JPH06249299A - 湿式クラッチ装置 - Google Patents

湿式クラッチ装置

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JPH06249299A
JPH06249299A JP3339993A JP3339993A JPH06249299A JP H06249299 A JPH06249299 A JP H06249299A JP 3339993 A JP3339993 A JP 3339993A JP 3339993 A JP3339993 A JP 3339993A JP H06249299 A JPH06249299 A JP H06249299A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 半クラッチのペダル位置を安定させて運転操
作性の向上を図ることができ、また、エンジン回転力の
伝達効率を向上させることができると共に、発熱量を抑
えることができる湿式クラッチ装置を提供する。 【構成】 エンジンで回転され、遊星歯車機構のキャリ
アとして機能する回転体5と、サンギヤ16と、プラネ
タリギヤユニット17と、プラネタリギヤユニット17
の自転により駆動されるオイルポンプ35と、プラネタ
リギヤユニット17の自転を禁止するブレーキシリンダ
37と、ブレーキシリンダ37をコントロールする制御
バルブユニット39と、アキュムレータ41及びリザー
ブタンクとを備え、前記制御バルブユニット39は、ク
ラッチ切断操作時には、ブレーキシリンダ37をリザー
ブタンクに接続し、クラッチ接続操作時には、ブレーキ
シリンダ37をリザーブタンクから切り離す一方、アキ
ュムレータ41に接続することを特徴とする湿式クラッ
チ装置11である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用エンジンと変
速機との間に介在され、特に、手動変速機に好適な湿式
クラッチ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車用エンジンと変速機との間
に介在される湿式クラッチ装置としては、遊星歯車機構
を利用したものが知られている。この種の湿式クラッチ
装置は、エンジンで回転され、キャリアとして機能する
回転体と、回転体に相対回転自在に支持されたプラネタ
リギヤと、出力軸に設けられたサンギヤと、回転体に対
するプラネタリギヤの相対回転を禁止する回転力断続操
作機構等を備えて構成されている。
【0003】回転力断続操作機構は、回転体に対してプ
ラネタリギヤが相対回転(自転)した場合に駆動される
オイルポンプと、オイルポンプの発生油圧で作動し、プ
ラネタリギヤに摩擦係合するブレーキ手段と、オイルポ
ンプとブレーキ手段との間に介在され、クラッチペダル
に連動して操作される制御弁と、オイルポンプとブレー
キ手段との間に介在され、油圧回路を保護するリリーフ
弁等を有している。ブレーキ手段の摩擦係合部分は、オ
イル内に配置されている。従って、このブレーキ手段
は、耐磨耗性及び冷却性能に優れたものとなっている。
【0004】また、制御弁は、2位置切換弁であり、ク
ラッチペダルが踏込操作された場合に、ブレーキ手段及
びオイルポンプをリザーブタンクに接続する。従って、
ブレーキ手段が発揮する摩擦係合力は解除され、プラネ
タリギヤは、自転しながらサンギヤ外周を公転可能とな
り、回転体と出力軸の相対回転が許容される。つまり、
エンジンの回転力は、プラネタリギヤの公転により吸収
され、このクラッチ装置が切断状態になる。
【0005】一方、制御弁は、クラッチペダルの踏込操
作が解除された場合、オイルポンプとブレーキ手段を接
続する。従って、ブレーキ手段が摩擦係合力を発揮し、
プラネタリギヤが自転及び公転不能となり、回転体と出
力軸とが一体的に回転する。つまり、エンジンの回転力
は、回転体から遊星歯車機構を介して出力軸に伝達さ
れ、クラッチ装置が接続状態になる。
【0006】なお、プラネタリギヤが自転不能になるこ
とで、オイルポンプは停止するが、この場合には、ブレ
ーキ手段は油圧ロック状態となっており、クラッチ装置
の接続状態を維持できる。また、オイルポンプや配管等
に発生するオイルの内部漏れ等に起因してブレーキ手段
の摩擦係合力が減少した場合には、プラネタリギヤが自
転し始める。従って、オイルポンプが再び駆動され、ブ
レーキ手段の摩擦係合力を補い、クラッチ装置の接続状
態が維持される。
【0007】この様な構成にすることで、装置自体が軽
量化され、クラッチ空転時の慣性質量を減少させること
が可能となり、湿式クラッチ装置を手動変速機に適した
ものにすることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の湿式クラッチ装置においては、オイルポンプの発生
油圧で直接ブレーキ手段を作動させているので、オイル
ポンプの回転速度に応じて、ブレーキ手段がプラネタリ
ギヤに摩擦係合し始めるまでの時間が相違し、所謂半ク
ラッチ状態となるクラッチペダルの位置が変化するとい
う問題があった。また、上述したように、オイルポンプ
や配管等の所謂内部漏れに起因して、クラッチの接続中
であっても、回転体と出力軸との相対回転が断続的に発
生し、クラッチ装置としての回転力伝達効率が悪化する
と共に、発熱量が多くなる等の問題もあった。
【0009】本発明は、上述の問題点を解決するために
なされたもので、半クラッチのペダル位置を安定させて
運転操作性の向上を図ることができ、また、油圧回路の
内部漏れに起因したブレーキ手段の摩擦係合力の減少を
防止して、エンジン回転力の伝達効率を向上させること
ができると共に、発熱量を抑えることができる湿式クラ
ッチ装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、エンジンで回転され、遊星歯車機
構のキャリアとして機能する回転体と、変速機へと延び
る出力軸と、この出力軸と一体に回転するサンギヤと、
回転体に相対回転自在に支持され、サンギヤに噛み合う
プラネタリギヤと、回転体に設けられ、回転体に対する
プラネタリギヤの相対回転により駆動される流体圧ポン
プと、回転体に設けられると共に流体圧ポンプに接続さ
れ、流体圧の供給を受けて作動し、回転体に対するプラ
ネタリギヤの相対回転を禁止するプラネタリギヤロック
手段と、回転体に設けられ、プラネタリギヤロック手段
をコントロールする制御バルブと、回転体にそれぞれ設
けられ、制御バルブに接続されたアキュムレータ及びド
レン通路とを備え、前記アキュムレータは、流体圧ポン
プの発生流体圧を蓄え、前記制御バルブは、クラッチ切
断操作時には、プラネタリギヤロック手段をドレン通路
に接続し、クラッチ接続操作時には、ギヤロック手段を
ドレン通路から切り離す一方、アキュムレータに接続す
ることを特徴とする湿式クラッチ装置である。
【0011】
【作用】湿式クラッチ装置が接続操作されると、制御バ
ルブはギヤロック手段をギヤロック手段から切り離す一
方、アキュムレータに接続する。従って、ギヤロック手
段がプラネタリギヤの回転体に対する相対回転(自転)
を禁止する。この場合、ギヤロック手段の作動流体圧は
アキュムレータから供給されるので、ギヤロック手段の
作動流体圧は安定供給される。そして、プラネタリギヤ
の自転が禁止されると、プラネタリギヤはサンギヤに対
して公転不能となり、これらは一体となって回転する。
これにより、エンジン側の回転力が、回転体、プラネタ
リギヤ及びサンギヤを介して出力軸に伝達される。
【0012】一方、湿式クラッチ装置が切断操作される
と、制御バルブは流体圧ポンプ及びギヤロック手段をド
レン通路に接続する。従って、ギヤロック手段の作動が
停止され、プラネタリギヤがサンギヤに対して公転可能
になる。これにより、エンジン側の回転力は、プラネタ
リギヤがサンギヤに対して公転することで吸収され、サ
ンギヤ側には伝達されない。
【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付図面に基づい
て詳述する。図1は、本発明を適用した湿式クラッチ装
置の一実施例を示し、例えば、自動車用エンジンと手動
変速機(ともに図示せず)間に介在されるものである。
この湿式クラッチ装置1は、フライホイール3、回転体
5、遊星歯車列及び油圧回路等より構成されている。フ
ライホイール3は、エンジンのクランク軸7の後端面に
螺着固定され、従って、クランク軸7と一体的に回転す
る。
【0014】回転体5は、環状のケーシング11と、こ
のケーシング11を後方より油密に塞ぐカバー12等よ
り構成され、フライホイール3の後面に固定されてい
る。この回転体5には、油圧回路が形成されており、ま
た、その内部空間には、遊星歯車列が収容されている。
つまり、この回転体5は、フライホイール3と一体回転
し、遊星歯車列のピニオンキャリアとして機能する。ま
た、回転体5の中心には、出力軸14の先端部分が挿入
されており、この出力軸14の先端部分は、スプライン
軸となっている。なお、出力軸14は、手動変速機まで
延びている。
【0015】この回転体5内には、オイルが充填されて
いる。従って、遊星歯車列の潤滑や、後述するブレーキ
シリンダ37のピストン37aとプラネタリギヤユニッ
ト17との摩擦係合面の冷却等が良好に行われる。遊星
歯車列は、キャリアとして機能する回転体5の他に、サ
ンギヤ16と、プラネタリギヤユニット17等より構成
されている。サンギヤ16は、環状をなす回転体5の内
周位置に配置され、出力軸14の先端部にスプライン嵌
合している。従って、サンギヤ16と出力軸14とは、
一体回転する。
【0016】また、プラネタリギヤユニット17は、回
転体5の周方向に等間隔で、例えば4箇所に配置され、
それぞれ回転体5に軸支されている。プラネタリギヤユ
ニット17の各々は、図2に示すように、シャフト2
4、ハブディスク20、ディスクプレート21及びリン
グギヤ22等より構成されている。シャフト24は、大
径部24aと、大径部24aの後端面から延びる小径部
24bより構成され、これらは一体に形成され、出力軸
14と平行に延びている。大径部24aは、回転体5の
所定位置に一対の軸受け26,26を介して回転自在に
支持されている。また、大径部24aの軸線方向中央部
分は、スプライン軸となっている。一方、小径部24b
は、後述するオイルポンプ35の駆動軸となっている。
【0017】ハブディスク20は、大径部24aにスプ
ライン嵌合するハブ20aと、ハブ20aの前端部から
径方向に延びる環状ディスク20bより構成され、これ
らは一体に成形されている。また、ディスクプレート2
1は、ハブ20aの後端部に嵌め込まれ、環状ディスク
20bとの間に所定の間隙を存している。なお、環状デ
ィスク20bとディスクプレート21は、ねじ27で固
定されている。ねじ27は、例えば、周方向に等間隔を
おいた4箇所で、環状ディスク20bとディスクプレー
ト21とを締結している。
【0018】リングギヤ22は、外周面に歯部を有して
いる。このリングギヤ22は、環状ディスク20bとデ
ィスクプレート21間の外周縁の間に配置され、一対の
軸受け28,28を介して環状ディスク20b及びディ
スクプレート21に相対回転自在に支持されている。な
お、リングギヤ22の歯部は、環状ディスク20b等よ
りも径方向外方に突出し、サンギヤ16と噛み合ってい
る。
【0019】このリングギヤ22の内周面には、ねじ2
7に対応したトーションスプリング29が取り付けられ
ている。図3に基づき具体的に説明すると、このトーシ
ョンスプリング29は、一対の板ばね群から構成されて
おり、板ばね群の各々は、互いに長さの異なる3枚の板
ばね31〜33より構成されている。これら各板ばね3
1〜33は、リングギヤ22の内周面から延出し、ねじ
27を挟持している。従って、トーションスプリング2
9は、撓みながらリングギヤ22と環状ディスク20b
間の回転力の伝達を行う。
【0020】油圧回路は、図4に示すように、オイルポ
ンプ35、一対のブレーキシリンダ37、制御バルブユ
ニット39、アキュムレータ41及びリザーブタンク4
3等より構成されている。オイルポンプ35は、2箇所
にポートを有しており、各ポートは、油路51,52を
介してそれぞれブレーキシリンダ37及びリザーブタン
ク43に接続されている。ブレーキシリンダ37に延び
る油路51の途中には、各ポート近傍に位置して逆止弁
53が介在されている。逆止弁53は、オイルポンプ3
5からブレーキシリンダ37に向かう流れを許容する一
方、ブレーキシリンダ37からオイルポンプ35に向か
う流れを禁止する。また、リザーブタンク43に延びる
油路52の途中には、各ポート近傍に位置して逆止弁5
4が介在されている。逆止弁54は、リザーブタンク4
3からオイルポンプ35に向かう流れを許容する一方、
オイルポンプ35からリザーブタンク43に向かう流れ
を禁止する。
【0021】また、油路51の途中には、制御バルブユ
ニット39が介在されている。そして、この制御バルブ
ユニット39には、アキュムレータ41及びリザーブタ
ンク43が接続されている。なお、図中リサーブタンク
43を2箇所に記載しているが、これらを共通のリザー
ブタンク43としても良い。次に、油圧回路の各構成要
素について、具体的に説明する。
【0022】オイルポンプ35は、図1に示すように、
外接形歯車ポンプである。また、このオイルポンプ35
は、回転体5のプラネタリギヤユニット17の後方位置
に配設されている。従って、このオイルポンプ35は、
プラネタリギヤユニット17と同様に、4箇所に設けら
れている。このオイルポンプ35は、シャフト24の小
径部24bにスプライン嵌合する主動側ギヤ45と、回
転体5に回転自在に支持されるシャフト46と、シャフ
ト46にスプライン嵌合している従動側ギヤ47等より
構成されている。従って、このオイルポンプ35は、シ
ャフト24、即ち、プラネタリギヤユニット17が回転
体5に対して相対回転した場合に駆動される。
【0023】各ブレーキシリンダ37は、図2に示すよ
うに、回転体5に設けられ、プラネタリギヤユニット1
7を軸線方向前後側から挟むように配置されている。各
ブレーキシリンダ37のピストン37aは、ディスクプ
レート21の環状ディスク20b及びディスクプレート
21に向けて前進する。従って、各ブレーキシリンダ3
7の圧力室37b内の圧力が上昇すると、各ピストン3
7aが環状ディスク20b及びディスクプレート21に
摩擦係合し、回転体5に対するプラネタリギヤユニット
17の相対回転を禁止する。なお、各ピストン37aの
摩擦係合面には、ディスクパッド37cが固着されてい
る。
【0024】制御バルブユニット39は、回転体5の複
数箇所に設けられ、運転席のクラッチペダル(図示せ
ず)で操作される。つまり、クラッチペダルが踏込操作
されると、図1中2点鎖線で示すレリーズフォーク56
が回動してレリーズベアリング57が前進し、各制御バ
ルブユニット39のコントロールピン58を押し込む。
この制御バルブユニット39は、図5に詳しく示すよう
に、アキュムレータ41及びリザーブタンク43とオイ
ルポンプ35との接続を切り換えるポンプ側制御バルブ
39Aと、アキュムレータ41及びリザーブタンク43
とブレーキシリンダ37との接続を切り換えるブレーキ
側制御バルブ39Bと、これらの制御バルブ39A,3
9Bを切換操作するコントロールピン58等より構成さ
れている。
【0025】コントロールピン58は、出力軸14と平
行に延びている。コントロールピン58の基端58a近
傍位置には、フランジ58bが一体に形成されている。
このフランジ58bの所定位置には、当該コントロール
ピン58の軸線方向に延びる貫通孔58dが穿設されて
いる。また、コントロールピン58の先端58cは、レ
リーズベアリング57側に突出している。このコントロ
ールピン58のフランジ58bと回転体5のケーシング
11との間には、リターンスプリング59が縮設されて
おり、コントロールピン58は、レリーズベアリング5
7側に押圧されている。
【0026】ポンプ側制御バルブ39Aは、第1及び第
2ポペット弁64,65、第1制御弁64、制御ピスト
ン63等より構成され、第1ポペット弁64はアキュム
レータ41とオイルポンプ35とを接続する油路70の
途中に、第2ポペット弁65及び第1制御弁61はオイ
ルポンプ35とリザーブタンク43とを別々に接続する
各油路71,72の途中に、制御ピストン63は油路7
0と油路72とを連通させる油路73の途中にそれぞれ
介在されている。
【0027】第1制御弁61は、弁体61a、ロッド6
1b及びリターンスプリング61c等より構成され、弁
体61aとロッド61bとは一体化されている。弁体6
1aは、油路72の油孔72aを油密に閉塞する(図6
の状態)。この弁体61aの周面には、複数の溝が設け
られており、従って、弁体61aが油孔72aを開いた
場合、第2ポペット弁65内は、リザーブタンク43側
に連通される。
【0028】また、ロッド61bは、コントロールピン
58のフランジ58bの貫通孔58d内に摺動自在に挿
入されると共に、係止板74により脱落不能とされてい
る。従って、図5に示すように、コントロールピン58
が押し込まれた場合には、弁体61aはリターンスプリ
ング61cを縮めながら移動し、油孔72aを開く。一
方、コントロールピン58がリターンスプリング59に
押圧されて図中右側に移動する場合、弁体61aが油孔
72aを閉塞した後には、当該コントロールピン58は
第1制御弁61に対して相対移動する(図7)。
【0029】第1ポペット弁64は、弁体64aをリタ
ーンスプリング64bで押圧して油路70を閉塞する。
また、第2ポペット弁65は、弁体65aをリターンス
プリング65bで押圧して油路71を閉塞する(図6の
状態)。この弁体65aには、孔65dが穿設されてい
る。また、制御ピストン63は、プッシュロッド63a
を有している。この制御ピストン63aは、オイルポン
プ35側の油圧を受けて図中左側に移動する。そして、
左側に移動した場合には、プッシュロッド63aで第1
制御弁61を開弁させることができる。なお、制御ピス
トン63は、図中左側に移動した場合であっても油路7
3を閉塞しない。
【0030】ブレーキ側制御バルブ39Bは、第3及び
第4ポペット弁66,67、第2制御弁62、スプール
弁81等より構成され、第3ポペット弁66はアキュム
レータ41とブレーキシリンダ37とを接続する油路7
6の途中に、第4ポペット弁67及び第2制御弁62は
ブレーキシリンダ37とリザーブタンク43とを別々に
接続する各油路77,78の途中にそれぞれ介在されて
いる。
【0031】第2制御弁62は、弁体62a及びリター
ンスプリング62cより構成されている。弁体62a
は、油路78の油孔78aを油密に閉塞できる。リター
ンスプリング62cは、弁体62aとコントロールピン
58のフランジ58bとの間に配設されている。従っ
て、このリターンスプリング62cがコントロールピン
58に押し縮められた場合、弁体62aは油路78の油
孔78aを油密に閉塞する(図6に示す状態)。また、
弁体62aの周面には、複数の溝が設けられており、従
って、弁体62aが油孔78aを開いた場合、第4ポペ
ット弁67内は、リザーブタンク43側に連通される。
そして、弁体62aが油孔78aを閉塞した場合、この
弁体62aはスプール弁81を図中右側に移動させる
(図6)。
【0032】スプール弁81は、各ランド部81a,8
1cと、ブッシュロッド81bより構成されている。こ
のスプール弁81は、油路77内の油圧が上昇すると、
その受圧面積の大小関係で図中左側に移動し、ランド部
81aで第3ポペット弁66の内側を閉塞する。一方、
図中左側に移動した場合であっても、スプール弁81は
油路78を閉塞することはない。また、スプール弁81
のプッシュロッド81bは、第2制御弁62に向けて延
びており、従って、スプール弁81が図中左側に移動し
た場合には、第2制御弁62の弁体62aを同方向に移
動させて油孔78aを開くことができ、逆に、弁体62
aが図中右側に移動した場合には、このスプール弁81
は同方向に移動される。
【0033】第3ポペット弁66は、弁体66aをリタ
ーンスプリング66bで押圧して油路76を閉塞する。
また、第4ポペット弁67は、弁体67aをリターンス
プリング67bで押圧して油路77を閉塞する(図
6)。なお、各弁体66a,67aには、孔66d,6
7dが穿設されている。なお、アキュムレータ41及び
リザーブタンク43も、回転体5の所定位置に設けられ
ている。
【0034】以下、この湿式クラッチ装置1の作動につ
いて説明する。先ず、この湿式クラッチ装置1のエンジ
ントルクの伝達について説明する。エンジンのトルク
は、クランク軸7からフライホイール3及び回転体5に
伝達される。従って、プラネタリギヤユニット17が出
力軸14を中心に回転(公転)する。
【0035】この場合、各ブレーキシリンダ37が非作
動で、回転体5に対するプラネタリギヤユニット17の
相対回転(自転)が許されるときには、このプラネタリ
ギヤユニット17はサンギヤ16に対して公転する。従
って、回転体5は出力軸4に対して相対回転し、エンジ
ンの回転トルクは主動変速機側には伝わらず、湿式クラ
ッチ装置1は切断状態になる。
【0036】一方、各ブレーキシリンダ37が作動する
と、回転体5の回転力は出力軸14に伝達される。つま
り、各ブレーキシリンダ37は、プラネタリギヤユニッ
ト17のハブディスク20及ディスクプレート21を摩
擦係合するので、回転体5に対するハブディスク20等
の自転が禁止される。また、ハブディスク20側のねじ
27を挟むトーションスプリング29は、ハブディスク
20等とリングギヤ22との相対回転を制限するので、
リングギヤ22の自転も禁止される。
【0037】このリングギヤ22は、出力軸14にスプ
ライン嵌合されたサンギヤ16に噛み合っており、リン
グギヤ22は自転不能であることから、リングギヤ2
2、即ち、プラネタリギヤユニット17はサンギヤ16
に対して公転することができず、プラネタリギヤユニッ
ト17とサンギヤ16とは一体となって出力軸14とと
もに回転し、従って、回転体5の回転力はプラネタリギ
ヤユニット17及びサンギヤ16を介して出力軸14に
伝達され、湿式クラッチ装置1は接続状態になる。
【0038】回転体5の回転力をプラネタリギヤユニッ
ト17が伝達する際、トーションスプリング29は撓み
ながらハブディスク20側の回転力をリングギヤ22に
伝達する。従って、この湿式クラッチ装置1は、エンジ
ントルクを手動変速機に伝達する際、トーションスプリ
ング29でトルク変動を吸収する。次に、この湿式クラ
ッチ装置1の断続操作について説明する。
【0039】湿式クラッチ装置1が接続されている状態
から、運転者がクラッチペダルを踏込操作すると、レリ
ーズベアリング57(図1)が前進し、制御バルブユニ
ット39のコントロールピン58を図5に示す位置まで
押し込む。コントロールピン58が押し込まれると、各
制御バルブ39A,39Bの各制御弁61,62が操作
される。
【0040】ポンプ側制御バルブ39Aの第1制御弁6
1は、ロッド61bがコントロールピン58のフランジ
58bに係止されていることから、コントロールピン5
8の移動に伴い引っ張られ、油路72の油孔72aを開
口させる。従って、第2ポペット弁65の弁体65aの
内側(リターンスプリング65b側)の圧力が、リザー
ブタンク43内と等しくなる。このため、オイルポンプ
35で発生した油圧は、弁体65aを押し開き、油路7
1を介してリザーブタンク43に逃がされる。また、制
御ピストン63は、オイルポンプ35の発生油圧を受
け、第1制御弁61側に移動する。
【0041】一方、ブレーキ側制御バルブ39Bの第2
制御弁62は、コントロールピン58の移動に伴い、リ
ターンスプリング62cのばね力を失い、油路78の油
孔78aを開口させる。従って、第4ポペット弁67の
弁体67aの内側(リターンスプリング67b側)の圧
力がリザーブタンク43内と等しくなる。このため、ブ
レーキシリンダ37の作動油圧は、弁体67aを押し開
き、油路77を介してリザーブタンク43に逃がされ
る。これにより、ブレーキシリンダ37とプラネタリギ
ヤユニット17との摩擦係合が解かれ、上述したよう
に、湿式クラッチ装置1が切断状態になる。
【0042】また、この状態において、ブレーキシリン
ダ37から流出する油圧は、スプール弁81を第2制御
弁62側に移動させる。これにより、スプール81のラ
ンド部81aが第3ポペット弁66の弁体66aの内側
(リターンスプリング66b側)を閉塞する。従って、
アキュムレータ41はブレーキシリンダ37及びリザー
ブタンク43から切り離される。
【0043】運転者がクラッチペダルを踏込操作し続け
ると、制御バルブユニット39のコントロールピン58
は図5に示す位置に保持され、従って、湿式クラッチ装
置1の切断状態は継続される。この状態より、クラッチ
ペダルが接続操作されると、レリーズベアリング57が
後退し始め、制御バルブユニット39のコントロールピ
ン58が、リターンスプリング59のばね力で戻され
る。
【0044】そして、コントロールピン58が図6に示
す位置まで戻ると、第1制御弁61の弁体61aが油路
72の油孔72aを閉塞する。従って、第2ポペット弁
65の弁体65a内の圧力がオイルポンプ35側の圧力
と等しくなり、弁体65aはリターンスプリング65b
に押圧されて油路71を閉じる。このため、オイルポン
プ35の発生油圧は、第1ポペット弁64側に作用す
る。従って、アキュムレータ41内の圧力がオイルポン
プ35の発生油圧に比べて著しく低い場合、オイルポン
プ35の発生油圧は、第1ポペット弁64を開弁させて
油路70を流れ、アキュムレータ41内に補給される。
【0045】また、この状態で、アキュムレータ41内
の圧力が所定圧まで上昇すると、リターンスプリング6
4bの作用により第1ポペット弁64が開弁する。従っ
て、オイルポンプ35の発生油圧で油路70内の圧力が
上昇するが、この圧力を受けて制御ピストン63が移動
して第1制御弁61を開弁させる。つまり、オイルポン
プ35の発生油圧は、第1制御弁61のリターンスプリ
ング61cのばね力よりも十分大きくなると、油路72
を介してリザーブタンク43に逃がされる。
【0046】一方、第2制御弁62は、コントロールピ
ン58の移動に伴いリターンスプリング62cがばね力
を発揮するので、弁体62aで油路78の油孔78aを
閉塞すると共に、スプール81を図中右側に移動させ
る。油孔78aが閉塞されると、第4ポペット弁67の
弁体67a内がブレーキシリンダ37側の圧力と等しく
なり、この弁体67aは、リターンスプリング67bに
押圧されて油路77を閉じる。
【0047】また、スプール弁81が図中右側に移動す
ると、第3ポペット弁66の内側が油路77に連通され
るので、アキュムレータ41内の圧力が、この第3ポペ
ット弁66を押し開き、油路76を介して各ブレーキシ
リンダ37に供給される。従って、各ブレーキシリンダ
37が作動し始め、湿式クラッチ装置1が所謂半クラッ
チ状態になる。
【0048】この場合、各ブレーキシリンダ37にはア
キュムレータ41の圧力が供給されるので、オイルポン
プ35の回転状態、即ち、エンジンの運転状態とは無関
係に作動圧を安定供給できる。そして、運転者の足がク
ラッチペダルから完全に離れ、コントロールピン58が
図7に示す位置にまで戻されると、各制御弁61,62
のリターンスプリング61a,62aは最大のばね力を
発揮し、弁体61a,62aは各油孔72a,78aを
油密に閉塞する。
【0049】アキュムレータ41から各ブレーキシリン
ダ37に供給された作動油圧は、ピストン37aが環状
ディスク20b及びディスクプレート21に完全に摩擦
係合するのに十分な値にまで上昇する。従って、プラネ
タリギヤユニット17が自転を禁止され、湿式クラッチ
装置1は接続状態になると共に、オイルポンプ35の作
動は停止される。
【0050】オイルポンプ35の作動が停止すると、第
1ポペット弁64が油路70を閉じ、アキュムレータ4
1内の圧力がオイルポンプ35側に逆流するのを防止す
る。また、各ブレーキシリンダ37の作動油圧も十分に
上昇していることから、アキュムレータ41との圧力差
も殆ど無くなり、第3ポペット弁66は油路76を閉
じ、ブレーキシリンダ37を油圧ロックする。この場
合、ブレーキシリンダ37や、このブレーキシリンダ3
7までの油圧回路途中にオイルの内部漏れが発生する
が、この内部漏れに起因したブレーキシリンダ37の作
動油圧の低下は、アキュムレータ41から第3ポペット
弁66の弁体66aの油孔66dを介してこのポペット
弁66の内側を通過して補われる(図7中矢印)。従っ
て、各ブレーキシリンダ37は、プラネタリギヤユニッ
ト17の自転禁止状態を維持し、オイルポンプ35を駆
動することなく、湿式クラッチ装置1の接続状態を維持
できる。
【0051】なお、ブレーキシリンダ37の作動油圧が
過大になった場合には、油路77内の圧力が上昇するこ
とからスプール81が図中左側に移動して第2制御弁6
2を開弁させる。つまり、ブレーキシリンダ37の作動
油圧は、第2制御弁62のリターンスプリング62cの
設定圧よりも十分に大きくなると、第4ポペット弁67
を開弁してリザーブタンク43に逃がされる。このた
め、従来の湿式クラッチ装置において、オイルポンプと
ブレーキシリンダ間に介在されていたリリーフバルブを
特別に設ける必要がなくなる。
【0052】また、湿式クラッチ装置1の接続状態か
ら、クラッチペダルを踏込操作した場合、コントロール
ピン58の移動開始とともに第2制御弁62のリターン
スプリング62cのばね力が減少し始め、従って、ブレ
ーキシリンダ35の作動油圧を受けてスプール弁81が
直ぐに図中左側に移動するので、アキュムレータ41と
ブレーキシリンダ35とは素早く切断され、アキュムレ
ータ41内の蓄圧を有効に利用できる。このため、アキ
ュムレータ41の小型化を図ることができる。
【0053】なお、本実施例においては、レリーズベア
リング57をクラッチペダルで操作する構成としたが、
このクラッチペダル操作に加えて、例えば、運転席の操
作パネルに操作スイッチを設け、この操作スイッチのオ
ン・オフ切換でもレリーズベアリング57、即ち、湿式
クラッチ装置1を操作できる構成としても良い。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように本発明を適用した湿
式クラッチ装置では、エンジンで回転され、遊星歯車機
構のキャリアとして機能する回転体と、変速機へと延び
る出力軸と、この出力軸と一体に回転するサンギヤと、
回転体に相対回転自在に支持され、サンギヤに噛み合う
プラネタリギヤと、回転体に設けられ、回転体に対する
プラネタリギヤの相対回転により駆動される流体圧ポン
プと、回転体に設けられると共に流体圧ポンプに接続さ
れ、流体圧の供給を受けて作動し、回転体に対するプラ
ネタリギヤの相対回転を禁止するプラネタリギヤロック
手段と、回転体に設けられ、プラネタリギヤロック手段
をコントロールする制御バルブと、回転体にそれぞれ設
けられ、制御バルブに接続されたアキュムレータ及びド
レン通路とを備え、前記アキュムレータは、流体圧ポン
プの発生流体圧を蓄え、前記制御バルブは、クラッチ切
断操作時には、プラネタリギヤロック手段をドレン通路
に接続し、クラッチ接続操作時には、ギヤロック手段を
ドレン通路から切り離す一方、アキュムレータに接続す
ることを特徴とするものである。
【0055】このため、流体圧ポンプの回転速度に影響
されることなく、ブレーキ手段に作動流体圧を安定供給
することができる。この結果、半クラッチ状態となるク
ラッチペダルの位置を一定にすることができ、運転操作
性が向上する。また、流体圧ポンプや配管等の内部漏れ
に起因して減少するブレーキ手段の作動流体圧をアキュ
ムレータから補給し、ブレーキ手段の係合力を継続でき
るので、クラッチ装置としてのエンジン回転力の伝達効
率を向上させることができると共に、発熱量も減少させ
ることができる等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した湿式クラッチ装置の一実施例
を示す断面図である。
【図2】図1の湿式クラッチ装置のプラネタリギヤユニ
ットを示す断面図である。
【図3】図2のプラネタリギヤユニットのトーションス
プリングを示す断面図である。
【図4】図1の湿式クラッチ装置の操作系を示す油圧回
路図である。
【図5】図4の制御バルブユニットを示し、クラッチ切
断状態における断面図である。
【図6】図5の制御バルブユニットの作動状況を示し、
半クラッチ状態における断面図である。
【図7】図5の制御バルブユニットの作動状況を示し、
クラッチ接続状態における断面図である。
【符号の説明】
1 湿式クラッチ装置 3 フライホイール 5 回転体 7 クランク軸 14 出力軸 16 サンギヤ 17 プラネタリギヤユニット 35 オイルポンプ 37 ブレーキシリンダ 39 制御バルブユニット 41 アキュムレータ 43 リザーブタンク 57 レリーズベアリング 58 コントロールピン

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンで回転され、遊星歯車機構のキ
    ャリアとして機能する回転体と、変速機へと延びる出力
    軸と、この出力軸と一体に回転するサンギヤと、回転体
    に相対回転自在に支持され、サンギヤに噛み合うプラネ
    タリギヤと、回転体に設けられ、回転体に対するプラネ
    タリギヤの相対回転により駆動される流体圧ポンプと、
    回転体に設けられると共に流体圧ポンプに接続され、流
    体圧の供給を受けて作動し、回転体に対するプラネタリ
    ギヤの相対回転を禁止するプラネタリギヤロック手段
    と、回転体に設けられ、プラネタリギヤロック手段をコ
    ントロールする制御バルブと、回転体にそれぞれ設けら
    れ、制御バルブに接続されたアキュムレータ及びドレン
    通路とを備え、 前記アキュムレータは、流体圧ポンプの発生流体圧を蓄
    え、前記制御バルブは、クラッチ切断操作時には、プラ
    ネタリギヤロック手段をドレン通路に接続し、クラッチ
    接続操作時には、プラネタリギヤロック手段をドレン通
    路から切り離す一方、アキュムレータに接続することを
    特徴とする湿式クラッチ装置。
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