JPH06269294A - 光学活性1−アリール−3−クロロ−1−プロパノール又はそのカルボン酸エステルの製造法 - Google Patents

光学活性1−アリール−3−クロロ−1−プロパノール又はそのカルボン酸エステルの製造法

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JPH06269294A
JPH06269294A JP8793693A JP8793693A JPH06269294A JP H06269294 A JPH06269294 A JP H06269294A JP 8793693 A JP8793693 A JP 8793693A JP 8793693 A JP8793693 A JP 8793693A JP H06269294 A JPH06269294 A JP H06269294A
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aryl
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美智夫 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光学純度の高い光学活性1−アリール−3−
クロロ−1−プロパノール又はそのカルボン酸エステル
を簡便かつ効率よく得る。 【構成】 3−クロロ−1−フェニル−1−プロパノー
ルなどの一般式RCH(OH)CH2 CH2 Cl(式
中、Rは置換基を有していてもよいアリール基を示す)
で表される1−アリール−3−クロロ−1−プロパノー
ルのエナンチオマー混合物と、酢酸ビニル等のカルボン
酸エステルなどとを、アルカリゲネス(Alcaligenes )
属に属する微生物由来の酵素の存在下で反応させる。立
体特異的なエステル化反応が速やかに進行するため、一
方のエナンチオマーが選択的にエステル化され、他方の
エナンチオマーが残存する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬品等の種々の生理
活性物質及びそれらの合成中間体として有用な光学活性
1−アリール−3−クロロ−1−プロパノール及びその
カルボン酸エステルの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】光学活性1−アリール−3−クロロ−1
−プロパノール又はそのカルボン酸エステルの製造法と
して、3−クロロプロピオフェノンの化学的不斉還元法
により製造する方法[米国特許第486834号、及び
Tetrahedoron Lett.,30,5207(1989)]、及びシュードモ
ナス属由来のリパーゼを用いたエステル交換法により製
造する方法(特開平1−202296号公報)などが提
案されている。しかし、前者の方法では、高価な不斉還
元剤を用いる必要がある。また、後者の方法では反応速
度が遅く、工業的製法とは言い難い。このように、従来
の方法では、光学純度の高い光学活性1−アリール−3
−クロロ−1−プロパノールやそのカルボン酸エステル
を経済的にしかも効率よく得るのが困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、光学純度の高い光学活性1−アリール−3−ク
ロロ−1−プロパノール又はそのカルボン酸エステルを
簡便かつ効率よく経済的に製造できる方法を提供するこ
とにある。
【0004】
【発明の構成】本発明者らは、前記目的を達成するため
鋭意検討した結果、1−アリール−3−クロロ−1−プ
ロパノールのエナンチオマー混合物と、カルボン酸又は
カルボン酸エステルとを、アルカリゲネス(Alcaligene
s )属に属する微生物由来の酵素の存在下で反応させる
と、立体特異的なエステル化反応が迅速に進行し、前記
エナンチオマー混合物が効率的に光学分割されることを
見出だし、本発明を完成した。
【0005】すなわち、本発明は、一般式(I) RCH(OH)CH2 CH2 Cl (I) (式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基を示
す)で表される1−アリール−3−クロロ−1−プロパ
ノールのエナンチオマー混合物と、カルボン酸又はカル
ボン酸エステルとを、アルカリゲネス(Alcaligenes)
属に属する微生物由来の酵素の存在下で反応させ、残存
する光学活性1−アリール−3−クロロ−1−プロパノ
ール又は生成する光学活性カルボン酸1−アリール−3
−クロロプロピルエステルを回収する光学活性1−アリ
ール−3−クロロ−1−プロパノール又はそのカルボン
酸エステルの製造法を提供する。
【0006】前記Rにおけるアリール基には、フェニ
ル、ナフチル、フェナントリル、アントリル基などが含
まれる。
【0007】前記アリール基の置換基としては、フッ
素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子;メチル、エチ
ル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t
−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどのC
1 〜C6 のアルキル基;ビニル、アリル、イソプロペニ
ル、3−ブテニル、4−ペンテニルなどのC2 〜C6
アルケニル基;エチニル、2−プロピニルなどのC2
6 のアルキニル基;クロロメチル、トリフルオロメチ
ルなどのC1 〜C4 のハロアルキル基;メトキシ、エト
キシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブ
トキシ、t−ブトキシなどのC1 〜C4 のアルコキシ
基;ニトロ基;シアノ基等が挙げられる。前記アリール
基は、これらの置換基の複数個により置換されていても
よい。
【0008】一般式(I)で表される化合物の具体例と
しては、3−クロロ−1−フェニル−1−プロパノー
ル、3−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−1−
プロパノール、3−クロロ−1−(2−クロロフェニ
ル)−1−プロパノール、3−クロロ−1−(3−クロ
ロフェニル)−1−プロパノール、3−クロロ−1−
(4−クロロフェニル)−1−プロパノール、3−クロ
ロ−1−(2,4−ジクロロフェニル)−1−プロパノ
ール、1−(4−ブロモフェニル)−3−クロロ−1−
プロパノール、3−クロロ−1−(4−メチルフェニ
ル)−1−プロパノール、3−クロロ−1−(4−イソ
プロピルフェニル)−1−プロパノール、3−クロロ−
1−(2,4−ジメチルフェニル)−1−プロパノー
ル、1−(4−アリルフェニル)−3−クロロ−1−プ
ロパノール、3−クロロ−1−(4−プロパルギルフェ
ニル)−1−プロパノール、3−クロロ−1−(4−ト
リフルオロメチルフェニル)−1−プロパノール、3−
クロロ−1−(2−メトキシフェニル)−1−プロパノ
ール、3−クロロ−1−(3−メトキシフェニル)−1
−プロパノール、3−クロロ−1−(4−エトキシフェ
ニル)−1−プロパノール、3−クロロ−1−(3−ニ
トロフェニル)−1−プロパノール、3−クロロ−1−
(4−ニトロフェニル)−1−プロパノール、3−クロ
ロ−1−(4−シアノフェニル)−1−プロパノール、
3−クロロ−1−(2−ナフチル)−1−プロパノール
などが挙げられる。
【0009】1−アリール−3−クロロ−1−プロパノ
ールのエナンチオマー混合物におけるR体とS体との割
合は特に制限されないが、経済性の点からラセミ体を使
用するのが有利である。
【0010】前記カルボン酸としては、分子内にカルボ
キシル基を有する化合物であればよく、置換基を有して
いてもよい脂肪酸、脂環式カルボン酸、芳香族カルボン
酸及び複素環カルボン酸が挙げられる。
【0011】置換基を有していてもよい脂肪酸には、ギ
酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イ
ソ吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸、デカン酸、ドデカン
酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、シュウ酸、マロ
ン酸、コハク酸、アジピン酸などのC1 〜C18の飽和脂
肪酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイ
ン酸、マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸
などのC1 〜C18の不飽和脂肪酸;クロロ酢酸、ジクロ
ロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、3,3,
3−トリクロロプロピオン酸、4−クロロ酪酸、6−ク
ロロヘキサン酸、18−クロロオクタデカン酸、3−ク
ロロアクリル酸などのハロゲン原子を有するC1 〜C18
の脂肪酸;メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢
酸、イソプロポキシ酢酸、ブトキシ酢酸、3−メトキシ
プロピオン酸、4−エトキシ酪酸などのC1 〜C4 アル
コキシ基を有するC1 〜C4 の脂肪酸;フェニル酢酸、
3−フェニルプロピオン酸、4−フェニル酪酸などのア
リール基を有するC1 〜C4 の脂肪酸等が含まれる。
【0012】置換基を有していてもよい脂環式カルボン
酸には、シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカル
ボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカ
ルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、シクロオクタン
カルボン酸、2−クロロシクロペンタンカルボン酸、2
−メチルシクロヘキサンカルボン酸などの無置換及びハ
ロゲン原子、C1 〜C4 アルキル基などの置換基を有す
るC4 〜C11の脂環式カルボン酸等が含まれる。
【0013】置換基を有していてもよい芳香族カルボン
酸には、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、ケイ皮
酸、2−ナフタレン酸、2−クロロ安息香酸、トルイル
酸、2−メトキシ安息香酸、3−シアノ安息香酸、4−
ニトロ安息香酸などの無置換及びハロゲン原子、C1
4 アルキル基、C1 〜C4 アルコキシ基、シアノ基、
ニトロ基などの置換基を有する芳香族カルボン酸等が含
まれる。
【0014】置換基を有していてもよい複素環カルボン
酸には、2−フランカルボン酸、2−チオフェンカルボ
ン酸、2−メチル−3−ピロールカルボン酸などの5員
複素環カルボン酸;ニコチン酸、イソニコチン酸、2−
ピラジンカルボン酸、5−クロロ−2−ピリジミンカル
ボン酸などの6員複素環カルボン酸;3−ベンゾフラン
カルボン酸、3−インドールカルボン酸、2−キノキサ
リンカルボン酸などの縮合複素環カルボン酸等が含まれ
る。
【0015】前記カルボン酸エステルとしては、分子内
にエステル基を有する化合物であればよく、前記例示の
カルボン酸のエステル、例えば、メチル、エチル、プロ
ピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチ
ル、ペンチル、ヘキシルなどのC1 〜C6 アルキルエス
テル;ビニル、イソプロペニル、1−エチルビニル、ア
リル、プロパルギル、2−ブテニル、3−ブテニル、2
−メチル−2−プロペニル、4−ペンテニルなどのC2
〜C6 アルケニル又はアルキニルエステル;クロロメチ
ル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロ
メチル、2,2,2−トリクロロエチル、4−クロロブ
チルなどのC1 〜C6 ハロアルキルエステル;メトキシ
メチル、エトキシメチル、メトキシエチル、イソプロポ
キシエチル、ブトキシブチルなどのC1 〜C4 アルコキ
シ−C1 〜C4 アルキルエステル;ベンジル、ジフェニ
ルメチル、トリチル、フェネチル、3−フェニルプロピ
ルなどのC7 〜C19アラルキルエステル;シクロプロピ
ル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、
シクロヘプチル、シクロオクチル基などのC3 〜C10
クロアルキルエステル;フェニル、1−ナフチル、2−
クロロフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリ
ル、2,3−キシリル、3−メトキシフェニルなどの無
置換又はハロゲン原子、C1 〜C4 アルキル基、C1
4 アルコキシ基などの置換基を有するアリールエステ
ル等が挙げられる。
【0016】これらのカルボン酸及びカルボン酸エステ
ルのうち、反応速度の点からカルボン酸エステルが好ま
しい。また、反応によって生成するアルコールが直ちに
アセトアルデヒド又はケトンに異性化するため逆反応が
ほぼ完全に抑制されることから、カルボン酸ビニルエス
テル、カルボン酸イソプロペニルエステルなどのカルボ
ン酸ビニルエステル類が好適に用いられる。
【0017】好ましいカルボン酸ビニルエステル類に
は、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、プ
ロピオン酸ビニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸
ビニル、酪酸イソプロペニル、吉草酸ビニル、吉草酸イ
ソプロペニルなどのC1 〜C5飽和脂肪酸ビニルエステ
ル類;クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸イソプロペニル、
トリフルオロ酢酸ビニル、4−クロロ酪酸ビニルなどの
ハロゲン原子を有するC1 〜C5 脂肪酸ビニルエステル
類;メトキシ酢酸ビニル、エトキシ酢酸イソプロペニ
ル、イソプロポキシ酢酸ビニル、ブトキシ酢酸ビニル、
3−メトキシプロピオン酸ビニル、4−エトキシ酪酸イ
ソプロペニルなどのC1 〜C4 アルコキシ基を有するC
1 〜C4 脂肪酸ビニルエステル類;安息香酸ビニル、安
息香酸イソプロペニル、o−トルイル酸ビニル、2−ナ
フタレンカルボン酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニ
ルエステル類等が含まれる。これらのうち、特に、酢酸
ビニル、酢酸イソプロペニル、酪酸ビニルなどのC1
5 飽和脂肪酸ビニルエステル類等が繁用される。
【0018】本発明で用いる酵素は、アルカリゲネス
(Alcaligenes )属に属する微生物由来の酵素であっ
て、不斉エステル化能を有するものであればよい。
【0019】前記アルカリゲネス(Alcaligenes )属に
属する微生物は、非極毛性のべん毛(周毛又は亜極毛)
を有するグラム陰性の桿状細菌であって、3−ケトラク
トースを生成せず、アミノ酸、硝酸態、アンモニア態窒
素及びクエン酸を利用すると共に、嫌気的には生育せず
好気的に生育し、顕著な色素を生成しない等の菌学的性
質を有する。前記微生物は、野生株、変異株、又は細胞
融合もしくは遺伝子操作法などにより誘導される組換え
株などの何れであってもよい。
【0020】前記酵素には、リパーゼなどが含まれる。
【0021】本発明の酵素は、前記微生物を慣用の方法
により培養することによって得ることができる。例え
ば、澱粉などの炭素源、大豆粉などの窒素源、リン酸二
カリウムなどの無機塩等を含む培地に、前記微生物を接
種し、例えば15〜40℃程度で培養した後、抽出、濾
過、遠心分離、濃縮、沈澱等の分離精製手段により、容
易に前記酵素を採取することができる。
【0022】アルカリゲネス(Alcaligenes )属に属す
る微生物由来のリパーゼの製造法については、特公昭5
8−36953号公報及び特公昭60−15312号公
報が参照でき、又、このような微生物として、例えば、
名糖PL−266号[微工研菌寄第3187号(FERM-P
No.3187 )]、名糖PL−679号[微工研菌寄第3
783号(FERM-P No.3783 )]などが挙げられる。ア
ルカリゲネス(Alcaligenes )属に属する微生物由来の
リパーゼは、例えばリパーゼPL[名糖産業(株)製]
として市販されている。
【0023】酵素の使用形態は特に限定されず、酵素を
生産する微生物の菌体をそのまま用いてもよく、また、
菌体から得られた粗酵素又は精製酵素を用いてもよい。
また、酵素は、慣用の方法により担体に固定化して用い
ることもできる。
【0024】本発明の方法においては、前記一般式
(I)で表される1−アリール−3−クロロ−1−プロ
パノールのエナンチオマー混合物と、カルボン酸又はカ
ルボン酸エステルとを、前記酵素の存在下で反応させ
る。
【0025】反応は、特に溶媒を加えることなく行って
もよく、また、溶媒中で行ってもよい。前記溶媒は反応
に悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されず、例
えば、イソブタン、イソペンタン、ペンタン、ヘキサ
ン、2−メチルペンタン、ヘプタン、オクタン、デカン
等の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素;シクロペン
タン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、クメン、シメン、メシチレ
ン、ジイソプロピルベンゼンなどの芳香属炭化水素;塩
化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジク
ロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどの
脂肪族エーテル;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピ
ランなどの脂環式エーテルなどが挙げられる。これらの
溶媒は、一種又は二種以上混合して使用できる。上記溶
媒のうち、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、塩化メチレ
ン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、トルエン、
ジイソプロピルベンゼンなどの芳香属炭化水素、ジエチ
ルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテ
ルなどの脂肪族エーテルなどが特に好適に用いられる。
【0026】前記エナンチオマー混合物の濃度は特に限
定されないが、例えば、0.1〜70%[w/v(g/
ml)]、好ましくは1〜40%[w/v(g/m
l)]程度である。
【0027】前記カルボン酸又はカルボン酸エステルの
使用量は、反応速度、経済性等を考慮して適宜定められ
るが、前記エナンチオマー混合物1モルに対して、通常
0.5〜100モル、好ましくは0.6〜30モル程度
である。
【0028】前記酵素の使用量は、目的化合物の生成量
及び光学純度を低下させない範囲で選択でき、前記エナ
ンチオマー混合物100重量部に対して、例えば1〜1
000重量部程度である。
【0029】反応温度は、用いる酵素の種類によっても
異なるが、通常0〜60℃、好ましくは4〜50℃、さ
らに好ましくは15〜45℃程度である。反応は、攪拌
下又は静置下の何れの方法で行ってもよいが、好ましく
は、攪拌下で、反応成分及び酵素を効率よく接触させる
ことによって行われる。
【0030】反応の経過は、ガスクロマトグラフィー、
薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー
などの慣用の分析手段により追跡することができる。
【0031】前記一般式(I)で表される1−アリール
−3−クロロ−1−プロパノールのエナンチオマー混合
物と、前記カルボン酸又はカルボン酸エステルとを、前
記酵素の存在下で反応させると、前記エナンチオマー混
合物のうち、一方のエナンチオマーが立体特異的かつ速
やかにエステル化されて対応するカルボン酸エステルに
変化し、他方のエナンチオマーは未反応のまま選択的に
残存する。そして、反応成分としてカルボン酸を用いた
場合には水、カルボン酸エステルを用いた場合には対応
するアルコール(但し、ビニルエステル類の場合には、
ビニルアルコール類が異性化してアセトアルデヒド又は
ケトン)が生成する。反応速度は、シュードモナス属由
来のリパーゼを用いる場合と比較して、著しく速い。
【0032】反応の結果残存する光学活性1−アリール
−3−クロロ−1−プロパノール、及び反応により生成
する光学活性カルボン酸1−アリール−3−クロロプロ
ピルエステルは、慣用の分離精製手段により回収でき
る。例えば、反応液から直接又は酵素を遠心分離や濾過
により分離除去した後、膜分離、抽出、カラムクロマト
グラフィー、薄層クロマトグラフィー、濃縮、蒸溜、場
合によっては晶析、再結晶等の通常の精製手段に供する
ことにより、前記目的化合物を容易に得ることができ
る。
【0033】なお、目的化合物の光学純度は、例えば、
光学異性体分離カラムを用いた高速液体クロマトグラフ
ィーにより測定できる。
【0034】回収した前記光学活性カルボン酸1−アリ
ール−3−クロロプロピルエステルは、慣用の方法によ
り加水分解して、対応する光学活性1−アリール−3−
クロロ−1−プロパノールに容易に変換できる。従っ
て、本発明の方法によれば、1−アリール−3−クロロ
−1−プロパノールのエナンチオマー混合物を効率的に
光学分割でき、立体配置の異なる2つのエナンチオマー
を共に高い光学純度で収率よく得ることができる。な
お、一方のエナンチオマーのみが有用である場合には、
不要のエナンチオマーを慣用の方法、例えば酸、塩基、
酵素又は加熱等によりラセミ化した後、本発明の反応原
料として用いることにより有用なエナンチオマーに変換
することができる。また、分離した酵素は、反応系に再
使用することができる。
【0035】こうして得られた光学活性1−アリール−
3−クロロ−1−プロパノール及び光学活性カルボン酸
1−アリール−3−クロロプロピルエステルは、それぞ
れ、種々の医薬品或いはその合成中間体等として好適に
利用することができる。
【0036】
【発明の効果】本発明の製造法によれば、酵素の作用に
より、立体特異的なエステル化反応が速い反応速度で進
行するため、簡便かつ効率よく経済的に、光学純度の高
い光学活性1−アリール−3−クロロ−1−プロパノー
ル及び光学活性カルボン酸1−アリール−3−クロロプ
ロピルエステルを製造することができる。
【0037】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定され
るものではない。
【0038】なお、実施例において、反応成分及び反応
生成物の定量はガスクロマトグラフィー[カラム:ガス
クロ工業(株)製Silicone OV−17 10
%、2m、温度180℃]により行い、光学純度の測定
は、光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ
ー[カラム:ダイセル化学工業(株)製キラルセルO
B、溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=19/1
(v/v)、流速:1.0ml/分、温度:40℃、波
長:220nm]により行った。
【0039】実施例1 直径21mmのねじ口試験管に、リパーゼPL[名糖産
業(株)製]0.1gを採り、これに、3−クロロ−1
−フェニル−1−プロパノールのラセミ体0.2g、酢
酸ビニル0.1ml及びn−ヘキサン5mlを加え、3
0℃で48時間振盪した。反応液をガスクロマトグラフ
ィーで分析した結果、3−クロロ−1−フェニル−1−
プロパノールの酢酸3−クロロ−1−フェニルプロピル
への変換率は20%であった。
【0040】反応液を濾過して酵素を除去し、溶媒を留
去した後、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開
液:n−ヘキサン/酢酸エチル=9/1)により、3−
クロロ−1−フェニル−1−プロパノール及び酢酸3−
クロロ−1−フェニルプロピルをそれぞれ単離し、高速
液体クロマトゲラフィーにより光学純度を測定した。そ
の結果、得られた3−クロロ−1−フェニル−1−プロ
パノールはS体であり、その光学純度は22%eeであ
った。また、得られた酢酸3−クロロ−1−フェニルプ
ロピルはR体で、その光学純度は85%eeであった。
【0041】実施例2 溶媒として、n−ヘキサンに代えてトルエン5mlを用
い、反応時間を47時間とした以外は、実施例1と同様
の方法により反応を行った。実施例1と同様に精製、分
析を行い、変換率と生成物の光学純度を求めた。その結
果、変換率は26%、得られた3−クロロ−1−フェニ
ル−1−プロパノールはS体で、その光学純度は32%
ee、得られた酢酸3−クロロ−1−フェニルプロピル
はR体で、その光学純度は90%eeであった。
【0042】実施例3 100ml容の三角フラスコに、リパーゼPL[名糖産
業(株)製]1.0g、3−クロロ−1−フェニル−1
−プロパノールのラセミ体2.0g、酢酸ビニル20m
lを採り、30℃で48時間振盪し反応を行った。その
後、実施例1と同様に精製、分析を行い、変換率と生成
物の光学純度を求めた。その結果、変換率は42%、得
られた3−クロロ−1−フェニル−1−プロパノールは
S体で、その光学純度は68%ee、得られた酢酸3−
クロロ−1−フェニルプロピルはR体で、その光学純度
は92%eeであった。
【0043】実施例4 直径21mmのねじ口試験管に、リパーゼPL[名糖産
業(株)製]0.2g、3−クロロ−1−フェニル−1
−プロパノールのラセミ体0.2g、酪酸ビニル0.4
ml及びトルエン5mlを採り、30℃で26時間振盪
し反応を行った。その後、実施例1と同様に精製、分析
を行った。その結果、変換率は41%、得られた3−ク
ロロ−1−フェニル−1−プロパノールはS体で、その
光学純度は66%eeであった。
【0044】実施例5 酪酸ビニルに代えて、酢酸イソプロペニル0.4mlを
用いた以外は、実施例4と同様に反応、精製及び分析を
行った。その結果、変換率は18%、得られた3−クロ
ロ−1−フェニル−1−プロパノールはS体で、その光
学純度は85%eeであった。
【0045】実施例6 3−クロロ−1−フェニル−1−プロパノールのラセミ
体に代えて、3−クロロ−1−(4−クロロフェニル)
−1−プロパノールのラセミ体0.2gを用いた以外
は、実施例1と同様の方法により反応、精製及び分析を
行った。その結果、変換率は22%、得られた3−クロ
ロ−1−(4−クロロフェニル)−1−プロパノールは
S体で、その光学純度は25%ee、得られた酢酸3−
クロロ−1−(4−クロロフェニル)プロピルはR体
で、その光学純度は84%eeであった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:05) (C12P 7/62 C12R 1:05)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) RCH(OH)CH2 CH2 Cl (I) (式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基を示
    す)で表される1−アリール−3−クロロ−1−プロパ
    ノールのエナンチオマー混合物と、カルボン酸又はカル
    ボン酸エステルとを、アルカリゲネス(Alcaligenes)
    属に属する微生物由来の酵素の存在下で反応させ、残存
    する光学活性1−アリール−3−クロロ−1−プロパノ
    ール又は生成する光学活性カルボン酸1−アリール−3
    −クロロプロピルエステルを回収する光学活性1−アリ
    ール−3−クロロ−1−プロパノール又はそのカルボン
    酸エステルの製造法。
  2. 【請求項2】 カルボン酸エステルとしてカルボン酸ビ
    ニルエステル類を用いる請求項1記載の光学活性1−ア
    リール−3−クロロ−1−プロパノール又はそのカルボ
    ン酸エステルの製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011207795A (ja) * 2010-03-29 2011-10-20 Ube Industries Ltd ポリカーボネートポリオールポリアクリレートの製造方法

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