JP2742096B2 - 銅被覆鋼線の製造方法 - Google Patents

銅被覆鋼線の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はディップフォーミング法による銅被覆鋼線の
製造方法に関し、特に、芯材として使用する鋼線に表面
処理を施してダイス寿命を向上させた銅被覆鋼線の製造
方法に関する。
[従来の技術] 従来、芯材を溶湯中に浸漬させて被覆材を付着させる
所謂ディップフォーミング法による銅被覆鋼線の製造方
法においては、先ず、芯線となる鋼線の表面を皮むきダ
イス等により削り取り、金属学的に清浄な表面状態にす
る。その後、この鋼線を銅又は銅合金の溶湯中に連続的
に浸漬させて、この鋼線の表面に銅又は銅合金を付着さ
せ凝固させることにより銅被覆鋼線を製造している。こ
のため、鋼線と銅又は銅合金部分との界面において鋼と
銅又は銅合金とを十分に結合させることができる。
また、銅被覆鋼線は同じ加工度においては芯材となる
鋼線の炭素含有量が多いほど引張強度が高いため、この
ディップフォーミング法により製造される銅被覆鋼線に
おいては、高強度を必要とされる場合に、芯材として炭
素含有量が0.1重量%を超える高密度の鋼線が使用され
ている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、処理される鋼線の線径及び線速が同じ
場合には、鋼線の炭素含有量が多いほど鋼線の硬度が高
くなるため、ディップフォーミングに先立つ鋼線表面の
清浄化工程にて使用される皮むきダイスは、高強度の銅
被覆鋼線を製造する場合にその寿命が短くなる。つま
り、芯材として鋼線を使用する場合に、表面清浄化工程
において皮むきダイスの刃先に大きな力が印加され、刃
先周辺に摩擦熱が発生する。そして、この工程を長時間
連続して行なう間に、ダイスの刃先の損耗が徐々に進行
し、遂には、鋼線周囲の一部に剥け残りが生じてこの部
分に銅が被覆されない状態になる。そうすると、銅被覆
鋼線を製造することができなくなり、製造を中止してダ
イスを交換する必要が生じる。この場合に、鋼線の炭素
含有量が多い程、硬度が高い鋼線を皮むきすることにな
るため、そのダイスの寿命が短くなるという難点があ
る。
而して、工業的生産過程で実操業上皮むきダイスを使
用して銅被覆鋼線を製造するためには、鋼線の炭素含有
量を0.35重量%以下に限定せざるを得ないという問題点
がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであっ
て、高強度の銅被覆鋼線を連続的に且つ低コストで製造
することができる銅被覆鋼線の製造方法を提供すること
を目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明に係る銅被覆鋼線の製造方法は、炭素含有量が
0.1重量%を超える鋼線を脱炭して前記鋼線の表層部の
炭素含有量を0.1重量%以下に低下させる工程と、更に
ダイスにより前記鋼線の表層部を研削する工程と、次い
で前記鋼線を銅又は銅合金の溶湯中に浸漬して前記鋼線
の周囲に銅又は銅合金を付着させる工程と、を有するこ
とを特徴とする。
[作用] 本発明においては、炭素含有量が0.1重量%を超える
鋼線に脱炭してこの鋼線の表層部の炭素含有量を0.1重
量%以下に低下させる。これにより、第1図に示すよう
に、中心部2が0.1重量%を超える炭素を含有し、表層
部1の炭素含有量が0.1重量%以下である鋼線が得られ
る。その後に、ダイスによりこの鋼線の表面を研削して
所謂皮むきする。この場合に、ダイスは強度及び硬度が
低い鋼線の表層部を研削すればよいため、ダイスに印加
される力は著しく低減される。これにより、ダイスの刃
先の寿命を延長させることができ、鋼線の表面研削及び
ディップフォーミングを長時間連続して行なうことがで
きる。
また、この鋼線の中心部は炭素含有量が0.1重量%を
超える鋼により形成されているため、この鋼線は極めて
強度が高い。従って、この表層研削により清浄化された
鋼線にディップフォーミング法により銅又は銅合金を被
覆し、更にこの銅被覆鋼線に所定の伸線加工を行なえ
ば、高強度の銅被覆鋼線を製造することができる。
次に、芯材となる鋼線の炭素含有量の限定理由につい
て説明する。
この鋼線の表層部の炭素含有量が0.1重量%を超える
場合は、炭素含有量が0.1重量%以下の場合と比してダ
イスの寿命が半減する。このため、鋼線の表層部の炭素
含有量を0.1重量%以下にしてダイスの長寿命化を図
る。
また、鋼線の中心部の炭素含有量は0.1重量%を超え
るものである。このように炭素含有量が0.1重量%を超
える場合は、銅被覆後の鋼線に適度の加工度で加工を加
えることにより、所望の高強度(例えば、ASTM B227−7
0に示される)の銅被覆鋼線を製造することができる。
しかしながら、中心部の炭素含有量が0.1重量%以下の
場合は、銅被覆後の鋼線に適正な加工を施しても、高強
度の銅被覆鋼線として所望の引張強度の規格を満足する
ことができない。このため、鋼線の中心部の炭素含有量
は0.1重量%を超えるものにする。
[実施例] 次に、本発明により銅被覆鋼線を製造した実施例及び
その比較例について説明する。
実施例1 直径が10mmのJIS SWRCH 20K鋼線(炭素含有量が0.18
乃至0.23重量%)を脱炭して、深さが0.4mmの表層部に
亘って炭素含有量を0.08重量%に低下させた。更に、こ
の鋼線を芯材としてダイスにより皮むきした後ディップ
フォーミング法により銅を被覆して導電率が30%IACS
(純銅焼鈍材の導電率を100としたときの導電率)の銅
被覆鋼線を製造した。
実施例2 直径が15mmのJIS SWRM 12鋼線(炭素含有量が0.1乃至
0.15重量%)を脱炭して、深さが0.5mmの表層部に亘っ
て炭素含有量を0.1重量%に低下させた。更に、この鋼
線を芯材としてディップフォーミング法により40%IACS
の銅被覆鋼線を製造した。
比較例1 脱炭により表層部の炭素含有量を0.12重量%に低下さ
せたこと以外は、実施例1と同様にして30%IACSの銅被
覆鋼線を製造した。
比較例2 中心部及び表層部の双方の炭素含有量が0.1重量%の
鋼線を芯材としてディップフォーミング法により40%IA
CSの銅被覆鋼線を製造した。
このように実施例1及び2並びに比較例1及び2によ
る銅被覆鋼線の製造方法においては、実施例1は連続20
時間を超えて、また、実施例2は連続12時間を超えて健
全に鋼線の皮むきが継続され、順調に高強度の銅被覆鋼
線を製造することができた。
一方、比較例1は僅か2時間で鋼線の皮むき状態が悪
化し、それ以上銅被覆鋼線を製造することができなかっ
た。また、比較例2は順調に銅被覆鋼線を製造すること
ができたものの、芯材自体の強度が低いためASTM規格上
の加工限界まで加工しても所望の高強度銅被覆鋼線を製
造することができなかった。
なお、脱炭すべき導線表層部の深さは、皮むきすべき
部分の厚さ(皮むき代)及び鋼線の加工度等により相違
し、これらの条件に基づいて適宜設定すればよい。
[発明の効果] 以上説明したように本発明によれば、鋼線の表面研削
工程においてダイスにより研削される鋼線の表層部の炭
素含有量を0.1重量%に限定したから、この表層部の硬
度及び強度が低いため、ダイスに印加される研削力が低
下し、その損耗を抑制することができる。このため、ダ
イスの刃先の寿命が長く、長時間連続して銅被覆鋼線を
製造することできる。従って、製造コストが低下する。
また、鋼線の中心部が高強度であるため、所定の伸線
加工を施すことにより高強度の銅被覆鋼線を製造するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法を説明するための鋼線の一例を示す
断面図である。 1;表層部、2;中心部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−184462(JP,A) 特開 昭62−30866(JP,A) 特開 昭63−281762(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素含有量が0.1重量%を超える鋼線を脱
    炭して前記鋼線の表層部の炭素含有量を0.1重量%以下
    に低下させる工程と、更にダイスにより前記鋼線の表層
    部を研削する工程と、次いで前記鋼線を銅又は銅合金の
    溶湯中に浸漬して前記鋼線の周囲に銅又は銅合金を付着
    させる工程と、を有することを特徴とする銅被覆鋼線の
    製造方法。
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