JP2000205373A - 小型車両用伝動装置 - Google Patents

小型車両用伝動装置

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JP2000205373A
JP2000205373A JP11320909A JP32090999A JP2000205373A JP 2000205373 A JP2000205373 A JP 2000205373A JP 11320909 A JP11320909 A JP 11320909A JP 32090999 A JP32090999 A JP 32090999A JP 2000205373 A JP2000205373 A JP 2000205373A
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crankshaft
clutch
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plate
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H45/00Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches
    • F16H2045/002Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches comprising a clutch between prime mover and fluid gearing

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トルクコンバータ等の流体伝動手段を備える
小型車両伝動装置において,クリープ現象を解消すると
共に,変速機の変速操作を軽快に行うことができ,しか
も構成が簡単で組立性の良好なものを提供する。 【解決手段】 クランク軸2と変速機入力軸10とをト
ルクコンバータT等の流体伝動手段を介して連結したも
のにおいて,クランク軸2上に,このクランク軸2をベ
アリング3′を介して支持するクランクケース1の一側
壁側から外方に向かって1次減速装置14,流体伝動手
段T及び変速クラッチCcと順次配置し,ベアリング
3′と,クランク軸2の先端部に螺着されるナット80
とで,変速クラッチCcの入力部材20,ポンプ羽根車
50及びタービン羽根車51のクランク軸2上での軸方
向移動を拘束する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,自動二輪車,四輪
バギーその他の小型車両に適用される伝動装置,特に,
エンジンのクランク軸と,このクランク軸と平行に配置
される,多段変速機の入力軸とを,エンジン側に連なる
ポンプ羽根車及び多段変速機側に連なるタービン羽根車
を有する流体伝動手段を介して連結したものゝ改良に関
する。
【0002】
【従来の技術】かゝる小型車両用伝動装置において,流
体伝動手段をトルクコンバータで構成したものは,特開
昭57−69163号公報に開示されているように,既
に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記公報記載の伝動装
置では,エンジンのクランク軸と,多段変速機の入力軸
とをトルクコンバータのみを介して連結して,発進時や
変速時のトルクショックをトルクコンバータの滑り作用
により吸収するようにしている。
【0004】しかしながら,トルクコンバータや流体継
手は,滑り機能を有するとは言え,エンジンから動力を
入力される限り多少ともトルク伝達を行うので,従来の
ものでは,変速機をニュートラル位置からロー位置へ切
換える発進時に,エンジンがアイドリング状態にあって
も車両の駆動車輪に多少とも動力が伝達するクリープ現
象が発生する。また走行中,変速機の切換摺動部には常
に伝達トルクに起因する摩擦が作用するため,変速機の
切換抵抗が大きく,大なる変速操作荷重を要する等の欠
点がある。またトルクコンバータは,エンジンから減速
駆動される多段変速機の入力軸に取付けられているた
め,トルクコンバータの負担する伝達トルクは比較的大
きく,したがって容量が大きい大型のトルクコンバータ
の使用を余儀なくされ,これがエンジン及び変速機を含
むパワーユニットのコンパクト化を困難にしている。
【0005】本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたも
ので,クリープ現象を解消すると共に,変速機の変速操
作を軽快に行うことができ,しかも構成が簡単で組立性
の良好な前記小型車両用伝動装置を提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に,本発明は,エンジンのクランク軸と,このクランク
軸と平行に配置される,多段変速機の入力軸とを,エン
ジン側に連なるポンプ羽根車及び多段変速機側に連なる
タービン羽根車を有する流体伝動手段を介して連結し
た,小型車両用伝動装置において,エンジンのクランク
軸上に,このクランク軸をベアリングを介して支持する
クランクケースの一側壁側から外方に向かって1次減速
装置,流体伝動手段及び変速クラッチと順次配置し,変
速クラッチの入力部材をクランク軸に,変速クラッチの
出力部材をポンプ羽根車に,タービン羽根車を1次減速
装置の駆動ギヤに,1次減速装置の被動ギヤを変速機の
入力軸にそれぞれ連結し,前記ベアリングと,クランク
軸の先端部に螺着されるナットとで,入力部材,ポンプ
羽根車及びタービン羽根車のクランク軸上での軸方向移
動を拘束したことを第1の特徴とする。
【0007】尚,前記流体伝動手段は,後述する本発明
の第1及び第2実施例のトルクコンバータT,T′に対
応し,変速クラッチの入力部材は,第1実施例のクラッ
チケーシング27及び第2実施例の駆動板71に対応
し,変速クラッチの出力部材は,第1実施例の摩擦クラ
ッチ板23及び第2実施例の出力部材84に対応する。
【0008】上記第1の特徴によれば,エンジンのアイ
ドリング時には,変速機のロー位置でも,変速クラッチ
をオフ状態に制御することにより,流体伝動手段の存在
に関わりなく変速クラッチ以降への動力伝達を遮断し
て,クリープ現象を防ぐことができる。また変速操作時
には,最初に変速クラッチをオフ状態に制御することに
より,流体伝動手段の存在に関わりなく変速機を無負荷
状態にして,トルクショックを伴うことなく変速を軽快
に行うことができる。
【0009】しかも,クランク軸は,これが減速装置を
介して駆動する変速機の入力軸より高速で回転するもの
であるから,このクランク軸に取付けられる流体伝動手
段及び変速クラッチが負担する伝達トルクは比較的小さ
く,それだけ流体伝動手段及び変速クラッチの各容量を
小さくして,それらのコンパクト化が可能となり,流体
伝動手段及び変速クラッチの併設によるも,パワーユニ
ットのコンパクト化を図ることができる。
【0010】また1次減速装置はクランクケースの側壁
に最も近接して配置されるので,該装置の作動に伴いク
ランク軸及び変速機の入力軸に加わる曲げモーメントを
最小とすることができる。また流体伝動手段は,変速ク
ラッチより重量が大であるが,その変速クラッチよりは
クランクケースの側壁に近接して配置されるので,それ
らの重量によりクランク軸に加わる曲げモーメントも最
小にすることができる。その結果,流体伝動手段及び変
速クラッチのコンパクト化と相俟って,クランク軸,変
速機入力軸及びこれらを支持するベアリングの耐久性向
上に寄与し得る。
【0011】さらに一個のナットにより,入力部材,ポ
ンプ羽根車,タービン羽根車及び駆動ギヤをクランク軸
に取付けることができ,構成の簡素化と組立性の向上を
同時に図ることができる。
【0012】しかもポンプ羽根車及びタービン羽根車間
に発生するスラスト荷重を前記ベアリング及びナットを
介してクランク軸に負担させることになり,クランクケ
ースの荷重負担を軽減して,その耐久性の向上に寄与す
ることができる。
【0013】また本発明は,第1の特徴に加えて,クラ
ンク軸が,前記ベアリング側に位置する大径軸部と,こ
の大径軸部の先端に段部を介して連なる小径軸部とを備
え,前記段部と,小径軸部の先端に螺着されるナットと
で前記入力部材を小径軸部上に挟持,固定し,前記ベア
リング及び入力部材によりポンプ羽根車及びタービン羽
根車の軸方向移動を拘束したことを第2の特徴とする。
【0014】この第2の特徴によれば,クランク軸の段
部とナットにより入力部材をクランク軸に強固に固定す
ることができる。しかもこの入力部材及び前記ベアリン
グがポンプ羽根車及びタービン羽根車の軸方向移動を拘
束するので,それら羽根車のための専用の保持部材は不
要となり,構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を,添付図面
に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0016】図1は本発明の第1実施例を示す自動二輪
車用パワーユニットの縦断平面図,図2は上記パワーユ
ニットの伝動装置の拡大縦断面図,図3は本発明の第2
実施例を示す,図2に対応した断面図である。
【0017】先ず,図1及び図2に示す本発明の第1実
施例の説明から始める。図1において,自動二輪車用パ
ワーユニットPは,エンジンE及び多段変速機Mを一体
化して構成される。そのエンジンEは,従来普通のよう
に,クランクケース1に左右一対のボールベアリング
3,3′を介して支承されるクランク軸2と,シリンダ
ブロック5のシリンダボア5aに摺動自在に嵌装されて
コンロッド6を介してクランク軸2に連接されるピスト
ン7とを備えると共に,クランク軸2を自動二輪車の左
右方向へ向けて配置される。
【0018】クランクケース1にはミッションケース8
が一体に連設されており,このミッションケース8の左
右両側壁により多段変速機Mの,クランク軸2と平行に
配置された入力軸10及び出力軸11がそれぞれボール
ベアリング12,12′;13,13′を介して支承さ
れ,これら入力軸10及び出力軸11にわたり,図1で
左側から第1速ギヤ列G1,第2速ギヤ列G2,第3速
ギヤ列G3及び第4速ギヤ列G4が順次配設される。そ
して第2速ギヤ列G2の被動ギヤG2b,及び第3速ギ
ヤ列G3の駆動ギヤG3aがシフトギヤを兼ねており,
両シフトギヤG2b,G3aが共に中立位置にあるとき
は,変速機Mはニュートラル状態にあり,シフトギヤG
2bが図1で左動又は右動すると第1速ギヤ列G1又は
第3速ギヤ列G3が確立し,シフトギヤG3aが左動又
は右動すると,第2速ギヤ列G2又は第4速ギヤ列G4
が確立するようになっている。上記シフトギヤG2b,
G3aは,図示しない公知のペダル式その他のマニュア
ル式チェンジ装置により作動される。
【0019】前記クランクケース1の右外側方におい
て,クランク軸2と変速機Mの入力軸10とは,クラン
クケース1及びミッションケース8外で互いに直列関係
に接続される変速クラッチCc,トルクコンバータT及
び1次減速装置14を介して相互に連結される。その
際,特に,変速クラッチCc,トルクコンバータT及び
1次減速装置14の駆動ギヤ14aはクランク軸2上
に,クランクケース1の右側壁側から外方に向かって駆
動ギヤ14a,トルクコンバータT及び変速クラッチC
cの順で取付けられる。そしてこれらを覆う右サイドカ
バー15aがクランクケース1及びミッションケース8
の右端面に接合される。
【0020】またクランク軸2の左端には,発電機16
のロータ17が固着され,それのステータ18は,発電
機16を覆ってクランクケース1の左端面に接合される
左サイドカバー15bに取付けられる。
【0021】変速機Mの出力軸11の左端には,ミッシ
ョンケース8外で,自動二輪車の後輪(図示せず)を駆
動するチェーン式の最終減速装置19が連結される。
【0022】図2において,クランク軸2の,クランク
ケース1の右外側方に突出する部分は,ベアリング3′
側の大径軸部2aと,この大径軸部2aの先端に環状段
部2cを介して連なる小径軸部2bとからなっている。
【0023】変速クラッチCcは,一端に端壁20a
を,また中心部にボス20bを有する円筒状のクラッチ
ケーシング20と,このクラッチケーシング20内にあ
って上記ボス20bの外周に摺動自在にスプライン嵌合
される加圧板21と,クラッチケーシング20の開放端
部に油密に固着される受圧板22と,上記加圧板21及
び受圧板22の間に介裝される環状の摩擦クラッチ板2
3とを備える。クラッチケーシング20のボス20b
は,クランク軸2の前記小径軸部2bにスプライン嵌合
すると共に,その前端面を座板65を挟んでクランク軸
2の前記環状段部2cに当接させるように配置される。
そして前記小径軸部2bの先端に螺着されるナット80
で上記ボス20bの後端面が緊締される。こうしてクラ
ッチケーシング20は,環状段部2cとナット80とで
クランク軸2上に挟持,固定される。
【0024】また摩擦クラッチ板23の内周部には,後
述するポンプ羽根車50の伝動板24がスプライン係合
される。
【0025】加圧板21は,クラッチケーシング20の
端壁20a及び周壁との間に油圧室25を画成する。こ
の油圧室25は,クラッチケーシング20のボス20b
に設けられる入口弁26を介してクランク軸2の前記第
1流入孔43aに接続されると共に,端壁20aの外周
部に設けられる出口弁28を介してクラッチケーシング
20外に開放されるようになっている。
【0026】ボス20bには,クランク軸2と平行に延
びる複数個の弁孔29と,各弁孔29を経て前記第1流
入孔43aから油圧室25に至る複数本の通孔30とが
穿設されており,各弁孔29に,スプール弁からなる入
口弁26が摺動可能に嵌合される。そして,これら入口
弁26が図2で右動位置(同図上側の入口弁26参照)
を占めると通孔30を開通し,左動位置(同図下側の入
口弁26参照)を占めると通孔30を閉鎖するようにな
っている。尚,ボス20bの通孔30とクランク軸2の
第1流入孔43aとの連通を確実にするために,クラン
ク軸2及びボス20bの互いに嵌合するスプライン部の
一部の歯を切除することが効果的である。
【0027】またクラッチケーシング20の端壁20a
の外周部には,その周方向等間隔置きに複数個の出口孔
32が穿設され,これら出口孔32を油圧室25側で開
閉し得る,リード弁からなる出口弁28の一端が端壁2
0aにかしめ結合される。
【0028】端壁20aには,さらに,各出口孔32に
連通するガイドカラー33が固着されており,各ガイド
カラー33に開弁棒31が摺動可能に嵌合される。この
開弁棒31は,ガイドカラー33内でのオイルの流れを
可能にする軸方向溝を外周面に有しており,図2で右動
位置(同図上側の開弁棒31参照)を占めると出口弁2
8の自己の弾性力による出口孔32に対する閉鎖を許容
し,左動位置(同図下側の開弁棒31参照)を占めると
出口弁28を油圧室25内方へ撓ませて出口孔32を開
放するようになっている。
【0029】上記入口弁26及開弁棒31の外端には,
共通の弁作動板34が連結される。この弁作動板34
は,クラッチケーシング20のボス20bに図2で左右
方向摺動可能に支承されるもので,その右動位置を規定
するストッパ環35がボス20bに係止され,このスト
ッパ環35に向けて弁作動板34を付勢する戻しばね3
6がクラッチケーシング20及び弁作動板34間に縮設
される。
【0030】弁作動板34には,ボス20bを同心上で
囲繞するレリーズベアリング37を介して押圧環38が
装着され,この押圧環38の外端面に変速クラッチ操作
カム軸39に固設されたアーム39aが係合し,変速ク
ラッチ操作カム軸39を往復回動することにより,戻し
ばね36と協働して,弁作動板34を入口弁26及び開
弁棒31と共に左右動させ得るようになっている。
【0031】変速クラッチ操作カム軸39には,これを
エンジンEのアイドリング時や変速機Mの変速操作時に
回動させる電動式又は電磁式のクラッチアクチュエータ
(図示せず)が連結される。
【0032】而して,エンジンEの通常運転状態では,
弁作動板34が戻しばね36の付勢力により後退位置,
即ち図2で右動位置(同図上側の弁作動板34参照)に
保持されて,入口弁26を開弁すると共に,出口弁28
の閉弁を許容する。したがって,オイルポンプ44から
圧送されたオイルが上流供給油路27aから第1流入孔
43a及び通孔30を経てクラッチケーシング20内の
油圧室25に供給されて該室25を満たすことになる。
【0033】クラッチケーシング20はクランク軸2と
共に回転しているから,クラッチケーシング20の油圧
室25のオイルは遠心力を受けて油圧を発生し,その油
圧をもって加圧板21が摩擦クラッチ板23を受圧板2
2に対して押圧することにより,加圧板21,受圧板2
2及び摩擦クラッチ板23の三者は摩擦係合される。即
ち変速クラッチCcはオン状態となって,クランク軸2
の出力トルクを摩擦クラッチ板23からトルクコンバー
タTに伝達する。
【0034】一方,エンジンEのアイドリング時又は変
速機Mの変速操作時には,クラッチアクチュエータによ
り変速クラッチ操作カム軸39を回動し,弁作動板34
を図2で左動位置(同図下側の弁作動板34参照)へ移
動し,これにより入口弁26を閉弁すると共に出口弁2
8を開弁する。その結果,上流供給油路27aから油圧
室25へのオイル供給が遮断されると共に,油圧室25
のオイルが出口孔32からクラッチケーシング20外に
排出されて油圧室25の油圧を低下させ,加圧板21の
摩擦クラッチ板23に対する押圧力が激減するため,加
圧板21,受圧板22及び摩擦クラッチ板23の三者の
摩擦係合は解かれる。即ち変速クラッチCcはオフ状態
となり,クランク軸2からトルクコンバータTへのトル
ク伝達を遮断する。クラッチケーシング20外に排出さ
れたオイルは油溜め46に還流する。
【0035】その状態から,発進のためにエンジンEの
回転が加速され,又は変速操作が完了すると,クラッチ
アクチュエータは直ちに非作動状態に戻り,弁作動板3
4を戻しばね36の付勢力で右動位置まで一気に後退さ
せ,再び入口弁26を開弁すると共に,出口弁28を閉
弁させるので,前述の作用から明らかなように変速クラ
ッチCcは,半クラッチ状態を経ずにオフ状態からオン
状態に復帰することになる。即ち,変速クラッチCcは
半クラッチ領域を持たないオン・オフ型であり,そのト
ルク容量は,トルクコンバータTのそれより大きく設定
される。
【0036】同じく図2において,トルクコンバータT
は,ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステー
タ羽根車52から構成される。そのポンプ羽根車50
は,前記受圧板22に隣接して配置されると共に,その
ボス50aがニードルベアリング53を介してクランク
軸2の前記大径軸部2aに支承される。このポンプ羽根
車50の外側面には,前記摩擦クラッチ板23の内周に
スプライン係合する伝動板24が固着されている。した
がって,摩擦クラッチ板23の伝動トルクは,この伝動
板24を介してポンプ羽根車50に伝達される。
【0037】またクランク軸2の大径軸部2aには,ポ
ンプ羽根車50のボス50aと,クランク軸2を支持す
る前記ボールベアリング3′との間に配置されるステー
タ軸60の右端部がニードルベアリング54を介して支
承され,このステータ軸60にステータ羽根車52のボ
ス52aが凹凸係合により連結される。ステータ軸60
の左端部にはステータアーム板56が固着されており,
このステータアーム板56が中間部に有する円筒部56
aの外周面がボールベアリング57を介してクランクケ
ース1に支承される。またステータアーム板56の外周
部はフリーホイール58を介してクランクケース1に支
持される。
【0038】ポンプ羽根車50に対向するタービン羽根
車51は中心部にタービン軸59が一体的に連結されて
おり,このタービン軸59の右端部はニードルベアリン
グ61を介してステータ軸60に支承され,その左端部
はステータアーム板56の円筒部56a内周面にボール
ベアリング62を介して支承される。このタービン軸5
9とクランク軸2の大径軸部2aとの間には,ステータ
軸60の横孔63を貫通して一方向クラッチ64が設け
られる。この一方向クラッチ64は,タービン軸59に
逆負荷が加えられたときオン状態となって,タービン軸
59及びクランク軸2間を直結するようになっている。
【0039】ポンプ羽根車50のボス50aは,その外
端面がクランク軸2の環状段部2cに固着された前記座
板65に回転可能に支承されるように配置される。また
ステータアーム板56とクランク軸2を支承する前記ベ
アリング3′のインナレースとの対向端面間に座板65
が介裝され,そのインナレースが座板65,ステータア
ーム板56及びベアリング62を介してタービン軸59
の外端面を回転可能に支承する。こうしてポンプ羽根車
50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52は,
ベアリング3′のインナレース及びクラッチケーシング
20によって軸方向に保持される。
【0040】ポンプ羽根車50のボス50a,タービン
軸59及びステータ羽根車52のボス52aの各間の間
隙がトルクコンバータTの流体入口47iとされ,また
タービン軸59のタービン羽根車51外側へ延びる部分
にトルクコンバータTの流体出口47oが設けられ,そ
の流体入口47iはクランク軸2の前記第2流入孔43
bと連通し,流体出口47oは,ステータ軸60の横孔
63を介してクランク軸2の前記流出孔45に連通す
る。したがって,オイルポンプ44からクランク軸2の
上流供給油路27aに供給されたオイルが第2流入孔4
3bに入ると,流体入口47iからポンプ羽根車50及
びタービン羽根車51間の油室に入り,その油室及び後
述するロックアップクラッチLcの油圧室76を満たし
た後,流体出口47oから流出孔45を経てクランク軸
2の下流供給油路27bへと流れるようになっている。
【0041】タービン軸59には,1次減速装置14の
駆動ギヤ14aが一体に形成され,これに噛合する被動
ギヤ14bが変速機Mの入力軸10にスプライン結合さ
れる。こうして構成される1次減速装置14は,クラン
クケース1とトルクコンバータTとの間に配置される。
【0042】而して,クランク軸2の出力トルクがオン
状態の変速クラッチCcを介してポンプ羽根車50に伝
達されると,そのトルクは,トルクコンバータT内を満
たしたオイルの作用によりタービン羽根車51に流体的
に伝達される。このとき,両羽根車50,51間でトル
クの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力はステー
タ羽根車52に負担され,ステータ羽根車52は,フリ
ーホイール58のロック作用によりクランクケース1に
固定的に支持される。またトルクの増幅作用が生じてい
なければ,ステータ羽根車52は,フリーホイール58
の空転作用により空転が可能となるから,ポンプ羽根車
50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52の三
者は,共に同方向へ回転する。
【0043】ポンプ羽根車50からタービン羽根車51
に伝達されたトルクは1次減速装置14を介して変速機
Mの入力軸10に伝達され,そして確立を選択された変
速ギヤ列G1〜G4,出力軸11及び最終減速装置19
を順次経て図示しない後輪へと伝達され,それを駆動す
る。
【0044】走行中のエンジンブレーキ時には,タービ
ン軸59に逆負荷トルクが加わることにより,一方向ク
ラッチ64がオン状態となるから,タービン軸59及び
クランク軸2相互が直結され,逆負荷トルクがトルクコ
ンバータTを経由することなくクランク軸2に伝達され
ることになり,良好なエンジンブレーキ効果を得ること
ができる。
【0045】ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51
間には,それらを直結状態にし得るロックアップクラッ
チLcが設けられる。このロックアップクラッチLc
は,ポンプ羽根車50の外周部に連設されてタービン羽
根車51を囲繞する円筒状のポンプ延長部50bと,タ
ービン軸59に回転自在に支承されると共に,ポンプ延
長部50bの開放端に油密に結合される受圧板70と,
タービン軸59に摺動可能に支承されて,受圧板70の
内面に対向配置される加圧板71と,これら加圧板71
及び受圧板70間に介裝される環状の摩擦クラッチ板7
2と,受圧板70及び加圧板71間に介裝されて加圧板
71を受圧板70と反対方向へ付勢する皿型の戻しばね
73とを備え,その摩擦クラッチ板72は,タービン羽
根車51の外側面に固着された伝動板79に外周部がス
プライン係合される。また受圧板70及び加圧板71
は,両者一体になって回転しながら軸方向に相対摺動し
得るように,相対向面に互いに係合するドグ74及び凹
部75が形成される。
【0046】ポンプ延長部50bの内部は受圧板70に
より油圧室76に画成され,この油圧室76は,ポンプ
羽根車50及びタービン羽根車51の対向間隙を通して
それらの内部と連通していて,オイルが満たされる。
【0047】受圧板70には,摩擦クラッチ板72の内
周側を受圧板70外へ開放する逃がし孔77と,受圧板
70の内周面を軸方向に延びる空気抜き溝78とが設け
られる。
【0048】而して,ポンプ羽根車50の回転数が所定
値未満のときは,ポンプ延長部50b内の油圧室76を
満たすオイルの遠心力が小さいことから,油圧室76の
油圧は上がらず,加圧板71は戻しばね73の付勢力に
より後退位置に戻っていて,摩擦クラッチ板72を解放
しているので,ロックアップクラッチLcはオフ状態と
なっている。
【0049】この間,油圧室76のオイルは,受圧板7
0の逃がし孔77から外部に流出するが,その量は極め
て少なくから,その後の油圧室76の昇圧に支障を来す
ものではない。
【0050】ポンプ羽根車50の回転数が所定値以上に
なると,それに応じて油圧室76のオイルの遠心力が増
大して油圧室76を昇圧させるので,その高油圧をもっ
て加圧板71は受圧板70に向かって前進して,受圧板
70との間で摩擦クラッチ板72を挟圧し,ロックアッ
プクラッチLcはオン状態となる。オン状態となったロ
ックアップクラッチLcは,ポンプ羽根車50及びター
ビン羽根車51間を直結状態にするので,両羽根車5
0,51間の滑り損失を無くし,伝動効率を高めること
ができる。
【0051】その際,摩擦クラッチ板72の内周側で
は,オイルが逃がし孔77から流出することにより昇圧
が起こらないので,加圧板71の両面間に大なる圧力差
が生じ,摩擦クラッチ板72に対する挟圧が効果的に行
われる。
【0052】かくして,ポンプ羽根車50に連なるポン
プ延長部50b内の油圧室76の遠心油圧の利用によ
り,遠心重錘を用いることなく,ロックアップクラッチ
Lcをポンプ回転数依存型とすることができる。したが
って,特別な制御手段も不要であり,しかも使用するオ
イルはトルクコンバータの作動オイルであるから,専用
のオイルポンプも不要であり,構成簡素なロックアップ
クラッチLcを安価に提供することができる。
【0053】ところで,エンジンEの運転中,オイルポ
ンプ44から吐出されたオイルは,先ず上流供給油路2
7aに入り,第1流入孔43aを経て変速クラッチCc
の油圧室25に入り,その作動と冷却に寄与し,また第
2流入孔43bを経てポンプ羽根車50及びタービン羽
根車51間の油室及びロックアップクラッチLcの油圧
室76に流入して,トルクコンバータT及びロックアッ
プクラッチLcの作動と冷却に寄与する。そして,油圧
室76から流出孔45を経て下流供給油路27bへと移
ったオイルは,クランクピン外周のニードルベアリング
49に供給され,その潤滑に寄与し,その潤滑を終えた
オイルは,クランク軸2の回転に伴い周囲に飛散してピ
ストン7等の潤滑に供される。上記オイルポンプ44
は,元来,エンジンEに潤滑用オイルを供給するもので
あるが,そのオイルを変速クラッチCcやトルクコンバ
ータT,ロックアップクラッチLcのための作動オイル
に利用するようにしたので,作動オイル供給のための専
用オイルポンプを設ける必要がなく,構成の簡素化を図
ることができる。
【0054】またクランク軸2に設けられた上流供給油
路27a及び下流供給油路27bは,オリフィス48を
介して直接的にも連通しているから,オイルポンプ44
から上流供給油路27aに送られたオイルの一部は,ト
ルクコンバータT等を経由せず,オリフィス48を通し
て下流供給油路27bへ直接移るので,オリフィス48
の選定によりトルクコンバータT及びエンジンEへのオ
イルの分配割合を自由に設定することができる。
【0055】また変速クラッチCcのクラッチケーシン
グ20は,クランク軸2の大径軸部2a及び小径軸部2
b間の環状段部2cと,小径軸部2bに螺着されたナッ
ト80とでクランク軸2上に挟持,固定されるので,一
個のナット80によりクラッチケーシング20をクラン
ク軸2に強固に固着することができる。しかもそのクラ
ッチケーシング20がクランク軸2を支承するベアリン
グ3′のインナレースと協働して,ポンプ羽根車50,
タービン羽根車51及びステータ羽根車52の軸方向位
置を保持するので,上記羽根車50,51,52のため
の専用の保持部材は不要となり,構成の簡素化と組立性
の向上を図ることができ,のみならずポンプ羽根車50
及びタービン羽根車51間に発生するスラスト荷重をベ
アリング3′及びナット80を介してクランク軸2に負
担させて,クランクケース1の荷重負担を軽減し,その
耐久性の向上に寄与することができる。
【0056】次に,図3に示す本発明の第2実施例につ
いて説明する。
【0057】変速クラッチCc′は,クランク軸2の小
径軸部2bにスプライン結合される駆動板81と,この
駆動板81の外側面に一体に突設された支持筒82に摺
動可能に支承される有底円筒状のクラッチケーシング8
3とを備える。駆動板81は,クラッチケーシング83
の端壁に隣接して配置されると共に,その外周がクラッ
チケーシング83の内周にスプライン結合される。クラ
ッチケーシング83内にはクラッチインナ84が同軸状
に配置され,クラッチケーシング83の円筒部内周に摺
動可能にスプライン係合した複数枚の環状の駆動摩擦板
85と,クラッチインナ84の外周に摺動可能に係合し
た複数枚の環状の被動摩擦板86とが交互に積層配置さ
れる。その際,これら摩擦板85,86群の内,外側に
2枚の駆動摩擦板85,85が配置され,その外側の駆
動摩擦板85の外側面に対面する受圧環87がクラッチ
ケーシング83の円筒部内周に係止される。
【0058】両側の駆動摩擦板85,85間に,これら
を離間方向に付勢する離間ばね88が縮設される。また
内側の被動摩擦板86には,クラッチインナ84の外周
に突設されたフランジ84aが対置される。
【0059】駆動板81には,複数個の遠心重錘89が
ピボット90により揺動自在に取付けられ,各遠心重錘
89の押圧腕部89aが内側の駆動摩擦板85を押圧し
得るように配置される。また駆動板81の支持筒82に
は,クラッチケーシング83の外方(図3では右方)へ
の摺動限を規定するストッパ91が設けられ,このスト
ッパ91に向けてクラッチケーシング83を付勢するク
ラッチばね92が駆動板81及びクラッチケーシング8
3間に装着される。
【0060】クラッチインナ84は,公知の逆負荷伝達
用ねじ機構93を介して環状の出力部材94が連結さ
れ,この出力部材94は,トルクコンバータT′のポン
プ羽根車50のボス50a外周にスプライン結合され
る。
【0061】クラッチケーシング83は,その外側面に
突出したボス83aを有しており,このボス83aに,
レリーズベアリング95を介してレリーズカム96が取
付けられる。このレリーズカム96には,右サイドカバ
ー15aに調節ボルト97を介して取付けられる固定カ
ム98が対置され,この固定カム98に付設されたボー
ル99が,レリーズカム96の凹部96aに係合され
る。
【0062】またレリーズカム96は,変速に先立って
作動されるクラッチアーム(図示せず)によって回動さ
れるようになっている。
【0063】而して,エンジンEのアイドリング時に
は,クランク軸2と共に回転する駆動板81の回転数が
低く,遠心重錘89の重錘部の遠心力が小さいので,押
圧腕部89aの駆動摩擦板85に対する押圧力も小さ
い。このため,両側の駆動摩擦板85,85は,離間ば
ね88の付勢力で離間していて,被動摩擦板86を解放
しており,変速クラッチCc′はオフ状態となってい
る。したがってオフ状態の変速クラッチCc′は,クラ
ンク軸2からトルクコンバータT′への動力伝達を遮断
するので,車輪ブレーキを作動せずとも,トルクコンバ
ータT′のクリープ現象による車両の微速前進を防ぐこ
とができる。
【0064】エンジンEの回転数が所定値以上に上昇す
ると,それに伴い遠心重錘89の重錘部の遠心力が増大
して,その押圧腕部89aが駆動及び被動摩擦板85,
86群を受圧環87に対して強く押圧して,駆動及び被
動摩擦板85,86間を摩擦係合させるので,変速クラ
ッチCc′は自動的にオン状態となり,クランク軸2の
動力をクラッチインナ84から出力部材94を介してト
ルクコンバータT′へと伝達する。
【0065】遠心重錘89の駆動及び被動摩擦板85,
86群に対する押圧力がクラッチばね92のセット荷重
を超えると,クラッチケーシング83がクラッチばね9
2を撓ませながら図3で左方へ変位する。しかもその
後,遠心重錘89は,クラッチケーシング83に設けら
れたストッパリング102に受け止められ,それ以上の
外方揺動を阻止されるようになっており,駆動及び被動
摩擦板85,86相互の圧接力は,クラッチばね92の
荷重以上には増加しない。
【0066】変速機Mの切換の際,それに先立って,図
示しないクラッチレバーによりレリーズカム96を回動
すると,該レリーズカム96は,その凹部96aから固
定カム98のボール99を押し出し,そのときの反力に
よりレリーズベアリング95を介してクラッチケーシン
グ83を,図3に鎖線で示すように,左方へクラッチば
ね92の荷重に抗して押動し,受圧環87を駆動及び被
動摩擦板85,86群から離間させる。一方,遠心重錘
89は,前述のようにストッパリング102により外方
揺動を阻止され,押圧腕部89aが駆動及び被動摩擦板
85,86群に対するそれまでの押圧位置で止まること
になるから,各駆動及び被動摩擦板85,86間が確実
に離間し,変速クラッチCc′はオフ状態となる。
【0067】この状態では,クランク軸2の駆動トルク
に影響されることなく,変速機Mの切換えを軽快に行う
ことができる。
【0068】変速機Mの切換え後,クラッチアームによ
りレリーズカム96を当初の位置に戻せば,変速クラッ
チCc′はクラッチばね92の付勢力と,持続される遠
心重錘89の遠心力との協働によりオン状態に復帰し,
クランク軸2の駆動トルクをトルクコンバータT′に伝
達する。
【0069】トルクコンバータT′においては,前記出
力部材94とスプライン結合されたポンプ羽根車50の
ボス50aがクランク軸2の小径軸部2bにボールベア
リング120を介して支承され,タービン羽根車51に
連なるタービン軸59は,ニードルベアリング121及
びボールベアリング122を介してステータ軸60及び
ステータ羽根車52のボス52a上に支承される。ステ
ータ羽根車52のボス52aは,ボールベアリング12
3又はニードルベアリングを介してクランク軸2の大径
軸部2aに支承されると共に,ステータ軸60にスプラ
イン結合される。
【0070】ポンプ羽根車50に連なるポンプ延長部5
0bには,タービン羽根車51の外側を覆うトルクコン
バータサイドカバー124が油密に結合され,このトル
クコンバータサイドカバー124とタービン軸59との
間に,タービン軸59からトルクコンバータサイドカバ
ー124への逆負荷トルクのみを伝達する一方向クラッ
チ64が介裝される。したがって,エンジンブレーキ
時,出力軸11に加わる逆負荷トルクが変速機M及び1
次減速装置14を経てタービン軸59に伝達されると,
上記一方向クラッチ64が接続状態となって,その逆負
荷トルクをポンプ延長部50bからポンプ羽根車50,
出力部材94へと伝達される。
【0071】ステータ軸60の外端部はボールベアリン
グ131を介してクランク軸2の大径軸部2aに支承さ
れ,このステータ軸60の外端部とクランクケース1と
の間にフリーホイール57が介裝される。このフリーホ
イール57は,ステータ軸60の外端部にその外径より
大径に形成されたカップ状のアウタレース125と,こ
のアウタレース125内でクランク軸2の大径軸部2a
に軸受ブッシュ126を介して相対回転自在に支承され
るインナレース127と,これら両レース125,12
7間に介裝されるスプラグ128とから構成される。イ
ンナレース127は,これを固定すべく一端に突設した
固定アーム127aを隣接するクランクケース1外壁に
形成された係止溝129に係合させている。スプラグ1
28は,アウタレース125がポンプ羽根車50の回転
方向と反対方向へ回転しようとすると,該アウタレース
125をインナレース127にロックするが,該アウタ
レース125がポンプ羽根車50の回転方向と同方向に
回転することは許容するようになっている。
【0072】上記固定アーム127aの半径方向内側に
おいて,オイルポンプ駆動ギヤ130がクランク軸2の
大径軸部2aにキー結合され,このギヤ130によって
オイルポンプ44が駆動されるようになっている。
【0073】逆負荷トルクが出力部材94に伝達される
と,変速クラッチCc′では,ねじ機構93の作動によ
りクラッチインナ84が図3で左方へ押動され,そのフ
ランジ84aが,内側の駆動摩擦板85を残して駆動及
び被動摩擦板85,86群を受圧環87に対して押圧す
るので,変速クラッチCc′はオン状態となる。したが
って,上記逆負荷トルクはクランク軸2に伝達され,良
好なエンジンブレーキ効果が得られる。
【0074】クランク軸2の小径軸部2bには,環状段
部2c側から大径軸部2aより大径の環状スペーサ10
3,前記ボールベアリング120のインナレース,変速
クラッチCc′の駆動板81が順次配置され,これらは
環状段部2cと,小径軸部2bの先端に螺着されるナッ
ト80とで小径軸部2b上で挟持,固定される。したが
って,ボールベアリング120に支承されるポンプ羽根
車50のボス50aは,スペーサ103と駆動板81と
で軸方向に保持されることになる。またクランク軸2の
大径軸部2a上では,クランク軸2の支承するベアリン
グ3′側からポンプ駆動ギヤ130,軸受ブッシュ12
6,ボールベアリング131,ステータ軸60,ボール
ベアリング123が順次配置されると共に,これらの軸
方向移動が前記ベアリング3′のインナレースと前記ス
ペーサ103とで拘束される。さらにステータ軸60上
では,タービン軸59及びステータ羽根車52のボス5
2aが順次配置されると共に,これらの軸方向移動がボ
ールベアリング123とフリーホイール57のアウタレ
ース125とで拘束される。結局,トルクコンバータ
T′の各羽根車50,51,52は,変速クラッチC
c′の出力部材94とベアリング3′のインナレースと
で軸方向移動が拘束される。
【0075】したがって,一個のナット80により変速
クラッチCc′の駆動板81をクランク軸2に強固に固
着することができる。しかもその駆動板81がクランク
軸2を支承するベアリング3′のインナレースと協働し
て,ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステー
タ羽根車52の軸方向位置を保持するので,上記羽根車
50,51,52のための専用の保持部材は不要とな
り,構成の簡素化と組立性の向上を図ることができ,の
みならずポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間に
発生するスラスト荷重をベアリング3′及びナット80
を介してクランク軸2に負担させて,クランクケース1
の荷重負担を軽減し,その耐久性の向上に寄与すること
ができる。
【0076】クランク軸2には,上流供給油路27a及
び下流供給油路27b間を仕切る隔壁110が設けら
れ,また上流供給油路27aには,これを更に上流側と
下流側とに二分する仕切り栓111が圧入される。
【0077】前記変速クラッチCc′において,支持筒
82内には,その開放面を蓋体100で閉塞して油室1
01が画成され,この油室101は通孔112を介して
クラッチインナ84の内周側に連通される。また油室1
01は,クランク軸2に穿設された流入孔113及び流
出孔114を介して上流供給油路27aの上流側及び下
流側に連通される。
【0078】また前記トルクコンバータT′において,
ステータ羽根車52のボス52aの右側に第1小油室1
16,左側に第2小油室117がそれぞれ設けられ,第
1小油室116は,ポンプ羽根車50及びタービン羽根
車51間の油室に連通すると共に,クランク軸2に穿設
された流入孔118を介して上流供給油路27aの下流
側に連通し,第2小油室117は,タービン根車51及
びステータ羽根車52間の油室に連通すると共に,クラ
ンク軸2に穿設された流出孔119を介して下流供給油
路27bに連通する。
【0079】さらに第1及び第2小油室116,117
は,ボス52aを支承する前記ベアリング123の各部
間隙と,ボス52aに設けた通孔115とを介して互い
に連通する。
【0080】而して,エンジンEにより駆動されるオイ
ルポンプ44からオイルが油路27を通して上流供給油
路27aに供給されると,そのオイルは流入孔113か
ら油室101に入り,そこから通孔112と流出孔11
4とに分流し,通孔112を通過したオイルは変速クラ
ッチCc′の摩擦部や摺動部に供給されて,その冷却や
潤滑に供される。
【0081】一方,流出孔114を通過したオイルは,
上流供給油路27aの下流側を通り,流入孔118から
第1小油室116を経てポンプ羽根車50及びタービン
羽根車51間の油室を満たし,それから第2小油室11
7及び流出孔119を経て下流供給油路27bへと流れ
ていき,エンジンE各部の潤滑に供される。
【0082】またクランク軸2内の上流供給油路27a
及び下流供給油路27bは,流入孔118及び流出孔1
19間で隔壁110により直接的な連通が断たれるの
で,オイルポンプ44から上流供給油路27aに供給さ
れたオイルは,流入孔118及び流出孔119を通して
トルクコンバータT′内を通過することを強制されるこ
とになり,オイルポンプ44が比較的小容量であって
も,トルクコンバータT′の作動オイルの不足を極力防
ぐことができ,小型車両用として有効である。
【0083】その他の構成は,前記第1実施例と略同様
であり,図3中,第1実施例との対応部分には同一の参
照符号を付して,その説明を省略する。
【0084】本発明は上記実施例に限定されるものでは
なく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可
能である。例えば,トルクコンバータT,T′は,トル
ク増幅機能を持たない流体継手に置き換えることもでき
る。
【0085】
【発明の効果】以上のように本発明の第1の特徴によれ
ば,エンジンのクランク軸と,このクランク軸と平行に
配置される,多段変速機の入力軸とを,エンジン側に連
なるポンプ羽根車及び多段変速機側に連なるタービン羽
根車を有する流体伝動手段を介して連結した,小型車両
用伝動装置において,エンジンのクランク軸上に,この
クランク軸をベアリングを介して支持するクランクケー
スの一側壁側から外方に向かって1次減速装置,流体伝
動手段及び変速クラッチと順次配置し,変速クラッチの
入力部材をクランク軸に,変速クラッチの出力部材をポ
ンプ羽根車に,タービン羽根車を1次減速装置の駆動ギ
ヤに,1次減速装置の被動ギヤを変速機の入力軸にそれ
ぞれ連結し,前記ベアリングと,クランク軸の先端部に
螺着されるナットとで,入力部材,ポンプ羽根車及びタ
ービン羽根車のクランク軸上での軸方向移動を拘束した
ので,エンジンのアイドリング時には,変速機のロー位
置でも,変速クラッチをオフ状態に制御することによ
り,流体伝動手段の存在に関わりなく変速クラッチ以降
への動力伝達を遮断して,クリープ現象を防ぐことがで
き,また変速操作時には,最初に変速クラッチをオフ状
態に制御することにより,流体伝動手段の存在に関わり
なく変速機を無負荷状態にして,トルクショックを伴う
ことなく変速を軽快に行うことができる。しかも,クラ
ンク軸は,これが減速装置を介して駆動する変速機の入
力軸より高速で回転するものであるから,このクランク
軸に取付けられる流体伝動手段及び変速クラッチが負担
する伝達トルクは比較的小さく,それだけ流体伝動手段
及び変速クラッチの各容量を小さくして,それらのコン
パクト化が可能となり,流体伝動手段及び変速クラッチ
の併設によるも,パワーユニットのコンパクト化を図る
ことができる。
【0086】また1次減速装置はクランクケースの側壁
に最も近接して配置されるので,該装置の作動に伴いク
ランク軸及び変速機の入力軸に加わる曲げモーメントを
最小とすることができる。また流体伝動手段は,変速ク
ラッチより重量が大であるが,その変速クラッチよりは
クランクケースの側壁に近接して配置されるので,それ
らの重量によりクランク軸に加わる曲げモーメントも最
小にすることができ,流体伝動手段及び変速クラッチの
コンパクト化と相俟って,クランク軸,変速機入力軸及
びこれらを支持するベアリングの耐久性向上に寄与し得
る。
【0087】さらに一個のナットにより,入力部材,ポ
ンプ羽根車,タービン羽根車及び駆動ギヤをクランク軸
に取付けることができ,構成の簡素化と組立性の向上を
同時に図ることができ,しかもポンプ羽根車及びタービ
ン羽根車間に発生するスラスト荷重を前記ベアリング及
びナットを介してクランク軸に負担させることになり,
クランクケースの荷重負担を軽減して,その耐久性の向
上に寄与することができる。
【0088】また本発明の第2の特徴によれば,クラン
ク軸が,前記ベアリング側に位置する大径軸部と,この
大径軸部の先端に段部を介して連なる小径軸部とを備
え,前記段部と,小径軸部の先端に螺着されるナットと
で前記入力部材を小径軸部上に挟持,固定し,前記ベア
リング及び入力部材によりポンプ羽根車及びタービン羽
根車の軸方向移動を拘束したので,クランク軸の段部と
ナットにより入力部材をクランク軸に強固に固定するこ
とができ,しかも専用の保持部材を用いることなくポン
プ羽根車及びタービン羽根車の軸方向移動を拘束するこ
とができ,構成の簡素化に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す自動二輪車用パワー
ユニットの縦断平面図。
【図2】上記パワーユニットの伝動装置の拡大縦断面
図。
【図3】本発明の第2実施例を示す,図2に対応した断
面図。
【符号の説明】
Cc,Cc′・・・変速クラッチ E・・・・・・エンジン M・・・・・・多段変速機 T,T′・・・流体伝動手段(トルクコンバータ) 1・・・・・・クランクケース 2・・・・・・クランク軸 2a・・・・・大径軸部 2b・・・・・小径軸部 2c・・・・・段部 10・・・・・変速機の入力軸 20・・・・・変速クラッチの入力部材(クラッチケー
シング) 23・・・・・変速クラッチの出力部材(摩擦クラッチ
板) 50・・・・・ポンプ羽根車 51・・・・・タービン羽根車 80・・・・・ナット 81・・・・・変速クラッチの入力部材(駆動板) 94・・・・・変速クラッチの出力部材

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン(E)のクランク軸(2)と,
    このクランク軸(2)と平行に配置される,多段変速機
    (M)の入力軸(10)とを,エンジン(E)側に連な
    るポンプ羽根車(50)及び多段変速機(M)側に連な
    るタービン羽根車(51)を有する流体伝動手段(T,
    T′)を介して連結した,小型車両用伝動装置におい
    て,エンジン(E)のクランク軸(2)上に,このクラ
    ンク軸(2)をベアリング(3′)を介して支持するク
    ランクケース(1)の一側壁側から外方に向かって1次
    減速装置(14),流体伝動手段(T,T′)及び変速
    クラッチ(Cc,Cc′)と順次配置し,変速クラッチ
    (Cc,Cc′)の入力部材(20,81)をクランク
    軸(2)に,変速クラッチ(Cc,Cc′)の出力部材
    (23,94)をポンプ羽根車(50)に,タービン羽
    根車(51)を1次減速装置(14)の駆動ギヤ(14
    a)に,1次減速装置(14)の被動ギヤ(14b)を
    変速機(M)の入力軸(10)にそれぞれ連結し,前記
    ベアリング(3′)と,クランク軸(2)の先端部に螺
    着されるナット(80)とで,入力部材(20,8
    1),ポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(5
    1)のクランク軸(2)上での軸方向移動を拘束したこ
    とを特徴とする,小型車両用伝動装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の小型車両用伝動装置にお
    いて,クランク軸(2)が,前記ベアリング(3′)側
    に位置する大径軸部(2a)と,この大径軸部(2a)
    の先端に段部(2c)を介して連なる小径軸部(2b)
    とを備え,前記段部(2c)と,小径軸部(2b)の先
    端に螺着されるナット(80)とで前記入力部材(2
    0,81)を小径軸部(2b)上に挟持,固定し,前記
    ベアリング(3′)及び入力部材(20,81)により
    ポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)の軸
    方向移動を拘束したことを特徴とする,小型車両用伝動
    装置。
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