JPH06245997A - 血液濃縮器内蔵人工肺 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 外部還流型の中空糸膜を用いた人工肺に体外
循環で頻繁に用いられる血液濃縮器のろ過膜部分を内蔵
する事により酸素化効率に代表されるガス交換能を向上
させ、かつ血液充填量を減少させる事を可能とした人工
肺を提供する。 【構成】 血液流入部（２）より導入された血液は側壁
に多数のスリットを設けた内筒（３）を通過し、内筒を
取り囲む様に配された血液ろ過中空糸（４）によりろ過
が行われ、さらに外周に配されたガス交換用中空糸
（５）間を通過した後に外筒（６）の端部に設けられた
出口（７）から患者へと向かう回路に接続される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は中空糸外側に血液を流
し、酸素は中空糸内に導入する方法であって、その中に
血液ろ過器を内蔵したタイプの人工肺に係わり、さらに
詳しくは、適切に濃縮された血液が中空糸膜を介して酸
素と良好に接する事により極めて効率よくガス交換が実
現でき、しかも装置を小型にする事が可能な血液濃縮器
内蔵型人工肺に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年体外循環を伴う開心術において輸血
を減少させる努力が続けられている。これを実現するた
めに人工肺と熱交換器の血液充填量を減少させる事は盛
んに試みられている。しかしながら体外循環全体で考え
ると極一部を改善しているにすぎず、この他にも血液ろ
過器、血液リザーバ、血液ポンプ、回路などが残されて
いる。血液充填量のみならず対外循環中の血液組成を監
視、維持する目的でヘモコンセントレータと呼ばれる血
液ろ過器も近年盛んに用いられるようになりつつある。
これは患者のカルディヲプレギア液などで希釈された血
液を輸血できる程度のヘマトクリット値に濃縮するため
のものでありやはり血液回収を目的としている。

【０００３】

【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、血液
ろ過器などを人工肺と別に回路上に接続する方法では血
液を血液ろ過器に導入するために専用の血液ろ過器用の
ポンプを設けなければならず、また接続する回路は非常
に複雑なものとなる。さらに血液ろ過器用のポンプは体
外循環中にこれを操作することを体外循環操作者に求め
る事になる。

【 ０００４ 】さらに、体外循環回路を組み立てるとき
に、ろ過器の接続を人工肺の主要回路の側支として回路
接続を専用のコネクター（接続管）で行うため、しばし
ば接続部位から血液リークが起こり、これを防止するた
めに操作者が回路等を鉗子などで一部閉止して接続部を
確認する作業が発生する。

【０００ ５ 】

【問題点を解決するための手段】本願は上記の問題に鑑
みてなされたものであり、血液充填量を増加させずに複
雑な機能をいかに簡単に操作できるようにするかを解決
するものである。人工肺内部に血液ろ過可能な中空糸を
内蔵する事の試みは内部灌流方式の人工肺では過去に為
された事が有ったが、これは人工肺の接続回路が複雑に
なりかつ本願のように問題点を解決するには至らなかっ
た。そこで、本発明者は前期問題点を解決し、人工肺と
して良好なガス交換を行う事ができ、さらに全体として
小型で血液充填量が少ない人工肺を鋭意研究した結果、
本発明に到達したのである。

【０００６】すなわち、本発明によれば、血液流入口を
中心部に設けこれに接続する内筒と、血液流出部を有す
る外筒を設け、該内筒にスリット状の開口部を設け、該
内筒と外筒の間に長手軸方向に沿って血液ろ過中空糸を
配し、該血液ろ過中空糸の周りにガス交換中空糸を巻き
付け配置し、内筒、外筒ならびに中空糸両端部に支持部
材により気密に支持してなる人工肺であって、中心部に
設けた血液流入口より中空糸外側に血液を流し、酸素は
ガス交換中空糸の中空部に、該支持部と血液流入口と最
外筒に接続された、ガス流入口を設けたガスキャップに
ガス流入口より導入された酸素ガスをながし、血液濃縮
により生じた、ろ液を血液流入部と対向する支持部と血
液ろ過中空糸、開口部端を覆う、ろ液出口キャップを有
する人工肺、が提供される。

【０００７】

【作用】血液流入口より導入された血液は内筒に設けら
れたスリット状開口部により均一に分散されて、内筒周
辺に配された血液ろ過中空糸にまず第一に接触する。体
外循環中の血液はカルディヲプレギア液（１０００ｍ
ｌ）、補充液（１０００ｍｌ）、充填液（１０００ｍ
ｌ）、薬品等で希釈され通常「Ｈｔ値」（ヘマトクリッ
ト値）で２０程度に希釈されている、これは血液中に含
まれる赤血球の比率であり、この値が小さければ人工肺
のガス交換能力に重大な影響を及ぼすのは経験されてお
り操作者は血液ろ過器ポンプを操作し血液の濃縮を行
う。

【０００８】本願の血液ろ過中空糸はこの働きを人工肺
の内部で行い濃縮された血液が周囲に配置されたガス交
換中空糸に接する事となる。この事により人工肺のガス
交換能が通常の血液ろ過器を外部に配置したものに比べ
大幅に増大し、かつ操作者の意図に即応する効果をもた
らした。

【０００９】また、血液ろ過中空糸を内筒の周辺に配置
しないで人工肺内部で局在させたところ中空糸周辺でチ
ャンネリングがおこり長時間の体外循環では血液の凝固
がみられた。

【００１０】

【実施例】以下、図面に示す実施例に基づき、本発明を
説明する。図１は、本発明の血液濃縮器内蔵型人工肺の
一実施例を示す断面図である。１熱交換器にて加温され
た血液Ａ（静脈血）は人工肺へと内径１０ｍｍの２流路
を介して中心部へと導かれる。中心部の３内筒は２ｍｍ
幅のスリットが多数開けられ導入された血液がスリット
からコアに巻き付けられた４ポリプロピレン製親水化中
空糸の束に向かって分散流入する。

【００１１】さらにその外周部に５非親水化ポリプロピ
レン多孔質中空糸を束ねたものを巻き付け、その中空糸
束の間隙を血液がガス交換されながら通過する。酸素ガ
スＢは１０酸素ガス入り口より１１支持体に開口してい
る５ガス交換中空糸内に導入され中空糸外部に流れる血
液へ酸素を供給し炭酸ガスを受取り１２の出口端部へと
排出される。ガス交換されて十分に酸素化された血液
（動脈血）を最外周の６ハウジングにてあつめ７出口か
ら患者回路に接続流出する。４の中空糸によりろ過され
た、ろ液は８のろ液キャップの９出口に流出する。

【００１２】２の流路内径20ｍｍから５ｍｍの間、スリ
ット数は人工肺の要求される性能仕様により異なるが通
常は１から２００の間である。４の、ろ過中空糸の材質
は血液的合性が確保されればよく再生セルロース膜、ポ
リアクリロニトリル膜、ポリサルフォン膜、酢酸セルロ
ース膜、親水性多孔質ポリエチレン膜等がある。ただ、
体外循環中の血液濃縮を目的とするため膜面積当たりの
ろ過速度は５０ｍｌ／毎分／平方メートル以上で有る事
が望ましい。

【００１３】製造上の問題として入り口側支持体と、ろ
過中空糸が合体する部分は１１支持体接着剤が中空糸内
に支持体の厚みとほぼ同様のレベルに入り込み固化す
る。ろ過膜が支持体により封止されるこの事により、ろ
過液は一方向へのみ、ろ過されるように構成される。５
ガス交換膜束は材質として多孔質ポリプロピレンが用い
られるが、これに限定される事無くポリメチルペンテ
ン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアセチレン等で
も良くこれらの複合した膜も用いる事ができる。３内
筒、６外筒はポリカーボネート樹脂が望ましくその他ポ
リスチレン、ポリウレタン、ＡＢＳ樹脂、ポリプロピレ
ン樹脂などが用いられる。

【００１４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の血液濃縮
器内蔵人工肺によれば、体外循環回路の接続が単純にな
り接続箇所が減少し安全に使用できる、導入された血液
が希釈されていても濃縮操作により酸素化効率をすばや
く上げる事ができる、装置内に血液ろ過膜を内蔵した事
により体外循環全体の血液充填量が減少した。

【図面の簡単な説明】

【図１】図は本発明の血液濃縮器内蔵人工肺の一実施例
を示す断面図。

【図２】図は従来の体外循環回路と血液ポンプ及び血液
濃縮器の接続図と本願の接続図の比較。

【図３】は酸素ガス添加能をヘマトクリット値２０と２
５の実験比較データーを示すグラフである。

【図４】は炭酸ガス移動速度におけるヘマトクリット値
２０及び２５の実験データーをグラフ化したものであ
る。

【符号の説明】

１ 熱交換器 2 血液導入口 3 内筒 ４ 血液ろ過中空糸束 ５ ガス交換中空糸束 ６ 外筒 ７ 血液出口 ８ ろ過液キャップ ９ ろ過液出口 １０ 酸素ガス入り口 １１ 入り口側支持体 １２ 出口側支持体 １３ 血液貯血漕 １７ 血液ポンプ １４ 人工肺 １６ 血液濃縮器 １５ 血液ポンプ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 進 東京都中野区中央２−58−21−214

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 血液流入口を中心部に設けこれに接続す
   る内筒と、血液流出部を有する外筒を設け、該内筒にス
   リット状の開口部を設け、該内筒と外筒の間に長手軸方
   向に沿って血液ろ過中空糸を配し、該血液ろ過中空糸の
   周りにガス交換中空糸を巻き付け配置し、内筒、外筒な
   らびに中空糸両端部に支持部材により気密に支持してな
   る人工肺であって、中心部に設けた血液流入口より中空
   糸外側に血液を流し、酸素はガス交換中空糸の中空部
   に、該支持部と血液流入口と最外筒に接続された、ガス
   流入口を設けたガスキャップにガス流入口より導入され
   た酸素ガスをながし、血液濃縮により生じた、ろ液を血
   液流入部と対向する支持部と血液ろ過中空糸、開口部端
   を覆う、ろ液出口キャップを有する人工肺。