JPH062666B2 - 貼付剤 - Google Patents

貼付剤

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JPH062666B2
JPH062666B2 JP8445886A JP8445886A JPH062666B2 JP H062666 B2 JPH062666 B2 JP H062666B2 JP 8445886 A JP8445886 A JP 8445886A JP 8445886 A JP8445886 A JP 8445886A JP H062666 B2 JPH062666 B2 JP H062666B2
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和生 小林
隆司 中川
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は薬物を含有する粘着剤層を支持体表面に設けた
貼付剤,特に,該薬物の経皮吸収性が高く,かつ長時間
にわたり粘着性の低下しない貼付剤に関する。
(従来の技術) 全身もしくは局部での薬効を得るために,薬物(生理活
性物質)を粘着剤層に含有する貼付剤を皮膚表面に貼付
し,該薬物を皮膚を介して吸収させることが行われてい
る。このような貼付剤を用いた経皮投与法は,従来の経
口投与法に比べて利点が多い。例えば,薬物を経口投与
すると,腸で吸収される薬物は肝臓へ循環して代謝を受
けるため,その薬効を発揮する前にかなりの量が分解さ
れてしまう。これに対して,経皮投与法では,吸収され
た薬物は体内の初回循環時に肝臓を通過しない。そのた
め,肝臓での代謝により薬効が大幅に減じるということ
がない。非ステロイド系抗炎症剤を経口投与すると胃腸
障害を生じやすいが,経皮投与ではこのような胃腸障害
が生じにくい。薬物の吸収性をコントロールすれば,薬
物が短時間に大量に吸収されるために起こる副作用を軽
減することが可能となる。長時間にわたり一定の血中濃
度を維持できれば薬物の投与回数を減らすこともでき
る。
しかし,貼付剤を用いて薬物を投与しても,該薬物が皮
膚を透過しにくく生体利用率(バイオアベイラビリテ
ィ)が低くなる場合が多い。皮膚表面の角質層は体内へ
異物が侵入するのを防ぐバリアー機能を有するため,薬
理効果を発揮しうるに充分な量の薬物が皮膚を通して吸
収されない。
角質層のバリアー機能を弱めて充分な量の薬物を吸収さ
せるべく吸収促進剤を含有させた貼付剤が製造されてい
る。例えば,特公昭57-9714号公報,特公昭58-43368号
公報,特開昭58-52216号公報,特開昭59-27978号公報,
特公昭59-7688号公報,特公昭60-19890号公報,特開昭6
0-13720号公報および特開昭60-11431号公報には,吸収
促進剤を粘着剤層に含有させた貼付剤などが開示されて
いる。
上記吸収促進剤のうち,例えば,サリチル酸,尿素,ジ
メチルスルホキシドは角質を溶解することが知られてい
るが,これらを添加しても薬物の経皮吸収性は必ずしも
良好ではない。プロピレングリコール,グリセリン,ピ
ロリドンカルボン酸ソーダなどは角質層に水分を保持さ
せ得るが,薬物吸収促進効果がほとんど認められない。
ジメチルスルホキシドなどは,皮膚を刺激して紅斑やか
ぶれを生じやすい。アジピン酸ジイソプロピルなどのジ
カルボン酸エステルや脂肪酸エステルを粘着剤層に含有
させると,粘着剤と薬物との相溶性が低下するため,薬
物が粘着剤から析出しやすい。粘着性が低下することも
ある。チオグリコール酸カルシウムなどのイオウ含有化
合物は悪臭の原因ともなる。上記化合物の他,ミリスチ
ン酸エステル,アジピン酸エステル,ラウリル硫酸エス
テル,ポリオキシエチレンアルキルエーテルなども開示
されているが,これらの吸収促進剤を用いても皮膚を通
しての薬物の吸収量は必ずしも充分であるとはいえな
い。このように,薬物を効果的に吸収させうる貼付剤は
いまだ得られていないのが現状である。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は上記従来の欠点を解決するものであり,その目
的とするところは,含有する薬物を効果的に皮膚を通じ
て吸収させうる貼付剤を提供することにある。本発明の
他の目的は,薬物の経皮吸収性を高め、かつ皮膚に対す
る刺激性がなく生体に対して安全な吸収促進剤を粘着剤
層に含有する貼付剤を提供することにある。本発明のさ
らに他の目的は、粘着剤の粘着性を低下させることがな
く,しかも,薬物が析出することがなく,かつ含有され
る薬物の変性が生じることのない吸収促進剤を含有する
貼付剤を提供することにある。
(問題点を解決するための手段) 本発明の貼付剤は,薬物,界面活性剤および脂肪酸エス
テルを含有する粘着剤層を支持体表面に設けた貼付剤で
あって,該界面活性剤が脂肪酸モノアルキロールアミド
および/または脂肪酸モノアルキロールアミドのアルキ
レンオキサイド付加物であり、該界面活性剤を形成する
脂肪酸および該脂肪酸エステルを形成する脂肪酸の炭素
数がそれぞれ6〜18であり、そのことにより上記目的が
達成される。
本発明に用いられる界面活性剤は,含有される薬物の経
皮吸収促進剤として作用する。このような界面活性剤
は,下記式で示される脂肪酸モノアルキロールアミド
(I)および/または脂肪酸モノアルキロールアミドの
アルキレンオキサイド付加物(II)である: R1CONH-R2-OH (I) R3CONH-R4O-(R5O)n-H (II) ここでR1,R3は炭素数5〜17の脂肪族炭化水素基;R2
R4は炭素数2〜6の飽和炭化水素基;R5は炭素数2〜4
の飽和炭化水素基;nは1〜40の整数である。
上記化合物を形成しうる脂肪酸は,その炭素数が6〜18
(相当するR1,R3の炭素数は5〜17)であり,好ましく
は8〜16である。炭素数が6〜18の範囲を外れると粘着
剤層に含有される薬物の吸収性が低下する。脂肪酸とし
ては,カプロン酸,エナント酸,カプリル酸,ペラルゴ
ン酸,カプリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミ
チン酸,マルガリン酸,ステアリン酸,ヘキサデセン
酸,オレイン酸,リノール酸などが挙げられる。これら
は2種以上混合して用いられてもよい。例えば,これら
の混合物であるヤシ油脂肪酸が好適に利用される。
これらの脂肪酸にモノアルキロールアミンを縮合させる
と上記化合物(I)が得られる。使用されるモノアルキ
ロールアミンは、その炭素数(R2,R4の炭素数に相当)
が2〜6である。炭素数がこの範囲内においては,炭素
数の小さいほど薬物の吸収性は良好である。モノアルキ
ロールアミンとしては,モノエタノールアミン,モノイ
ソプロパノールアミン,モノブタノールアミン,モノヘ
キサノールアミンなどがある。
上記脂肪酸モノアルキロールアミド(I)にさらにアル
キレンオキサイドを付加させると脂肪酸モノアルキロー
ルアミドのアルキレンオキサイド付加物(ポリオキシア
ルキレン脂肪酸モノアルキロールアミド)(II)が得ら
れる。アルキレンオキサイドが付加することにより耐加
水分解性が向上し,このことにより薬物の安定性が向上
する。特に薬物がアルカリ性で不安定な場合はこの効果
が著しい。アルキレンオキサイドの付加モル数は1〜40
であり,好ましくは1〜20である。付加モル数が40を越
えると薬物の吸収性が低下する。界面活性剤は2種以上
混合して用いられてもよい。アルキレンオキサイドのア
ルキレン基の炭素数は2〜4であり,エチレンオキサイ
ド,プロピレンオキサイド,ブチレンオキサイドが用い
られる。
上記界面活性剤は,粘着剤,界面活性剤および後述の脂
肪酸エステルなどを含めた粘着剤層中に0.1〜20重量
%,好ましくは0.1〜10重量%の割合で含有される。界
面活性剤の量が過少であると薬物の吸収促進効果が得ら
れない。過剰であると界面活性剤が粘着剤層から浸出す
る。
上記界面活性剤が加えられた粘着剤の初期の粘着性は良
好であるが、経時的に粘着性がやや低下し,貼付剤が皮
膚表面が剥がれやすくなる傾向がある。そのため,粘着
力の経時安定性を確保する目的で脂肪酸エステルが加え
られる。この脂肪酸エステルは,脂肪酸とアルキルアル
コールとのエステルからなり,該脂肪酸の炭素数は6〜
18,そして該アルキルアルコールの炭素数は1〜20,好
ましくは2〜14である。このような脂肪酸エステルとし
ては,ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプ
ロピル,ステアリン酸イソプロピル,ステアリン酸ブチ
ル,ミリスチン酸ミリスチル,ラウリン酸ヘキシルなど
が挙げられる。
上記脂肪酸エステルが加えられると後述の粘着剤の粘着
性が向上する。さらに,脂肪酸エステルが皮膚と粘着剤
とを馴じみやすくするため,界面活性剤による粘着性の
低下が抑制され粘着力が長時間持続する。脂肪酸エステ
ルの存在により粘着剤マトリックス中の薬物および界面
活性剤の拡散速度が大きくなるため界面活性剤の働きが
増強され,かつ粘着剤層の皮膚に対する密着性が充分で
あるため,薬物の吸収性はさらに向上する。このように
脂肪酸エステルは粘着性付与および薬物の経皮吸収促進
という両効果をあわせ持つ。
脂肪酸エステルは粘着剤層中に0.5〜50重量%,好まし
くは0.5〜20重量%の割合で含有される。過少であると
粘着性持続効果が得られない。過剰であると粘着剤層か
ら脂肪酸エステルが浸出する。
使用される薬物(生理活性物質)は経皮投与により皮膚
を透過しうるものであればよく,特に限定されない。例
えば,非ステロイド系抗炎症剤,ステロイド系抗炎症
剤,血管拡張剤,抗不整脈剤,抗高血圧剤,抗腫瘍剤,
局所麻酔剤,ホルモン剤,抗ヒスタミン剤,抗凝血剤,
利尿剤,向精神薬,睡眠薬,抗生物質が挙げられる。
非ステロイド系抗炎症剤としては,サリチル酸,アスピ
リン,アセトアミノフェン,ジクロフェナックナトリウ
ム,イブプロフェン,スリンダック,ナプロキセン,ケ
トプロフェン,フルフェナム酸,イブヘナック,フエン
ブフェン,アルクロフェナック,フェニルブタゾン,メ
ヘナム酸,ベンダザック,ピロキシカム,フルルビプロ
フェンなどがある。
ステロイド系抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン,プ
レドニゾロン,フルオシノロンアセトニド,フルドキシ
コルチド,メチルプレドニゾロン,酢酸ヒドロコルチゾ
ン,トリアムシノロンアセトニド,デキサメタゾン,酢
酸ベタメサゾン,吉草酸ジフルコルトロン,プロピオン
酸クロベタゾール,フルオシノニドなどがある。
血管拡張剤としては、ジルチアゼム,ベラパミル,四硝
酸ペンタエリスリートル,ジピリダモール,硝酸イソソ
ルビドなどがある。
抗不整脈剤としては、プロパノール,ピンドロール,キ
ニジン,アジマリン,プラジマリン,アルプレノロール
などがある。抗高血圧剤としては、クロニジンなどがあ
る。抗腫瘍剤としては,5−フルオロウラシル,1−
(2−テトラヒドロフリル)−5−フルオロウラシル,
マイトマイシンCなどがある。局所麻酔剤としては、ベ
ンゾカイン,プロカイン,リドカイン,テトラカインな
どがある。ホルモン剤としては,エストロゲン,エスト
ラジオール,テストステロン,ペロゲステロンなどのス
テロイドホルモン類;インスリンなどのペプチドホルモ
ン類;プロスタグランジンなどがある。抗ヒスタミン剤
としては、シクロヘプタジンハイドロクロライド,ジフ
ェンヒドラミン,フェンベンザミンなどがある。抗凝血
薬としてはヘパリンなどが,利尿剤としてはサイアザイ
ドなどが,向精神剤としてはスコポラミン,クロフルペ
ロールなどがある。睡眠薬としてはフェノバルビター
ル,アモバルビタールなどが;抗生物質としてはテトラ
サイクリン,クロラムフェニコールなどがある。これら
薬物の配合量は,薬物の種類,貼付剤の使用目的などに
より異なるが,通常,薬物は粘着剤層中に0.1〜30重量
%の割合で含有される。貼付剤の基剤(粘着剤)は該貼
付剤を常温で皮膚表面に長時間固定しうる粘着力があれ
ば充分であり,特に限定されない。例えばアクリル系,
ゴム系,シリコーン樹脂系などの粘着剤が利用され得,
通常,アクリル系およびゴム系の粘着剤が用いられる。
アクリル系粘着剤では、その粘着物性などから,特に,
炭素数4〜18の脂肪酸アルコールと(メタ)アクリル酸
とから得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの
(共)重合体および/または上記(メタ)アクリル酸ア
ルキルエステルとその他の官能性モノマーとの共重合体
が好適に用いられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸
ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸ヘキシル,
アクリル酸オクチル,アクリル酸2−エチルヘキシル,
アクリル酸イソオクチル,アクリル酸デシル,アクリル
酸イソデシル,アクリル酸ラウリル,アクリル酸ステア
リル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタ
クリル酸ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル
酸−2エチルヘキシル,メタクリル酸イソオクチル,メ
タクリル酸デシル,メタクリル酸イソデシル,メタクリ
ル酸ラウリル,メタクリル酸ステアリルなどがある。
上記官能性モノマーには,水酸基を有するモノマー,カ
ルボキシル基を有するモノマー,アミド基を有するモノ
マー,アミノ基を有するモノマーなどが挙げられる。水
酸基を有するモノマーとしては,2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート,ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ
ートがある。カルボキシル基を有するモノマーとして
は,アクリル酸,メタクリル酸などのα−β不飽和カル
ボン酸;マレイン酸などのマレイン酸モノアルキルエス
テル;マレイン酸;クマル酸;クロトン酸などがある。
無水マレイン酸もマレイン酸と同様の(共)重合成分を
与える。アミド基を有するモノマーとしては,アクリル
アミド,ジメチルアクリルアミド,ジエチルアクリルア
ミドなどのアルキル(メタ)アクリルアミド;ブトキシ
メチルアクリルアミド,エトキシメチルアクリルアミド
などのアルキルエーテルメチロール(メタ)アクリルア
ミド,ジアセトンアクリルアミド,ビニルピロリドンな
どがある。アミノ基を有するモノマーとしては,ジメチ
ルアミノアクリレートなどがある。
上記以外の共重合性モノマーとして酢酸ビニル,スチレ
ン,α−メチルスチレン,塩化ビニル,アクリロトリ
ル,エチレン,プロピレン,ブタジエンなどが挙げら
れ,これが,共重合されていてもよい。粘着剤中には
(メタ)アクリル酸アルキルエステルが(共)重合成分
として50重量%以上含有されることが好ましい。
ゴム系粘着剤としては,天然ゴム,合成イソプレンゴ
ム,ポリイソブチレン,ポリビニルエーテル,ポリウレ
タン,ポリブタジエン,スチレン−ブタジエン共重合
体,スチレン−イソプレン共重合体などが用いられる。
シリコーン樹脂系粘着剤としては,ポリオルガノシロキ
サンなどのシリコーンゴムが用いられる。
上記粘着剤中には必要に応じて各種配合剤,例えばロジ
ン系樹脂,ポリテルペン樹脂,クマロン−インデン樹
脂,石油系樹脂,テルペンフェノール樹脂などの粘着性
付与剤;液状ポリブテン,鉱油,ラノリン,液状ポリイ
ソプレン,液状ポリアクリレートなの可塑剤;充填剤;
老化防止剤;が添加される。
貼付剤の支持体としては、貼付剤に通常利用される支持
体が用いられる。このような支持体の素材としては,酢
酸セルロース,エチルセルロース,ポリエチレンテレフ
タレート,酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体,ナイロ
ン,エチレン−酢酸ビニル共重合体,可塑化ポリ塩化ビ
ニル,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリ塩化ビニリデ
ン,アルミニウムなどがある。これらは,例えば,単層
のシート(フィルム)や二枚以上の積層(ラミネート)
体として用いられる。アルミニウム以外の素材は織布や
不織布として利用してもよい。
上記支持体表面に薬物と界面活性剤とを含有す粘着剤層
が形成され貼付剤が得られる。該粘着剤層を形成するに
は,溶剤塗工法,ホットメルト塗工法,電子線硬化エマ
ルジョン塗工法など種々の塗工法が用いられる。なかで
も溶剤塗工法が好適に用いられる。溶剤塗工法で粘着剤
層を形成するには,例えば,粘着剤を適当な溶媒で稀釈
し,これに薬物,界面活性剤,脂肪酸エステル,さらに
必要に応じて配合剤を加えて均一に混合し,得られた溶
液を支持体表面に塗布・乾燥する。溶液を直接支持体表
面に塗布せずにシリコーン樹脂などをコーティングした
剥離紙上に塗布し,乾燥後に支持体と密着させてもよ
い。このような剥離紙は,使用時まで貼付剤の粘着剤層
表面を保護するために用いられる。溶剤塗工法以外の塗
工法においても粘着剤層形成後,この表面を保護するた
めに剥離紙を配することが推奨される。粘着剤層の厚み
も使用目的により異なるが,通常,30〜200μmであ
る。30μmを下まわると必要量の薬物を含有することが
できず,粘着性も不充分である。200μmを上まわると
支持体付近の粘着剤層に含有される薬物が充分に拡散せ
ず,薬物放出性が低下する。
(作用) 本発明の貼付剤を皮膚表面に貼付すると含有される薬物
が容易に皮膚を通して吸収される。その詳細な機構は不
明であるが,界面活性剤が皮膚に作用し,その蛋白質を
変性させ,含水率を上昇させて軟化させるためと考えら
れる。そのため,通常,薬物を透過しにくい皮膚表面の
角質層も軟化して含有される薬物が容易に皮膚を通して
吸収されると考えられる。さらに,脂肪酸エステルが含
有されるため,粘着力が向上し,かつ界面活性剤に起因
する粘着力の低下が起こらない。貼付剤を長時間皮膚表
面に貼付することが可能となるため,薬物が効果的に吸
収される。脂肪酸エステルにより薬物および界面活性剤
の粘着剤中の拡散速度が増大し,その結果,薬物の初期
吸収性能も向上する。充分に拡散された界面活性剤が皮
膚に作用するため,薬物の経皮吸収率も上昇する。この
ような貼付剤では,必要な薬効を得るのに充分な量の薬
物が容易に吸収されるため,従来のように大量の薬物を
粘着剤層に有させる必要がない。しかも,有効血中濃度
を長時間にわたって維持することが可能である。つま
り,薬物のバイオアベイラビリティが高い。このような
経皮吸収促進効果および薬効持続効果は従来の吸収促進
剤を用いたときよりもはるかに高い。しかも本発明に用
いる界面活性剤や脂肪酸エステルは皮膚に対する刺激性
がなく安全性が高い。含有される薬物を変性させること
もない。粘着剤との相溶性にも優れる。薬物と粘着剤と
の相溶性に変化を与えないため,調製後の粘着剤層表面
から薬物が析出することもない。
(実施例) 以下に本発明を実施例について説明する。
実施例1 (A)貼付剤の調製:アクリル酸2−エチルヘキシル97
重量%およびアクリル酸3重量%からなる共重合体を22
重量%の割合で含有する酢酸エチル溶液を調製した。こ
の溶液100重量部(固形分)に薬物として硝酸イソソル
ビド7.7重量部,界面活性剤としてポリオキシエチレン
(2)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド2.0重量部お
よび脂肪酸エステルとしてミリスチン酸イソプロピル5.
0重量部を添加し,充分に撹拌した。これをポリアミド
フィルムに塗布し,70℃のギアオーブンで20分間乾燥
し,粘着剤層の厚みが50μmの貼付剤を得た。
(B)貼付剤の性能評価:(A)項で得られた貼付剤を
50cm2の大きさに裁断し,これを日本白色家兎の脱毛し
た背部の皮膚表面に貼付した。0.5時間後,1時間後,
2時間後,4時間後,6時間後,10時間後および24時間
後に家兎の耳介静脈から採血し、遠心分離を行って血漿
を得た。これをヘキサンで抽出し,Ni63ECDガスクロマ
トグラフィーにかけ薬物濃度を測定した。その結果を表
1に示す。
別に(A)項で得られた貼付剤を直径36mmに打抜き,こ
れをヒト上腕内側へ貼付した。8時間後および24時間後
の貼付剤の皮膚への粘着性および皮膚表面の発赤,かぶ
れなどの障害の有無を調べた。その結果を表2に示す。
表2において,○は貼付剤が皮膚表面に良好に密着して
いる状態を,△は貼付剤がやや剥がれやすい状態を,そ
して×は容易に剥がれ落ちる状態を示す。
比較例1 (A)貼付剤の調製:界面活性剤および脂肪酸エステル
を加えなかったこと以外は実施例1(A)項と同様であ
る。
(B)貼付剤の性能評価:本比較例(A)項で得られた
貼付剤を用い,実施例1(B)項と同様に行った。その
結果を表1および表2に示す。
比較例2 (A)貼付剤の調製:脂肪酸エステルを加えなかった
こと以外は実施例1(A)と同様である。
(B)貼付剤の性能評価:本比較例(A)項で得られた
貼付剤を用い,実施例1(B)項と同様に行った。その
結果を表1および表2に示す。
比較例3 (A)貼付剤の調製:界面活性剤を加えなかったこと以
外は実施例1(A)と同様である。
(B)貼付剤の性能評価:本比較例(A)項で得られた
貼付剤を用い,実施例1(B)項と同様に行った。その
結果を表1および表2に示す。
表1および表2から,本発明の貼付剤は皮膚を通して薬
物吸収性が良好であり,しかも粘着力が経時的に低下し
ないことがわかる。他方,界面活性剤のみを添加した場
合も薬物吸収性はかなり良好ではあるが,粘着力が経時
力に低下することが明らかである。脂肪酸エステルのみ
を添加した場合は粘着力が良好であり,薬物の初期吸収
性も良好であるが,薬物吸収性が経時的に低下するのが
認められる。
実施例2 (A)貼付剤の調製:アクリル酸2−エチルヘキシル60
重量部,酢酸ビニル40重量部からなる共重合体を20%の
割合で含有する酢酸エチル溶液を調製した。この溶液10
0重量部(固形分)に酢酸ヒドロコルチゾン0.6重量部,
ラウリン酸イソプロパノールアミド1.5重量部およびパ
ルミチン酸イソプロピル5重量部を均一に配合した。こ
れをポリエチレンフィルム上に塗布して70℃で20分間乾
燥し,粘着剤層の厚みが50μmの貼付剤を得た。
(B)貼付剤の性能評価:本実施例(A)項で得られた
貼付剤を用い,in vitro拡散セルによる薬物透過性試験
を行った。24時間後の薬物透過率(%)を表3に示す。
試験法は次のとおりである。
in vitro拡散セルによる薬物透過性試験法:開口径が25
cmのフランツ形拡散セルを準備する。フランツ形拡散セ
ルのレセプター部にはpH7.2に調整した生理食塩水を入
れ,その外壁部には37℃の温水を循環させてレセプター
部の温度を一定に保つ。ラットの脱毛処理した脇腹部の
表皮(4cm×4cm)に(A)項で得られた貼付剤の試験
片(直径2cmの円形)を貼付し,該表皮をセルに装着す
る。皮膚とレセプター液面との間に気泡が入らないよう
に注意してレセプター液を満たす。24時間後にレセプタ
ー液をサンプリングし,逆相系カラムを用いた高速液体
クロマトグラフィーにより薬物濃度を測定し,下記式か
ら薬物透過率を算出する。
実施例3 (A)貼付剤の調製:ラウリン酸イソプロパノールアミ
ドおよびパルミチン酸イソプロピルの代わりにポリオキ
シエチレン(5)カプロン酸モノエタノールアミド1.5
重量部およびカプリル酸ミリスチル5重量部を用いたこ
と以外は,実施例2(A)項と同様である。
(B)貼付剤の性能評価:本実施例(A)項で得られた
貼付剤を用い,実施例2(B)項と同様に行なった。そ
の結果を表3に示す。実施例4 ラウリン酸イソプロパノールアミドおよびパルミチン酸
イソプロピルの代わりにステアリン酸モノエタノールア
ミド1.5重量部およびラウリン酸ヘキシル5重量部を用
いたこと以外は実施例2(A)項と同様である。
(B)貼付剤の性能評価:本実施例(A)項で得られた
貼付剤を用い,実施例2(B)項と同様に行なった。そ
の結果を表3に示す。
比較例4 (A)貼付剤の調製:界面活性剤および脂肪酸エステル
を加えなかったこと以外は実施例2(A)項と同様であ
る。
(B)貼付剤の性能評価:本比較例(A)項で得られた
貼付剤を用いて実施例2(B)項と同様に行った。その
結果を表3に示す。
比較例5 (A)貼付剤の調製:ラウリン酸イソプロパノールアミ
ドおよびパルミチン酸イソプロピルの代わりに尿素5重
量部を用いたこと以外は実施例2(A)項と同様であ
る。
(B)貼付剤の性能評価:本比較例(A)項で得られた
貼付剤を用い,実施例2(B)項と同様に行った。その
結果を表3に示す。
比較例6 (A)貼付剤の調製:ラウリン酸イソプロパノールアミ
ドおよびパルミチン酸イソプロピルの代わりにアジピン
酸ジイソプロピル5重量部を用いたこと以外は実施例2
(A)項と同様である。
(B)貼付剤の性能評価:本比較例(A)項で得られた
貼付剤を用い,実施例2(B)項と同様に行った。その
結果を表3に示す。
比較例7 (A)貼付剤の調製:ラウリン酸イソプロパノールアミ
ドおよびパルミチン酸イソプロピルの代わりにプロピレ
ングリコール5重量部を用いたこと以外は実施例2
(A)項と同様である。
(B)貼付剤の性能評価:本比較例(A)項で得られた
貼付剤を用い,本実施例2(B)項と同様に行った。そ
の結果を表3に示す。
表3から本発明の貼付剤は,従来の吸収促進剤を用いた
貼付剤に比べて皮膚を介しての薬物透過性に優れている
ことがわかる。
(発明の効果) 本発明によれば,このように,脂肪酸モノアルキロール
アミドおよび/または脂肪酸モノアルキロールアミドア
レキルンオキサイド付加物,および脂肪酸エステルを粘
着剤層中に含有させることにより,薬物の経皮吸収性に
極めて優れ,かつ長時間にわたり粘着性の低下しない貼
付剤が得られる。薬物の吸収性が優れているため,必要
な薬理効果を得るために従来のように大量の薬物を粘着
剤層に含有させる必要がない。粘着性が経時的に低下し
ないため,長時間にわたり薬理の有効血中濃度を維持し
うる。用いられる脂肪酸モノアルキロールアミドなどの
界面活性剤や脂肪酸エステルは皮膚に対する刺激性がな
いため,長時間貼付してもかぶれが生じない。薬物を変
質させることもない。さらに,このような化合物が原因
となって薬物が析出することもない。このような貼付剤
では,種々の薬物を経皮吸収させることができる。その
ため,含有される薬物の種類により各種の医療用に利用
されうる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】薬物,界面活性剤および脂肪酸エステルを
    含有する粘着剤層を支持体表面に設けた貼付剤であっ
    て, 該界面活性剤が脂肪酸モノアルキロールアミドおよび/
    または脂肪酸モノアルキロールアミドのアルキレンオキ
    サイド付加物であり, 該界面活性剤を形成する脂肪酸および該脂肪酸エステル
    を形成する脂肪酸の炭素数がそれぞれ6〜18である, 貼付剤。
  2. 【請求項2】前記アルキレンオキサイドの付加モル数が
    1〜40である特許請求の範囲第1項に記載の貼付剤。
  3. 【請求項3】前記界面活性剤が粘着剤層中に0.1〜20重
    量%の割合で,そして前記脂肪酸エステルが0.5〜50重
    量%の割合で含有される特許請求の範囲第1項に記載の
    貼付剤。
  4. 【請求項4】前記粘着剤層の粘着剤がアクリル系粘着剤
    またはゴム系粘着剤である特許請求の範囲第1項に記載
    の貼付剤。
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