JPH06271792A - 防腐、防黴、防蟻効力を有するコーティング剤 - Google Patents

防腐、防黴、防蟻効力を有するコーティング剤

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JPH06271792A
JPH06271792A JP8258793A JP8258793A JPH06271792A JP H06271792 A JPH06271792 A JP H06271792A JP 8258793 A JP8258793 A JP 8258793A JP 8258793 A JP8258793 A JP 8258793A JP H06271792 A JPH06271792 A JP H06271792A
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JP
Japan
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wood
test
metal alkoxide
antiseptic
antifungal
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Application number
JP8258793A
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Inventor
Manabu Kato
加藤  学
Masaru Kurita
大 栗田
Tsutomu Minami
努 南
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Fuji Toryo Co Ltd
Original Assignee
Fuji Toryo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、建築材料等の優れた保存特性を有
する長期持続型コーティング剤を供給することを目的と
する。 【構成】 本発明のコーティング剤は、金属アルコキシ
ドにホウ素化合物をドーピングし、金属アルコシドの加
水分解・重縮合によって得られる。 【効果】 本発明のコーティング剤は、毒性的に安全
で、長期にわたり防腐、防黴、防蟻効力を有するもので
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無機、有機等の一般建
築材料や、多孔質材料及び木材や木質繊維材料などに含
浸又は塗布して、一般建築材料表面、多孔質材構造面又
は木材組織細胞面に、防腐、防黴、防蟻効力を有するキ
セロゲル被膜を形成する長期効力持続型保存コーティン
グ剤に関する。
【0002】
【従来の技術】今日の建物は、木や紙や土等を使った伝
統的日本建築とは異なり、ほとんどアルミサッシやビニ
ルクロスなどの建築材料で占められている。
【0003】これらの材料が作り出す高い機密性の空間
は、冷暖房効果を高めるものの、年間を通じて、菌類及
び虫類が繁殖しやすい条件を作り出している。それら菌
虫類(カビやダニ)は、幼児の喘息やアレルギー性の諸
症状など人体の健康に悪い影響を与え、各所で社会問題
を引き起こしている。
【0004】これらの菌類や虫類から人と物を守るため
に用いられた、有機スズ系薬品、DDT、白蟻駆除剤等
の薬剤も又、強い毒性を有するために、人や家畜及び環
境に悪い影響を及ぼす結果となった。又、古くより使わ
れて来た薬剤や、近年になって開発された殺菌殺虫剤の
多くは、人や家畜に与える毒性の強さや水への溶出或い
は、薬剤処理した材料の廃棄、焼却による新たな毒物の
生成等、環境への汚染が問題となっている。
【0005】一方、菌類の繁殖を防ぐために、無機、有
機の一般建築材料及び多孔質材料自体に抗菌性を持たせ
る新しい材料作りがされているが、前記材料に抗菌効力
を持たせるために施される薬剤自体も、毒性の強い有機
系薬剤から毒性的に弱い無機系薬剤を使用することに関
心が集まってきている。例えば銀や銅、亜鉛など抗菌活
性のある金属イオンを活用して、低毒性抗菌剤を開発
し、塗料や樹脂の中に混入している。又、銀イオンを溶
解性ガラスに含有させ、粉末化して材料中に練り込んだ
抗菌性ケイ酸カルシウム板(特開平2-302355号)や、ア
ルコキシドを原料として非晶質内に薬剤を混入させた粉
末抗菌剤或いは、ゾル−ゲル法を用いて多孔質カプセル
を作り、そのカプセル内に薬剤を封入して薬剤の容易な
溶出や残効性の向上を図ったもの等、低毒性の防菌防虫
剤や抗菌性建築材料が開発されている。
【0006】又、木材に関する防菌防虫剤は、木材保存
の立場から研究が進められてきた。1838年にクレオソー
トが防腐剤として使われて以来、硫酸銅やクロム化合物
へと開発が進み、現在世界で最も広く使用されているC
CA(無機クロム、銅及びヒ素化合物の混合剤)の誕生
となった。しかし、このCCAも毒性を有し、環境への
汚染が問題となっている。このCCAに代わる防腐剤と
して、安全性を重視したCFK(ケイフッ化銅及び重ク
ロム酸アンモニウムの混合剤)系の薬剤や、防腐効果や
寸法安定性を主目的としたポリエチレングリコールやウ
レタン樹脂を注入する方法が報告されている(「防菌防
黴技術の再先端」―微生物汚染防止法の現状と展望―平
成4年10月、社団法人 大阪工研協会発行)。また木質
系材料のような寸法安定性の悪い材料の保存処理とし
て、ホウ素トリメトキシド(トリメチルホウ酸)をメチ
ルアルコールに溶解させて、共沸混合物をつくり、これ
を用いた研究がなされている[Vapour Phase Treatment
of Wood Composite Products 、A.J.Bergervoet等、ニ
ュージーランド・フォレスト・リサーチ・インスチチュ
ート、パシフィック・リム・バイオベースド・コンポジ
ッツ・シンポジウム(Pacific Rim Bio-Based Composit
es Symposium)1992年11月9-13日、ニュージーランド、
ロトルーア]。これは、真空下で蒸気を発生させ、木材
や木質材料内に蒸気を吸引し、ホウ素トリメトキシドの
加水分解によって生じるホウ酸を、その内部に生成させ
る保存処理方法である。しかしこの場合も木材などの内
部に生成されたホウ酸が雨水に溶出されるために、屋外
で用いる事は好ましくない。
【0007】
【解決しようとする問題点】このような状況の下で、新
しく開発される防菌防虫剤は、毒性が少なく、薬剤処理
した処理材の廃棄や焼却による二次汚染の懸念から解放
された薬剤でなければならない。又至る所で発生繁殖す
る菌類や虫類に対して、工場はもとより家庭において
も、手軽に使用できる防菌防虫剤の開発が求められてい
る。
【0008】本発明者らは、長期にわたり、防腐、防
黴、防蟻効力を持続し、毒性的に安全で、簡単な方法で
用いることができる、建築材料や多孔質材料の保存用コ
ーティング剤を研究した結果、本願発明の防腐、防黴、
防蟻効力を有する長期効力持続型コーティング剤を開発
するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のコーティング剤
は、一般式、R'n M(OR) m-n (式中、R′はアルキル
基、フェニル基、フッ化アルキル基である有機性官能
基、ORはアルコキシ基、Mはケイ素、チタン、ジルコ
ニウム、アルミニウムである金属、mは前記金属の原子
価、nは0、1又は2を示す)で表される金属アルコキ
シド又はそれらの混合物に、ホウ素化合物をドーピング
し、金属アルコキシドの加水分解・重縮合により得られ
る。必要に応じて酸又は塩基の触媒を添加する。
【0010】本発明に用いられる金属アルコキシドを溶
解するために、エチルアルコール、イソプロピルアルコ
ール等の公知の有機溶媒を用いる。
【0011】本発明に用いられる金属アルコキシドは、
一般式R'n M(OR) m-n で表され、アルキル基を有する金
属アルコキシド、フェニル基を有する金属アルコキシド
及びフッ素含有アルキル基を有する金属アルコキシド等
であり、これらの一つ又は数種を用いる。Mがケイ素の
場合のアルキル基を有する金属アルコキシドの例として
は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシ
ラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキ
シシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエト
キシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジ
ブトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピ
ルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、
ブチルトリメトキシシランが挙げられる。又、フェニル
基を有する金属アルコキシドの例としては、フェニルト
リメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェ
ニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラ
ン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキ
シシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニル
ジブトキシシランが挙げられる。フッ素含有アルキル基
を有する金属アルコキシドの例としては、3,3,3-トリフ
ロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフロロプ
ロピルエトキシシラン、ジメトキシメチル-3,3,3- トリ
フロロプロピルメトキシシラン、ジメトキシメチル-3,
3,3- トリフロロプロピルエトキシシランが挙げられ
る。更に、n=0の例として、テトラメトキシシラン、
テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テト
ラブトキシシランが挙げられる。又、Mがチタンの場合
の例としてチタンテトラエトキシド、Mがジルコニウム
の例としてジルコニウムテトラエトキシド、Mがアルミ
ニウムの例としてアルミニウムトリエトキシドが挙げら
れる。
【0012】本発明で用いられる酸性触媒の例として
は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸等が挙げられる
が、これらの薬品の取扱いの容易さ、人や家畜に与える
影響や環境及びこれらの薬品の残留等を考慮すると、塩
酸が最も適しているといえる。又、塩基性触媒として
は、アンモニアが挙げられる。
【0013】本発明に用いられるホウ素化合物として
は、ホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ砂、八ホウ酸ナトリウム
四水和物、ホウ素トリメトキシド、ホウ素トリエトキシ
ド等が挙げられる。
【0014】本発明に用いる溶媒は、一般にメチルアル
コール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチ
ルアルコールなどのアルコール類が主に用いられる。又
アルコール類は、一般的に殺菌効力を有し、特にエチル
アルコールは優れた殺菌剤であると共に、毒性的に最も
安全な溶媒と言える。従って本発明の溶媒としてはエチ
ルアルコールが最も適した溶媒と言えるが、特に限定す
るものではない。アルコキシドの加水分解・重縮合に悪
い影響を及ぼさない限り、エチルアルコールやプロピル
アルコールと一般有機溶剤との混合でもよい。
【0015】本発明の一成分であるホウ素化合物は、医
薬品や肥料、食器、化粧品などに使われており、中でも
ホウ酸は目の消毒剤として家庭にも馴染みの深い薬剤で
ある。
【0016】もう一つの主成分である金属アルコキシド
は、加水分解・重縮合により、水に不溶性の酸化物に変
化し、金属アルコキシドとして存在することは不可能と
なるので、金属アルコキシドの毒性は解消される。
【0017】ホウ素化合物の一つとして、ホウ砂とホウ
酸の混合物がラワン材の防虫剤として現在、最も多く使
われているが、防虫処理したラワン材表面に黴が発生す
るため、別に防黴剤を添加して黴の発生を防いでいる。
この事実は、一般的には、ホウ素化合物が防黴効果を有
さないことを示している((社)日本木材保存協会発行
「木材保存の知識」 106頁、平成元年8月発行)。又ホ
ウ素化合物は水に溶解性であることから、今日に至って
も屋外用木材保存剤としては用いられていない。本発明
は、このホウ素化合物の欠点を、ホウ素化合物を金属ア
ルコキシドにドーピングすることによって解決すると共
に、全く新たな防腐、防黴、防蟻効力を長期にわたって
発揮させることに成功した。本発明の主成分である金属
アルキシドより誘導されるゾル液は加水分解・重縮合が
進むことにより、特開平4-187579号に示す通り極めて優
れた撥水性キセロゲル被膜を生成する。本発明における
ホウ素化合物は、水に不溶性のキセロゲル被膜と複合化
或いはゲル骨格と結合されて、水には容易に溶出されな
くなるので、防腐、防黴、防蟻効力は持続し、しかもこ
の不溶性のキセロゲル被膜の撥水性が、本発明のコーテ
ィング剤が施された材料の含水率を、黴や腐朽菌の生育
至適水分域より低く抑制するために、黴や腐朽菌は生育
条件の環境にとどまることが出来なくなる。
【0018】従来の木材保存剤の中には、薬剤の定着剤
として或いは、撥水剤として樹脂を混入した保存剤も有
るが、分子量が大きく浸透性に難点を示す。
【0019】又、最近の建物には、多孔質材料も多く使
われ、菌種によって多孔質材料内部にまで黴や虫が発生
し、材料表面のみの殺菌殺虫では効果がない。多孔質材
料の内部に至るまで殺菌殺虫し且つ防菌防虫処理を行う
ためには、優れた浸透性能が要求される。本発明による
保存コーティング剤は、粘度が極めて低いゾル液であ
り、無機質多孔体材料や木材等にも極めて良く浸透す
る。本発明のコーティング剤であるゾル液は無機、有機
の別なくいろいろな材種の建築材料や金属にも幅広く密
着し、水に不溶性の被膜を形成することは、様々な研究
報文により明らかである。
【0020】以上の如く、本発明の保存コーティング剤
は、毒性的に安全であり、防腐、防黴、防蟻効力を有す
ると共に、撥水性キセロゲル被膜を生成する長期効力持
続型のコーティング剤であり、エチルアルコールによる
殺菌効果とあいまって、殺菌殺虫、防腐防黴、防蟻防水
効力を有するコーティング剤といえる。
【0021】本発明に用いられる金属アルコキシドから
生成される撥水性キセロゲル被膜の撥水効力がホウ素化
合物の吸水性を上回り、保存処理材の含水率を50%未満
にしている。この含水率は、腐朽菌の繁殖条件範囲であ
る生育至適水分域(含水率50%乃至 150%)外にあり、
防腐、防黴効力を高めるものである。
【0022】
【実施例】実施例1 まず本実施例の試験に用いる保存コーティング剤とし
て、メチルトリエトキシシラン20%、エチルアルコール
67〜77%、ホウ酸0〜10%の範囲でそれぞれ濃度を変
え、1規定の塩酸を触媒として存在させ、充分加水分解
し、メチルトリエトキシシランのゾル液の保存コーティ
ング剤を得た。又フェニルトリエトキシシランも同様に
20%、エチルアルコール67〜77%、ホウ酸0〜10%の範
囲で、エチルアルコールとホウ酸の濃度をそれぞれ変化
させ、塩酸触媒の存在下で充分加水分解して、フェニル
トリエトキシシランのゾル液のコーティング剤を得た。
これに市販品のケイ酸カルシウム板“セルストン”
[(株)アスク製]を20mm x 50mmx 6mm に切断、又ス
ギ材を10mm x 50mm x 20mmに切断して試験材料とした。
この試験材料をおのおの、前記各コーティング剤中に、
それぞれ2時間浸漬し、ケイ酸カルシウムは 100℃で、
スギ材は60℃でそれぞれ2時間乾燥して試験片とした。
この試験片を水中に17時間浸漬し、それぞれ試験片の含
水率を測定し、撥水性キセロゲル被膜に与えるホウ酸の
吸水性の影響を調べた。ケイ酸カルシウム及びスギ材の
試験片における結果をグラフにして図1及び図2にそれ
ぞれ示す。図1において、aはメチルトリエトキシシラ
ンのゾル液で、bは3,3,3-トリフロロプロピルトリメト
キシシランのゾル液で、cはフェニルトリエトキシシラ
ンのゾル液でケイ酸カルシウム試験材料を処理した結果
である。dは未処理のケイ酸カルシウムの試験片であ
る。又、図2において、eはメチルトリエトキシシラン
のゾル液で、fは3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキ
シシランのゾル液で、gはフェニルトリエトキシシラン
のゾル液でスギ材試験材料を処理した場合である。hは
未処理のスギ材の試験片である。
【0023】一般に含水率50%〜150 %の範囲が腐朽菌
の生育至適水分域とされ、最も腐朽菌の生育に適した水
分環境とされている。図2からわかるように、未処理材
の含水率は、57%であるのに対し、本発明のコーティン
グ剤で処理したスギ材は、ホウ酸の吸水性にほとんど影
響なく50%未満の範囲にある。この含水率は菌類の生育
環境範囲外であることを意味し、防腐、防黴効力を高め
ることを示している。
【0024】図1では、未処理のケイ酸カルシウム材の
含水率が46%と高い値を示し、ケイ酸カルシウム材は吸
水し易い材料であることを示している。本発明のコーテ
ィング剤で処理したケイ酸カルシウム材の含水率は、ホ
ウ酸濃度3%のときに30%の値を示し、それ未満の濃度
ではさらに低い含水率となる。一般に含水率30%以下の
範囲では、菌類の生育はほとんど停止するとされている
値である。このことは吸水しやすいケイ酸カルシウム材
を、本発明のコーティング剤で処理することによって、
菌類の生育が停止する水分環境を作ることができること
を意味する。
【0025】実施例2 メチルトリエトキシシラン20%に対し、エチルアルコー
ル72〜76%を溶媒とし、ホウ酸 1.0%、 3.0%及び5.0
%と変化させ、塩酸触媒の存在下で充分に加水分解し
て、本願発明のコーティング剤を得た。次いで、実施例
1で示したのと同じケイ酸カルシウム板を20mm x 50mm
x 6mm に切断し、又、(社)日本木材保存協会規格、第
2号−1979に準じて、ブナ材を切断し、試験材料を
作製した。この試験材料を、前記のコーティング剤に2
時間浸漬した後に、ブナ剤は60℃で、ケイ酸カルシウム
板は 100℃で各々2時間乾燥して防黴効力試験の試験片
とした。そして(社)日本木材保存協会規格、第2号−
1979「木材用防黴剤の防黴効力試験法」に決められ
た試験法で防黴効力試験を行った結果を表1に示す。
【0026】 表 1 ホウ酸濃度 菌別平均評価値 平均評価 被害値 % A1 A2 A3 A4 A5 値の合計 コーティング剤処理 ブナ材 ケイ酸カルシウム材 1.0 0 0 0 0 0 0 0 3.0 0 0 0 0 0 0 0 5.0 0 0 0 0 0 0 0 無処理ブナ材 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 15.0 100 無処理ケイ酸 カルシウム材 0 3.0 2.3 3.0 2.7 11.0 73 注: A1は、Aspergillus niger van Tieghem 、A2は、
Penicillium funiculosum Thom、A3は、Rhizopus javan
icus Takeda 、A4は、Aureobasidium pullulans(de Bar
y) Arnaud、A5は、Gliocladium virens Miller, Gidden
s & Fostersである。
【0027】表1から、ブナ材、ケイ酸カルシウム板試
験材料共に、ホウ酸濃度1%で被害値は0である事が明
らかとなった。これは、現在ラワン材の防虫剤として使
われているホウ砂、ホウ酸混合物の濃度の20〜30分の1
のホウ酸濃度である。又、湿布や洗浄に用いる場合の2
〜5分の1という少ないホウ酸濃度で充分な防黴効力を
発揮されることが明らかとなった。この結果は、毒性的
にも、より安全な方向に移行できたことを意味する。防
黴処理を施された多孔質材料及び木材中に含まれている
ホウ酸含有量は100 〜200g/m3 となり、大変優れた防黴
剤といえる。
【0028】実施例3 メチルトリエトキシシラン20%、エチルアルコール74
%、ホウ酸3%を塩酸触媒の存在下で充分加水分解し
て、コーティング剤を得た。そして、(社)日本木材保
存協会規格、第1号−1989に準じて木材を切断し、
試験材料とした。これを、先に得たコーティング剤に各
々2時間浸漬し、60℃で2時間乾燥して防腐効力試験の
試験片とした。防腐効力試験は(社)日本木材保存協会
規格、第1号−1989「塗布、吹付け、浸漬処理用木
材防腐剤の防腐効力試験法」に決められた環境条件及び
試験法で行った。その結果を表2に示す。
【0029】 表 2 試験片 供 試 菌 樹 種 平均重量 標準 変動 減少率% 偏差 係数 処理材 オオウズラタケ スギ 0.0 0.0 0.0 無処理 オオウズラタケ スギ 31.0 7.1 22.9 処理材 カワラタケ ブナ 1.5 0.3 20.0 無処理 カワラタケ ブナ 46.0 5.2 11.3 処理材 ナミダタケ アカマツ 0.0 0.0 0.0 無処理 ナミダタケ アカマツ 41.6 1.2 2.9
【0030】表2からわかるように、カワラタケに対し
て処理材は重量減少率 1.5%と、3%以下であり、性能
基準を満たし、無処理材に比べて有意な差を示した。
又、カワラタケ及びナミダタケに対して処理材は重量減
少率が0であり、従って、いずれの供試菌に対しても処
理材は優れた防腐効力を有することがわかる。
【0031】実施例4 本防蟻効力試験に用いたコーティング剤は、実施例3に
用いた材料保存コーティング剤を使用した。試験材料は
(社)日本木材保存協会規格、第11号−1981に決め
られたように木材を切断し、試験材料を作製し、実施例
3と同様に浸漬処理して防蟻効力試験の試験片とした。
防蟻効力試験は、(社)日本木材保存協会規格、第11号
−1981「塗布、吹付け、浸漬用木材防蟻剤の防蟻効
力試験方法(1)室内試験方法」に準じ、総合試験を行
った。その結果を表3に示す。
【0032】 表 3 試験片 耐候 死虫率 % 重量減少率% 操作 最大−最少 平均 最大−最少 平均 処理材 あり 100-100 100 2.4- 3.1 2.7 なし 100-100 100 0.9- 1.8 1.3 無処理 3- 5 10 9.4-15.2 12.5
【0033】表3からわかるように、耐候操作の有無に
かかわらず重量減少率は2.7 %と、性能基準である3%
以下を満たしており、死虫率は100 %の高い値を示し、
極めて優れた防蟻効力を有していることがわかる。又、
耐候操作の有無にかかわらず効力を有していることか
ら、本発明コーティング材の効力は持続性を有すること
が示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】ホウ酸濃度を変えた本発明のコーティング剤で
ケイ酸カルシウム材を処理した試験片を水中浸漬した結
果の含水率の変化を表した図である。
【図2】ホウ酸濃度を変えた本発明のコーティング剤で
スギ材を処理した試験片を水中に浸漬した結果の含水率
の変化を表した図である。
【符号の説明】
a メチルトリエトキシシランのゾル液でケイ酸カルシ
ウムの試験材料を処理した場合の含水率 b 3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシランのゾ
ル液でケイ酸カルシウムの試験材料を処理した場合の含
水率 c フェニルトリエトキシシランのゾル液でケイ酸カル
シウムの試験材料を処理した場合の含水率 d 未処理のケイ酸カルシウム材の試験片の含水率 e メチルトリエトキシシランのゾル液でスギ材の試験
材料を処理した場合の含水率 f 3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシランのゾ
ル液でスギ材の試験材料を処理した場合の含水率 g フェニルトリエトキシシランのゾル液でスギ材の試
験材料を処理した場合の含水率 h 未処理のスギ材の試験片の含水率
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年3月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無機、有機等の一般建
築材料や、多孔質材料及び木材や木質繊維材料などに含
浸又は塗布して、一般建築材料表面、多孔質材構造面又
は木材組織細胞面に、防腐、防黴、防蟻効力を有するキ
セロゲル被膜を形成する長期効力持続型保存コーティン
グ剤に関する。
【0002】
【従来の技術】今日の建物は、木や紙や土等を使った伝
統的日本建築とは異なり、ほとんどアルミサッシやビニ
ルクロスなどの建築材料で占められている。
【0003】これらの材料が作り出す高い機密性の空間
は、冷暖房効果を高めるものの、年間を通じて、菌類及
び虫類が繁殖しやすい条件を作り出している。それら菌
虫類(カビやダニ)は、幼児の喘息やアレルギー性の諸
症状など人体の健康に悪い影響を与え、各所で社会問題
を引き起こしている。
【0004】これらの菌類や虫類から人と物を守るため
に用いられた、有機スズ系薬品、DDT、白蟻駆除剤等
の薬剤も又、強い毒性を有するために、人や家畜及び環
境に悪い影響を及ぼす結果となった。又、古くより使わ
れて来た薬剤や、近年になって開発された殺菌殺虫剤の
多くは、人や家畜に与える毒性の強さや水への溶出或い
は、薬剤処理した材料の廃棄、焼却による新たな毒物の
生成等、環境への汚染が問題となっている。
【0005】一方、菌類の繁殖を防ぐために、無機、有
機の一般建築材料及び多孔質材料自体に抗菌性を持たせ
る新しい材料作りがされているが、前記材料に抗菌効力
を持たせるために施される薬剤自体も、毒性の強い有機
系薬剤から毒性的に弱い無機系薬剤を使用することに関
心が集まってきている。例えば銀や銅、亜鉛など抗菌活
性のある金属イオンを活用して、低毒性抗菌剤を開発
し、塗料や樹脂の中に混入している。又、銀イオンを溶
解性ガラスに含有させ、粉末化して材料中に練り込んだ
抗菌性ケイ酸カルシウム板(特開平2−302355
号)や、アルコキシドを原料として非晶質内に薬剤を混
入させた粉末抗菌剤或いは、ゾルーゲル法を用いて多孔
質カプセルを作り、そのカプセル内に薬剤を封入して薬
剤の容易な溶出や残効性の向上を図ったもの等、低毒性
の防菌防虫剤や抗菌性建築材料が開発されている。
【0006】又、木材に関する防菌防虫剤は、木材保存
の立場から研究が進められてきた。1838年にクレオ
ソートが防腐剤として使われて以来、硫酸銅やクロム化
合物へと開発が進み、現在世界で最も広く使用されてい
るCCA(無機クロム、銅及びヒ素化合物の混合剤)の
誕生となった。しかし、このCCAも毒性を有し、環境
への汚染が問題となっている。このCCAに代わる防腐
剤として、安全性を重視したCFK(ケイフッ化銅及び
重クロム酸アンモニウムの混合剤)系の薬剤や、防腐効
果や寸法安定性を主目的としたポリエチレングリコール
やウレタン樹脂を注入する方法が報告されている(「防
菌防黴技術の再先端」−微生物汚染防止法の現状と展望
−平成4年10月、社団法人 大阪工研協会発行)。ま
た木質系材料のような寸法安定性の悪い材料の保存処理
として、ホウ素トリメトキシド(トリメチルホウ酸)を
メチルアルコールに溶解させて、共沸混合物をつくり、
これを用いた研究がなされている[Vapour Ph
aseTreatmentof Wood Compo
site Products、A.J.Bergerv
oet等、ニュージーランド・フォレスト・リサーチ・
インスチチュート、パシフィック・リム・バイオベース
ド・コンポジッツ・シンポジウム(Pacific R
im Bio−Based Composites S
ymposium)1992年11月9−13日、ニュ
ージーランド、ロトルーア]。これは、真空下で蒸気を
発生させ、木材や木質材料内に蒸気を吸引し、ホウ素ト
リメトキシドの加水分解によって生じるホウ酸を、その
内部に生成させる保存処理方法である。しかしこの場合
も木材などの内部に生成されたホウ酸が雨水に溶出され
るために、屋外で用いる事は好ましくない。
【0007】
【解決しようとする問題点】このような状況の下で、新
しく開発される防菌防虫剤は、毒性が少なく、薬剤処理
した処理材の廃棄や焼却による二次汚染の懸念から解放
された薬剤でなければならない。又至る所で発生繁殖す
る菌類や虫類に対して、工場はもとより家庭において
も、手軽に使用できる防菌防虫剤の開発が求められてい
る。
【0008】本発明者らは、長期にわたり、防腐、防
黴、防蟻効力を持続し、毒性的に安全で、簡単な方法で
用いることができる、建築材料や多孔質材料の保存用コ
ーティング剤を研究した結果、本願発明の防腐、防黴、
防蟻効力を有する長期効力持続型コーティング剤を開発
するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のコーティング剤
は、一般式、R′M(OR)m−n(式中、R′はア
ルキル基、フェニル基、フッ化アルキル基である有機性
官能基、ORはアルコキシ基、Mはケイ素、チタン、ジ
ルコニウム、アルミニウムである金属、mは前記金属の
原子価、nは0、1又は2を示す)で表される金属アル
コキシド又はそれらの混合物に、ホウ素化合物をドーピ
ングし、金属アルコキシドの加水分解・重縮合により得
られる。必要に応じて酸又は塩基の触媒を添加する。
【0010】本発明に用いられる金属アルコキシドを溶
解するために、エチルアルコール、イソプロピルアルコ
ール等の公知の有機溶媒を用いる。
【0011】本発明に用いられる金属アルコキシドは、
一般式R′M(OR)m−nで表され、アルキル基を
有する金属アルコキシド、フェニル基を有する金属アル
コキシド及びフッ素含有アルキル基を有する金属アルコ
キシド等であり、これらの一つ又は数種を用いる。Mが
ケイ素の場合のアルキル基を有する金属アルコキシドの
例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエ
トキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルト
リブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチ
ルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジ
メチルジブトキシシラン、エチルトリプロポキシシラ
ン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキ
シシラン、ブチルトリメトキシシランが挙げられる。
又、フェニル基を有する金属アルコキシドの例として
は、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキ
シシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルト
リブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフ
ェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラ
ン、ジフェニルジブトキシシランが挙げられる。フッ素
含有アルキル基を有する金属アルコキシドの例として
は、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラ
ン、3,3,3−トリフロロプロピルエトキシシラン、
ジメトキシメチル−3,3,3−トリフロロプロピルメ
トキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフ
ロロプロピルエトキシシランが挙げられる。更に、n=
0の例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシ
シラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラ
ンが挙げられる。又、Mがチタンの場合の例としてチタ
ンテトラエトキシド、Mがジルコニウムの例としてジル
コニウムテトラエトキシド、Mがアルミニウムの例とし
てアルミニウムトリエトキシドが挙げられる。
【0012】本発明で用いられる酸性触媒の例として
は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸等が挙げられる
が、これらの薬品の取扱いの容易さ、人や家畜に与える
影響や環境及びこれらの薬品の残留等を考慮すると、塩
酸が最も適しているといえる。又、塩基性触媒として
は、アンモニアが挙げられる。
【0013】本発明に用いられるホウ素化合物として
は、ホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ砂、八ホウ酸ナトリウム
四水和物、ホウ素トリメトキシド、ホウ素トリエトキシ
ド等が挙げられる。
【0014】本発明に用いる溶媒は、一般にメチルアル
コール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチ
ルアルコールなどのアルコール類が主に用いられる。又
アルコール類は、一般的に殺菌効力を有し、特にエチル
アルコールは優れた殺菌剤であると共に、毒性的に最も
安全な溶媒と言える。従って本発明の溶媒としてはエチ
ルアルコールが最も適した溶媒と言えるが、特に限定す
るものではない。アルコキシドの加水分解・重縮合に悪
い影響を及ぼさない限り、エチルアルコールやプロピル
アルコールと一般有機溶剤との混合でもよい。
【0015】本発明の一成分であるホウ素化合物は、医
薬品や肥料、食器、化粧品などに使われており、中でも
ホウ酸は目の消毒剤として家庭にも馴染みの深い薬剤で
ある。
【0016】もう一つの主成分である金属アルコキシド
は、加水分解・重縮合により、水に不溶性の酸化物に変
化し、金属アルコキシドとして存在することは不可能と
なるので、金属アルコキシドの毒性は解消される。
【0017】ホウ素化合物の一つとして、ホウ砂とホウ
酸の混合物がラワン材の防虫剤として現在、最も多く使
われているが、防虫処理したラワン材表面に黴が発生す
るため、別に防黴剤を添加して黴の発生を防いでいる。
この事実は、一般的には、ホウ素化合物が防黴効果を有
さないことを示している((社)日本木材保存協会発行
「木材保存の知識」106頁、平成元年8月発行)。又
ホウ素化合物は水に溶解性であることから、今日に至っ
ても屋外用木材保存剤としては用いられていない。本発
明は、このホウ素化合物の欠点を、ホウ素化合物を金属
アルコキシドにドーピングすることによって解決すると
共に、全く新たな防腐、防黴、防蟻効力を長期にわたっ
て発揮させることに成功した。本発明の主成分である金
属アルキシドより誘導されるゾル液は加水分解・重縮合
が進むことにより、特開平4−187579号に示す通
り極めて優れた撥水性キセロゲル被膜を生成する。本発
明におけるホウ素化合物は、水に不溶性のキセロゲル被
膜と複合化或いはゲル骨格と結合されて、水には容易に
溶出されなくなるので、防腐、防黴、防蟻効力は持続
し、しかもこの不溶性のキセロゲル被膜の撥水性が、本
発明のコーティング剤が施された材料の含水率を、黴や
腐朽菌の生育至適水分域より低く抑制するために、黴や
腐朽菌は生育条件の環境にとどまることが出来なくな
る。
【0018】従来の木材保存剤の中には、薬剤の定着剤
として或いは、撥水剤として樹脂を混入した保存剤も有
るが、分子量が大きく浸透性に難点を示す。
【0019】又、最近の建物には、多孔質材料も多く使
われ、菌種によって多孔質材料内部にまで黴や虫が発生
し、材料表面のみの殺菌殺虫では効果がない。多孔質材
料の内部に至るまで殺菌殺虫し且つ防菌防虫処理を行う
ためには、優れた浸透性能が要求される。本発明による
保存コーティング剤は、粘度が極めて低いゾル液であ
り、無機質多孔体材料や木材等にも極めて良く浸透す
る。本発明のコーティング剤であるゾル液は無機、有機
の別なくいろいろな材種の建築材料や金属にも幅広く密
着し、水に不溶性の被膜を形成することは、様々な研究
報文により明らかである。
【0020】以上の如く、本発明の保存コーティング剤
は、毒性的に安全であり、防腐、防黴、防蟻効力を有す
ると共に、撥水性キセロゲル被膜を生成する長期効力持
続型のコーティング剤であり、エチルアルコールによる
殺菌効果とあいまって、殺菌殺虫、防腐防黴、防蟻防水
効力を有するコーティング剤といえる。
【0021】本発明に用いられる金属アルコキシドから
生成される撥水性キセロゲル被膜の撥水効力がホウ素化
合物の吸水性を上回り、保存処理材の含水率を50%未
満にしている。この含水率は、腐朽菌の繁殖条件範囲で
ある生育至適水分域(含水率50%乃至150%)外に
あり、防腐、防黴効力を高めるものである。
【0022】
【実施例】実施例1 まず本実施例の試験に用いる保存コーティング剤とし
て、メチルトリエトキシシラン20%、エチルアルコー
ル67〜77%、ホウ酸0〜10%の範囲でそれぞれ濃
度を変え、1規定の塩酸を触媒として存在させ、充分加
水分解し、メチルトリエトキシシランのゾル液の保存コ
ーティング剤を得た。又フェニルトリエトキシシランも
同様に20%、エチルアルコール67〜77%、ホウ酸
0〜10%の範囲で、エチルアルコールとホウ酸の濃度
をそれぞれ変化させ、塩酸触媒の存在下で充分加水分解
して、フェニルトリエトキシシランのゾル液のコーティ
ング剤を得た。これに市販品のケイ酸カルシウム板“セ
ルストン”[(株)アスク製]を20mmx50mmx
6mmに切断、又スギ材を10mmx50mmx20m
mに切断して試験材料とした。この試験材料をおのお
の、前記各コーティング剤中に、それぞれ2時間浸漬
し、ケイ酸カルシウムは100℃で、スギ材は60℃で
それぞれ2時間乾燥して試験片とした。この試験片を水
中に17時間浸漬し、それぞれ試験片の含水率を測定
し、撥水性キセロゲル被膜に与えるホウ酸の吸水性の影
響を調べた。ケイ酸カルシウム及びスギ材の試験片にお
ける結果をグラフにして図1及び図2にそれぞれ示す。
図1において、aはメチルトリエトキシシランのゾル液
で、bは3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシ
シランのゾル液で、cはフェニルトリエトキシシランの
ゾル液でケイ酸カルシウム試験材料を処理した結果であ
る。dは未処理のケイ酸カルシウムの試験片である。
又、図2において、eはメチルトリエトキシシランのゾ
ル液で、fは3,3,3−トリフロロプロピルトリメト
キシシランのゾル液で、gはフェニルトリエトキシシラ
ンのゾル液でスギ材試験材料を処理した場合である。h
は未処理のスギ材の試験片である。
【0023】一般に含水率50%〜150%の範囲が腐
朽菌の生育至適水分域とされ、最も腐朽菌の生育に適し
た水分環境とされている。図2からわかるように、未処
理材の含水率は、57%であるのに対し、本発明のコー
ティング剤で処理したスギ材は、ホウ酸の吸水性にほと
んど影響なく50%未満の範囲にある。この含水率は菌
類の生育環境範囲外であることを意味し、防腐、防黴効
力を高めることを示している。
【0024】図1では、未処理のケイ酸カルシウム材の
含水率が46%と高い値を示し、ケイ酸カルシウム材は
吸水し易い材料であることを示している。本発明のコー
ティング剤で処理したケイ酸カルシウム材の含水率は、
ホウ酸濃度3%のときに30%の値を示し、それ未満の
濃度ではさらに低い含水率となる。一般に含水率30%
以下の範囲では、菌類の生育はほとんど停止するとされ
ている値である。このことは吸水しやすいケイ酸カルシ
ウム材を、本発明のコーティング剤で処理することによ
って、菌類の生育が停止する水分環境を作ることができ
ることを意味する。
【0025】実施例2 メチルトリエトキシシラン20%に対し、エチルアルコ
ール72〜76%を溶媒とし、ホウ酸1.0%、3.0
%及び5.0%と変化させ、塩酸触媒の存在下で充分に
加水分解して、本願発明のコーティング剤を得た。次い
で、実施例1で示したのと同じケイ酸カルシウム板を2
0mmx50mmx6mmに切断し、又、(社)日本木
材保存協会規格、第2号−1979に準じて、ブナ材を
切断し、試験材料を作製した。この試験材料を、前記の
コーティング剤に2時間浸漬した後に、ブナ剤は60℃
で、ケイ酸カルシウム板は100℃で各々2時間乾燥し
て防黴効力試験の試験片とした。そして(社)日本木材
保存協会規格、第2号−1979「木材用防黴剤の防黴
効力試験法」に決められた試験法で防黴効力試験を行っ
た結果を表1に示す。
【0026】
【0027】表1から、ブナ材、ケイ酸カルシウム板試
験材料共に、ホウ酸濃度1%で被害値は0である事が明
らかとなった。これは、現在ラワン材の防虫剤として使
われているホウ砂、ホウ酸混合物の濃度の20〜30分
の1のホウ酸濃度である。又、湿布や洗浄に用いる場合
の2〜5分の1という少ないホウ酸濃度で充分な防黴効
力を発揮されることが明らかとなった。この結果は、毒
性的にも、より安全な方向に移行できたことを意味す
る。防黴処理を施された多孔質材料及び木材中に含まれ
ているホウ酸含有量は100〜200g/mとなり、
大変優れた防黴剤といえる。
【0028】実施例3 メチルトリエトキシシラン20%、エチルアルコール7
4%、ホウ酸3%を塩酸触媒の存在下で充分加水分解し
て、コーティング剤を得た。そして、(社)日本木材保
存協会規格、第1号−1989に準じて木材を切断し、
試験材料とした。これを、先に得たコーティング剤に各
々2時間浸漬し、60℃で2時間乾燥して防腐効力試験
の試験片とした。防腐効力試験は(社)日本木材保存協
会規格、第1号−1989「塗布、吹付け、浸漬処理用
木材防腐剤の防腐効力試験法」に決められた環境条件及
び試験法で行った。その結果を表2に示す。
【0029】
【0030】表2からわかるように、カワラタケに対し
て処理材は重量減少率1.5%と、3%以下であり、性
能基準を満たし、無処理材に比べて有意な差を示した。
又、カワラタケ及びナミダタケに対して処理材は重量減
少率が0であり、従って、いずれの供試菌に対しても処
理材は優れた防腐効力を有することがわかる。
【0031】実施例4 本防蟻効力試験に用いたコーティング剤は、実施例3に
用いた材料保存コーティング剤を使用した。試験材料は
(社)日本木材保存協会規格、第11号−1981に決
められたように木材を切断し、試験材料を作製し、実施
例3と同様に浸漬処理して防蟻効力試験の試験片とし
た。防蟻効力試験は、(社)日本木材保存協会規格、第
11号−1981「塗布、吹付け、浸漬用木材防蟻剤の
防蟻効力試験方法(1)室内試験方法」に準じ、総合試
験を行った。その結果を表3に示す。
【0032】
【0033】表3からわかるように、耐候操作の有無に
かかわらず重量減少率は2.7%と、性能基準である3
%以下を満たしており、死虫率は100%の高い値を示
し、極めて優れた防蟻効力を有していることがわかる。
又、耐候操作の有無にかかわらず効力を有していること
から、本発明コーティング材の効力は持続性を有するこ
とが示された。
【0034】比較例1 ホウ酸の黴抵抗性試験として、ポリビニルアルコール5
%、エチルアルコール92%、ホウ酸3%、及びポリビ
ニルアルコール5%、エチルアルコール87%、ホウ酸
8%をそれぞれ溶解してコーティング剤とした。これを
実施例2と同じように、(社)日本木材保存協会規格、
第2号−1979に準じ、ブナ材を用いて試験材料とし
た。この試験材料を前記のコーティング剤に2時間浸漬
した後、60℃で2時間乾燥して防黴効力試験の試験片
とした。この試験片を(社)日本木材保存協会規格、第
2号−1979「木材用防黴剤の防黴効力試験法」に準
じ防黴効力試験を行った結果を表5に示す。 表5から分かるように、ホウ酸の黴抵抗性は、どの供試
菌に対してもほとんど無いことが明らかである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式、R'n M(OR) m-n (式中、R′は
    アルキル基、フェニル基、フッ化アルキル基である有機
    性官能基、ORはアルコキシ基、Mはケイ素、チタン、
    ジルコニウム、アルミニウムである金属、mは前記金属
    の原子価、nは0、1又は2を示す)で表される金属ア
    ルコキシド又はそれらの混合物に、ホウ素化合物をドー
    ピングし、金属アルコキシドの加水分解・重縮合により
    得られる防腐、防黴、防蟻効力を有するコーティング
    剤。
JP8258793A 1993-03-17 1993-03-17 防腐、防黴、防蟻効力を有するコーティング剤 Pending JPH06271792A (ja)

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