JPH06288179A - 拡大シールド装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】地盤性状に拘らずこれを緩ませることなく円滑
に推進出来、任意の断面形状を選択出来る開放型の拡大
シールド装置を提供する。 【構成】その前面に、除去すべき既設の覆工３ａの径Ｄ
２より大なる径Ｄ１をなす開放部５ｓを形成した外殻５
の内周面に沿って、複数のパイプ１３を連結させてなる
パイプルーフ１２を設け、隣接するパイプ１３、１３間
のセクション１５を介して地盤改良用穿孔注入手段であ
る地盤改良装置１６を装填する。シールド推進に先立ち
それより前方側の地盤２に、ボーリングマシン１７を介
してボアホール２ｓを穿設し、薬液供給装置２３から地
盤改良用の薬液２２を注入し、除去すべき覆工３ａの周
囲の地盤２を改良強化する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、老朽化した既設管渠を
新設管渠に拡大敷設替えするに用いるに好適な、拡大シ
ールド装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、老朽化したり、或いは機能不足に
陥った既設管渠を改修、即ちこれを新設管渠に更新する
際には、地上から土留め用杭を用いて撤去、新設作業を
行う開削工法や、或いは既設管渠より一回り大きな断面
のシールド機をその周囲を取り囲む形で推進させて、該
シールド機内で既設管渠の解体撤去作業と、既設のもの
よりサイズアップした新設セグメントの建て込み作業を
行うシールド工法等により、拡大敷設替えする方法があ
る。このうち、開削工法は公知のように道路事情、周辺
環境を悪化させるために、こういった地上環境に影響を
与えたくない地域においてはシールド工法の採用が多く
望まれている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、シールド工
法には掘削すべき地盤の性状に応じて、密閉型、開放型
等の各種の拡大シールド装置が用いられるが、密閉型シ
ールドは、他の埋設物の離隔及び土被りが小さい場合に
は切羽の圧力管理が難しく、またカッタビットの切削効
率が全体作業の能率を左右するために、極めて緻密な施
工計画及び管理が必要とされる、という施工上の問題点
を抱えている。しかも回転する掘削機構を、既設管渠周
囲の地盤を環状に掘り抜く形で設けた上で、該既設管渠
周囲の環状部分にここを密閉する形でシールド隔壁を設
けなければならないために、その構成及びシールド断面
形状は、既設管渠の断面形状に制約を受け易い。従っ
て、密閉型シールドにおいて、既設管渠の断面形状と対
応しないような任意のシールド断面形状を選択しようと
すると、その装置構成が極めて複雑になり、汎用性に欠
けるという難点がある。一方、開放型シールドは断面形
状の選択の幅は拡がるものの、例えば既設管渠が開削工
法で敷設されてその周りに埋め戻し土が用いられていた
り或いは地下水が多い場合には地盤が軟弱になっている
のでこれを緩ませて地盤沈下を引き起こす危険性が有
り、これに反して、既設管渠周りに薬液注入が施されて
いる場合には地盤が硬化してシールドスキンプレートの
貫入抵抗があまりにも大になってしまうために、このよ
うな開放型シールドを適用可能な地盤条件は極めて限定
されているという不都合がある。従って土被りの大小、
地盤性状に制約を受けることなく、既設管渠を任意の断
面形状の新設管渠に拡大敷設替えすることが出来るよう
な適当なるシールド装置があれば非常に都合が良い。そ
こで本発明は、上記事情に鑑み、地盤性状に拘らずこれ
を緩ませることなくシールド装置を円滑に推進出来るよ
うにして、任意の新設管渠断面形状を選定し得る、汎用
性の高い開放型の拡大シールド装置を提供するものであ
る。

【０００４】

【課題を解決するための手段】即ち本発明は、地盤
（２）中を推進自在な殻体（５）を有し、前記殻体
（５）の推進方向前面に、除去すべき既設管（３ａ）の
径Ｄ２より大なる径Ｄ１の開放部（５ｓ）を形成し、前
記殻体（５）の内周に沿って穿孔注入手段（１６）を複
数設け、前記穿孔注入手段（１６）は、前記殻体（５）
の前方の地盤（２）に地盤改良剤注入孔（２ｓ）を穿設
し得る地盤穿孔手段（１４Ａ、１４Ｂ）、（１４Ｃ、１
４Ｄ）と、該地盤穿孔手段（１４Ａ、１４Ｂ）、（１４
Ｃ、１４Ｄ）により穿孔された地盤改良剤注入孔（２
ｓ）を介して地盤改良剤（２２）を地盤（２）に注入し
得る地盤改良剤注入手段（２３）からなるようにして、
構成される。なお、（ ）内の番号等は、図面における
対応する要素を示す、便宜的なものであり、従って、本
記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。以
下の作用の欄についても同様である。

【０００５】

【作用】上記した構成により、本発明は、殻体（５）の
推進に際し地盤改良剤（２２）が、該殻体（５）より前
方側における既設管（３ａ）周囲の地盤（２）を改良強
化し、該改良強化された地盤（２）中に殻体（５）が、
開放部（５ｓ）を介して該殻体（５）内に除去すべき既
設管（３ａ）を取り込み配置させた形で、推進するよう
に作用する。

【０００６】

【実施例】図１は本発明による拡大シールド装置の一実
施例を用いた既設管渠の更新作業を示す側面図、図２は
図１に示す拡大シールド装置のII、II矢視図、図３は図
１に示す拡大シールド装置の前端部における地盤改良装
置差し込み状態を示す斜視図、図４は図１に示す拡大シ
ールド装置による地盤改良用の薬液注入作業を示す斜視
図、図５は図２に示すシールド装置の別の例を示す図、
図６は図２に示すシールド装置のさらに別の例を示す
図、図７は図１に示すシールド装置における地盤改良装
置の先端部を示す断側面図、図８は図７に示す地盤改良
装置の先端部の別の例を示す断側面図である。

【０００７】拡大シールド装置であるシールド装置１
は、図１に示すように、所定の外径Ｌ１をなす形で全体
形状円筒形に形成されたスキンプレート、即ち外殻５を
有しており、外殻５は、地盤２の地表面２ａから所定の
深さＰ１をなしその伸延方向を図１矢印Ａ、Ｂ方向に向
けた形で埋設供用されていて除去すべき既設管である下
水本管等の横断面形状円形をなす既設管路３のうち、既
に撤去更新された部分を除く図１矢印Ｂ方向端部におい
て、該既設管路３を形成している鉄筋コンクリート等か
らなり外径Ｄ２をなす円筒状の覆工３ａを包囲する形で
配設されている。外殻５の後側である図１矢印Ｂ方向側
には、新設管路３を拡大敷設替えした形の横断面形状円
形をなす新設管路３０が、例えば鉄筋コンクリート、或
いはスチール等からなるセグメント３１を、該セグメン
ト３１を構成している各々のセグメントピースを１リン
グの幅Ｌ２をなす形で円筒状にジョイントして、これを
地盤２中に埋設させることにより、既に敷設更新されて
おり、セグメント３１の前端部３１ａは、シールド装置
１の外殻５内に、１乃至２リング分（図１においては
１．５リング分）入り込み配置した形になっている。

【０００８】外殻５の内部には、前記覆工３ａを破砕す
るためのブレーカー６が、その斫り刃６ａ部分を既設管
路３の全周方向である矢印Ｃ、Ｄ方向に揺動させ得る形
で、該既設管路３の後端即ち矢印Ｂ端部における覆工３
ａ上にここを走行可能な形で配置されており、ブレーカ
ー６の後側である矢印Ｂ方向側には、バックホー７が、
そのショベル７ａ部分を矢印Ｅ、Ｆ方向に揺動駆動自在
で且つ矢印Ｇ、Ｈ方向に旋回自在な形で外殻５の内周部
分に仮置き固定されている。バックホー７の後側である
矢印Ｂ方向側には、ベルトコンベヤ９が、ブレーカー６
により破砕される覆工３ａのガラ及びその周囲の地盤２
の掘削ズリを、新設管路３０を介してその坑口側である
矢印Ｂ方向側に搬送し得る形で設けられており、ベルト
コンベヤ９の前部である矢印Ａ側端部近傍におけるその
図１上側には、新設管路３０のセグメント３１を建て込
み形成するためのエレクタ１０が、外殻５の内周に吊下
固定された形で設けられている。また、外殻５の後部に
は、シールド装置１をその推進方向である矢印Ａ方向側
に向けて地盤２中に推進させ得る推進ジャッキ１１が、
該外殻５の内周に沿ってここに複数装着固定されてお
り、各推進ジャッキ１１にはラム１１ａが、セグメント
３１の前端部３１ａに推進反力を求めて、矢印Ａ、Ｂ方
向に突出後退駆動自在な形で設けられている。

【０００９】ところで、シールド装置１には、図２に示
すように、その外殻５の前部である矢印Ａ方向側部の内
周全域に亙ってパイプルーフ１２が、該外殻５の推進方
向前面端部に前記覆工３ａの外径Ｄ２より大なる径Ｄ１
の開放部５ｓを形成する形で設けられており、パイプル
ーフ１２は、外殻５の内周に溶接等により固定された各
々が鋼管等からなり列状に並ぶ形のパイプ１３を複数有
している。各パイプ１３には、図３に示すように、その
本体部分の図３左右に、それぞれが断面Ｃ字型に形成さ
れた雌ジョイント１３ａ（図３右側）と、該パイプ１３
の図２周方向に隣接するパイプ１３の雌ジョイント１３
ａの内側に嵌合する形の雄ジョイント１３ｂ（図３左
側）が図３左右一対に設けられており、パイプルーフ１
２には、隣接するパイプ１３、１３の雌ジョイント１３
ａと雄ジョイント１３ｂが相互に嵌合する部分にセクシ
ョン１５が、シールド内周方向に沿ってパイプ３の本数
だけ設けられている。各セクション１５には、図３に示
すように、地盤２に地盤改良用の薬液２２（図４に図
示）を注入してこれを安定化するための、穿孔注入手段
である地盤改良装置１６が、外殻５の内周に沿って複数
並ぶ形で、パイプルーフ１２のセクション１５を介して
該外殻５に対して装填退去自在な形で設けられている。
従って、パイプルーフ１２は、複数のパイプ１３が雌ジ
ョイント１３ａと雄ジョイント１３ｂを介して連結され
た形で列状をなすことにより、外殻５の構造強度をその
内周側から補強支持した形になっていると共に、パイプ
ルーフ１２はそのセクション１５部分を介して、地盤改
良装置１６の地盤穿孔手段を構成しているボーリングロ
ッド１４Ａとシース１４Ｂを装填支持するための空間１
５ｓを形成するための手段になっている。

【００１０】即ち地盤改良装置１６は、例えば図７に示
すように、図７左端部に示すその先端部にビット刃１４
ａが固設されたボーリングロッド１４Ａと、該ロッド１
４Ａの外周を包囲する形のシース１４Ｂを有しており、
ボーリングロッド１４Ａとシース１４Ｂは、両者１４
Ａ、１４Ｂ間に薬液２２の注入路１６ｓが形成された形
で、各セクション１５において雄ジョイント１３ｂ内の
空間部分が配置する形で形成された空間１５ｓに、矢印
Ａ、Ｂ方向に突出後退移動自在な形で装填配設されてい
る。ボーリングロッド１４Ａとシース１４Ｂには、外殻
５内に仮置き固定されたボーリングマシン１７が、これ
等１４Ａ、１４Ｂが構成している地盤改良装置１６をそ
の前方側である図１矢印Ａ方向に向けて地盤２中に貫入
させて、これによりビット刃１４ａの穿孔径に対応した
ボアホール２ｓを穿孔し得る形で接続されており、従っ
て、ボーリングロッド１４Ａとシース１４Ｂは、これに
接続されるボーリングマシン１７を介して、シールド装
置１の外殻５より前方側（図１矢印Ａ方）の地盤２に薬
液２２を注入する為の地盤改良剤注入孔であるボアホー
ル２ｓを穿設するための穿孔注入手段を構成している。
ボーリングロッド１４Ａとシース１４Ｂが形成している
地盤改良装置１６の注入路１６ｓの基端側（図７右端
側）には、薬液注入用のフィーダ、ポンプ等からなる薬
液供給装置２３が、該注入路１６ｓを介して地盤改良装
置１６を構成しているロッド１４Ａの前端開口部１６ａ
から薬液２２を吐出させ得る形で接続されており、従っ
て、薬液供給装置２３と注入路１６ｓは、ボーリングロ
ッド１４Ａ及びシース１４Ｂにより穿孔されるボアホー
ル２ｓを介して薬液２２を地盤２に注入し得る形で、地
盤改良装置１６における地盤改良剤注入手段を構成して
いる。

【００１１】また、シールド装置１のパイプルーフ１２
には、図１に示すように、その各々が地盤２を所定の穿
孔径で穿孔自在なオーガー１９が、そのカッタビット１
９ａ部分をパイプ１３内の前端部である矢印Ａ側端部に
配置させた形（即ち外殻５の前端部に並ぶ形）で、シー
ルド内周方向に沿って所定台数だけ（実施例においては
パイプ１３の本数だけ）設けられており、スクリュロッ
ド１９ｂの後端側である矢印Ｂ端側は、オーガー１９の
駆動手段であり外殻５の内周に固定装着されたオーガー
用モータ２０に接続されている。なお、パイプルーフ１
２の放射方向内側には、図１に示すように、前記既設管
路３の覆工３ａとの間に未だ掘削されていない地盤２
が、前記外殻５の開放部５ｓを塞ぐ形で残留配置されて
おり、従って、シールド装置１により既設管路３を更新
する形で構築形成される新設管路３０の切羽２ｂは、該
既設管路３の後端部である矢印Ｂ方向側端部において前
記覆工３ａの周囲とパイプルーフ１２の間に輪状に形成
配置されている。そして、シールド装置１においては、
オーガー１９のカッタビット１９ａ部分が切羽２ｂより
先行する形で、パイプルーフ１２の略前半分が切羽２ｂ
より矢印Ａ方の地盤２中に、パイプ１３の径Ｌ３に対応
する幅の輪溝状をなす形で貫入配置されており、カッタ
ビット１９ａのさらに先方側である矢印Ａ方向側の地盤
２中には、地盤改良装置１６の地盤穿孔手段を構成して
いるボーリングロッド１４Ａとシース１４Ｂの前部が先
行配置されている。

【００１２】シールド装置１は、以上のような構成を有
しているので、該シールド装置１を用いて既設管路３の
改修を行うには、該既設管路３の通水切替、ヘドロ処
理、管内洗浄、枝管撤去等と、該管路３の上方における
地表面２ａ部分の陥没対策として路面仮覆工を行う等の
事前処理を施して後、適宜な発進立坑からシールド装置
１を発進させる。そして、図１又は図２に示すように、
その外殻５を未だ解体撤去されていない既設管路３の後
端部からその後側にかけて、開放部５ｓを介して覆工３
ａの外方を包囲する形にしてシールド装置１を配置さ
せ、外殻５内部におけるその前半分である矢印Ａ方向側
において覆工３ａの解体撤去作業を行い、一方外殻５内
部の後半分では、穿設管路３０を形成するためのセグメ
ント３１を建て込む作業を行いながら、該装置１を図１
矢印Ａ方向側に推進させて、既設管路３をこれより一回
り大きな新設管路３０に更新していく。この際の、ブレ
ーカー６、バックホー７、ベルトコンベヤ９、エレクタ
１０、推進ジャッキ１１、ボーリングマシン１７、オー
ガー１９等の駆動は、立体ＴＶ画像を介してリモートコ
ントロールする形で坑外から行う。

【００１３】シールド推進に際しては、まず既に建て込
み定着された新設管路３０のセグメント３１の前端部３
１ａに推進ジャッキ１１のラム１１ａを当接させた状態
にしておいて、パイプルーフ１２の各セクション１５に
形成された空間１５ｓを介して、ここに地盤改良装置１
６の地盤穿孔手段を構成しているボーリングビット１４
Ａ、シース１４Ｂ（図７に図示）を装填し、図４に示す
ように、これが所定の長さになるまで（即ちその前端開
口部１６ａが外殻５の前端である矢印Ａ側端部より距離
Ｌ４だけ先行する形になるよう）継ぎ足しつつ、ボーリ
ングマシン１７を介して地盤２中の矢印Ａ方向に向けて
貫入させて、これによりシールド装置１の外殻５の前方
側に、地盤改良剤を注入するための空間であるボアホー
ル２ｓを形成する。この際、地盤改良装置１６は、これ
を構成しているボーリングロッド１４Ａ及びシース１４
Ｂが雄ジョイント１３ｂの内空部分により形成される空
間１５ｓに嵌装され得る程度の細径をなすものであり、
該地盤改良装置１６を単体づつ地盤２中に貫入させれば
良いために、ボーリングマシン１７の回転推進力をもっ
て容易にこれを行うことが出来る。そして、ボーリング
ロッド１４Ａ及びシース１４Ｂが地盤２中の所定の位置
に貫入配置されたところで、図４に示すように、該地盤
２を改良安定化させるに適した公知の地盤改良剤、即ち
薬液２２を、薬液供給装置２３から地盤改良装置１６の
注入路１６ｓを介して圧送し、該薬液２２を各前端開口
部１６ａから所定の圧力で吐出させつつ、ボーリングロ
ッド１４Ａ及びシース１４Ｂを矢印Ｂ方向側に引き戻し
て来る動作を繰返す。すると、これにより、シールド装
置１の外殻５の前端部である矢印Ａ側端部が配置してい
るより距離Ｌ４だけ先行する部分の地盤２は、既設管路
３の覆工３ａの放射方向外側を包囲する部分の地盤２が
地下水も含めて薬液２２により固められて所定の地盤強
度をなす形で、その改良安定化が図られる。従って、シ
ールド装置１の外殻５は常に、その推進に先立ち先行距
離Ｌ４分だけ改良安定化が図られて、該外殻５内への土
砂流入が防止された形の地盤２の後側を推進していく形
になる。

【００１４】こうして薬液２２の注入完了により、外殻
５より先行する地盤２の改良安定化が図られたところ
で、次に、推進ジャッキ１１のラム１１ａを介して既に
建て込み覆工されて地盤２に定着支持されている形の新
設のセグメント３１の前端部３１ａに推進反力を求める
形で、シールド装置１の外殻５を矢印Ａ方向に向けて所
定距離、即ち例えば新設されるセグメント３１のリング
幅Ｌ２と対応する形の推進ジャッキ１１のストローク分
だけ推進させる。これを行う際には同時に、オーガー用
モーター２０を駆動させて、各々のオーガー１９をパイ
プ１３内で回転させる。すると、既に薬液２２により改
良安定化が図られて所定の強度に到達している地盤２に
おいて、パイプルーフ１２が装着された外殻５が推進す
べき部分の地盤２のみが、所定の穿孔径Ｌ３をなすカッ
タビット１９ａによりもまれた形で、即ち幅Ｌ３をなす
輪溝状に繰り抜かれる形で限定的に緩められて、これに
推進ジャッキ１１の推進力が加わることにより、パイプ
ルーフ１２を含めた外殻５が地盤２中に容易に貫入推進
する。従って、シールド装置１は、その外殻５がパイプ
ルーフ１２分だけ貫入抵抗が増すにも拘らず、オーガー
１９を介して円滑に推進することが出来ると共に、該パ
イプルーフ１２により外殻５が補強された形で装置全体
の構造強度が確保されているところから、土被り即ち既
設管路３の深さＰ１が小さい場合にも外殻５が土圧によ
り変形することなく、安全に推進することが出来る。な
お、パイプルーフ１２を構成している各パイプ１３の矢
印Ｂ方向側端に示す後端１３ｃは、何等の処理もなされ
ていない開口端であるところから、オーガー１９を介し
て穿孔掘削された地盤２の土砂は、図１に示すように、
該パイプ後端１３ｃを介して外殻５内の切羽２ｂ前面に
排出される。従って、オーガー１９穿孔により生じる土
砂は、以下に述べる掘削作業により形成される掘削ズリ
を処理すると同時に、バックホー７、ベルトコンベヤ９
を介して効率的に排出処理される。

【００１５】シールド推進作業を行ったところで次に、
バックホー７を介してそのショベル７ａ部分を矢印Ｅ、
Ｆ方向に揺動駆動させて、覆工３ａ外周囲においてシー
ルド装置１のパイプルーフ１２との間に環状に配置して
いる地盤２を掘削除去して、既設管路３を新設管路３０
の横断面径に対応させた形で拡大する。これと共に、ブ
レーカー６を介して、その斫り刃６ａを覆工３ａに当接
させて図１矢印Ｃ、Ｄ方向に揺動させ、該覆工３ａを構
成している鉄筋コンクリート等を適宜な塊状に破砕する
形で、既設管路３の解体作業を行う。そして、ブレーカ
ー６により塊状に粉砕されてガラとなった覆工３ａと、
拡大掘削された地盤２のズリをショベル７ａに掻き集め
させて、該ショベル７ａを矢印Ｇ、Ｈ方向に旋回させる
ことにより、覆工３ａの鉄筋を含むガラと地盤２のズリ
をベルトコンベヤ９に、これらを混ぜたままの状態で搭
載する。これ等の解体済み覆工３ａと地盤２の掘削ズリ
は、既に更新敷設された新設管路３０を介して、該新設
管路３０の後方側であるシールド装置１の発進坑口側、
即ち図１矢印Ｂ方向側に搬送し、適宜坑外へ排出処理す
る。こうして既設の覆工３ａの解体撤去及び地盤２の拡
大掘削を行う際、これが行われるに対応した部分の地盤
２は、既に薬液２２を介してその改良安定化が図られて
固められていることにより、切羽２ａ部分の安定もまた
確保されており、該切羽２ａが崩れて土砂等が外殻５内
に流入する危険性なく円滑且つ安全に解体及び掘削作業
が行われ得る。また、ブレーカー６、バックホー７等の
機械設備を駆動させる際には、これにより避け難い形で
ある程度の衝撃、振動が生じるが、当該解体及び掘削作
業を行っているシールド装置１は既に上述したように一
旦薬液２２を介して地盤改良を施されて後、外殻５が貫
入する部分のみが限定的に輪溝状に緩められた形になっ
ている地盤２中に配置していることにより、これらの機
械設備６、７の駆動により生じる衝撃、振動によって
も、シールド装置１の上側の地盤２を緩めてここに地盤
沈下を生じさせるような危険性は極力回避される。

【００１６】こうして、所定の掘進ピッチ、例えばセグ
メント３１のリング幅Ｌ２と対応する距離だけ覆工３ａ
の解体撤去と地盤２の掘削を行うと、該掘進ピッチに対
応した分だけ新設管路３０の切羽２ｂが矢印Ａ方向に前
進する。そこで次に、推進ジャッキ１１のラム１１ａを
矢印Ａ方向に後退駆動させ、エレクタ１０を介してセグ
メントピースを円筒状にジョイントする形でセグメント
３１を建て込み、即ち新設管路３０の覆工部材であるセ
グメント３１を１リング分延長構築し、これを地盤２に
定着支持させる。するとこれにより、既設管路３は所定
距離、例えばセグメント３１のリング幅Ｌ２と対応する
距離だけが新設管路３０に置き換えられる形で、拡大更
新される。そこで、再び前述したように、薬液２２を用
いて地盤２を改良安定化してからシールド装置１を推進
させ、既設の覆工３ａの周りの地盤２を除去する形の拡
大掘削と該覆工３ａの解体撤去作業を行い、セグメント
３１を建て込み延長させる一連の作業を、所定の施工サ
イクルで繰り返していく。するとこれにより、老朽化し
た既設管渠である既設管路３を新設管渠である新設管路
３１に拡大敷設替えするための一連の作業を、地表面２
ａに何等影響を与えることなく、シールド装置１の外殻
５内で行うことが、効率的且つ安全確実に行われる。

【００１７】ところで、外殻５内に設けられるパイプル
ーフ１２は、図５に示すように、既設の覆工３ａの外周
に限りなく接近し得る形で（開放部５ｓが限りなく小さ
くなるように）設けられていても差し支えなく、図５に
示すシールド装置４１においては、パイプルーフ１２を
構成している各パイプ１３に、その径Ｌ５が覆工３ａの
外周と外殻５の内周の間に形成される間隙部分の幅と対
応する形でこれより若干小さくなるように形成されたも
のを用いて構成されている。各パイプ１３には前述した
実施例と同様にオーガー１９が配設されており、従っ
て、シールド装置４１は、その推進時にオーガー１９を
介して、覆工３ａの外周と外殻５の内周の間に配置して
いる地盤２の略殆どを掘削除去してしまうことが出来
る。従って、シールド推進に引き続き行われるべきバッ
クホー７等を介しての拡大掘削時には、単にこれ等の覆
工３ａ、外殻５、及び各パイプ１３間の間隙を介してこ
こに残留している地盤２を除去するだけで良く、掘削作
業の省力化を図ることが出来る。

【００１８】また、上述した実施例においては、パイプ
ルーフ１２には、パイプ１３の内側空間を利用する形で
オーガー１９を設けた例を述べたが、シールド装置１を
推進させるには必ずしもオーガー１９を用いなくとも構
わず、推進ジャッキ１１の推進力のみによってパイプル
ーフ１２ごと外殻５を推進させても良い。この際、例え
ば図６に示すシールド装置４２のように、そのパイプル
ーフ４３には、パイプを縦方向に半割した形で樋状に形
成された半パイプ４４を用いてこれが構成されていても
良い。すると、図６に示すシールド装置４２は、オーガ
ー１９の穿孔力を利用しない分、外殻５の構造補強する
と共に地盤改良装置１６を支持するための部材であるパ
イプルーフ４３の貫入抵抗を極めて小さくすることが出
来、即ち推進ジャッキ１１を介して新設のセグメント３
１にかかる反力負担を極力小さく抑えることが出来る。

【００１９】さらに、外殻５の内周に沿った形でパイプ
ルーフ１２のセクション１５に装填される穿孔注入手段
である地盤改良装置１６は、図８に示すように、中空ロ
ッド１４Ｃの先端部にビット１４Ｄが装着された形の地
盤穿孔手段を有しているように構成されていても差し支
えなく、即ち、穿孔注入手段を構成している地盤穿孔手
段の各々の構成、即ち地盤改良剤である薬液２２が流通
するための注入路１６ｓや、その吐出口である前端開口
部１６ａ等の形態は如何なるように構成されていても構
わない。また、これと同様に、地盤穿孔手段により穿孔
されたボアホール２ｓ等の地盤改良剤注入孔に薬液２２
を注入するための手段である薬液供給装置２３の構成は
任意である。

【００２０】なお、上述した実施例においては、その外
殻５が円筒状に形成されたシールド装置を用いて、横断
面形状円形をなす既設管路３を横断面形状円形をなす新
設管路３０に拡大敷設替えする例を述べたが、本発明に
おいては外殻５及びこれにより拡大敷設替えされる既設
管路３、新設管路３０等の断面形状が円形に限定される
要素は全くなく、即ち管路３、３０のいずれかが矩形、
楕円状等に形成されていたり、或いはシールド装置１の
外殻５が管路断面形状に対応する形で、矩形、楕円或い
は門型等の如何なる形状に形成されていて何等差し支え
ない。また、本発明の適用は、実施例において述べたよ
うな、下水管等の管渠である既設管路３に限定されるも
のではなく、これより大断面をなす電車線トンネル等に
適用されても差し支えない。さらに、シールド装置１に
おいて既設管路３を拡大敷設替えするために用いるブレ
ーカー６、バックホー７、ベルトコンベヤ９等は、同様
の働きをし得る他の機械設備を用いてこれを行っても全
く構わない。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、地
盤２中を推進自在な外殻５等の殻体を有し、前記殻体の
推進方向前面に、覆工３ａ等の除去すべき既設管の径Ｄ
２より大なる径Ｄ１の開放部５ｓ等の開放部を形成し、
前記殻体の内周に沿って地盤改良装置１６等の穿孔注入
手段を複数設け、前記穿孔注入手段は、前記殻体の前方
の地盤２にボアホール２ｓ等の地盤改良剤注入孔を穿設
し得るボーリングロッド１４Ａ、シース１４Ｂ、中空ロ
ッド１４Ｃ、ビット１４Ｄ等の地盤穿孔手段と、該地盤
穿孔手段により穿孔された地盤改良剤注入孔を介して薬
液２２等の地盤改良剤を地盤２に注入し得る注入路１６
ｓ、薬液供給装置２３等の地盤改良剤注入手段からなる
ようにして構成したので、殻体の推進に際し地盤改良剤
が、該殻体より前方側における既設管周囲の地盤２を改
良強化し、該改良強化された地盤２中に殻体が、開放部
を介して該殻体内に除去すべき既設管を取り込み配置さ
せた形で推進することが出来る。従ってシールド装置１
等の本発明による拡大シールド装置は、土被りの大小、
地盤性状の如何に拘らず、該装置が推進すべき地盤２を
穿孔注入手段を介して殻体内周に沿った形で一旦改良強
化して後、これを緩ませることなく、円滑に推進するこ
とが出来る。故に、老朽化した既設管渠を新設管渠に拡
大敷設替えする際に、開放部を介して既設管渠を取り囲
む形で殻体を推進させて、該殻体内からこれが推進すべ
き地盤２の地盤改良作業を行うと共に、該殻体内の前部
で既設管渠の解体撤去作業を行いながら、後部で既設の
ものより一回り大きな断面の新設セグメント、現場打設
覆工等の新設管渠の構築作業を行うようにすれば、これ
により、効率的且つ安全な拡大敷設替え作業が、地上構
造物並びに地盤２に影響を与えることなく円滑に行われ
得る。この際、本発明による拡大シールド装置は、その
殻体が、除去すべき既設管の径Ｄ２より大なる径Ｄ１の
開放部を形成するように構成されている、所謂開放型シ
ールド機であるために、その断面形状は既設管断面形状
に制約を受けることなく、任意の形状を選択することが
出来る。従って、本シールド機の選択に当たっては、前
述したように既設管周囲の地盤性状に限定されることが
ないことに加えて、長円形、矩形等の任意の新設管渠断
面形状を選定することが出来るので、広範な施工条件に
対応することが出来、故に、汎用性が高い拡大敷設替え
シールド施工を得ることが可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による拡大シールド装置の一実施例を用
いた既設管渠の更新作業を示す側面図である。

【図２】図１に示す拡大シールド装置のII、II矢視図で
ある。

【図３】図１に示す拡大シールド装置の前端部における
地盤改良装置差し込み状態を示す斜視図である。

【図４】図１に示す拡大シールド装置による地盤改良用
の薬液注入作業を示す斜視図である。

【図５】図２に示すシールド装置の別の例を示す図であ
る。

【図６】図２に示すシールド装置のさらに別の例を示す
図である、

【図７】図１に示すシールド装置における地盤改良装置
の先端部を示す断側面図である。

【図８】図７に示す地盤改良装置の先端部の別の例を示
す断側面図である。

【符号の説明】

１……拡大シールド装置（シールド装置） ２……地盤 ２ｓ……地盤改良剤注入孔（ボアホール） ３ａ……既設管（覆工） ５……殻体（外殻） ５ｓ……開放部 １４Ａ……地盤穿孔手段（ボーリングロッド） １４Ｂ……地盤穿孔手段（シース） １４Ｃ……地盤穿孔手段（中空ロッド） １４Ｄ……地盤穿孔手段（ビット） １６……穿孔注入手段（地盤改良装置） １６ｓ……地盤改良剤注入手段（注入路） ２２……地盤改良剤（薬液） ２３……地盤改良剤注入手段（薬液供給装置）

フロントページの続き (71)出願人 000002299 清水建設株式会社 東京都港区芝浦一丁目２番３号 (71)出願人 000206211 大成建設株式会社 東京都新宿区西新宿一丁目25番１号 (71)出願人 000235543 飛島建設株式会社 東京都千代田区三番町２番地 (71)出願人 000195971 西松建設株式会社 東京都港区虎ノ門１丁目20番10号 (71)出願人 000140982 株式会社間組 東京都港区北青山２丁目５番８号 (71)出願人 000174943 三井建設株式会社 東京都千代田区岩本町３丁目10番１号 (72)発明者 武田 邦夫 東京都千代田区神田司町２丁目３番地 株 式会社大林組東京本社内 (72)発明者 中尾 努 東京都港区元赤坂一丁目２番７号 鹿島建 設株式会社内 (72)発明者 山本 征彦 東京都新宿区津久戸町２番１号 株式会社 熊谷組東京本社内 (72)発明者 勝沼 清 東京都港区赤坂二丁目３番６号 株式会社 小松製作所内 (72)発明者 萩原 英樹 東京都港区芝浦一丁目２番３号 清水建設 株式会社内 (72)発明者 平地 正憲 東京都新宿区西新宿一丁目25番１号 大成 建設株式会社内 (72)発明者 清水 好臣 東京都千代田区三番町２番地 飛島建設株 式会社内 (72)発明者 渡辺 徹 神奈川県大和市下鶴間2570−４ 西松建設 株式会社技術研究所内 (72)発明者 竹之内 康昭 東京都港区北青山二丁目５番８号 株式会 社間組内 (72)発明者 本多 正人 東京都千代田区岩本町三丁目10番１号 三 井建設株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】地盤中を推進自在な殻体を有し、 前記殻体の推進方向前面に、除去すべき既設管の径より
   大なる径の開放部を形成し、 前記殻体の内周に沿って穿孔注入手段を複数設け、 前記穿孔注入手段は、前記殻体の前方の地盤に地盤改良
   剤注入孔を穿設し得る地盤穿孔手段と、該地盤穿孔手段
   により穿孔された地盤改良剤注入孔を介して地盤改良剤
   を地盤に注入し得る地盤改良剤注入手段からなるように
   して構成した、拡大シールド装置。