を設置する位置を低くすることがで
き、装置全体を小型化及び安定化することができる。そ
の場合、キャビティ11の形状やスラリー５の粘度等によ
って多少変化はあるが、キャビティ11の体積が1.5 リッ
トル〜2.5 リットルのとき、第一のスラリー供給用管21
から供給するスラリー５の体積と第二のスラリー供給用
管22から供給するスラリー５の体積との比率は約２：１
〜４：１程度とすればよい。

【００１５】以下、上記装置を用いてスリップキャスト
加圧成形を行う手順を説明する。 (1) 最初に、スラリー５をスラリータンク２に充填す
る。スラリー５としては特に制限はなく、窒化物系、酸
化物系、硼化物系、炭化物系等のセラミック原料に、必
要に応じてバインダー成分、焼結助剤、分散剤等を添加
し、これらの各成分を水を媒体として均一に混合したも
のを使用すればよい。

【００１６】(2) バルブ41及び減圧弁43を開け、スラリ
ー５をキャビティ11内に注入する。このとき、スラリー
５は加圧エアにより押圧されることなく、重力によりキ
ャビティ11内に注入されるため、エアの巻き込み等は生
じない。

【００１７】(3) 窓からキャビティ11内を覗き、スラリ
ー５が所定の位置まで供給されたことを確認したら、バ
ルブ41及び減圧弁43を閉じる。なお、スラリー５が所定
の位置に達する前に供給速度が非常に遅くなったり、供
給が進行しなくなった場合は、バルブ42を開け、第二の
スラリー供給用管22からスラリー５を補充すればよい。

【００１８】(4) 次に、コンプレッサー３を作動させ、
加圧エア供給用管31を通して加圧エアをキャビティ11内
に入れ、スラリー５を加圧する。そのときの圧力はスラ
リー５の粘度やキャビティ11の形状等にもよるが、10kg
/cm ² 以下とすればよい。本発明のスリップキャスト加
圧成形装置では、加圧エア供給用管31とスラリー供給用
管21、22とが個別に設けてあるため、圧力を確実に調節
できる。

【００１９】(5) スラリーがある程度着肉固化したのを
確認したら、コンプレッサー３を停止するとともに減圧
弁43を開く。なお、加圧成形中にスラリー５が所定の量
よりも目減りした場合には、キャビティ11内の圧力を一
旦大気圧に戻した後、第二のスラリー供給用管22からス
ラリー５を補充すればよい。

【００２０】(6) 次に、離型して成形体を取り出し、乾
燥させる。得られた成形体に脱脂処理を施し、所定の寸
法精度に切削加工した後焼結して最終のセラミック部材
を得る。

【００２１】本発明を以下の具体的実施例により、さら
に詳細に説明する。実施例１ 平均粒径５〜10μｍのＹ₂ Ｏ₃ 2.5 重量％と、平均粒径
0.3 〜0.5 μｍのAl₂Ｏ₃ 粉末1.0 重量％と、残部平均
粒径0.4 〜0.5 μｍのα−Ｓｉ₃ Ｎ₄ 粉末とからなるセ
ラミック混合物100 重量部に、水42重量部を加え、ボー
ルミルにより40時間混合して、スラリー５を得た。

【００２２】図１に示すスリップキャスト加圧成形装置
を使用し、スラリー５をスラリー供給用管21を通して成
形型１（直径60mm、高さ60mm）に注入した。スラリー５
が所定の位置まで供給された後、2.0 kg/cm ² の圧力で
240 分間加圧成形を行い、離型した。

【００２３】このようにして得られた成形体を切断し、
内部を観察したところ、ひけ巣等は全く認められなかっ
た。

【００２４】

【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のスリップキ
ャスト加圧成形装置は、成形型にスラリー注入口とエア
吹出し口とを別個に有するため、圧力を確実に調節でき
る。また、スラリーを重力によりキャビティ内にゆっく
り注入するため、エアの巻き込みを防止することができ
る。

【００２５】このような本発明のスリップキャスト加圧
成形装置を用いることにより、大型厚肉で複雑形状の成
形体をひけ巣やピンホール等が生じることなく、均質に
短時間で製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のスリップキャスト加圧成形装置を示す
概略図である。

【図２】従来のスリップキャスト加圧成形装置を示す概
略図である。

【符号の説明】

１・・・成形型 11・・・キャビティ 12・・・窓部材 ２・・・スラリータンク 21・・・第一のスラリー供給用管 22・・・第二のスラリー供給用管 ３・・・コンプレッサー 31・・・加圧エア供給用管 41、42・・・バルブ 43・・・減圧弁

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 成形型と、スラリータンクと、前記スラ
   リータンクから前記成形型のキャビティ底部まで配設さ
   れたスラリー供給用管と、コンプレッサーと、前記コン
   プレッサーから前記成形型の上部まで配設された加圧エ
   ア供給用管とを有するスリップキャスト加圧成形装置で
   あって、重力によりスラリーを前記キャビティ底部から
   前記キャビティ内に注入した後、前記成形型の上部から
   吐出するエアによって前記スラリーを加圧することを特
   徴とするスリップキャスト加圧成形装置。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のスリップキャスト加圧
   成形装置において、第二のスラリー供給用管が前記スラ
   リータンクから前記成形型の上部まで配設されており、
   前記成形型の上部からスラリーを補充することを特徴と
   するスリップキャスト加圧成形装置。
3. 【請求項３】 請求項１又は２のいずれかに記載のスリ
   ップキャスト加圧成形装置において、前記成形型の上部
   に窓部が設置されており、前記窓部から前記キャビティ
   内の様子を見ることができることを特徴とするスリップ
   キャスト加圧成形装置。