JPH06240437A - 表面硬化Al合金およびその製造方法 - Google Patents

表面硬化Al合金およびその製造方法

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JPH06240437A
JPH06240437A JP2661593A JP2661593A JPH06240437A JP H06240437 A JPH06240437 A JP H06240437A JP 2661593 A JP2661593 A JP 2661593A JP 2661593 A JP2661593 A JP 2661593A JP H06240437 A JPH06240437 A JP H06240437A
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康幸 中岡
Shoichiro Nishitani
昌一郎 西谷
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 非熱処理型Al合金を用いても、外部からの
衝撃力に充分耐えられるようにする。 【構成】 1aは非熱処理型Al合金、2はAl合金1
aの表面に形成したNi−Pめっきによる被膜である。
そして、被膜2の厚みに沿ったP含有率は内部側から表
面に向かって漸次くなっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、樹脂製品をモールドす
る金型等に採用される表面硬化Al合金およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、この種の金型は、鋼材を加工
して作製していたが、鋼材が硬いため、金型加工に要す
る時間がきわめて長くなるとともに、切削工具の寿命が
短かくなり、かつ幅の狭い深溝等の微細加工が困難であ
った。そこで、近年、機械加工および熱伝導性に優れた
Al合金材を用いての高速製作が行われつつある。この
場合、Al合金材を金型としてそのまま用いると、Al
合金が軟らかいため、樹脂成形時に型の表面が摩耗し易
く、型の寿命が短いといった欠点につながる。
【0003】そこで、この欠点を除去するために、従
来、型表面に低コストで対摩耗性に優れた硬質膜を施し
た型が提案されていた。例えば、図14は特開昭63−
188022号公報に開示されたこの種のAl合金によ
って形成された型を示す側断面図である。同図におい
て、符号1で示すものは、所定の型に形成された一対の
Al合金、2はAl合金1の表面に施されたNi−Pめ
っき膜、3はこれらAl合金1およびNi−Pめっき膜
2からなる金型、4は金型3によって形成された樹脂成
形品である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した金
型3は軟基材のAl合金1の表面にNi−P2を無電界
めっき法で施し、このNi−P2のめっき膜を熱処理に
よって硬化させている。Ni−P2のめっき膜は、図1
5の熱処理温度とNi−Pのめっき膜のビッカース硬さ
(Hv)との関係図で明らかなように、めっきしたまま
であるとビッカース硬さがHv=480程度であるが、
例えば、400℃で1時間熱処理すると、めっき膜中に
Ni3P が析出して、ビッカース硬さがHv=900程
度上昇する。
【0005】しかしながら、その反面、基材としてのA
l合金1に熱処理型Al合金を使用した場合、例えば、
最も硬い7075材ではビッカース硬さがHv=180
程度あったものが、上記熱処理によって図16に示すよ
うに、ビッカース硬さHv=80程度に減少して、軟化
するといった問題点があった。したがって、熱処理を施
すことによって、めっき膜2の硬さを上昇できるにもか
かわらず、めっき膜2の熱処理を施さずに利用してい
た。
【0006】また、基材としてのAl合金1に非熱処理
型Al合金を使用すると、上述した熱処理によっても、
非熱処理型Al合金の硬さが低下することはないため、
特開昭63−188022号公報に開示されたAl合金
の材料としては非熱処理型Al合金に限定されていた。
しかし、非熱処理型Al合金は最も硬い5083材でさ
えビッカース硬さがHv=75程度しかなく、金型3と
して、Al合金基1とNi−P2膜の硬さの差が大き過
ぎるため、金型3が外部からの衝撃力に対して弱く、ま
た、樹脂成形時の高圧にも耐えられなくなる等の問題が
あった。
【0007】したがって、本発明は上記した従来の問題
点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところ
は、基材として、非熱処理型Al合金を用いても、外部
からの衝撃力に充分耐え得る表面硬化Al合金を提供す
ることにある。また、別の目的とするところは、基材と
して、熱処理型Al合金を用いても、熱処理型Al合金
の硬さを損なうことなく、Al合金材表面に施した被膜
の硬さを向上させ、もって、長寿命化を図った表面硬化
Al合金を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明に係る表面硬化Al合金は、非熱処理型Al
合金の表面に析出硬化型合金で被膜を形成し、被膜の厚
み方向に沿って析出元素の含有率を漸次変化させる。ま
た、本発明に係る表面硬化Al合金の製造方法は、非熱
処理型Al合金の表面にNi−P系合金あるいはNi−
B系合金で被膜を形成し、被膜内のPあるいはBの含有
率を被膜の内部側から表面に向って低くするとともに、
400℃以下の温度で熱処理する。また、本発明に係る
表面硬化Al合金の製造方法は、非熱処理型Al合金の
表面にNi−P系合金あるいはNi−B系合金で被膜を
形成し、被膜内のPあるいはBの含有率を被膜の内部側
から表面に向って高くするとともに、400℃以上の温
度で熱処理する。
【0009】また、本発明に係る表面硬化Al合金は、
熱処理型Al合金の表面に析出硬化型合金で被膜を形成
し、被膜をビッカース硬さがHv=600以上のものと
し、かつ、熱処理型Al合金と被膜との間に生成される
拡散層の厚さを8μm以下とする。また、本発明に係る
表面硬化Al合金の製造方法は、熱処理型Al合金の表
面にCu層を介在させずに、Ni−P系合金あるいはN
i−B系合金で被膜を形成し、この被膜の析出硬化と熱
処理型Al合金の溶体化を同時に行い、しかるのちに、
熱処理型Al合金の析出硬化を行う。また、本発明に係
る表面硬化Al合金の製造方法は、熱処理型Al合金を
7075材とし、被膜の析出硬化とAl合金の溶体化の
ための加熱温度を395℃〜450℃とする。
【0010】
【作用】本発明によれば、非熱処理型Al合金の表面
に、厚み方向に沿って析出元素の含有率を漸次変化させ
た析出硬化型合金で被膜を形成したので、非熱処理型A
l合金と被膜の硬さに急激な差が生じない。また、本発
明によれば、非熱処理型Al合金の表面にNi−P系合
金あるいはNi−B系合金で被膜を形成し、被膜内のP
あるいはBの含有率を被膜の内部側から表面に向って低
くするとともに、400℃以下の温度で熱処理したの
で、被膜表面が被膜内部より硬くなる硬さの傾斜機能が
得られる。また、本発明によれば、非熱処理型Al合金
の表面にNi−P系合金あるいはNi−B系合金で被膜
を形成し、被膜内のPあるいはBの含有率を被膜の内部
側から表面に向って高くするとともに、400℃以上の
温度で熱処理したので、被膜表面が被膜内部より硬くな
る硬さの傾斜機能が得られる。
【0011】また、本発明によれば、熱処理型Al合金
の表面に析出硬化型合金で被膜を形成し、被膜をビッカ
ース硬さがHv=600以上のものとし、かつ、熱処理
型Al合金と被膜との間に生成される拡散層の厚さを8
μm以下としたので、被膜の付着力が増す。また、本発
明によれば、熱処理型Al合金の表面にCu層を介在さ
せずに、Ni−P系合金あるいはNi−B系合金で被膜
を形成し、この被膜の析出硬化と熱処理型Al合金の溶
体化を同時に行い、しかるのちに、熱処理型Al合金の
析出硬化を行うので、基材である熱処理型Al合金の硬
さが低下することなく、表面に硬い被膜が形成される。
また、本発明によれば、熱処理型Al合金を7075材
とし、被膜の析出硬化とAl合金の溶体化のための加熱
温度を395℃〜450℃としたので、基材である70
75材の硬さが低下することなく、表面に硬く被膜が高
い付着力で形成される。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明す
る。図1は本発明に係る表面硬化Al合金の断面図であ
る。同図において、1aは非熱処理型Al合金の508
3材、2はこの5083材の表面に40μmの厚さで施
されたNi−P合金の被膜である。本発明の特徴とする
ところは、被膜2のPの含有率を厚み方向に沿って漸次
連続的に変化させた点にある。すなわち、本実施例で
は、Pの含有率が被膜2の内部側から表面に向って漸次
低くなるように、構成されており、これにともなって、
被膜の硬さも内部側から表面に向って、硬くなってい
る。このような構成とすることによって、Al合金1a
と被膜2との界面における硬さの差が緩和され、これに
よって、外部からの衝撃力にも充分耐え得る表面硬化A
l合金が得られる。
【0013】この表面硬化Al合金の製造方法は、脱
脂、エッチング、デスマット、ジンケートの各処理を施
した後に、Ni−P合金をAl合金1aの表面に無電界
めっきによって施す。Pの含有率を可変させる方法は、
めっき液のpHを制御することによって行う。すなわ
ち、無電界Ni−Pめっき液とその液から生成するNi
−P被膜のP含有率とが、図2に示すような関係にあ
り、pHを制御することによってPの含有率を可変する
ことができる。
【0014】図3は、本発明に係る表面硬化Al合金の
第2の実施例を示し、非熱処理型Al合金の5083材
表面に施したNi−Pめっき膜の厚み方向に沿ったP含
有率の変化を示す図である。被膜2の表面のP濃度は約
5%で、被膜2とAl合金材1aの界面近傍のP濃度は
約10%である。これを350℃で1時間加熱して、そ
の後空冷した。
【0015】図4はP濃度が約5%と約10%のNi−
P合金の熱処理温度とビッカース硬さ(Hv)との関係
を示す図である。この図から理解されるように、350
℃で加熱するとP濃度が約5%の被膜表面の硬さが、P
濃度が約10%の被膜内部の硬さよりも硬くなる。ま
た、Al合金1には、非熱処理型Al合金を使用してい
るので、この熱処理によっても基材の硬さは変化しな
い。このように被膜内部に硬さの傾斜機能が得られるの
で、外部からの衝撃力に充分耐え得る。
【0016】図5は、本発明に係る表面硬化Al合金の
第3の実施例を示し、非熱処理型Al合金の5083材
表面に施したNi−Pめっき膜の厚み方向に沿ったP含
有率の変化を示す図である。この第3の実施例では、被
膜表面のP濃度は約10%で、被膜2とAl合金1aの
界面近傍のP濃度は約5%である。これを500℃で1
時間加熱して、その後空冷した。図4から理解されるよ
うに、500℃で加熱するとP濃度が約10%の被膜表
面の硬さは、P濃度が約5%の被膜内部の硬さより硬く
なる。
【0017】図6は無電界めっきNi−Pめっき液のp
Hとその液から生成するNi−P被膜の析出速度の関係
を示す図である。同図と図2とからP含有量が少ない方
が析出速度が大きいことがわかる。このことから、上述
した第2および第3の実施例においては、図7および図
8に示す本発明の第4および第5実施例のように、被膜
2の含有率を極力低く保つようにP含有率の変化量を選
択すれば、析出が短時間で完了するため、製造が短時間
に容易に行え、これによって、製造コストを低く抑える
ことが可能となる。
【0018】なお、上述した第2および第3の実施例に
おいて、P濃度の下限と上限とを5%および10%とし
たが、この下、上限に限定されることなく種々の設定が
可能なことは勿論である。また、P濃度の変化率も一定
である必要はなく、さらに、連続的に変化することなく
段階的に変化しても同様な作用効果を得ることができ
る。また、上述した実施例においては、非熱処理型Al
合金1aに5083材を使用したが、これに限定され
ず、他の5000系(Al−Mg)合金で例えば505
2材等でも、また、3000系(Al−Mn)合金や4
000系(Al−Si系)合金でもよいことはいうまで
もないことである。
【0019】図9は本発明に係る表面硬化Al合金の第
6の実施例を示す断面図である。同図において、1bは
熱処理型Al合金である7075材、2はこのAl合金
材1bの表面に40μmの厚さで施されたNi−P合金
の被膜、5は7075材1bとNi−P2の被膜との間
に形成した拡散層である。被膜2のビッカース硬さはH
v=800で、拡散層5の厚さは1μmである。
【0020】Ni−P合金の被膜2のビッカース硬さを
Hv=600以上とすることによって、表面硬化Al合
金の耐摩耗性の改善が顕著となる。しかしながら、その
ためには、図15に示すように、Ni−P合金の被膜2
を300℃以上に加熱しなければならず、その加熱によ
って拡散層5の厚みも成長する。図10は7075材と
P含有率が8wt%のNi−P合金との間の拡散層の厚
みと引き倒し法によるNi−P合金被膜の剥離確率との
関係を示す図である。
【0021】引き倒し法は、700Kgf/cm2 の接
着力を有する樹脂を用いて行った。この図から明らかな
ように、拡散層5の厚みを8μm以下にすれば、被膜2
が熱処理型Al合金1bから剥離せず、硬くて強い付着
力の被膜を有する表面硬化Alが得られる。また、図1
0に示された被膜の剥離確率は被膜2の膜厚にはほとん
ど影響されないことが、実験によってわかった。なお、
本実施例では、被膜2のビッカース硬さはHv=800
としたが、Hv=600以上でよく、また、拡散層5の
厚みを1μmとしたが、8μm以下ならばよいことは勿
論である。
【0022】図11は本発明の第7の実施例を示し、熱
処理型Al合金の表面硬化の製造過程を示す模式図であ
る。同図(a)において、熱処理型Al合金の7075
材1bの表面に、脱脂、エッチング、デスマット、ジン
ケートの各処理後、直ちにNi−Pめっきを施しめっき
膜としての被膜2を形成する。次に、同図(b)に示す
ように、被膜2を硬化させると同時に7075材を溶体
化させる熱処理(1)を行い、しかるのち、同図(c)
に示すように、7075材中にMgZn2 粒子が析出し
てAl合金を硬化させる熱処理(2)を行う。
【0023】ところで、従来一般的には、ジンケート処
理によって、ZnをAl合金表面に置換させたのち、め
っき膜の付着力向上や、作業上の取扱いを容易にするた
めに、Ni−Pめっきを施す前に、さらにCuストライ
クめっきを行っていた。しかしながら、上述した本発明
の第7の実施例のようにNi−Pめっき後に本発明の特
徴である熱処理(1)および(2)の工程を加えた場合
には、Cuを介在させると製造プロセス上、被膜2が逆
に剥離し易くなることを本出願人は実験で確かめること
ができたので、Cuめっきを介在させていない。こうす
ることにより、被膜2が7075材1bに強固に付着す
る。
【0024】図12は、上述した第7の実施例におい
て、7075材表面にNi−Pめっきを施し、その後、
400℃で1時間加熱後水冷し、引き続き120℃で2
4時間加熱後空冷した場合の7075材とNi−Pめっ
き膜との各処理における硬さの変化を示したものであ
る。この図から明らかなように、7075材は、熱処理
(1)による溶体化で一旦硬さが落ちるが、熱処理
(2)による析出硬化で再び元の硬さに戻り、最終的に
7075材の硬さを低下させることなく、Ni−Pめっ
き膜が硬くなる。
【0025】図13はNi−Pめっき膜を硬化させると
同時に、7075材を溶体化する加熱温度と硬さの関係
を示す図である。この図から明らかなように、Ni−P
めっき膜と7075材は、395℃以上であれば硬くな
るが、450℃をこえるとNi−Pめっき膜と7075
材間の拡散層が急激に成長し、Ni−Pめっき膜が剥離
し易くなるため、測定不能となり、このことから450
℃以下とすることが望ましい。このように、上述の実施
例では、Ni−Pめっき膜を硬化させると同時に、70
75材を溶体化する加熱温度条件を400℃としたが、
加熱温度条件は395℃〜450℃に設定すればよいこ
とがわかる。また、溶体化する加熱時間は特に限定しな
いが、15分程度より長ければよい。
【0026】なお、上記実施例では、熱処理型Al合金
材に7075材を使用したが7075材に限定されるこ
となく、他の7000系(Al−Zn−Mg系)合金で
もよく、また2000系(Al−Cu−Mg系)合金や
6000系(Al−Mg−Si系)合金でもよい。
【0027】また、被膜としてNi−Pの他にNi−C
u−PやNi−W−P等のNi−P系合金であれば同様
な効果を奏する。また、Ni−P合金にPTFE(ポリ
テトラフルオロエチレン)粒子やSiC粒子、あるいは
MoS2 粒子等が分散していてもよい。さらにNi−P
系合金に限らず、Ni−B系合金でもよい。また、被膜
を無電解めっきで施したが、電気めっきで施してもよ
く、さらには、被膜の形成方法はめっきに限定されるも
のではなく、蒸着でもよい。また、上述した第1および
第6の実施例においては、他の合金系でもよく、例え
ば、Ni−W合金等の析出硬化型合金ならよい。また、
被膜の厚さは限定されないことはいうまでのないことで
ある。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、非
熱処理型Al合金の表面に、厚み方向に沿って析出元素
の含有率を漸次変化させた析出硬化型合金で被膜を形成
したので、非熱処理型Al合金と被膜の硬さに急激な差
が生じることがなく非熱処理型Al合金と被膜との界面
における硬さの差が緩和され、これによって、外部から
の衝撃力にも充分耐え得る表面硬化Al合金が得られ
る。また、非熱処理型Al合金の表面にNi−P系合金
あるいはNi−B系合金で被膜を形成し、被膜内のPあ
るいはBの含有率を被膜の内部側から表面に向って低く
するとともに、400℃以下の温度で熱処理したので、
被膜表面が被膜内部より硬くなる硬さの傾斜機能が得ら
れる。また、本発明によれば、非熱処理型Al合金の表
面にNi−P系合金あるいはNi−B系合金で被膜を形
成し、被膜内のPあるいはBの含有率を被膜の内部側か
ら表面に向って高くするとともに、400℃以上の温度
で熱処理したので、被膜表面が被膜内部より硬くなる硬
さの傾斜機能が得られので、基材として、非熱処理型A
l合金を用いても、外部からの衝撃的負荷に対しても強
く、例えば金型等に使用された場合にも樹脂成形時に高
圧にも充分耐え得る金型を提供できる。
【0029】また、本発明によれば、熱処理型Al合金
の表面に析出硬化型合金で被膜を形成し、被膜をビッカ
ース硬さがHv=600以上のものとし、かつ、熱処理
型Al合金と被膜との間に生成される拡散層の厚さを8
μm以下としたので、被膜の付着力が増す。また、本発
明によれば、熱処理型Al合金の表面にCu層を介在さ
せずに、Ni−P系合金あるいはNi−B系合金で被膜
を形成し、この被膜の析出硬化と熱処理型Al合金の溶
体化を同時に行い、しかるのちに、熱処理型Al合金の
析出硬化を行うので、基材である熱処理型Al合金の硬
さが低下することなく、表面に硬い被膜が形成される。
また、本発明によれば、熱処理型Al合金を7075材
とし、被膜の析出硬化とAl合金の溶体化のための加熱
温度を395℃〜450℃としたので、基材である70
75材の硬さが低下することなく、表面に硬い被膜が高
い付着力で形成される。このように、本発明によれば、
基材として熱処理型Al合金材を用いても、Al合金材
の硬度を損なうことなく、表面に施した被膜の硬さを向
上させることができるので、例えば金型等に使用された
場合には、長寿命が可能な金型を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る表面硬化Al合金の断面図であ
る。
【図2】Ni−Pめっき液のpHとめっき膜のP含有率
との関係を示す図である。
【図3】本発明に係る表面硬化Al合金の第2の実施例
におけるNi−Pめっき膜中の厚み方向に沿ったP含有
率の変化を示す図である。
【図4】P含有率が5wt%と10wt%のNi−Pめ
っき膜の熱処理温度とビッカース硬さ(Hv)との関係
を示す図である。
【図5】本発明に係る表面硬化Al合金の第3の実施例
におけるNi−Pめっき膜中の厚み方向に沿ったP含有
率の変化を示す図である。
【図6】Ni−Pめっき液のpHとめっき膜の析出速度
との関係を示す図である。
【図7】本発明に係る表面硬化Al合金の第4の実施例
におけるNi−Pめっき膜中の厚み方向に沿ったP含有
率の変化を示す図である。
【図8】本発明に係る表面硬化Al合金の第5の実施例
におけるNi−Pめっき膜中の厚み方向に沿ったP含有
率の変化を示す図である。
【図9】本発明に係る表面硬化Al合金の第6の実施例
の断面図である。
【図10】引き倒し法による拡散層の厚さと、めっき層
の剥離確率の関係を示す図である。
【図11】本発明に係る表面硬化Al合金の第7の実施
例の製造方法を示す断面図である。
【図12】熱処理によるめっき膜とAl合金の硬さとの
関係を示す図である。
【図13】熱処理によるめっき膜とAl合金の硬さとの
関係を示す図である。
【図14】従来の表面硬化Al合金を用いた金型の要部
側断面図である。
【図15】Ni−Pめっき膜の各温度における加熱時間
とNi−Pめっき膜の硬さとの関係を示す図である。
【図16】熱処理型Al合金の7075材を300℃〜
400℃で加熱したときの加熱時間と硬さとの関係を示
す図である。
【符号の説明】
1 Al合金 1a 非熱処理型Al合金 1b 熱処理型Al合金 2 Ni−P合金 3 金型 4 樹脂成形品 5 拡散層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年9月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】また、本発明によれば、熱処理型Al合金
の表面に析出硬化型合金で被膜を形成し、被膜をビッカ
ース硬さがHv=600以上のものとし、かつ、熱処理
型Al合金と被膜との間に生成される拡散層の厚さを8
μm以下としたので、被膜の付着力が増す。また、本発
明によれば、熱処理型Al合金の表面にCu層を介在さ
せずに、Ni−P系合金あるいはNi−B系合金で被膜
を形成し、この被膜の析出硬化と熱処理型Al合金の溶
体化を同時に行い、しかるのちに、熱処理型Al合金の
析出硬化を行うので、基材である熱処理型Al合金の硬
さが低下することなく、表面に硬い被膜が形成される。
また、本発明によれば、熱処理型Al合金を7075材
とし、被膜の析出硬化とAl合金の溶体化のための加熱
温度を395℃〜450℃としたので、基材である70
75材の硬さが低下することなく、表面に硬被膜が高
い付着力で形成される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明す
る。図1は本発明に係る表面硬化Al合金の断面図であ
る。同図において、1aは非熱処理型Al合金の508
3材、2はこの5083材の表面に40μmの厚さで施
されたNi−P合金の被膜である。本発明の特徴とする
ところは、被膜2のPの含有率を厚み方向に沿って漸次
連続的に変化させた点にある。すなわち、本実施例で
は、Pの含有率が被膜2の内部側から表面に向って漸次
くなるように、構成されており、これにともなって、
被膜の硬さも内部側から表面に向って、硬くなってい
る。このような構成とすることによって、Al合金1a
と被膜2との界面における硬さの差が緩和され、これに
よって、外部からの衝撃力にも充分耐え得る表面硬化A
l合金が得られる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】図5は、本発明に係る表面硬化Al合金の
第3の実施例を示し、非熱処理型Al合金の5083材
表面に施したNi−Pめっき膜の厚み方向に沿ったP含
有率の変化を示す図である。この第3の実施例では、被
膜表面のP濃度は約10%で、被膜2とAl合金1aの
界面近傍のP濃度は約5%である。これを450℃で1
時間加熱して、その後空冷した。図4から理解されるよ
うに、450℃で加熱するとP濃度が約10%の被膜表
面の硬さは、P濃度が約5%の被膜内部の硬さより硬く
なる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】図6は無電界めっきNi−Pめっき液のp
Hとその液から生成するNi−P被膜の析出速度の関係
を示す図である。同図と図2とからP含有量が少ない方
が析出速度が大きいことがわかる。このことから、上述
した第2および第3の実施例においては、図7および図
8に示す本発明の第4および第5実施例のように、被膜
のP含有率を極力低く保つようにP含有率の変化量を
選択すれば、析出が短時間で完了するため、製造が短時
間に容易に行え、これによって、製造コストを低く抑え
ることが可能となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】図13はNi−Pめっき膜を硬化させると
同時に、7075材を溶体化する加熱温度と硬さの関係
を示す図である。この図から明らかなように、Ni−P
めっき膜と7075材は、395℃以上であれば硬くな
るが、450℃をこえるとNi−Pめっき膜と7075
材間の拡散層が急激に成長し、Ni−Pめっき膜が剥離
し易くなるため、めっき膜の硬さは測定不能となり、こ
のことから450℃以下とすることが望ましい。このよ
うに、上述の実施例では、Ni−Pめっき膜を硬化させ
ると同時に、7075材を溶体化する加熱温度条件を4
00℃としたが、加熱温度条件は395℃〜450℃に
設定すればよいことがわかる。また、溶体化する加熱時
間は特に限定しないが、15分程度より長ければよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正内容】
【図12】各処理による表面(めっき膜)と基材(Al
合金)の硬さとの関係を示す図である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図13
【補正方法】変更
【補正内容】
【図13】加熱温度によるめっき膜とAl合金の硬さと
の関係を示す図である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正内容】
【図10】
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正内容】
【図12】
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図13
【補正方法】変更
【補正内容】
【図13】

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非熱処理型Al合金の表面に析出硬化型
    合金で被膜を形成した表面硬化Al合金において、 前記被膜の厚み方向に沿って析出元素の含有率を漸次変
    化させたことを特徴とする表面硬化Al合金。
  2. 【請求項2】 非熱処理型Al合金の表面にNi−P系
    合金あるいはNi−B系合金で被膜を形成する表面硬化
    Al合金の製造方法において、 前記被膜内のPあるいはBの含有率を被膜の内部側から
    表面に向って低くするとともに、400℃以下の温度で
    熱処理することを特徴とする表面硬化Al合金の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 非熱処理型Al合金の表面にNi−P系
    合金あるいはNi−B系合金で被膜を形成する表面硬化
    Al合金の製造方法において、 前記被膜内のPあるいはBの含有率を被膜の内部側から
    表面に向って高くするとともに、400℃以上の温度で
    熱処理することを特徴とする表面硬化Al合金の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 熱処理型Al合金の表面に析出硬化型合
    金で被膜を形成した表面硬化Al合金において、 前記被膜をビッカース硬さがHv=600以上のものと
    し、かつ、前記熱処理型Al合金と被膜との間に生成さ
    れる拡散層の厚さを8μm以下としたことを特徴とする
    表面硬化Al合金。
  5. 【請求項5】 熱処理型Al合金の表面にNi−P系合
    金あるいはNi−B系合金で被膜を形成する表面硬化A
    l合金の製造方法において、 前記熱処理型Al合金の表面にCu層を介在させずに、
    Ni−P系合金あるいはNi−B系合金で被膜を形成
    し、この被膜の析出硬化と前記熱処理型Al合金の溶体
    化を同時に行い、しかるのちに、熱処理型Al合金の析
    出硬化を行うようにしたことを特徴とする表面硬化Al
    合金の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の表面硬化Al合金の製造
    方法において、 熱処理型Al合金を7075材とし、前記被膜の析出硬
    化と熱処理型Al合金の溶体化のための加熱温度を39
    5℃〜450℃としたことを特徴とする表面硬化Al合
    金の製造方法。
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