JPH06281059A

JPH06281059A - 油井管用ねじ継手

Info

Publication number: JPH06281059A
Application number: JP5064527A
Authority: JP
Inventors: Mitsusachi Yamamoto; 三幸山本; Shigeo Nagasaku; 重夫永作
Original assignee: Sumitomo Metal Industries Ltd
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 1993-03-24
Filing date: 1993-03-24
Publication date: 1994-10-07
Anticipated expiration: 2013-01-28
Also published as: JP2705506B2

Abstract

(57)【要約】【目的】優れた気密性及び高い着脱トルクを有し、繰り
返し使用に耐える油井管用ねじ継手の提供。【構成】締結時に雄ねじと雌ねじの荷重面（１）が相互
に接触し、頂面（３）と底面（４）のいずれか一方は接
触し他方には隙間があり、かつ雄ねじと雌ねじの挿入面
（２）には0.03mm以下の隙間があることを特徴とする油
井管用ねじ継手。【効果】井戸の深さが深い場合や腐食性環境が厳しい場
合等にも、数十回の繰り返し締結、離脱の使用にも耐
え、経済的に使用し得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、地下から産出される天
然ガスや原油の探査・生産に使用される油井管のねじ継
手に関するものであり、特に井戸の深さが深い場合や腐
食性環境が厳しい場合等の使用に適した継手に関する。

【０００２】

【従来の技術】今日、深さ数千ｍにも及ぶ天然ガス田や
原油田等の探査・生産に使用される油井管を接続する技
術としてねじ継手が広く用いられている。油井管用ねじ
継手には、管の一端にピン部を、他端にボックス部を形
成し、管同士を接続するインテグラル方式と、両端に二
つのボックス部を形成したカップリングを使用して、両
端にピン部を形成した管を接続するカップリング方式が
ある。

【０００３】油井管は井戸に埋設され高圧、高荷重、及
び悪環境下で使用されるため、これらねじ継手には、
(1) 接続された管の自重による軸方向の引張力に耐え得
ること、(2) 内部の流体による内圧に耐え得ること、
(3) 内部の流体による腐食がないこと、(4) 数十回の繰
り返し使用ができること、などの性能が要求されてい
る。

【０００４】近年、井戸の深さが深くなる傾向にあり、
上記の要求性能は更に厳しくなっている。

【０００５】このような要求に対応して油井管用ねじ継
手に関して多くの提案がなされている。

【０００６】図５（ａ）は、カップリング20を用いて、
管本体10同士を接続した状態を示す断面図であり、同図
（ｂ）はその要部の拡大図である。即ち、管本体10の端
部に設けた雄ねじ12を有するピン部11の先端にあるテー
パ状のシール形成用ねじ無し部13と、カップリング20の
内部に設けた雌ねじ22を有するボックス部21の内方にあ
るテーパ状のシール形成用ねじ無し部23とを、接触させ
ることによりシール部を形成している。これは、この部
分でメタルシールを構成することにより、油井管内部の
流体による内圧負荷に対する気密性能を向上させるため
である。

【０００７】また、ピン部11のシール形成用ねじ無し部
13の更に先端にあるトルクショルダ形成用ねじ無し部14
と、ボックス部21のシール形成用ねじ無し部23の更に内
方にあるトルクショルダ形成用ねじ無し部24とを、突き
合わせることによりトルクショルダ部を形成している。
これは、この部分を突き合わせることにより、過度な塑
性変形が生じるような高い接触面圧がシール部に発生さ
せないように締結トルクを適正な値に調整するためであ
る。

【０００８】一方、これらの継手に使用されるねじの形
状に関して多くの提案がなされており、例えば次のもの
がある。

【０００９】第一に、図２に示す台形ねじ(Buttress Th
read) がＡＰＩ(American Petroleum Institute)規格
（STD 5B) に規定されている。同図（ａ）はその台形ね
じの形状を表し、同図（ｂ）はこのねじの雄ねじと雌ね
じの締結時の接触状態を示す。

【００１０】締結時の噛合により、図中の雄ねじ荷重面
１ａと雌ねじ荷重面１ｂでねじ荷重面１が構成され、雄
ねじ挿入面２ａと雌ねじ挿入面２ｂでねじ挿入面２が構
成され、雄ねじ頂面３ａと雌ねじ底面３ｂでねじ頂面３
が構成され、そして雄ねじ底面４ａと雌ねじ頂面４ｂで
ねじ底面４が構成される。

【００１１】図１は本発明のねじ継手におけるねじ面の
接触状態を示す図であるが、ねじ継手の性能に影響を及
ぼす台形ねじにおける荷重面フランク角αおよび挿入面
フランク角θを定義している。フランク角は、図示しな
い管軸線と垂直な線Ｘ−Ｙ，Ｘ′−Ｙ′を基準に、正若
しくは負の値で表される。荷重面フランク角αは反時計
方向に進む角度を負の角度とし、挿入面フランク角θは
反時計方向に進む角度を正の角度とする。

【００１２】ＡＰＩ台形ねじは、３°の荷重面フランク
角、10°の挿入面フランク角より構成され、締結時のね
じ面の接触状態は、図２（ｂ）に示すように、荷重面１
で接触、挿入面２で非接触、頂面３および底面４の少な
くとも一方で接触となっている。ＡＰＩ規格の寸法公差
によれば、挿入面２には0.03から0.19mmの隙間が存在し
ている。

【００１３】第二に、図３（ａ）に示すような改良型台
形ねじ(Improved Buttress) と呼ばれるねじ形状のもの
がある。本ねじは０°の荷重面フランク角、45°の挿入
面フランク角を有している。また、締結時のねじ面の接
触状態は図３（ｂ）に示すように、荷重面１および挿入
面２で接触、頂面３および底面３で隙間がある状態とな
っている。尚、図３（ｂ）において図２（ｂ）と同じ部
分は同符号で示している。

【００１４】前記のねじ形状を使用する油井管用ねじ継
手には、それぞれ次のような問題がある。

【００１５】頻度は高くないが、油井管の軸方向に圧縮
力が負荷される場合があるが、その後、管の自重による
引張力が負荷されると、図２のＡＰＩ台形ねじでは、シ
ール部およびトルクショルダ部で接触面圧が低下した
り、極端な場合には隙間が生じたりする。この現象は油
井管内部の流体による内圧負荷に対する気密性能を低下
させ、内部流体が容易に漏洩するという問題がおき、上
記の隙間に流体が浸透し顕著な隙間腐食を生じることが
ある。

【００１６】また、この現象が生じている状態で、何等
かの原因で継手を緩める方向に捻りトルクが作用すると
継手が容易に外れ、油井管が井戸の中に落ち込む危険性
がある。この時、井戸の中での油井管の再接続が極めて
困難なことから、開発中あるいは生産中の油井を廃坑に
しなければならないという最悪の事態を招くことがあ
る。このような問題は井戸の深さが深くなるに伴って、
管の自重による引張力が増加するため、より深刻な問題
となる。これらの現象が発生するのは、締結時の接触に
おいて、挿入面に比較的広い隙間が存在するため、圧縮
力が作用した場合、この隙間が無くなるまでねじ部で圧
縮荷重を負担することができず、シール部およびトルク
ショルダ部に圧縮荷重が集中して、この部分に顕著な塑
性変形が生じること、また、その後に引張力が作用する
とシール部およびトルクショルダ部が塑性変形を起こし
ているので、この部分の接触面圧が低下し、そのため継
手の保持トルクが低下することによる。

【００１７】図３に示した第二の改良型台形ねじでは、
10回程度の繰り返し締結によりねじ面に損傷が生じる場
合がある。この損傷は、焼き付きと呼ぶほどの損傷では
ないが、明瞭な摩擦傷を伴っている。これらは締結時に
荷重面、挿入面とも接触状態となっており、挿入面のフ
ランク角を大きく取ることにより、挿入面での接触面圧
は相当低下しているものの、未だ接触面圧が高いことに
よるためである。したがって、この継手をさらに連続し
て使用すると、この損傷を起点として焼き付きが生じる
危険性がある。この危険性を回避するためには、機械加
工によりねじを切り直す必要があり、この分コストの増
加を招くという問題を生じる。

【００１８】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の油井
管用ねじ継手が有する問題点に鑑み、圧縮力負荷後も油
井管の内部流体に対する優れた気密性能を有し、高い着
脱トルク、即ち、ねじ継手に何等かの原因で継手を緩め
る方向に捻りトルクが作用した場合に、これに抗するト
ルクを保持し、繰り返し締結によるねじ面の損傷を防止
するねじ継手を提供することを目的としている。

【００１９】

【課題を解決するための手段】本発明は、下記の油井管
用ねじ継手を要旨とする。即ち、台形の雄ねじを有する
ピン部に設けたシール形成用ねじ無し部と、同じく台形
の雌ねじを有するボックス部に設けたシール形成用ねじ
無し部とでシール部を構成し、ピン部先端に設けたトル
クショルダ形成用ねじ無し部とボックス部に設けたトル
クショルダ形成用ねじ無し部とを突き合わせてトルクシ
ョルダ部を構成する油井管用ねじ継手において、図１に
示すように、締結時に雄ねじと雌ねじの荷重面１が相互
に接触し、頂面３と底面４のいずれか一方は接触し他方
には隙間があり、かつ雄ねじと雌ねじの挿入面２には0.
03mm以下の隙間を構成し、優れた気密性及び着脱トルク
を有し、繰り返し使用に耐えることを特徴とする油井管
用ねじ継手である。

【００２０】

【作用】本発明者は、圧縮力が作用した場合のねじ継手
の挙動、およびねじ継手の繰り返し締結におけるねじ面
の損傷について詳細な検討を行った結果、以下の知見を
得た。

【００２１】1) 螺合締結完了時において、ねじの挿入
面に隙間があると圧縮力が作用した場合、雄ねじと雌ね
じが互いに軸方向にずれ、この隙間がなくなるまで圧縮
荷重をねじ部で負担することができない。このため、圧
縮荷重の大部分がシール部およびトルクショルダ部に集
中し、当部に顕著な塑性変形を生じさせる。その後、油
井管の自重による引張荷重が負荷されると、雄ねじと雌
ねじは上記と逆方向にずれ、ねじの挿入面に再び隙間が
生じる。この時、シール部およびトルクショルダ部では
塑性変形のため、接触面圧が低下したり、極端な場合に
は隙間が生じたりする。

【００２２】2) これを防止するには、ねじの挿入面を
締結時に接触させることがよいが、ねじ面の接触面圧が
高くなり、ねじの挿入面に隙間がある場合に比べ、ねじ
面に損傷を生じ易くなる。

【００２３】上記の知見に基づき、本発明において締結
時の諸条件は次のように定めた。

【００２４】図１に示すように、本発明のねじ継手のね
じはいわゆる台形ねじに属するものである。この形状を
採用したのは、三角形状のねじに比べ、ねじピッチに対
するねじ高さの比を小さくすることができ、その分継手
効率（継手の危険断面積を管本体の断面積で除した値）
を高く設定できるためである。

【００２５】台形ねじのねじ面は荷重面１、挿入面２、
頂面３及び底面４の四面あるが、トルクショルダを有す
る継手では、トルクショルダの接触に伴う反力をねじの
荷重面１で分担するため、荷重面１は常に接触状態とな
る。ねじの噛み合わせを安定させるには、他の三面のう
ち少なくとも一面を接触させる必要があり、本発明のね
じ継手では頂面３あるいは底面４のいずれか一方を接触
させ、挿入面２を非接触 (隙間を設ける) とする。

【００２６】頂面３あるいは底面４のいずれか一方を接
触させるのは、このようなねじ面の接触状態がねじ面の
損傷を防ぐのに好ましいためである。即ち、荷重面１が
接触している状態で更に頂面３あるいは底面４のいずれ
かを接触させた場合、頂面３あるいは底面４に発生する
接触面圧は、挿入面２を接触させることにより挿入面２
に発生する接触面圧に比べて小さくなる。これは、接触
面圧の作用方向が頂面３あるいは底面４ではほぼ管半径
方向、挿入面２ではほぼ管軸方向であり、管は管半径方
向には比較的容易に変形するためこの方向の接触面圧は
あまり大きくならないが、管軸方向には隣合うねじ同士
が拘束し合う (荷重面１の接触面圧はほぼ管軸方向であ
り、挿入面２の接触面圧と突き合う格好となる) ことに
より、この方向の接触面圧が高くなるためである。

【００２７】同時に、本発明のねじ継手では頂面３ある
いは底面４のいずれか一方に隙間を設けることになる。
これは、継手締結時に用いられるグリス等の潤滑剤がこ
の隙間に浸透することにより、ねじ面の損傷防止をさら
に確実なものとするとともに、締結時にピン部とボック
ス部のシール部が接触することにより閉じ込められた空
気をこの隙間を通して外部に逃がすためである。即ち、
この隙間は螺旋状に外部と通じているため、閉じ込めら
れた空気を管外に逃がすことが可能となる。

【００２８】本発明のねじ継手では挿入面２を非接触と
することも特徴の一つとしているが、雄ねじ挿入面２ａ
と雌ねじ挿入面２ｂの隙間を0.03mm以下とする。ここ
で、この隙間を小さく設定するのは、継手に圧縮力が作
用した時に発生するシール部およびトルクショルダ部の
塑性変形を低減するためであり、これによりその後に引
張力が作用しても、シール部およびトルクショルダ部の
接触面圧は殆ど低下することはない。また、この隙間の
限界値0.03mm以下を設けるのは、圧縮荷重負荷によるね
じ継手の着脱トルクを十分に確保するためである。

【００２９】図４に、管本体に降伏強度の50％に相当す
る応力が生じるような軸方向の圧縮力負荷後、ねじ継手
の着脱トルクと締結トルクの比が挿入面の隙間によって
どのように変化するかを示した図である。使用したねじ
継手は後記する実施例に示す諸元寸法であり、締結トル
クとはねじ継手の接続、締結に要したトルクである。

【００３０】同図より、挿入面の隙間の増加とともに着
脱トルク／締結トルクは単調に低下し、締結トルクの60
％以上の着脱トルクを確保するには挿入面の隙間を0.03
mm以下とする必要があることがわかる。締結トルクの60
％以上の着脱トルクを確保するのは油井管使用中に何ら
かの原因で継手を緩める方向に捩じりトルクが作用して
も、継手が容易に緩まず、井戸のなかに落ち込むことを
防止するのためである。

【００３１】締結時の螺合条件を上記の如く設定するこ
とにより、圧縮力が負荷された後、管の自重による引張
力が負荷されてもシール部の接触面圧はほとんど低下す
ることなく、油井管内部の気密性能を確保すること、更
に、継手の着脱トルクもほとんど低下することなく、油
井管が井戸の中に落ち込む危険を回避することができ
る。

【００３２】尚、本発明の継手はカップリング方式の継
手でもよく、また、インテグラル方式の継手でもよい。
上述の作用効果はいずれの方式においても同様である。

【００３３】

【実施例】以下、本発明にかかるねじ継手の性能を実施
例に基づいて説明する。図５に示した構成のカップリン
グ方式の継手で、ねじの諸元を表１のように種々変更し
た継手を試作した。このとき、その他のねじ継手の諸元
は次の通りとした。

【００３４】管本体の外径：177.8mm 管本体の肉厚：10.36mm カップリングの外径：194.5mm 管およびカップリングの材料：ＡＰＩ規格のＬ80 (降伏
強度 56.3kgf/mm²) ねじの形状：台形ねじねじピッチ：5.08mm ねじテーパ：１／16 ねじ山高さ：１．５７５ｍｍ

【００３５】

【表１】

【００３６】これらのねじ継手を繰り返し締結試験及び
複合荷重試験に供試し、その性能を評価した。ここで、
繰り返し締結試験では潤滑用グリスをねじ部に塗布し、
継手の締結、離脱を繰り返し行い、ねじ面の損傷を調べ
た。なお、最大繰り返し回数は２０回とした。又、複合
荷重試験では継手を締結し、管本体に降伏強度の50％に
相当する応力が生じるような軸方向の圧縮力を負荷した
後、管本体に降伏強度の80％に相当する応力が生じるよ
うな軸方向の引張力及び降伏強度の80％の内圧（ＡＰＩ
規格に規定）を同時に負荷し、内圧の漏れを調査した。

【００３７】以上の試験結果を表２に示す。

【００３８】

【表２】

【００３９】表２から、比較例ではいずれかの試験で不
具合が生じているが、本発明の継手はいずれの試験にお
いても良好な結果となっていることがわかる。

【００４０】尚、ここにはカップリング方式の場合の実
施例を示したが、インテグラル方式の場合でも同様の効
果が得られた。

【００４１】

【発明の効果】本発明による油井管用ねじ継手は、圧縮
力負荷後も優れた気密性能および高い着脱トルクを保持
出来るとともに、数十回の繰り返し締結、離脱の使用に
も耐え、今後ますます深くなる井戸にも経済的に使用し
得るものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のねじ継手のねじ形状および締結時のね
じ面接触状態を示す図である。

【図２】（ａ）はＡＰＩ規格に規定された台形ねじの形
状を示す軸方向断面図であり、（ｂ）はその締結時の
ねじ面接触状態を示す軸方向断面図である。

【図３】（ａ）は改良型台形ねじの形状を示す軸方向断
面図であり、（ｂ）はその締結時のねじ面接触状態を示
す軸方向断面図である。

【図４】圧縮荷重負荷による着脱トルク変化に及ぼす挿
入面隙間の影響を示す図である。

【図５】カップリング方式の油井管用ねじ継手の基本的
構成を示す軸方向断面図である。

【符号の説明】

１：ねじ荷重面２：ねじ挿入面３：ねじ頂面４：
ねじ底面 10：管本体 11：ピン部 12：雄ねじ 20：
カップリング 21：ボックス部 22：雌ねじ 13、23：シール形成
用ねじ無し部 14、24：トルクショルダ形成用ねじ無し部 α：荷重面フランク角 θ：挿入面フランク
角

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】台形の雄ねじを有するピン部に設けたシー
ル形成用ねじ無し部と、同じく台形の雌ねじを有するボ
ックス部に設けたシール形成用ねじ無し部とでシール部
を構成し、ピン部先端に設けたトルクショルダ形成用ね
じ無し部とボックス部に設けたトルクショルダ形成用ね
じ無し部とを突き合わせてトルクショルダ部を構成する
油井管用ねじ継手において、締結時に雄ねじと雌ねじの
荷重面が相互に接触し、頂面と底面のいずれか一方は接
触し他方には隙間があり、かつ雄ねじと雌ねじの挿入面
には0.03mm以下の隙間があることを特徴とする油井管用
ねじ継手。