JP4405013B2 - 小型車両用伝動装置 - Google Patents

小型車両用伝動装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4405013B2
JP4405013B2 JP32090299A JP32090299A JP4405013B2 JP 4405013 B2 JP4405013 B2 JP 4405013B2 JP 32090299 A JP32090299 A JP 32090299A JP 32090299 A JP32090299 A JP 32090299A JP 4405013 B2 JP4405013 B2 JP 4405013B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
clutch
transmission
plate
impeller
pressure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP32090299A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000213625A (ja
Inventor
篤司 吉本
照雄 木原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Yutaka Giken Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Yutaka Giken Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd, Yutaka Giken Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP32090299A priority Critical patent/JP4405013B2/ja
Publication of JP2000213625A publication Critical patent/JP2000213625A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4405013B2 publication Critical patent/JP4405013B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H45/00Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches
    • F16H2045/002Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches comprising a clutch between prime mover and fluid gearing

Landscapes

  • Arrangement Of Transmissions (AREA)
  • Control Of Fluid Gearings (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランク軸と、多段変速機の入力軸とを、エンジン側に連なるポンプ羽根車及び多段変速機側に連なるタービン羽根車を有する流体伝動手段、即ちトルクコンバータや流体継手を介して連結した、小型車両用伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝる小型車両用伝動装置は、例えば特開昭57−69163号公報に開示されているように、既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のかゝる小型車両用伝動装置では、上記公報に開示されているように、エンジンのクランク軸と、多段変速機の入力軸とをトルクコンバータのみを介して連結して、発進時や変速時のトルクショックをトルクコンバータの滑り作用により吸収するようにしている。
【0004】
しかしながら、トルクコンバータや流体継手は、滑り機能を有するとは言え、エンジンから動力を入力される限り多少ともトルク伝達を行うので、従来装置では、変速機をニュートラル位置からロー位置へ切換える発進時には、エンジンがアイドリング状態にあっても車両の駆動車輪に多少とも動力が伝達するクリープ現象が発生する。また走行中、変速機の切換摺動部には常に伝達トルクに起因する摩擦が作用するため、変速機の切換抵抗が大きく、大なる変速操作荷重を要する等の欠点がある。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、クリープ現象を解消すると共に、変速機の変速操作を軽快に行うことができ、しかも車両のクルージング時には、流体伝動手段の滑りを抑えて、伝動効率の向上を図るようにした、前記小型車両用伝動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンのクランク軸と、多段変速機の入力軸とを、エンジン側に連なるポンプ羽根車及び多段変速機側に連なるタービン羽根車を有する流体伝動手段を介して連結し、エンジンのクランク軸及び多段変速機の入力軸間に、流体伝動手段と直列関係にある変速クラッチを介裝し、また流体伝動手段のポンプ羽根車及びタービン羽根車間に、その両羽根車を相互に直結し得るロックアップクラッチを介裝してなる小型車両用伝動装置であって、ロックアップクラッチが、ポンプ羽根車に連設されてタービン羽根車を囲繞するポンプ延長部と、このポンプ延長部の先端に結合されてポンプ延長部内に、ポンプ羽根車及びタービン羽根車間の油室に連通する油圧室を画成する受圧板と、この受圧板に対置され、油圧室の油圧により受圧板側へ付勢される加圧板と、受圧板及び加圧板間に介裝されると共にタービン羽根車に連結される環状の摩擦クラッチ板と、この摩擦クラッチ板の内周側で加圧板及び受圧板にそれぞれ設けられた第1及び第2弁孔と、その第1弁孔を閉じるべく加圧板に設けられる制御弁と、第1及び第2弁孔に嵌装されて、制御弁の閉弁を許容しつゝ、摩擦クラッチ板の内周側を第2弁孔外へ開放させる後退位置、及び第2弁孔を閉鎖しつゝ制御弁を開放して摩擦クラッチ板の内周側を油圧室に連通させる前進位置間を移動し得る制御棒と、この制御棒を操作する操作手段とで構成されることを第1の特徴としており、また本発明は、エンジンのクランク軸と、多段変速機の入力軸とを、エンジン側に連なるポンプ羽根車及び多段変速機側に連なるタービン羽根車を有する流体伝動手段を介して連結し、エンジンのクランク軸及び多段変速機の入力軸間に、流体伝動手段と直列関係にある変速クラッチを介裝し、また流体伝動手段のポンプ羽根車及びタービン羽根車間には、タービン羽根車の回転数が所定値以上になると自動的に作動して両羽根車を相互に直結し得るロックアップクラッチを介裝してなる小型車両用伝動装置であって、ロックアップクラッチが、タービン羽根車に連結したクラッチシリンダと、このクラッチシリンダのシリンダ孔に摺動可能に嵌装されて油圧室を画成する加圧ピストンと、この加圧ピストンを油圧室側へ付勢するピストン戻しばねと、油圧室にオイルを導入する手段と、クラッチシリンダ及びポンプ羽根車間に設けられる摩擦係合手段とで構成し、タービン羽根車の回転数が所定値以上になると、それに応じて上昇する油圧室内の遠心油圧により加圧ピストンが摩擦係合手段を作動してクラッチシリンダ及びポンプ羽根車間を連結するようにしたことを第2の特徴としており、さらに本発明は、前記第2の特徴に加えて、クラッチシリンダに、油圧室の外周側を外部に開放する逃がし孔と、クラッチシリンダの回転数が所定値未満のときこの逃がし孔を開き、所定値以上のときこの逃がし孔を閉じる遠心弁とを設けたことを第3の特徴とする。
【0007】
尚、前記流体伝動手段は、後述する本発明の各実施例中のトルクコンバータTに対応する。また前記第1の特徴において、前記操作手段は、後述する本発明の第1実施例中のロックアップクラッチ操作軸86に対応する。また前記第2の特徴において、前記摩擦係合手段は、後述する本発明の第3実施例中の駆動摩擦クラッチ板110、被動摩擦クラッチ板111及び伝動爪112に対応し、また前記オイルを導入する手段は、同実施例中の入口孔117に対応する。
【0008】
本発明の各特徴によれば、エンジンのアイドリング時には、変速機のロー位置でも、変速クラッチをオフ状態に制御することにより、流体伝動手段の存在に関わりなく変速クラッチ以降への動力伝達を遮断して、クリープ現象を防ぐことができる。また変速操作時には、最初に変速クラッチをオフ状態に制御することにより、流体伝動手段の存在関わりなく変速機を無負荷状態にして、トルクショックを伴うことなく変速を軽快に行うことができる。しかもクルージング時には、ロックアップクラッチをオン状態に制御すれば、ポンプ羽根車及びタービン羽根車は相互に直結されるから、両羽根車間の滑りを無くして、動力損失を防ぐことができる。
【0009】
また特に第1の特徴によれば、制御棒を後退位置に操作すれば、流体伝動手段から油圧室に伝達される油圧をもって加圧板が摩擦クラッチ板を受圧板との間に挟圧して、ロックアップクラッチをオン状態にすることができ、また制御棒を前進位置に操作すれば、油圧室の油圧が加圧板の両側面に作用して摩擦クラッチ板に対する挟圧力を失い、ロックアップクラッチをオフ状態にすることができる。このオフ状態では、制御棒が第2弁孔を閉鎖するので、油圧室からの油圧の無用なリークを防ぐことができる。
【0010】
また特に第2の特徴によれば、タービン羽根車の回転数が所定値以上になると、流体伝動手段のポンプ羽根車及びタービン羽根車を自動的に直結することができ、しかもこのロックアップクラッチに対するタービン羽根車回転数依存型の自動制御を簡単に行うことができる。
【0011】
また特に第3の特徴によれば、クラッチシリンダの所定回転数未満では、遠心弁の開弁により油圧室の残圧を逃がし孔から速やかに解放してロックアップクラッチのオフ性能を高めると共に、油圧室内の切粉等の異物をもオイルと共に逃がし孔から排出することができ、また所定回転数以上では、遠心弁の閉弁により油圧室の昇圧を可能にし、ロックアップクラッチの作動に支障を来すことがない。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0013】
図1〜図12は本発明の第1実施例を示すもので、図1は本発明を適用した自動二輪車の側面図、図2は同自動二輪車に搭載されるパワーユニットの縦断面図、図3は上記パワーユニットにおける伝動装置の拡大縦断面図、図4は図3の4−4線断面図、図5は図3の5−5矢視図、図6は上記伝動装置の側面図、図7は図3の変速クラッチの出口弁を閉弁状態で示す拡大図、図8は同出口弁を開弁状態で示す拡大図、図9は図3の9−9線断面図、図10は図3の10−10線断面図、図11は図3のロックアップクラッチの制御弁を閉弁状態で示す拡大図、図12は同制御弁を開弁状態で示す拡大図である。図13は本発明の第2実施例を示す、図3に対応した断面図、図14は本発明の第3実施例を示す、図3に対応した断面図である。図15〜図17は本発明の第4実施例を示すもので、図15は本発明を適用した四輪バギーの側面図、図16は同四輪バギーの、パワーユニット部を縦断して示した平面図、図17は上記パワーユニットの伝動装置の拡大縦断面図である。
【0014】
先ず、図1〜図12に示す本発明の第1実施例の説明より始める。
【0015】
図1において、自動二輪車Vmには、前輪Wf及び後輪Wrを支持するボディフレームFmの上部にサドルSmが、またその下部にパワーユニットPがそれぞれ取付けられ、サドルSmの直下には燃料タンクTfmが配設される。
【0016】
図1及び図2に示すように、上記パワーユニットPは、エンジンE及び多段変速機Mを一体化して構成される。そのエンジンEは、従来普通のように、クランクケース1に左右一対のボールベアリング3,3′を介して支承されるクランク軸2と、シリンダブロック5のシリンダボア5aに摺動自在に嵌装されてコンロッド6を介してクランク軸2に連接されるピストン7とを備えると共に、クランク軸2を自動二輪車Vmの左右方向へ向けて配置される。またシリンダブロック5には、ピストン7の頂面との間に燃焼室4aを画成するシリンダヘッド4が接合され、このシリンダヘッド4に、燃焼室4aに連なる吸、排気ポートを開閉する吸、排気弁(図示せず)と、それらを開閉駆動するカム軸9とが設けられる。このカム軸9はクランク軸2と平行にしてシリンダヘッド4に回転自在に支承される。
【0017】
クランクケース1にはミッションケース8が一体に連設されており、このミッションケース8の左右両側壁により多段変速機Mの、クランク軸2と平行に配置された入力軸10及び出力軸11がそれぞれボールベアリング12,12′;13,13′を介して支承され、これら入力軸10及び出力軸11にわたり、図2で左側から第1速ギヤ列G1、第2速ギヤ列G2、第3速ギヤ列G3及び第4速ギヤ列G4が配設される。そして第2速ギヤ列G2の被動ギヤG2b、及び第3速ギヤ列G3の駆動ギヤG3aがシフトギヤを兼ねており、両シフトギヤG2b、G3aが共に中立位置にあるときは、変速機Mはニュートラル状態にあり、シフトギヤG2bが図で左動又は右動すると第1速ギヤ列G1又は第3速ギヤ列G3が確立し、シフトギヤG3aが左動又は右動すると、第2速ギヤ列G2又は第4速ギヤ列G4が確立するようになっている。上記シフトギヤG2b、G3aは、図示しない公知のペダル式その他のマニュアル式チェンジ装置により作動される。
【0018】
前記クランク軸2の右端と変速機Mの入力軸10の右端とは、クランクケース1及びミッションケース8外で互いに直列関係に接続される変速クラッチCc、トルクコンバータT及び1次減速装置14を介して相互に連結される。その際、特に、変速クラッチCc、トルクコンバータT及び1次減速装置14の駆動ギヤ14aはクランク軸2上に、クランクケース1の右側壁側から外方に向かって駆動ギヤ14a、トルクコンバータT及び変速クラッチCcの順で取付けられる。そしてこれらを覆う右サイドカバー15aがクランクケース1及びミッションケース8の右端面に接合される。
【0019】
クランク軸2の左端には、発電機16のロータ17が固着され、それのステータ18は、発電機16を覆ってクランクケース1の左端面に接合される左サイドカバー15bに取付けられる。またクランクケース1及びシリンダブロック5には、トルクコンバータT及び1次減速装置14と反対側の左側壁に一連の調時伝動室90が形成され、該室90には、クランク軸2の回転をカム軸9へ2分の1に減速して伝達する調時伝動装置91が収容される。こうして,1次減速装置14、トルクコンバータT及び変速クラッチCcと、調時伝動装置91及び発電機16とは、クランクケース1内部即ちクランク室を挟んでクランク軸2の両端部に配置される。
【0020】
図2及び図3に示すように、クランク軸2には、その右端面に開口する上流供給油路27aと、コンロッド6の大端部を支持するクランクピン外周のニードルベアリング49に連通する下流供給油路27bと、これら両油路27a,27bを直接連通するオリフィス48と、上流供給油路27aから変速クラッチCcに向かって半径方向に延びる第1流入孔43aと、上流供給油路27aからトルクコンバータTに向かって半径方向に延びる第2流入孔43bと、下流供給油路27bからトルクコンバータTに向かって半径方向に延びる流出孔45とが設けられる。上流供給油路27aには、エンジンEにより駆動されるオイルポンプ44が油溜め46から吸い上げたオイルを、右サイドカバー15aに形成された油路27を通して圧送するようになっている。油溜め46は、クランクケース1、ミッションケース8及び右サイドカバー15aの底部に形成されるものである。
【0021】
変速機Mの出力軸11の左端には、ミッションケース8外で、自動二輪車の後輪(図示せず)を駆動するチェーン式の最終減速装置19が連結される。
【0022】
図2及び図3において、変速クラッチCcは、一端に端壁20aを、また中心部にクランク軸2にスプライン結合されるボス20bを有する円筒状のクラッチケーシング20と、このクラッチケーシング20内にあって上記ボス20bの外周に摺動自在にスプライン嵌合される加圧板21と、クラッチケーシング20の開放端部に油密に固着される受圧板22と、上記加圧板21及び受圧板22の間に介裝される環状の摩擦クラッチ板23とを備え、その摩擦クラッチ板23の内周に後述するポンプ羽根車50の伝動板24がスプライン係合される(図4参照)。
【0023】
加圧板21は、クラッチケーシング20の端壁20a及び周壁との間に油圧室25を画成する。この油圧室25は、クラッチケーシング20のボス20bに設けられる入口弁26を介してクランク軸2の前記第1流入孔43aに接続されると共に、端壁20aの外周部に設けられる出口弁28を介してクラッチケーシング20外に開放されるようになっている。
【0024】
図3及び図4に示すように、ボス20bには、クランク軸2と平行に延びる複数個(図示例では3個)の弁孔29と、各弁孔29を経て前記第1流入孔43aから油圧室25に至る複数本の通孔30とが穿設されており、各弁孔29に、スプール弁からなる入口弁26が摺動可能に嵌合される。そして、これら入口弁26が図3で右動位置を占めると(図3の上半部側)、通孔30を開通し、左動位置を占めると(図3の下半部側参照)、通孔30を閉鎖するようになっている。尚、ボス20bの通孔30とクランク軸2の第1流入孔43aとの連通を確実にするために、クランク軸2及びボス20bの互いに嵌合するスプライン部の一部の歯を切除することが効果的である。
【0025】
またクラッチケーシング20の端壁20aの外周部には、その周方向等間隔置きに複数個(図示例では3個)の出口孔32が穿設され、これら出口孔32を油圧室25側で開閉し得る、リード弁からなる出口弁28の一端が端壁20aにかしめ結合される。
【0026】
端壁20aには、さらに、各出口孔32に連通するガイドカラー33が固着されており、各ガイドカラー33に開弁棒31が摺動可能に嵌合される。この開弁棒31は、その外周に軸方向に延びる溝31aを有しており、図3で右動位置を占めると(図3の上半部側及び図7参照)、出口弁28の自己の弾性力による出口孔32に対する閉鎖を許容し、左動位置を占めると(図3の下半部側及び図8参照)、出口弁28を油圧室25内方へ撓ませて出口孔32を開放するようになっている。
【0027】
上記入口弁26及開弁棒31の外端には、共通の弁作動板34が連結される。この弁作動板34は、クラッチケーシング20のボス20bに図3で左右方向摺動可能に支承されるもので、その右動位置を規定するストッパ環35がボス20bに係止され、このストッパ環35に向けて弁作動板34を付勢する戻しばね36がクラッチケーシング20及び弁作動板34間に縮設される。
【0028】
弁作動板34には、ボス20bを同心上で囲繞するレリーズベアリング37を介して押圧環38が装着され、この押圧環38の外端面に変速クラッチ操作軸39に固設されたアーム39aが係合し、変速クラッチ操作軸39を往復回動することにより、戻しばね36と協働して、弁作動板34を入口弁26及び開弁棒31と共に左右動させ得るようになっている。
【0029】
変速クラッチ操作軸39には、図6に示すように、それを回動するための電動式又は電磁式の変速クラッチアクチュエータ40が連結され、この変速クラッチアクチュエータ40は、エンジンEのアイドリング状態を検知するアイドリングセンサ41、及び変速機Mの変速操作を検知する変速センサ42の出力信号が入力され、それらの何れの信号にも応動して、弁作動板34を図3で左動する方向に変速クラッチ操作軸39を回動するようになっている。
【0030】
こゝで変速クラッチCcの作用について説明すると、エンジンEの作動中で、アイドリングセンサ41及び変速センサ42が出力信号を発していない状態では、変速クラッチアクチュエータ40は非作動状態を保持するので、弁作動板34が戻しばね36の付勢力により後退位置、即ち図3で右動位置に保持されて、図3の上半部側及び図7に示すように、入口弁26を開弁すると共に、出口弁28の閉弁を許容する。したがって、オイルポンプ44から圧送されたオイルが上流供給油路27aから第1流入孔43a及び通孔30を経てクラッチケーシング20内の油圧室25に供給されて該室25を満たすことになる。
【0031】
クラッチケーシング20はクランク軸2と共に回転しているから、クラッチケーシング20の油圧室25のオイルは遠心力を受けて油圧を発生し、その油圧をもって加圧板21が摩擦クラッチ板23を受圧板22に対して押圧することにより、加圧板21、受圧板22及び摩擦クラッチ板23の三者は摩擦係合される。即ち変速クラッチCcはオン状態を呈し、クランク軸2の出力トルクを摩擦クラッチ板23からトルクコンバータTに伝達する。
【0032】
一方、エンジンEのアイドリング時又は変速機Mの変速操作時には、アイドリングセンサ41又は変速センサ42が出力信号を出力するので、それを受けた変速クラッチアクチュエータ40が直ちに作動して、変速クラッチ操作軸39を回動し、弁作動板34を図3で左動位置へ移動する。これにより、図3下半部側に示すように、入口弁26を閉弁すると共に出口弁28を開弁する。その結果、上流供給油路27aから油圧室25へのオイル供給が遮断されると共に、油圧室25のオイルが出口孔32及び開弁棒31の溝31aを通ってクラッチケーシング20外に排出されて油圧室25の油圧を低下させ、加圧板21の摩擦クラッチ板23に対する押圧力が激減するため、加圧板21、受圧板22及び摩擦クラッチ板23の三者の摩擦係合は解かれる。即ち変速クラッチCcはオフ状態を呈し、クランク軸2からトルクコンバータTへのトルク伝達を遮断する。クラッチケーシング20外に排出されたオイルは油溜め46に還流する。
【0033】
その状態から、発進のためにエンジンEの回転が加速され、又は変速操作が完了することにより、アイドリングセンサ41及び変速センサ42が共に出力信号を停止すると、変速クラッチアクチュエータ40は直ちに非作動状態に戻り、弁作動板34は戻しばね36の付勢力をもって右動位置まで一気に後退して、再び入口弁26を開弁すると共に、出口弁28を閉弁させるので、前述の作用から明らかなように変速クラッチCcは、半クラッチ状態を経ずにオフ状態からオン状態に復帰することになる。即ち、変速クラッチCcは半クラッチ領域を持たないオン・オフ型であり、そのトルク容量は、トルクコンバータTのそれより大きく設定される。
【0034】
再び図3おいて、トルクコンバータTは、ポンプ羽根車50、タービン羽根車51及びステータ羽根車52からなっており、そのポンプ羽根車50は、前記受圧板22に隣接して配置されると共に、そのボス50aがニードルベアリング53を介してクランク軸2に支承される。このポンプ羽根車50の外側面に、前記摩擦クラッチ板23の内周にスプライン係合する伝動板24が固着されている。したがって、摩擦クラッチ板23の伝動トルクは、この伝動板24を介してポンプ羽根車50に伝達される。
【0035】
またクランク軸2には、ポンプ羽根車50のボス50aと、クランク軸2を支持する前記ボールベアリング3′との間に配置されるステータ軸60の右端部がニードルベアリング54を介して支承され、このステータ軸60にステータ羽根車52のボス52aが凹凸係合により連結される。ステータ軸60の左端部にはステータアーム板56が固着されており、このステータアーム板56が中間部に有する円筒部56aの外周面がボールベアリング57を介してクランクケース1に支承される。またステータアーム板56の外周部はフリーホイール58を介してクランクケース1に支持される。
【0036】
ポンプ羽根車50に対向するタービン羽根車51は中心部にタービン軸59を一体に有し、その右端部はニードルベアリング61を介してステータ軸60に支承され、その左端部はステータアーム板56の円筒部56a内周面にボールベアリング62を介して支承される。このタービン軸59とクランク軸2間には、ステータ軸60の横孔63を貫通して一方向クラッチ64が設けられる。この一方向クラッチ64は、タービン軸59に逆負荷が加えられたときオン状態となって、タービン軸59及びクランク軸2間を直結するようになっている。
【0037】
図3に示すように、ポンプ羽根車50のボス50a、タービン軸59及びステータ羽根車52のボス52aの各間の間隙がトルクコンバータTの流体入口47iとされ、またタービン軸59のタービン羽根車51外側へ延びる部分にトルクコンバータTの流体出口47oが設けられ、その流体入口47iはクランク軸2の前記第2流入孔43bと連通し、流体出口47oは、ステータ軸60の横孔63を介してクランク軸2の前記流出孔45に連通する。したがって、オイルポンプ44からクランク軸2の上流供給油路27aに供給されたオイルが第2流入孔43bに入ると、流体入口47iからポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に入り、その油室及び後述するロックアップクラッチLcの油圧室77を満たした後、流体出口47oから流出孔45を経てクランク軸2の下流供給油路27bへと流れるようになっている。
【0038】
タービン軸59には,1次減速装置14の駆動ギヤ14aが一体に形成され、これに噛合する被動ギヤ14bが変速機Mの入力軸10にスプライン結合される。こうして構成される1次減速装置14は、クランクケース1とトルクコンバータTとの間に配置される。
【0039】
そのトルクコンバータTの作用について説明する。
【0040】
クランク軸2の出力トルクがオン状態の変速クラッチCcを介してポンプ羽根車50に伝達されると、そのトルクは、トルクコンバータT内を満たしたオイルの作用によりタービン羽根車51に流体的に伝達される。このとき、両羽根車50,51間でトルクの増幅作用が生じていれば、それに伴う反力はステータ羽根車52に負担され、ステータ羽根車52は、フリーホイール58のロック作用によりクランクケース1に固定的に支持される。またトルクの増幅作用が生じていなければ、ステータ羽根車52は、フリーホイール58の空転作用により空転が可能となるから、ポンプ羽根車50、タービン羽根車51及びステータ羽根車52の三者は、共に同方向へ回転する。
【0041】
ポンプ羽根車50からタービン羽根車51に伝達されたトルクは1次減速装置14を介して変速機Mの入力軸10に伝達され、そして確立を選択された変速ギヤ列G1〜G4、出力軸11及び最終減速装置19を順次経て図示しない後輪へと伝達され、それを駆動する。
【0042】
走行中のエンジンブレーキ時には、タービン軸59に逆負荷トルクが加わることにより、一方向クラッチ64がオン状態となるから、タービン軸59及びクランク軸2相互が直結され、逆負荷トルクがトルクコンバータTを経由することなくクランク軸2に伝達されることになり、良好なエンジンブレーキ効果を得ることができる。
【0043】
再び図3において、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間には、それらを直結状態にし得るロックアップクラッチLcが設けられる。このロックアップクラッチLcは、ポンプ羽根車50の外周部に連設されてタービン羽根車51を囲繞する円筒状のポンプ延長部70と、タービン軸59の外周面に回転自在に支承された支持筒71に摺動可能にスプライン嵌合される加圧板72と、この加圧板72に対向してポンプ延長部70の端部に油密に固着されると共に、上記支持筒71のスプライン嵌合される受圧板73と、これら加圧板72及び受圧板73間に介裝される環状の摩擦クラッチ板74とを備え、その摩擦クラッチ板74は、タービン羽根車51の外側面に固着された伝動板75に外周部がスプライン係合される(図9参照)。加圧板72は、受圧板73に対する後退位置が支持筒71に係止されたストッパ環76によって規定される。
【0044】
ポンプ延長部70の内部は受圧板73により油圧室77に画成され、この油圧室77は、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51の対向間隙を通してそれらの内部と連通していて、オイルが満たされ、トルクコンバータTの作動時には、その内部と同様に高圧となる。
【0045】
図3、図11及び図12に示すように、加圧板72及び受圧板73には、摩擦クラッチ板74の内周側で周方向等間隔置きに複数個(図示例では3個)の弁孔78,79がそれぞれ穿設され、加圧板72の弁孔78を油圧室77側で開閉し得る、リード弁からなる制御弁80の一端が加圧板72にかしめ結合される。
【0046】
加圧板72及び受圧板73の弁孔78,79は互いに同軸上に配置され、これらに制御弁80の開閉を制御する制御棒81が摺動可能に嵌合される。この制御棒81は、その外周に軸方向に延びる連通溝81aを有しており、図3で左動位置を占めると(図3の上半部側及び図11参照)、制御弁80の自己の弾性力による弁孔78に対する閉鎖を許容すると共に、制御棒81の連通溝81aにより摩擦クラッチ板74の内周側を受圧板73の弁孔79外へ開放し、また右動位置を占めると(図3の下半部側及び図12参照)、この制御棒81により受圧板73の弁孔79を閉鎖すると共に、制御弁80を油圧室77内方へ撓ませて、摩擦クラッチ板74の内周側で加圧板72の両側面間を制御棒81の連通溝81aを介して連通するようになっている。
【0047】
上記制御棒81の外端には、弁作動板82が連結される。この弁作動板82は、前記支持筒71に図3で左右方向摺動可能に支承されるもので、その左動位置を規定するストッパ環83が支持筒71に係止され、このストッパ環83に向けて弁作動板82を付勢する戻しばね84が受圧板73及び弁作動板82間に縮設される。
【0048】
弁作動板82には、支持筒71と同心配置のレリーズベアリング85を介して、ロックアップクラッチ操作軸86(操作手段)のアーム86aが係合され、ロックアップクラッチ操作軸86を往復回動することにより、戻しばね84と協働して、弁作動板82を制御棒81と共に左右動させ得るようになっている。
【0049】
ロックアップクラッチ操作軸86には、図6に示すように、それを回動するための電動式又は電磁式のロックアップクラッチアクチュエータ87が連結され、このロックアップクラッチアクチュエータ87は、所定値以下の車速を検知する車速センサ88の出力信号が入力され、その信号に応動して、弁作動板82を図3で右動する方向にロックアップクラッチ操作軸86を回動するようになっている。
【0050】
このロックアップクラッチLcの作用について説明する。車速センサ88が所定値以下の車速を検知して出力信号を発すると、それを受けてロックアップクラッチアクチュエータ87は作動して、ロックアップクラッチ操作軸86を回動し、弁作動板82を図3で右動位置へ移動する。これに伴い、図3下半部側及び図12に示すように、制御棒81が制御弁80を開き、連通溝81aを介して加圧板72の両側面を連通させるので、加圧板72の両側面に油圧室77の油圧が等しく作用すること、及び制御棒81の制御弁80に対する押圧力で加圧板72が後退位置へ押圧されることにより、加圧板72、受圧板73及び摩擦クラッチ板74の三者の摩擦係合は起こらず、ロックアップクラッチLcはオフ状態を呈する。したがって、この状態では、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51の相対回転が可能であり、したがってトルクの増幅作用が可能である。また、この場合、受圧板73の弁孔79は制御棒81により閉鎖されるので、油圧室77から弁孔79への油圧の無用なリークを防ぐことができる。
【0051】
車速が所定値以上に上昇して、車速センサ88が出力信号を停止すると、ロックアップクラッチアクチュエータ87は非作動状態に戻り、弁作動板82は、図3の上半部側及び図11に示すように、戻しばね84の付勢力をもって左動位置まで後退して、制御弁80の弁孔78に対する閉弁を許容すると共に、摩擦クラッチ板74の内周側を制御棒81の連通溝81aを介して弁孔79外に開放するため、加圧板72は、その内側面にのみ油圧室77の油圧を受けて、摩擦クラッチ板74を受圧板73に対して押圧する。その結果、加圧板72、受圧板73及び摩擦クラッチ板74の三者が摩擦係合して、ロックアップクラッチLcはオン状態となり、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51を相互に直結させるので、自動二輪車Vmの高速走行時には、両羽根車50,51相互の滑りを無くし、伝動効率を高めることができる。
【0052】
ところで、エンジンEの運転中、オイルポンプ44から吐出されたオイルは、先ず上流供給油路27aに入り、第1流入孔43aを経て変速クラッチCcの油圧室25に入り、その作動と冷却に寄与し、また第2流入孔43bを経てポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室及びロックアップクラッチLcの油圧室77に流入して、トルクコンバータT及びロックアップクラッチLcの作動と冷却に寄与する。そして、油圧室77から流出孔45から下流供給油路27bへ出たオイルは、クランクピン外周のニードルベアリング49に供給され、その潤滑に寄与し、その潤滑を終えたオイルは、クランク軸2の回転に伴い周囲に飛散してピストン7等の潤滑に供される。上記オイルポンプ44は、元来、エンジンEに潤滑用オイルを供給するものであるが、そのオイルを変速クラッチCcやトルクコンバータT、ロックアップクラッチLcのための作動オイルに利用するようにしたので、作動オイル供給のための専用オイルポンプを設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
【0053】
またクランク軸2に設けられた上流供給油路27a及び下流供給油路27bは、オリフィス48を介して直接的にも連通しているから、オイルポンプ44から上流供給油路27aに送られたオイルの一部は、トルクコンバータT等を経由せず、オリフィス48を通して下流供給油路27bへ直接移るので、オリフィス48の選定によりトルクコンバータT及びエンジンEへのオイルの分配割合を自由に設定することができる。
【0054】
一方、トルクコンバータTにおいては、エンジンEのアイドリング時でも、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間で多少ともトルク伝達が生ずるところ、アイドリング時には、変速クラッチCcが前述のようにオフ状態に制御されるので、多段変速機Mの第1速ギヤ列G1が確立していても、トルクコンバータTの存在に関係なく、変速クラッチCc以降への動力伝達を遮断して、クリープ現象を防ぐことができる。このことは、多段変速機Mの各伝動部材が無負荷状態に置かれることを意味するから、自動二輪車Vmの発進のために、図2でシフトギヤG2bを左方へシフトして、第1速ギヤ列G1を確立する場合でも、トルクショックを伴うことなく、スムーズなシフトが可能となる。そして、発進すべくエンジンEの回転を加速すると、変速クラッチCcは半クラッチ領域を飛び越えて一気にオン状態へと移行するが、それに伴うトルクショックは、トルクコンバータTのポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互の滑り作用により吸収され、それらの増幅作用も手伝って、スムーズな発進を行うことができ、乗り心地の改善に寄与し得る。
【0055】
また走行中、シフトギヤG2b、G3aを所望の方向へシフトして、所望の変速を行う際にも、その都度、前述のように変速クラッチCcがオフ状態に制御され、多段変速機Mの各伝動部材を無負荷状態にするため、トルクショックを伴うことなく、スムーズな変速が可能となる。変速後においても、変速クラッチCcは半クラッチ領域を飛び越えて一気にオン状態へと移行するが、それに伴うトルクショックも、トルクコンバータTのポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互の滑り作用により吸収される。したがって乗員に違和感を与えず、乗り心地が改善される。
【0056】
このように変速クラッチCcのオン・オフに伴い生ずるトルクショックをトルクコンバータTに吸収させるようにしたことで、変速クラッチCcを、半クラッチ領域を持たないオン・オフ型に構成することを可能にしたのであり、半クラッチによる摩擦部の発熱及び摩耗を回避して、変速クラッチCcの耐久性を向上させることができる。
【0057】
また変速クラッチCcのトルク容量は、トルクコンバータTのそれ以上に設定されるので、全負荷状態でも、変速クラッチCcの滑りを防ぎ、その耐久性を確保することができる。
【0058】
またクランク軸2は、これが減速装置14を介して駆動する多段変速機Mの入力軸10より高速で回転するものであるから、このクランク軸2に取付けられるトルクコンバータT及び変速クラッチCcが負担する伝達トルクは比較的小さく、それだけトルクコンバータT及び変速クラッチCcの各容量を小さくして、それらのコンパクト化が可能となり、トルクコンバータT及び変速クラッチCcの併設によるも、パワーユニットPのコンパクト化を図ることができる。
【0059】
しかも1次減速装置14、トルクコンバータT及び変速クラッチCcのうち,1次減速装置14がクランクケース1の右側壁に最も近接して、次にトルクコンバータTが近接して配置されるので,1次減速装置14の作動に伴いクランク軸2及び入力軸10に加わる曲げモーメントを最小とすることができ、またトルクコンバータTは変速クラッチCcより重量が大であるが、それらの重量によりクランク軸2に加わる曲げモーメントも最小にすることができ、トルクコンバータT及び変速クラッチCcのコンパクト化と相俟って、クランク軸2、入力軸10及びこれらを支持するベアリング3′,12′の耐久性向上を図ることができる。
【0060】
またクランク軸2上には,1次減速装置14、トルクコンバータT及び変速クラッチCcと調時伝動装置91及び発電機16とがクランク室を挟んで互いに反対側に配置されるので、パワーユニットPの左右への重量配分の均等化を図ることができる上、四サイクルエンジンEにおいても,1次減速装置14のクランクケース1右側壁への近接配置を、調時伝動装置91に何等干渉されることなく行うことができ、クランク軸2、入力軸10及びこれらを支持するベアリング3′,12′の耐久性を確保し得る。
【0061】
さらに発電機16及びトルクコンバータTのクランク軸2上での同軸配置により、発電機16で発生する回転振動をトルクコンバータTにより吸収することができ、パワーユニットPの静粛性に寄与することができる。
【0062】
次に、図13に示す本発明の第2実施例について説明する。
【0063】
この第2実施例は、ロックアップクラッチLc′を、ポンプ羽根車50の回転数依存の自動制御型に構成した点で前二実施例とは異なる。即ち、このロックアップクラッチLc′は、ポンプ羽根車50の外周部に連設されてタービン羽根車51を囲繞する円筒状のポンプ延長部70と、タービン軸59に回転自在に支承されると共に、ポンプ延長部70の開放端に油密に結合される受圧板93と、タービン軸59に摺動可能に支承されて、受圧板93の内面に対向配置される加圧板94と、これら加圧板94及び受圧板93間に介裝される環状の摩擦クラッチ板95と、ポンプ延長部70及び加圧板94間に介裝されて加圧板94を受圧板93と反対方向へ付勢する皿型の戻しばね96とを備え、その摩擦クラッチ板95は、タービン羽根車51の外側面に固着された伝動板75に外周部がスプライン係合される。また受圧板93及び加圧板94は、両者一体になって回転しながら軸方向に相対摺動し得るように、相対向面に互いに係合するドグ97及び凹部98が形成される。
【0064】
ポンプ延長部70の内部は受圧板93により油圧室99に画成され、この油圧室99は、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51の対向間隙を通してそれらの内部と連通していて、オイルが満たされる。
【0065】
受圧板93には、摩擦クラッチ板95の内周側を受圧板93外へ開放する逃がし孔100と、受圧板93の内周面を軸方向に延びる空気抜き溝101とが設けられる。
【0066】
その他の構成は、第1実施例の構成と同一であるので、図中、第1実施例との対応部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
而して、ポンプ羽根車50の所定回転数以下では、ポンプ延長部70内の油圧室99を満たすオイルの遠心力が小さいことから、油圧室99の油圧は上がらず、加圧板94は戻しばね96の付勢力により後退位置に戻っていて、摩擦クラッチ板95を解放しているので、ロックアップクラッチLc′はオフ状態となっている。
【0068】
この間、油圧室99のオイルは、受圧板93の逃がし孔100から外部に流出するが、その量は極めて少なくから、その後の油圧室99の昇圧に支障を来すものではない。
【0069】
ポンプ羽根車50の回転数が所定値を超えると、それに応じて油圧室99のオイルの遠心力が増大して油圧室99を昇圧させるので、その高油圧をもって加圧板94は受圧板93に向かって前進して、受圧板93との間で摩擦クラッチ板95を挟圧し、ロックアップクラッチLc′はオン状態となる。オン状態となったロックアップクラッチLc′は、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間を直結状態にするので、両羽根車50,51相互の滑りを無くし、伝動効率を高めることができる。
【0070】
その際、摩擦クラッチ板95の内周側では、オイルが逃がし孔100から流出することにより昇圧が起こらないので、加圧板94の両面間に大なる圧力差が生じ、摩擦クラッチ板95に対する挟圧が効果的に行われる。
【0071】
かくして、ポンプ羽根車50に連なるポンプ延長部70内の油圧室99の遠心油圧の利用により、ロックアップクラッチLc′の自動制御をポンプ羽根車回転数依存型とすることを簡単に達成することができる。
【0072】
次に、図14に示す本発明の第3実施例について説明する。
【0073】
この第3実施例は、ロックアップクラッチLc″を、タービン羽根車52の回転数依存の自動制御型に構成した点で第2実施例とは異なる。このロックアップクラッチLc″は、ポンプ羽根車50のポンプ延長部70に油密に結合されてタービン羽根車51を覆うトルクコンバータサイドカバー105の外側に配設される。トルクコンバータサイドカバー105は、タービン軸59の外周に回転自在に支承され、その内側は、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室と連通していて、その油室と同様に作動油で満たされるようになっている。
【0074】
ロックアップクラッチLc″は、タービン軸59の左端部にスプライン結合されて、開放端をトルクコンバータサイドカバー105側に向けた偏平のクラッチシリンダ106と、このクラッチシリンダ106のシリンダ孔106aにシール部材113を介して摺動可能に嵌装されて、クラッチシリンダ106の端壁との間に油圧室108を画成する加圧ピストン107と、クラッチシリンダ106の内周面の開放端寄りに係止される受圧環109と、この受圧環109及び加圧ピストン107間においてクラッチシリンダ106の内周面に摺動可能にスプライン係合する複数枚(図示例では2枚)の環状の被動摩擦クラッチ板111,111と、これら被動摩擦クラッチ板111,111間に介裝されると共に、トルクコンバータサイドカバー105の外側に突設された複数の伝動爪112に内周面を軸方向摺動可能に係合する環状の駆動摩擦クラッチ板110と、これら駆動及び被動摩擦クラッチ板110,111の内周側で加圧ピストン107及びトルクコンバータサイドカバー105間に配設されて、加圧ピストン107を油圧室108側に付勢するピストン戻しばね114とから構成され、上記クラッチシリンダ106及び加圧ピストン107は、両者一体になって回転しながら軸方向に相対摺動し得るように、相対向面に互いに係合するドグ115及び凹部116が形成される。
【0075】
タービン軸59には、トルクコンバータサイドカバー105の内部及びクラッチシリンダ106の油圧室108をそれぞれタービン軸59の内周側に連通する流体出口47o及び入口孔117が穿設され、これら流体出口47o及び入口孔117とタービン軸59内とを通してトルクコンバータサイドカバー105の内部及びクラッチシリンダ106の油圧室108間が連通される。
【0076】
クラッチシリンダ106の周壁には、その周方向に等間隔置きに並んで油圧室108をクラッチシリンダ106外に開放する複数の逃がし孔118が穿設され、またクラッチシリンダ106の内周面には、これら逃がし孔118間を連通する環状溝119が設けられ、この環状溝119に、クラッチシリンダ106の所定回転数以上で逃がし孔118を遠心力をもって閉鎖する遠心弁120が配設される。遠心弁120は,1本の弾性線材からなる遊端リングで構成されたもので、少なくとも一端120aを加圧ピストン107の前記凹部116の一個に係合させていて、加圧ピストン107、したがってクラッチシリンダ106と共に回転するようになっている。またこの遠心弁120は、その自由状態では逃がし孔118を開放するように半径方向に収縮するが、クラッチシリンダ106の回転数が所定値以上になると、遠心力により半径方向に拡張して環状溝119の底面に密着し、全ての逃がし孔118を閉鎖するようになっている。
【0077】
その他の構成は、第1実施例の構成と同一であるので、図中、第1実施例との対応部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
而して、オイルポンプ44からクランク軸2の上流供給油路27aに供給されたオイルが第2流入孔43bに入ると、流体入口47iからポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に入り、その油室と、トルクコンバータサイドカバー105内側とを満たした後、流体出口47oからタービン軸59内へ出る。タービン軸59内へ出たオイルは、入口孔117と流出孔45とに分流し、入口孔117に移ったオイルはロックアップクラッチLc″の油圧室108に流入し、流出孔45に移ったオイルは、前実施例の場合と同様にクランク軸2の下流供給油路27bへと流れていく。
【0079】
ところで、ロックアップクラッチLc″のクラッチシリンダ106はタービン軸59にスプライン結合していて、タービン軸59と共に回転するので、タービン軸59の所定回転数以下では、遠心弁120は遠心力に抗して収縮状態を維持し、逃がし孔118を開放しており、したがって、入口孔117から油圧室108に流入したオイルは逃がし孔118からクラッチシリンダ106外に流出するので、油圧室108の油圧は上がらず、加圧ピストン107は、ピストン戻しばね114の付勢力により後退位置に保持され、駆動及び被動摩擦クラッチ板110,111は非係合状態に置かれる。即ち、ロックアップクラッチLc″はオフ状態となっている。
【0080】
その際、油圧室108に切粉や摩耗粉等の異物が存在すれば、その異物を上記オイルと共に逃がし孔118からクラッチシリンダ106外へ排出することができる。
【0081】
タービン軸59の回転数が所定値を超えると、それと共に回転する遠心弁120は、増大する自己の遠心力により拡張して全部の逃がし孔118を閉鎖する。その結果、油圧室108は、入口孔117から供給されるオイルによって満たされると共に、そのオイルの遠心力により油圧室108に油圧が発生し、その油圧をもって加圧ピストン107は受圧環109に向かって前進して、駆動及び被動摩擦クラッチ板110,111を摩擦係合状態にし、ロックアップクラッチLc″はオン状態となる。オン状態となったロックアップクラッチLc″は、ポンプ羽根車50及びタービン軸59間を直結状態にするので、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互の滑りを無くし、伝動効率を高めることができる。
【0082】
タービン軸59の回転数が所定値未満に低下すると、遠心弁120は再び開弁するので、油圧室108の残圧を逃がし孔118から速やかに解放することができ、したがってロックアップクラッチLc″のオフ性能を高めることができる。
【0083】
かくして、タービン軸59に連結したクラッチシリンダ106内の油圧室108の遠心油圧の利用により、ロックアップクラッチLc″の自動制御をタービン羽根車回転数依存型とすることを簡単に達成することができる。
【0084】
最後に、図15〜図17に示す本発明の第4実施例について説明する。
【0085】
先ず、図15及び図16において、四輪バギーVbには、各一対の前輪Wfa、Wfb及び後輪Wra、Wrbを支持するボディフレームFbの上部には、前部に燃料タンクTfb、後部にサドルSbが取付けられ、またその下部にパワーユニットPが搭載される。左右の前輪Wfa、Wfbにそれぞれ連なる左右の前輪駆動軸121a,121bは、差動装置122を介して相互に連結され、左右の後輪Wra、Wrbは、一本の後輪駆動軸123により直結される。
【0086】
パワーユニットPは、エンジンEのクランク軸2を四輪バギーVbの左右方向へ向けて配置される。変速機Mの出力軸11にベベルギヤ伝動装置125を介して連結する駆動軸126がパワーユニットPの発電機16側に隣接して且つ前後方向に向けて配設される。この駆動軸126の前端は、中間ギヤ伝動装置127、前部プロペラ軸128及びベベルギヤ減速装置129を介して前記差動装置122に連結され、また駆動軸126の後端は、自在継手130、後部プロペラ軸131及びベベルギヤ減速装置132を介して前記後輪駆動軸123に連結される。したがって、パワーユニットPから駆動軸126に伝達される動力により前輪Wfa、Wfb及び後輪Wra、Wrbを駆動することができる。
【0087】
図17に示すように、この第4実施例のパワーユニットPでは、変速クラッチCc′及びトルクコンバータT′の構成において前記第1実施例と相違する。
【0088】
変速クラッチCc′は、クランク軸2にスプライン嵌合してナット134により固着される駆動板135と、この駆動板135の外側面に一体に突設された支持筒136に摺動可能に支承される有底円筒状のクラッチアウタ137とを備える。駆動板135は、クラッチアウタ137の端壁に隣接して配置されると共に、その外周がクラッチアウタ137の内周にスプライン結合される。クラッチアウタ137内にはクラッチインナ138が同軸状に配置され、クラッチアウタ137の円筒部内周に摺動可能にスプライン係合した複数枚の環状の駆動摩擦板139と、クラッチインナ138の外周に摺動可能に係合した複数枚の環状の被動摩擦板140とが交互に積層配置される。その際、これら摩擦板139,140群の内、外側に2枚の駆動摩擦板139,139が配置され、その外側の駆動摩擦板139の外側面に対面する受圧環141がクラッチアウタ137の円筒部内周に係止される。
【0089】
両側の駆動摩擦板139,139間に、これらを離間方向に付勢する離間ばね142が縮設される。また内側の被動摩擦板140には、クラッチインナ138の外周に突設されたフランジ138aが対置される。
【0090】
駆動板135には、複数個の遠心重錘143がピボット144により揺動自在に取付けられ、各遠心重錘143の押圧腕部143aが内側の駆動摩擦板139を押圧し得るように配置される。また駆動板135の支持筒136には、クラッチアウタ137の外方(図17では右方)への摺動限を規定するストッパ145が設けられ、このストッパ145に向けてクラッチアウタ137を付勢するクラッチばね146が駆動板135及びクラッチアウタ137間に装着される。
【0091】
クラッチインナ138は、公知の逆負荷伝達用ねじ機構147を介して環状の伝動部材148が連結され、この伝動部材148は、トルクコンバータT′のポンプ羽根車50のボス50a外周にスプライン結合される。
【0092】
而して、エンジンEのアイドリング時には、クランク軸2と共に回転する駆動板135の回転数が低く、遠心重錘143の重錘部の遠心力が小さいので、押圧腕部143aの駆動摩擦板139に対する押圧力も小さい。このため、両側の駆動摩擦板139,139は、離間ばね142の付勢力で離間していて、被動摩擦板140を解放しており、変速クラッチCc′はオフ状態となっている。したがってオフ状態の変速クラッチCc′は、クランク軸2からトルクコンバータT′のポンプ羽根車50への動力伝達を遮断するので、車輪ブレーキを作動せずとも、トルクコンバータT′のクリープ作用による四輪バギーVbの微速前進を防ぐことができる。
【0093】
エンジンEの回転数が所定値以上に上昇すると、それに伴い遠心重錘143の重錘部の遠心力が増大して、その押圧腕部143aが駆動及び被動摩擦板139,140群を受圧環141に対して強く押圧して、駆動及び被動摩擦板139,140間を摩擦係合させるので、変速クラッチCc′は自動的にオン状態となり、クランク軸2の動力をクラッチインナ138から伝動部材148を介してトルクコンバータT′のポンプ羽根車50へと伝達する。
【0094】
遠心重錘143の駆動及び被動摩擦板139,140群に対する押圧力がクラッチばね146のセット荷重を超えると、クラッチアウタ137がクラッチばね146を撓ませながら図17で左方へ変位する。しかもその後、遠心重錘143は、クラッチアウタ137に設けられたストッパリング157に受け止められ、それ以上の外方揺動を阻止されるようになっており、駆動及び被動摩擦板139,140相互の圧接力は、クラッチばね146の荷重以上には増加しない。
【0095】
クラッチアウタ137は、その外側面に突出したボス137aを有しており、このボス137aに、レリーズベアリング149を介してレリーズカム150が取付けられる。このレリーズカム150には、右サイドカバー15aに調節ボルト151を介して取付けられる固定カム152が対置され、この固定カム152に付設されたボール153が、レリーズカム150の凹部150aに係合される。
【0096】
またレリーズカム150は、先端に切欠き154aを有するアーム154を半径方向へ突出させており、その切欠き154aには、変速機Mの切換え操作に用いるチェンジスピンドル155に固着したクラッチアーム156の先端部が係合される。
【0097】
而して、四輪バギーVbの走行中、変速機Mの切換のために、チェンジスピンドル155が回動されると、その回動の前半でクラッチアーム156がレリーズカム150を回動し、それに伴いレリーズカム150は、その凹部150aから固定カム152のボール153を押し出し、そのときの反力によりレリーズベアリング149を介してクラッチアウタ137を図で左方へクラッチばね146の荷重に抗して押動し、受圧環141を駆動及び被動摩擦板139,140群から離間させる。一方、遠心重錘143は、前述のようにストッパリング157により外方揺動を阻止され、押圧腕部143aが駆動及び被動摩擦板139,140群に対するそれまでの押圧位置で止まることになるから、各駆動及び被動摩擦板139,140間が確実に離間し、変速クラッチCc′はオフ状態となる。
【0098】
チェンジスピンドル155の後半の回動は変速機Mの切換えに供され、その切換後、チェンジスピンドル155の戻り回動に伴い、レリーズカム150は当初の位置に戻され、変速クラッチCc′はクラッチばね146の付勢力と、持続される遠心重錘143の遠心力との協働によりオン状態に戻される。
【0099】
トルクコンバータT′においては、前記伝動部材148とスプライン結合されたポンプ羽根車50のボス50aがクランク軸2にボールベアリング159を介して支承され、タービン羽根車51に連なるタービン軸59は、左右のニードルベアリング160及びボールベアリング161を介してステータ軸60上に支承される。ステータ羽根車52のボス52aは、ボールベアリング162又はニードルベアリングを介してクランク軸2に支承されると共に、ステータ軸60にスプライン結合される。
【0100】
ポンプ羽根車50に連なるポンプ延長部70には、タービン羽根車51の外側を覆うトルクコンバータサイドカバー163が油密に結合され、このトルクコンバータサイドカバー163とタービン軸59との間に、タービン軸59からトルクコンバータサイドカバー163への逆負荷トルクのみを伝達する一方向クラッチ64が介裝される。したがって、エンジンブレーキ時、駆動軸126に加わる逆負荷トルクが変速機M及び1次減速装置14を経てタービン軸59に伝達されると、上記一方向クラッチ64が接続状態となって、その逆負荷トルクをポンプ延長部70からポンプ羽根車50、伝動部材148へと伝達される。
【0101】
逆負荷トルクが伝動部材148に伝達されると、変速クラッチCc′では、ねじ機構147の作動によりクラッチインナ138が図17で左方へ押動され、そのフランジ138aが、内側の駆動摩擦板139を残して駆動及び被動摩擦板139,140群を受圧環141に対して押圧するので、変速クラッチCc′はオン状態となる。したがって、上記逆負荷トルクはクランク軸2に伝達され、良好なエンジンブレーキ効果が得られる。
【0102】
クランク軸2には、上流供給油路27a及び下流供給油路27b間を仕切る隔壁165が設けられ、また上流供給油路27aには、これを更に上流側と下流側とに二分する仕切り栓166が圧入される。
【0103】
前記変速クラッチCc′において、支持筒136内には、その開放面を蓋体167で閉塞して油室168が画成され、この油室168は通孔169を介してクラッチインナ138の内周側に連通される。また油室169は、クランク軸2に穿設された流入孔170及び流出孔171を介して上流供給油路27aの上流側及び下流側に連通される。
【0104】
また前記トルクコンバータT′において、ステータ羽根車52のボス52aの右側に第1小油室172、左側に第2小油室173がそれぞれ設けられ、第1小油室172は、ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に連通すると共に、クランク軸2に穿設された流入孔175を介して上流供給油路27aの下流側に連通し、第2小油室173は、タービン根車51及びステータ羽根車52間の油室に連通すると共に、クランク軸2に穿設された流出孔176を介して下流供給油路27bに連通する。
【0105】
さらに第1及び第2小油室172,173は、ボス52aを支承する前記ベアリング162の各部間隙と、ボス52aに設けた通孔174とを介して互いに連通する。
【0106】
而して、エンジンEにより駆動されるオイルポンプ44からオイルが油路27を通して上流供給油路27aに供給されると、そのオイルは流入孔170から油室168に入り、そこから通孔169と流出孔171とに分流し、通孔169を通過したオイルは変速クラッチCc′の摩擦部や摺動部に供給されて、その冷却や潤滑に寄与する。
【0107】
一方、流出孔171を通過したオイルは、上流供給油路27aの下流側を通り、流入孔175から第1小油室172を経てポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室を満たし、それから第2小油室173及び流出孔176を経て下流供給油路27bへと流れていき、エンジンE各部の潤滑に供される。
【0108】
ところで、ステータ羽根車52のボス52aは、ベアリング162を介してクランク軸2に支承されるので、安定した回転が保障される。しかも、そのベアリング162は、ボス52aの両側の第1及び第2小油室172,173に両端面を臨ませているので、これを常に良好な潤滑状態に置くことができる。また第1及び第2小油室172,173は、ベアリング162及び通孔174を介して互いに連通しているので、オイルポンプ44からの供給油量が少ない場合には、ポンプ羽根車50が、その回転により内部に多量のオイルを吸い込もうとしたとき、上流供給油路27aから第1小油室172への供給油量が不足するが、それを補うように第2小油室173から通孔174及びベアリング162を通して第1小油室172にオイルが流れるので、トルクコンバータT′内のオイル中での気泡の発生を抑え、伝動効率の低下を防ぐと共に、ベアリング162を効果的に潤滑することができる。
【0109】
尚、第1及び第2油室172,173間は、ベアリング162を迂回して設けられる通孔174′を介して連通することもでき、またその両方を介して連通することもできる。
【0110】
またクランク軸2内の上流供給油路27a及び下流供給油路27bは、流入孔175及び流出孔176間で隔壁165により直接的な連通が断たれるので、オイルポンプ44から上流供給油路27aに供給されたオイルは、流入孔175及び流出孔176を通してトルクコンバータT′内を通過することを強制されることになり、オイルポンプ44が比較的小容量であっても、トルクコンバータT′の作動オイルの不足を極力防ぐことができ、小型車両用として有効である。
【0111】
その他の構成は、前記第1実施例と略同様であり、図15〜図17中、第1実施例との対応部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0112】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、変速クラッチCc,Cc′は、エンジンE及び1次減速装置14間の伝動経路上、上記実施例ではエンジンEとトルクコンバータT,T′との間に配置したが、トルクコンバータT,T′と1次減速装置14との間に配置することもできる。またトルクコンバータT,T′は、トルク増幅機能を持たない流体継手に置き換えることもできる。
【0113】
【発明の効果】
以上のように本発によれば、ンジンのアイドリング時、及び変速操作時には、変速クラッチのオフ制御により、クリープ現象の解消、及びトルクショックを伴わない軽快な変速を達成することができ、またクルージング時には、ロックアップクラッチをオン制御により、ポンプ羽根車及びタービン羽根車間の滑りを無くして、伝動効率の向上を図ることができる。
【0114】
また特に第1の特徴によれば、制御棒の進退操作により、流体伝動手段の油圧を利用してロックアップクラッチをオン、オフ制御することができ、しかも、その制御棒を前進させたオフ制御時でも、油圧室からの油圧の無用なリークを防ぐことができる。
【0115】
また特に第2の特徴によれば、ロックアップクラッチを、タービン羽根車の回転数が所定値以上になると自動的に作動する、タービン羽根車回転数依存型に構成したので、タービン羽根車の回転数が所定値以上になると、流体伝動手段のポンプ羽根車及びタービン羽根車を自動的に直結することができる。しかもこのロックアップクラッチに対するタービン羽根車回転数依存型の自動制御を簡単に行うことができる。
【0116】
また特に第3の特徴によれば、ラッチシリンダの所定回転数未満では、遠心弁の開弁により油圧室の残圧を逃がし孔から速やかに解放してロックアップクラッチのオフ性能を高めると共に、油圧室内の切粉等の異物をもオイルと共に逃がし孔から排出することができ、また所定回転数以上では、遠心弁の閉弁により油圧室の昇圧を可能にし、ロックアップクラッチの作動に支障を来すことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係る自動二輪車の側面図。
【図2】 同自動二輪車に搭載されるパワーユニットの縦断面図。
【図3】 図3は上記パワーユニットの伝動装置の拡大縦断面図。
【図4】 図3の4−4線断面図。
【図5】 図3の5−5矢視図。
【図6】 上記伝動装置の側面図。
【図7】 図3の変速クラッチの出口弁を閉弁状態で示す拡大図。
【図8】 同出口弁を開弁状態で示す拡大図。
【図9】 図3の9−9線断面図。
【図10】 図3の10−10線断面図。
【図11】 図3のロックアップクラッチの制御弁を閉弁状態で示す拡大図。
【図12】 同制御弁を開弁状態で示す拡大図。
【図13】 本発明の第2実施例を示す、図3に対応した断面図
【図14】 本発明の第3実施例を示す、図3に対応した断面図
【図15】 本発明の第4実施例に係る四輪バギーの側面図。
【図16】 同四輪バギーの、パワーユニット部を縦断して示した平面図。
【図17】 上記パワーユニットの伝動装置の拡大縦断面図。
【符号の説明】
Cc,Cc′,Cc″・・・変速クラッチ
E・・・・・・エンジン
Lc,Lc′,Lc″・・・ロックアップクラッチ
M・・・・・・多段変速機
T,T′・・・流体伝動手段(トルクコンバータ)
2・・・・・・クランク軸
10・・・・・変速機の入力軸
50・・・・・ポンプ羽根車
51・・・・・タービン羽根車
70・・・・・ポンプ延長部
72・・・・・加圧板
73・・・・・受圧板
74・・・・・摩擦クラッチ板
77・・・・・油圧室
78・・・・・第1弁孔
79・・・・・第2弁孔
80・・・・・制御弁
81・・・・・制御棒
86・・・・・操作手段(ロックアップクラッチ操作軸)
93・・・・・受圧板
94・・・・・加圧板
95・・・・・摩擦クラッチ板
96・・・・・戻しばね
99・・・・・油圧室
100・・・・逃がし孔
106・・・・クラッチシリンダ
106a・・・シリンダ孔
107・・・・加圧ピストン
108・・・・油圧室
110〜112・・・摩擦係合手段
114・・・・ピストン戻しばね
117・・・・オイル導入手段(入口孔)
118・・・・逃がし孔
120・・・・遠心弁

Claims (3)

  1. エンジン(E)のクランク軸(2)と、多段変速機(M)の入力軸(10)とを、エンジン(E)側に連なるポンプ羽根車(50)及び多段変速機(M)側に連なるタービン羽根車(51)を有する流体伝動手段(T)を介して連結し、エンジン(E)のクランク軸(2)及び多段変速機(M)の入力軸(10)間に、流体伝動手段(T)と直列関係にある変速クラッチ(Cc)を介裝し、また流体伝動手段(T)のポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)間に、その両羽根車(50,51)を相互に直結し得るロックアップクラッチ(Lc)を介裝してなる小型車両用伝動装置であって、
    ロックアップクラッチ(Lc)が、ポンプ羽根車(50)に連設されてタービン羽根車(51)を囲繞するポンプ延長部(70)と、このポンプ延長部(70)の先端に結合されてポンプ延長部(70)内に、ポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)間の油室に連通する油圧室(77)を画成する受圧板(73)と、この受圧板(73)に対置され、油圧室(77)の油圧により受圧板(73)側へ付勢される加圧板(72)と、受圧板(73)及び加圧板(72)間に介裝されると共にタービン羽根車(51)に連結される環状の摩擦クラッチ板(74)と、この摩擦クラッチ板(74)の内周側で加圧板(72)及び受圧板(73)にそれぞれ設けられた第1及び第2弁孔(78,79)と、その第1弁孔(78)を閉じるべく加圧板(72)に設けられる制御弁(80)と、第1及び第2弁孔(78,79)に嵌装されて、制御弁(80)の閉弁を許容しつゝ、摩擦クラッチ板(74)の内周側を第2弁孔(79)外へ開放させる後退位置、及び第2弁孔(79)を閉鎖しつゝ制御弁(80)を開放して摩擦クラッチ板(74)の内周側を油圧室(77)に連通させる前進位置間を移動し得る制御棒(81)と、この制御棒(81)を操作する操作手段(86)とで構成されることを特徴とする、小型車両用伝動装置。
  2. エンジン(E)のクランク軸(2)と、多段変速機(M)の入力軸(10)とを、エンジン(E)側に連なるポンプ羽根車(50)及び多段変速機(M)側に連なるタービン羽根車(51)を有する流体伝動手段(T)を介して連結し、エンジン(E)のクランク軸(2)及び多段変速機(M)の入力軸(10)間に、流体伝動手段(T)と直列関係にある変速クラッチ(Cc)を介裝し、また流体伝動手段(T)のポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)間には、タービン羽根車(51)の回転数が所定値以上になると自動的に作動して両羽根車(50,51)を相互に直結し得るロックアップクラッチ(Lc″)を介裝してなる小型車両用伝動装置であって、
    ロックアップクラッチ(Lc″)が、タービン羽根車(51)に連結したクラッチシリンダ(106)と、このクラッチシリンダ(106)のシリンダ孔(106a)に摺動可能に嵌装されて油圧室(108)を画成する加圧ピストン(107)と、この加圧ピストン(107)を油圧室(108)側へ付勢するピストン戻しばね(114)と、油圧室(108)にオイルを導入する手段(117)と、クラッチシリンダ(106)及びポンプ羽根車(50)間に設けられる摩擦係合手段(110〜112)とで構成されていて、タービン羽根車(51)の回転数が所定値以上になると、それに応じて上昇する油圧室(108)内の遠心油圧により加圧ピストン(107)が摩擦係合手段(110〜112)を作動してクラッチシリンダ(106)及びポンプ羽根車(50)間を連結するようにしたことを特徴とする、小型車両用伝動装置。
  3. 請求項2記載の小型車両用伝動装置において、
    クラッチシリンダ(106)に、油圧室(108)の外周側を外部に開放する逃がし孔(118)と、クラッチシリンダ(106)の回転数が所定値未満のときこの逃がし孔(118)を開き、所定値以上のときこの逃がし孔(118)を閉じる遠心弁(120)とを設けたことを特徴とする、小型車両用伝動装置。
JP32090299A 1998-11-20 1999-11-11 小型車両用伝動装置 Expired - Fee Related JP4405013B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32090299A JP4405013B2 (ja) 1998-11-20 1999-11-11 小型車両用伝動装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP33155298 1998-11-20
JP10-331552 1998-11-20
JP32090299A JP4405013B2 (ja) 1998-11-20 1999-11-11 小型車両用伝動装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000213625A JP2000213625A (ja) 2000-08-02
JP4405013B2 true JP4405013B2 (ja) 2010-01-27

Family

ID=26570255

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32090299A Expired - Fee Related JP4405013B2 (ja) 1998-11-20 1999-11-11 小型車両用伝動装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4405013B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100360834C (zh) * 2003-11-21 2008-01-09 株式会社豊技研 用于车辆的动力传动装置
JP4568496B2 (ja) * 2003-12-18 2010-10-27 富士重工業株式会社 トルクコンバータ
JP5022047B2 (ja) * 2007-01-25 2012-09-12 アイシン・エィ・ダブリュ工業株式会社 トルクコンバータ
CN109488741B (zh) * 2018-10-22 2023-01-13 洛阳东方众成离合器有限公司 一种液力变速箱

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000213625A (ja) 2000-08-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4198848B2 (ja) トルクコンバータのロックアップクラッチ
EP1302700B1 (en) Transmitting system for small-sized vehicle
EP1001189B1 (en) Transmission system for small-size vehicle
US6386067B1 (en) Transmitting system for small-sized vehicle
EP1001187B1 (en) Transmission system for small-size vehicle
JP4405013B2 (ja) 小型車両用伝動装置
EP1001188B1 (en) Transmission system for small-size vehicle
JP4326089B2 (ja) 小型車両用伝動装置
JP4226170B2 (ja) 小型車両用伝動装置
JP4310012B2 (ja) 小型車両用伝動装置
JP4282849B2 (ja) 小型車両用伝動装置
JP4326091B2 (ja) 小型車両用伝動装置
JP4398556B2 (ja) 遠心油圧クラッチ
JP4326090B2 (ja) トルクコンバータ
JP4198847B2 (ja) トルクコンバータ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051111

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080805

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090107

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090309

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090513

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090629

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091028

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091104

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121113

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees