JPH06261935A - 医療用シリコーンゴム製カテーテル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 シリコーンゴムチューブの内周面又は外周面
の滑り性を向上させることができる医療用シリコーンゴ
ム製カテーテルを提供すること。 【構成】 シリコーンゴムチューブ１の内周面又は外周
面にＰＶＣのプラスチゾルを混練したシリコーンゴムを
コーティング層２の如くコーティングしている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、医療用カテーテル、
特にシリコーンゴムチューブの内周面（内腔面）又は外
周面の滑り性を向上させたカテーテルに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】シリコーンゴム製カテーテルは医療の分
野において多方面で使用されている。生体組織に対して
刺激が少なく生理的にも安定であり、体内に留置して治
療、検査するのに都合良い適度の柔軟性を有している。
しかし反面、この柔軟性は患者にとっては都合が良い
が、このようなシリコーンゴム製カテーテルを体内に挿
入する医師の立場からすると、柔らかくて挿入し難く、
特に緊急に挿入しなければならないようなケースには非
常に困る。このようなときはカテーテルのシリコーンゴ
ムチューブの内腔にガイドワイヤーなどを挿入して腰を
もたせ、挿入し易いようにしたうえで体内に挿入し、目
的の部位に達したらガイドワイヤーのみ抜去する手技が
用いられている。しかしながら、シリコーンゴムの表面
の摩擦抵抗が大きいため、このガイドワイヤーをシリコ
ーンゴムチューブの内腔に挿入しずらく、抜去し難いと
いう問題点があり、このような問題点を解決するために
色々な特許が出願されている。

【０００３】たとえば、特開平3-123563号の特許請求の
範囲第２項にはシリコーンゴムチューブの内腔面に無機
又は有機の微粉末混合したシリコーンゴムをコーティン
グしたとあり、同第３項にはシリコーンゴムチューブの
内腔面にベントナイトを混合したシリコーンゴムをコー
ティングしたとあるが、このように単にシリコーンゴム
に滑剤として微粉末を混合しても、微粉末はゴムの薄い
コーティング層の中に取り込まれてしまい、なかなか思
うように表面には露出せず、露出していないと滑り性は
現われ難い。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記のように微粉末を
混合したシリコーンゴムをコーティングすることによ
り、滑り性を保とうとする方法は、どうしても微粉末の
表面をベースのシリコーンゴムの薄いコーティング層が
被ってしまい、あまり滑り性は期待できない。

【０００５】そこでこの発明は、前記のような従来の問
題点を解決し、シリコーンゴムチューブの内腔が形成さ
れる内周面又は外周面の滑り性を向上させることができ
るカテーテルを提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段と作用】前記目的を達成す
るため、この発明は、図１，２に示すようにシリコーン
ゴムチューブ１，１′の内周面又は外周面にＰＶＣのプ
ラスチゾルを混練したシリコーンゴムをコーティング層
２，２′の如くコーティングしたことを特徴とする。コ
ーティング層２が内周面に形成されたシリコーンゴムチ
ューブ１は、その内周面の滑り性から例えばガイドワイ
ヤー等をその内周面、すなわち内腔面に沿って挿入する
のに好適であり、一方、コーティング層２′が外周面に
形成されたシリコーンゴムチューブ１′は、その外周面
の滑り性から例えばこれをプラスチックなどからなる外
套管内に挿入するのに好適である。ＰＶＣのプラスチゾ
ルとは塩化ビニルのペーストレジンのような粉末状樹脂
を可塑剤に分散させたゾル状のペーストで、通常は充填
剤、安定剤、顔料などの配合剤を含み、どろっとした液
体である。これが高温に加熱されると、ゾルの中のレジ
ンに可塑剤が溶け込み、冷えると塩化ビニル樹脂ができ
ることになる。そして加熱するとゲル化するこのＰＶＣ
のプラスチゾルをシリコーンゴムの中に混練することに
より、滑り性を向上させることが可能となる。このＰＶ
Ｃのプラスチゾルをシリコーンゴムに混練した混合物を
トルエン、キシレン等の溶剤で希釈することにより、任
意の膜厚を得ることができる。

【０００７】ここに用いるシリコーンゴムは、被着体に
対し接着力があれば、どのようなタイプのシリコーンゴ
ムでも構わないが、滑り性を付与するにはＰＶＣのプラ
スチゾルが充分にゲル化する温度でこの混合物を加熱す
る必要がある。この理想ゲル化条件は180℃で15分であ
るが、必ずしもこの条件にこだわる必要はなく、滑り性
が現われる加熱条件を設定すれば良い。

【０００８】この発明の基本的成分は前記のように、
接着性のあるシリコーンゴム、ＰＶＣのプラスチゾ
ル、溶剤の３つよりなっている。そしてこれらの割合
は、のシリコーンゴムを10ｇに対しのＰＶＣのプラ
スチゾルはその種類、組成にもよるが、一般に市販され
ている可塑剤量が塩化ビニルのレジン100重量部に対
し、約80重量部程度入っているものを１ｇ〜90ｇ、そし
ての溶剤は10ml〜500mlが適している。に対しが
あまり少ないと滑り性が悪く、またがに対しあまり
多過ぎると滑り性は良くなるが、被着体であるシリコー
ンゴムチューブに対し接着力が弱くなり、実用的でな
い。に対しが少ないときは問題ないが、に対し
をある一定以上加えた場合に膜厚を厚くすると、チュー
ブが硬くなり過ぎて、曲げるとクラックが入り実用的で
ない。の溶剤は、との混合物を希釈して適度の膜
厚を得るために用いるが、滑り性が低下しない程度まで
なるべく希釈した方が好ましい。またそれにより作業性
も向上する。の溶剤はを溶かすことができ、に対
しても相溶性があるトルエンやキシレンＭＥＫ，ＴＨＦ
等の溶剤が適している。

【０００９】

【実施例】加熱硬化型シリコーン10ｇに市販の可塑剤量
が塩化ビニルレジン100重量部に対し80重量部入ってい
るＰＶＣのプラスチゾルを20ｇ加え、ゆっくり撹拌した
後、トルエンを約110ml少しずつ撹拌しながら加えて溶
かした液をコーティング液とする。このコーティング液
を用い、硬さ60、内径7.0mm、外径9.5mm、長さ４０ｃｍ
のシリコーンゴムチューブの内周面をコーティングした
後、１８０℃で約15分間オーブンにて加熱硬化させた。
このようにして作った内周面が処理されたチューブをＡ
とし、無処理のチューブをＢとする。尚、このチューブ
Ａの断面図は図１のようになっている。この２本のチュ
ーブをいずれも図３のように7.5cm離してＵ字状に板の
上に固定した後、これらのチューブの内周面に外径が4.
5mmの一定長の細いＰＶＣ製のチューブ３を挿入して一
定の位置にセットし、次にＰＶＣ製のチューブ３の一端
に株式会社大場計器製作所製の丸型（棒）ばね秤り４の
フックを取り付け、約20cm/２秒の速度でばね秤り４を
引き、ＰＶＣ製のチューブ３がこれらのチューブから抜
けるまでの最大荷重をばね秤り４の目盛から読み、これ
を表面摩擦抵抗値とした。このようにしてＡとＢのチュ
ーブの表面摩擦抵抗値を測定した。結果は表１の通りで
あった。

【００１０】

【表１】

【００１１】以上のように内周面を処理したチューブＡ
は、表面摩擦抵抗が小さく、滑り性に優れていることが
判る。このようにシリコーンゴムにＰＶＣのプラスチゾ
ルを混練することにより、シリコーンゴムとＰＶＣのア
モロファスなコーティング層２，２′が形成され、そし
てこの層の中のＰＶＣがコーティング層２，２′の表面
を滑り易くしているように思われる。このようなコーテ
ィングは、その目的や用途によりシリコーンゴムチュー
ブ１，１′の内・外周面を問わず自由に行うことが可能
である。そしてこのコーティング層２，２′は滑り性を
保つ以外にコーティングした部分の硬さを増し、いわゆ
るシリコーンゴムチューブ１，１′の腰を強くする効果
もある。この目的をより効果的にするには、硬度の高い
ＰＶＣのプラスチゾルを使用すれば良い。

【００１２】

【発明の効果】この発明は前記のようであって、シリコ
ーンゴムチューブの内周面又は外周面にＰＶＣのプラス
チゾルを混練したシリコーンゴムをコーティングしたの
で、シリコーンゴムチューブの内周面又は外周面の滑り
性を向上させることができる。また、コーティングされ
たコーティング層は滑り性を保つ以外にコーティングし
た部分の硬さを増し、これによりいわゆるシリコーンゴ
ムチューブの腰を強くする効果もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明のコーティング層が内周面に形成され
たシリコーンゴムチューブの断面図である。

【図２】この発明のコーティング層が外周面に形成され
たシリコーンゴムチューブの断面図である。

【図３】ＰＶＣ製のチューブがシリコーンゴムチューブ
から抜けるまでの最大荷重をばね秤りにより測定してい
る状態を示す図面である。

【符号の説明】

１，１′ シリコーンゴムチューブ ２，２′ コーティング層

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリコーンゴムチューブの内周面又は外
   周面にＰＶＣのプラスチゾルを混練したシリコーンゴム
   をコーティングしたことを特徴とする医療用シリコーン
   ゴム製カテーテル。