JP4198847B2 - トルクコンバータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,主として自動二輪車,四輪バギー等の小型車両の伝動装置に適用されるトルクコンバータに関し,特に,ポンプ羽根車のボスを第1ベアリングを介して駆動軸に支承し,またステータ羽根車のボスに連なるステータ軸を駆動軸の外周に同心状に配置し,このステータ軸にタービン羽根車のボスを第2ベアリングを介して支承し,第1及び第2ベアリング間を通してポンプ羽根車及びタービン羽根車間の油室に作動オイルを供給するようにしたものゝ改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は,先に,エンジンのクランク軸と,このクランク軸と平行に配置される多段変速機の入力軸とをトルクコンバータを介して連結した小型車両用伝動装置において,エンジンのクランク軸とトルクコンバータとの間に変速クラッチを介裝して,変速クラッチを適時オフ状態に制御することにより,トルクコンバータの存在に関わりなく変速クラッチ以降への動力伝達を遮断して,クリープ現象を防ぎ,またトルクショックを伴うことなく変速を軽快に行い得るようにしたものを提案した(特願平10−324280号参照)。
【0003】
上記伝動装置のトルクコンバータでは,ポンプ羽根車のボスを第1ベアリングを介して駆動軸に支承し,またステータ羽根車のボスに連なるステータ軸を駆動軸の外周に同心状に配置し,このステータ軸にタービン羽根車のボスを第2ベアリングを介して支承し,第1及び第2ベアリング間を通してポンプ羽根車及びタービン羽根車間の油室に作動オイルを供給するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,このようなトルクコンバータでは,トルクコンバータへの供給油圧が低いとき,伝動効率が大幅に低下することがある。本発明者は,その原因として次のようなことを突き止めた。即ち,トルクコンバータへの供給油圧が低いとき,ポンプ羽根車がその回転を加速させて,内部に多量のオイルを吸い込もうとしたとき,前記第1及び第2ベアリング間に減圧を生じ,外部の空気がこれらベアリングを通過して,トルクコンバータ内の作動オイルに混入し,伝動効率を大幅に低下させるのである。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,トルクコンバータへの供給油圧が低いときも,トルクコンバータ内部に空気が吸い込まれることを防止して,伝動効率の低下を防ぐようにした,前記トルクコンバータを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,ポンプ羽根車のボスを第1ベアリングを介して支軸に支承し,またステータ羽根車のボスに連なるステータ軸を支軸の外周に同心状に配置し,このステータ軸にタービン羽根車のボスを第2ベアリングを介して支承し,第1及び第2ベアリング間を通してポンプ羽根車及びタービン羽根車間の油室に作動オイルを供給するようにしたトルクコンバータにおいて,前記第1及び第2ベアリングには,各ベアリングの内外何れの方向からの空気等の流体の通過をも阻止する両方向シール手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
尚,前記支軸は,後述する本発明の実施例中のクランク軸2に対応する。
【0008】
上記特徴によれば,前記両方向シール手段は,各ベアリングの内側からも,外側からも各ベアリングに対する空気等の流体の通過を阻止するので,トルクコンバータへの供給油圧が低いとき,ポンプ羽根車の回転加速によるも,外部の空気が第1及び第2ベアリングを通してトルクコンバータ内部に侵入することを阻止し,作動オイルへの空気の混入による伝動効率の低下を防ぐことができる。またトルクコンバータへの供給油圧が高くなったときは,その油圧が第1及び第2ベアリングを通して外部にリークするすることを阻止して,トルクコンバータ内を高油圧に保持し,伝動効率を高めことができる。かくして,供給油圧の高低に拘らず,高伝動効率を確保することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施例を示す自動二輪車用パワーユニットの縦断平面図,図2は上記パワーユニットのトルクコンバータ周辺部の拡大縦断面図,図3は図2の要部拡大図である。
【0011】
図1において,自動二輪車用パワーユニットPは,エンジンE及び多段変速機Mを一体化して構成される。そのエンジンEは,従来普通のように,クランクケース1に左右一対のボールベアリング3,3′を介して支承されるクランク軸2と,シリンダブロック5のシリンダボア5aに摺動自在に嵌装されてコンロッド6を介してクランク軸2に連接されるピストン7とを備えると共に,クランク軸2を自動二輪車の左右方向へ向けて配置される。
【0012】
クランクケース1にはミッションケース8が一体に連設されており,このミッションケース8の左右両側壁により多段変速機Mの,クランク軸2と平行に配置された入力軸10及び出力軸11がそれぞれボールベアリング12,12′;13,13′を介して支承され,これら入力軸10及び出力軸11にわたり,図1で左側から第1速ギヤ列G1,第2速ギヤ列G2,第3速ギヤ列G3及び第4速ギヤ列G4が配設される。そして第2速ギヤ列G2の被動ギヤG2b,及び第3速ギヤ列G3の駆動ギヤG3aがシフトギヤを兼ねており,両シフトギヤG2b,G3aが共に中立位置にあるときは,変速機Mはニュートラル状態にあり,シフトギヤG2bが図で左動又は右動すると第1速ギヤ列G1又は第3速ギヤ列G3が確立し,シフトギヤG3aが左動又は右動すると,第2速ギヤ列G2又は第4速ギヤ列G4が確立するようになっている。上記シフトギヤG2b,G3aは,図示しない公知のペダル式その他のマニュアル式チェンジ装置により作動される。
【0013】
前記クランク軸2の右端と変速機Mの入力軸10の右端とは,クランクケース1及びミッションケース8外で互いに直列関係に接続される変速クラッチCc,トルクコンバータT及び1次減速装置14を介して相互に連結される。その際,特に,変速クラッチCc,トルクコンバータT及び1次減速装置14の駆動ギヤ14aはクランク軸2上に,クランクケース1の右側壁側から外方に向かって駆動ギヤ14a,トルクコンバータT及び変速クラッチCcの順で取付けられる。そしてこれらを覆う右サイドカバー15aがクランクケース1及びミッションケース8の右端面に接合される。
【0014】
またクランク軸2の左端には,発電機16のロータ17が固着され,それのステータ18は,発電機16を覆ってクランクケース1の左端面に接合される左サイドカバー15bに取付けられる。
【0015】
変速機Mの出力軸11の左端には,ミッションケース8外で,自動二輪車の後輪(図示せず)を駆動するチェーン式の最終減速装置19が連結される。
【0016】
図1及び図2に示すように,変速クラッチCcは,クランク軸2にスプライン結合される駆動板25と,この駆動板25の外側面に一体に突設された支持筒26に摺動可能に支承される有底円筒状のクラッチアウタ27とを備える。駆動板25は,クラッチアウタ27の端壁に隣接して配置されると共に,その外周がクラッチアウタ27の内周にスプライン結合される。クラッチアウタ27内にはクラッチインナ28が同軸状に配置され,クラッチアウタ27の円筒部内周に摺動可能にスプライン係合した複数枚の環状の駆動摩擦板29と,クラッチインナ28の外周に摺動可能に係合した複数枚の環状の被動摩擦板30とが交互に積層配置される。その際,これら摩擦板29,30群の内,外側に2枚の駆動摩擦板29,29が配置され,その外側の駆動摩擦板29の外側面に対面する受圧環31がクラッチアウタ27の円筒部内周に係止される。
【0017】
両側の駆動摩擦板29,29間に,これらを離間方向に付勢する離間ばね32が縮設される。また内側の被動摩擦板30には,クラッチインナ28の外周に突設されたフランジ28aが対置される。
【0018】
駆動板25には,複数個の遠心重錘33がピボット34により揺動自在に取付けられ,各遠心重錘33の押圧腕部33aが内側の駆動摩擦板29を押圧し得るように配置される。また駆動板25の支持筒26には,クラッチアウタ27の外方(図2では右方)への摺動限を規定するストッパ35が設けられ,このストッパ35に向けてクラッチアウタ27を付勢するクラッチばね36が駆動板25及びクラッチアウタ27間に装着される。
【0019】
クラッチインナ28は,公知の逆負荷伝達用ねじ機構37を介して環状の伝動部材38が連結され,この伝動部材38は,トルクコンバータTのポンプ羽根車50のボス50a外周にスプライン結合される。
【0020】
クラッチアウタ27は,その外側面に突出したボス27aを有しており,このボス27aに,レリーズベアリング39を介してレリーズカム40が取付けられる。このレリーズカム40には,右サイドカバー15aに調節ボルト41を介して取付けられる固定カム42が対置され,この固定カム42に付設されたボール43が,レリーズカム40の凹部40aに係合される。
【0021】
またレリーズカム40は,変速に先立って作動されるクラッチアーム(図示せず)によって回動されるようになっている。
【0022】
同じく図1及び図2に示すように,トルクコンバータTは,従来普通のようにポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52から構成され,そのポンプ羽根車50は,そのボス50aの外周側が前記伝動部材38にスプライン結合され,その内周側がボールベアリング53を介してクランク軸2の外周面に回転自在に支承される。
【0023】
またステータ羽根車52のボス52aは,ボールベアリング54を介してクランク軸2の外周面に回転自在に支承されると共に,クランク軸2の外周に同心状に配設されるステータ軸55の一端部にスプライン結合される。このステータ軸55の他端部は,クランクケース1の右側壁近傍まで延びていて,クランク軸2にボールベアリング56を介して回転自在に支承されると共に,フリーホイール57を介してクランクケース1に連結される。
【0024】
またタービン羽根車51のボス51aは,ステータ軸55の外周面にボールベアリング58を介して回転自在に支承される。タービン羽根車51のボス51aには,ステータ軸55の外周にニードルベアリング59を介して回転自在に支承されるタービン軸60が一体に連設される。
【0025】
ポンプ羽根車50に連なるポンプ延長部50aには,タービン羽根車51の外側を覆うトルクコンバータサイドカバー61が油密に結合され,このトルクコンバータサイドカバー61とタービン軸60との間に,タービン軸60からトルクコンバータサイドカバー61への逆負荷トルクのみを伝達する一方向クラッチ62が介裝される。
【0026】
タービン軸60には,1次減速装置14の駆動ギヤ14aが一体に形成され,これに噛合する被動ギヤ14bが変速機Mの入力軸10にスプライン結合される。こうして構成される1次減速装置14は,クランクケース1とトルクコンバータTとの間に配置される。
【0027】
またクランク軸2には,その右端面に開口する上流供給油路65aと,コンロッド6の大端部を支持するクランクピン外周のニードルベアリング66に連通する下流供給油路65bとが設けられ,上流供給油路65aには,エンジンEにより駆動されるオイルポンプ67が油溜め68から吸い上げたオイルを,右サイドカバー15aに形成された油路65を通して圧送するようになっている。油溜め68は,クランクケース1,ミッションケース8及び右サイドカバー15aの底部に形成されるものである。
【0028】
クランク軸2には,また,上流供給油路65a及び下流供給油路65b間を仕切る隔壁69が設けられ,上流供給油路65aには,これを更に上流側と下流側とに二分する仕切り栓70が圧入される。
【0029】
前記変速クラッチCcにおいて,支持筒26内には,その開放面を蓋体44で閉塞して油室45が画成され,この油室45は通孔71を介してクラッチインナ28の内周側に連通される。また上記油室45は,クランク軸2に穿設された流入孔72及び流出孔73を介して上流供給油路65aの上流側及び下流側に連通される。
【0030】
図3に明示するように,ステータ羽根車52のボス52aの右側には第1小油室75,左側には第2小油室76がそれぞれ設けられ,第1小油室75は,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に連通すると共に,クランク軸2に穿設された流入孔77を介して上流供給油路65aの下流側に連通し,第2小油室76は,タービン根車51及びステータ羽根車52間の油室に連通すると共に,ボス52aの通孔74と,クランク軸2に穿設された流出孔78とを介して下流供給油路65bに連通する。
【0031】
ポンプ羽根車50のボス50aを支承するボールベアリング53(以下,第1ベアリングという)は第1小油室75に隣接し,タービン羽根車51のボス51aを支承するボールベアリング58(以下,第2ベアリングという)は第2小油室76に隣接する。上記第1及び第2ベアリング53,58の各内側部には,その内側から外側への流体の通過を阻止する内側シール部材79,80が,またそれらの各外側部には,その外側から内側への空気等の流体の通過を阻止する外側シール部材81,82がそれぞれ設けられ,これら内,外側シール部材79,81;80,82によって本発明の両方向シール手段83,84が構成される。
【0032】
またステータ羽根車52のボス52aを支承するボールベアリング54は,その右端面を第1小油室75に臨ませ,他端面を通孔74を介して第2小油室76に連通させている。
【0033】
次に,この実施例の作用について説明する。
【0034】
先ず,変速クラッチCcの作用の説明から始めると,エンジンEのアイドリング時には,クランク軸2と共に回転する駆動板25の回転数が低く,遠心重錘33の重錘部の遠心力が小さいので,押圧腕部33aの駆動摩擦板29に対する押圧力も小さい。このため,両側の駆動摩擦板29,29は,離間ばね32の付勢力で離間していて,被動摩擦板30を解放しており,変速クラッチCcはオフ状態となっている。したがってオフ状態の変速クラッチCcは,クランク軸2からトルクコンバータTへの動力伝達を遮断するので,車輪ブレーキを作動せずとも,トルクコンバータTのクリープ現象による車両の微速前進を防ぐことができる。
【0035】
エンジンEの回転数が所定値以上に上昇すると,それに伴い遠心重錘33の重錘部の遠心力が増大して,その押圧腕部33aが駆動及び被動摩擦板29,30群を受圧環31に対して強く押圧して,駆動及び被動摩擦板29,30間を摩擦係合させるので,変速クラッチCcは自動的にオン状態となり,クランク軸2の動力をクラッチインナ28から伝動部材38を介してトルクコンバータTへと伝達する。
【0036】
遠心重錘33の駆動及び被動摩擦板29,30群に対する押圧力がクラッチばね36のセット荷重を超えると,クラッチアウタ27がクラッチばね36を撓ませながら図2で左方へ変位する。しかもその後,遠心重錘33は,クラッチアウタ27に設けられたストッパリング47に受け止められ,それ以上の外方揺動を阻止されるようになっており,駆動及び被動摩擦板29,30相互の圧接力は,クラッチばね36の荷重以上には増加しない。
【0037】
変速機Mの切換の際,それに先立って,図示しないクラッチレバーによりレリーズカム40を回動すると,該レリーズカム40は,その凹部40aから固定カム42のボール43を押し出し,そのときの反力によりレリーズベアリング39を介してクラッチアウタ27を図で左方へクラッチばね36の荷重に抗して押動し,受圧環31を駆動及び被動摩擦板29,30群から離間させる。一方,遠心重錘33は,前述のようにストッパリング47により外方揺動を阻止され,押圧腕部33aが駆動及び被動摩擦板29,30群に対するそれまでの押圧位置で止まることになるから,各駆動及び被動摩擦板29,30間が確実に離間し,変速クラッチCcはオフ状態となる。
【0038】
この状態では,クランク軸2の駆動トルクに影響されることなく,変速機Mの切換えを軽快に行うことができる。
【0039】
変速機Mの切換え後,クラッチアームによりレリーズカム40を当初の位置に戻せば,変速クラッチCcはクラッチばね36の付勢力と,持続される遠心重錘33の遠心力との協働によりオン状態に復帰し,クランク軸2の駆動トルクをトルクコンバータTに伝達する。
【0040】
次に,トルクコンバータTの作用の説明に移る。
【0041】
エンジンEにより駆動されるオイルポンプ67がオイルを油路65を通して上流供給油路65aに供給されると,そのオイルは流入孔72から油室45に入り,そこから通孔71と流出孔73とに分流し,通孔71を通過したオイルは変速クラッチCcの摩擦部や摺動部に供給されて,その冷却や潤滑に寄与する。
【0042】
一方,流出孔73を通過したオイルは,上流供給油路65aの下流側を通り,流入孔77から第1小油室75を経てポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室を満たし,それから第2小油室76,通孔74及び流出孔78を経て下流供給油路65bへと流れていき,エンジンE各部の潤滑に供される。
【0043】
而して, クランク軸2の出力トルクがオン状態の変速クラッチCcを介してポンプ羽根車50に伝達されると,そのトルクは,トルクコンバータT内を満たしたオイルの作用によりタービン羽根車51に流体的に伝達される。このとき,両羽根車50,51間でトルクの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力はステータ羽根車52に負担され,ステータ羽根車52は,フリーホイール57のロック作用によりクランクケース1に固定的に支持される。またトルクの増幅作用が生じていなければ,ステータ羽根車52は,フリーホイール57の空転作用により空転が可能となるから,ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52の三者は,共に同方向へ回転する。
【0044】
ポンプ羽根車50からタービン羽根車51に伝達されたトルクは1次減速装置14を介して変速機Mの入力軸10に伝達され,そして確立を選択された変速ギヤ列G1〜G4,出力軸11及び最終減速装置19を順次経て図示しない後輪へと伝達され,それを駆動する。
【0045】
走行中のエンジンブレーキ時には,タービン軸60に逆負荷トルクが加わることにより,一方向クラッチ62が接続状態となって,その逆負荷トルクをポンプ延長部60bからポンプ羽根車50,伝動部材38へと伝達される。逆負荷トルクが伝動部材38に伝達されると,変速クラッチCcでは,ねじ機構37の作動によりクラッチインナ28が図2で左方へ押動され,そのフランジ28aが,内側の駆動摩擦板29を残して駆動及び被動摩擦板29,30群を受圧環31に対して押圧するので,変速クラッチCcはオン状態となる。したがって,上記逆負荷トルクはクランク軸2に伝達され,良好なエンジンブレーキ効果が得られる。
【0046】
ところで,ステータ羽根車52のボス52aは,ベアリング54を介してクランク軸2に支承されるので,安定した回転が保障される。しかも,そのベアリング54は,ボス52aの両側の第1及び第2小油室75,76に両端面を臨ませているので,これを常に良好な潤滑状態に置くことができる。
【0047】
またエンジンEが低速回転域にあり,それにより駆動されるオイルポンプ67の吐出圧が低く,したがって上流供給油路65aからトルクコンバータTへのオイルの供給圧が低い場合には,エンジンEの加速運転に伴いポンプ羽根車50の回転が加速されると,ポンプ羽根車50が内部に多量のオイルを吸い込もうとするものゝ,上流供給油路65aから第1小油室75へのオイルの供給が追いつかず,第1及び第2小油室75,76が減圧されることがあるが,これら小油室75,76に隣接する第1及び第2ベアリング53,58は,外部からの空気等の流体の浸入を阻止する外側シール部材81,82を備えているから,右サイドカバー15a内の空気が各ベアリング53,58を通して第1及び第2小油室75,76に浸入することを防ぐことができる。したがってトルクコンバータT内の作動オイルへの空気の混入による伝動効率の低下を防ぐことができる。
【0048】
一方,エンジンEの高速回転域で,オイルポンプ67の吐出圧が充分に得られる場合には,第1及び第2小油室75,76も昇圧されるが,これら小油室75,76に隣接する第1及び第2ベアリング53,58は,内部からの流体の浸入を阻止する内側シール部材79,80を備えているから,各小油室75,76の油圧が各ベアリング53,58を通して外部にリークすることを防ぐことができる。これによりトルクコンバータT内の高圧状態を確実に保持し,高伝動効率を確保することができる。
【0049】
またクランク軸2内の上流供給油路65a及び下流供給油路65bは,流入孔77及び流出孔78間で隔壁69により直接的な連通が断たれるので,オイルポンプ67から上流供給油路65aに供給されたオイルは,流入孔77及び流出孔78を通してトルクコンバータT内を通過することを強制されることになり,オイルポンプ67が比較的小容量であっても,トルクコンバータTの作動オイルの不足を極力防ぐことができ,小型車両用として有効である。
【0050】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,第1及び第2ベアリング53,58としてニードルベアリングを使用することもできる。またクランク軸2に上流供給油路65a及び下流供給油路65b間を連通するオリフィスを設けて,上流供給油路65a内のオイルの一部がオリフィスから下流供給油路65bへ直接移るようにしてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば,ポンプ羽根車のボスを第1ベアリングを介して駆動軸に支承し,またステータ羽根車のボスに連なるステータ軸を駆動軸の外周に同心状に配置し,このステータ軸にタービン羽根車のボスを第2ベアリングを介して支承し,第1及び第2ベアリング間を通してポンプ羽根車及びタービン羽根車間の油室に作動オイルを供給するようにしたトルクコンバータにおいて,前記第1及び第2ベアリングには,各ベアリングの内外何れの方向からの流体の通過をも阻止する両方向シール手段を設けたので,トルクコンバータへの供給油圧が低いときは,外部の空気が第1及び第2ベアリングを通してトルクコンバータ内部に侵入することを阻止して,作動オイルへの空気の混入による伝動効率の低下を防ぎ,またトルクコンバータへの供給油圧が高いときは,その油圧が第1及び第2ベアリングを通して外部にリークすることを阻止し,そのリークによるトルクコンバータ内の昇圧不良を無くし,伝動効率の低下を防ぐことができ,これにより供給油圧の高低に拘らず,高伝動効率を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す自動二輪車用パワーユニットの縦断平面図。
【図2】上記パワーユニットのトルクコンバータ周辺部の拡大縦断面図。
【図3】図2の要部拡大図。
【符号の説明】
T・・・・・トルクコンバータ
2・・・・・支軸
50・・・・ポンプ羽根車
51・・・・タービン羽根車
52・・・・ステータ羽根車
53・・・・第1ベアリング
55・・・・ステータ軸
58・・・・第2ベアリング
83,84・・・両方向シール手段
Claims (1)
- ポンプ羽根車(50)のボス(50a)を第1ベアリング(53)を介して支軸(2)に支承し,またステータ羽根車(52)のボス(52a)に連なるステータ軸(55)を支軸(2)の外周に同心状に配置し,このステータ軸(55)にタービン羽根車(51)のボス(51a)を第2ベアリング(58)を介して支承し,第1及び第2ベアリング(53,58)間を通してポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)間の油室に作動オイルを供給するようにしたトルクコンバータにおいて,
前記第1及び第2ベアリング(53,58)には,各ベアリングの内外何れの方向からの流体の通過をも阻止する両方向シール手段(83,84)を設けたことを特徴とするトルクコンバータ。
Priority Applications (5)
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---|---|---|---|
JP32090699A JP4198847B2 (ja) | 1999-11-11 | 1999-11-11 | トルクコンバータ |
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