JPH06231327A - 成形不良自動判別装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】成形条件の揺らぎに追随して良品域を自動的に
設定する。 【構成】成形機に設けられた各種センサ１と、これらセ
ンサ１から出力された成形情報を演算処理して良品域を
設定する良品域の設定および更新手段２と、成形不良と
判別されたとき対応する信号を出力する信号発生手段５
と、これらの制御を司る制御部３とで構成され、成形情
報の平均値と標準偏差から成形条件の揺らぎに対応した
良品域が順次更新され、更新されたこの良品域に基づい
て成形品の良、不良を判定表示するようにする。成形条
件の揺らぎに追随して良品域を自動的に設定できるの
で、良否判別精度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、成形品の良、不良を
判別するための良品域の設定を成形条件の揺らぎに自動
的に追随させた成形不良自動判別装置に関する。

【０００２】

【発明の背景】各種成形品を生産する成形機にあって
は、この成形機の動作時に正常値のデータに揺らぎが生
じる。この揺らぎは製品の寸法のように厳密な基準が存
在するのではなく、ある程度以上のタイムスパンで計測
したときに個々のデータのバラツキとは別の変動に起因
するものである。

【０００３】この揺らぎは以下のような原因で発生する
ものである。 （１）成形機の置かれた環境（気温や湿度）の変化。 （２）使用する材料（樹脂）の物性のバラツキ。 （３）材料供給のバラツキ。これはホッパーに材料が充
分あるときとそうでないときとで材料の供給にバラツキ
が生じるからである。 （４）金型やホットランナーノズルの温度のバラツキ。 （５）滞留樹脂による流動性の変化。滞留樹脂が流され
てしまえば元の環境条件に戻ってしまう。

【０００４】このような成形条件の揺らぎに基づいて発
生する不良品の監視を行なうときにはできるだけ誤判別
を避ける必要がある。不良品の監視のための一手段とし
ては次のようなものが考えられている。 （ａ）成形条件の揺らぎを含めて上限および下限の良品
域を設定する。 （ｂ）成形機を連続運転させた状態でその所定ショット
から成形条件の平均値、標準偏差を求め、これより良品
域を自動設定する。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】図３は成形機に設けら
れた各種センサからの測定値に揺らぎがあるために結果
的に成形条件が揺らぐことを説明するための図である。

【０００６】同図において、曲線Ｌａは揺らぎの平均
値、曲線Ｌｂは許容できる揺らぎの上限値、曲線Ｌｃは
その下限値であり、上限値Ｌｂおよび下限値Ｌｃを越え
る成形品は不良品である。各種センサとは、樹脂送給の
ためのスクリューの位置計測用センサであったり、この
スクリューにかかる圧力を測る圧力センサなどである。

【０００７】不良品監視のための手段（ａ）を採用した
場合には図４あるいは図５に示すような良品域が設定さ
れる。図４および図５において、直線Ｔａ，Ｔｂは良品
域を設定するための良品域設定レベル（閾値）である。

【０００８】良品域の設定レベルを図４のように比較的
広く設定すると、良品域の上限あるいは下限を越える成
形品であっても良品（正常成形）と判断され、不良品
（異常成形）を検知できない領域（斜線領域）ａ，ｂが
多く発生してしまう。

【０００９】これに対し、図５のように良品域の設定レ
ベルを比較的狭く設定すると、良品域の上限と下限の中
にある良品の成形品でさえも斜線領域ｃのように不良品
と判断されてしまう場合があり、誤った判別をしてしま
う。

【００１０】このように成形条件に揺らぎがある場合で
一定の良品域を設定しまうと、この揺らぎに対応した良
品と不良品を正確に判別できない欠点がある。

【００１１】上述した不良品監視のための手段（ｂ）で
は、成形機を連続運転させた状態でその所定ショットか
ら成形条件の平均値、標準偏差を求め、これより良品域
を自動設定するものの、この良品域の設定は１度限りで
あとは固定した良品域に基づいて良否を判定している。

【００１２】そのため、成形条件の揺らぎに対応して良
品域が逐次更新されないから、良否の判別が不正確とな
り、誤判別を改善できない問題がある。

【００１３】そこで、この発明はこのような従来の課題
を解決したものであって、成形条件の揺らぎに対応して
良品域を逐次更新することによって誤判別を少なくした
成形不良自動判別装置を提案するものである。

【００１４】

【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
め、この発明においては、成形機に設けられた各種セン
サと、これらセンサから出力された成形情報を演算処理
して良品域を設定する良品域設定手段と、成形不良と判
別されたとき対応する信号を出力する信号発生手段と、
これらの制御を司る制御部とで構成され、上記成形情報
の平均値と標準偏差から成形条件の揺らぎに対応した良
品域が順次更新され、更新されたこの良品域に基づいて
成形品の良、不良を判定表示するようにしたことを特徴
とするものである。

【００１５】

【作用】図２において、ステップ１７に示す統計演算部
とステップ１４に示す判別のための良品域設定部とがル
ープになっているため、良品域は自動的に更新され、良
品域は成形条件に追随したものとなる。そのため、適切
なサンプリング数（成形機から得られる測定データ）を
指定することによって成形条件の揺らぎに対応した誤判
別の少ない成形不良自動判別装置を実現できる。

【００１６】

【実施例】続いて、この発明に係る成形不良自動判別装
置の一例を、図面を参照して詳細に説明する。

【００１７】図１はこの発明に係る成形不良自動判別装
置の一例を示す要部の系統図であって、成形機としては
その材料として樹脂（プラスチック）を使用した射出成
形機を示す。この成形機には成形条件を求めるための各
種のセンサ１ａ，１ｂ，・・・１ｎが取り付けられる。

【００１８】これらセンサ１としては例えば樹脂をラン
ナー（図示はしない）を介して金型（キャビテー）に送
給するためのスクリューの位置を計測する位置計測セン
サを始めとしてこのスクリューにかかる圧力を測る圧力
センサ、金型の温度を測定する温度センサなどが考えら
れる。これらはそれぞれ所定の位置に取り付け配置され
る。

【００１９】センサ１の出力は良品域設定手段２に供給
されて装置全体の制御を司る制御部（ＣＰＵ）３の介在
のもとに設定時点でのセンサ出力に基づいて良品域が設
定されそして更新される。良品域の設定、更新処理につ
いては後述する。

【００２０】良品域の設定は各センサ出力ごとに行なう
かそのうちの何れか複数を代表して使用する。設定され
た良品域のデータと測定データ（センサ出力）との比較
が次の良品判別手段４で行なわれ、良品域の成形品（良
品）か、不良品かの表示がＬＥＤなどの表示手段５によ
って行なわれると共に、良品選別手段６において良品の
自動選別処理が行なわれる。

【００２１】これによって、自動的に良品域の設定と所
定期間ごとに良品域の更新が行なわれ、最も新しい良品
域に基づいて成形品の良否が判別されることになる。

【００２２】良品域は次のようにして設定され、また更
新される。図３に示すように、成形条件の揺らぎによっ
て測定データの平均値ｍ（曲線Ｌａ）が成形時間（稼動
時間）と共に揺らいだ場合でも、この平均値ｍを示す曲
線Ｌａに対して上限値を示す曲線Ｌｂと下限値を示す曲
線Ｌｃの範囲内にあるように良品域が設定される。

【００２３】そのため、センサ１から得られた特定の測
定データを一定のサンプリング数だけ集め、得られた測
定データからその平均値ｍを求め、この平均値ｍに標準
偏差σを加味して例えば次のような条件式ｙを与える。 ｙ＝ｍ±（α×σ） ・・・・・（１） ここに、αは任意の定数 （１）式において、プラスの項をとったときは上限の良
品域ｙであり、マイナスの項をとったときは下限の良品
域ｙである。製品成形時の測定データがこの良品域ｙの
範囲内にあるときは良品と判断し、良品域を越えるとき
は不良品と判断する。

【００２４】（１）式は所定の成形時間ごとに更新され
る。具体的には測定データの所定サンプリング数ごとに
良品域の再設定処理（更新処理）が行なわれる。良品域
の設定および更新は測定データごとに行なわれる。この
測定データとして本例では上述したようにスクリューの
位置とスクリューの圧力を示すセンサ出力とが使用され
ているが、この他に次のようなデータを使用することも
でき、そうすれば良品域の設定がより厳格に行なわれる
ことになる。 （１）金型の温度 （２）樹脂温度 （３）スクリュー速度 （４）スクリューにかかる加速度 （５）スクリューの回転数 （６）音波などによる振動波の波形 （７）圧力の変化率 などが考えられる。

【００２５】平均値ｍは次に述べる手段のうちの何れか
が採用される。 （１）異常と判断されたデータを除いた規定数の算術平
均したもの。 ｍ＝１／ｎ（Ｘ1＋Ｘ2＋・・・Ｘｎ） ・・・・（２） （２）異常値を除いたデータからさらに最大値と最小値
を除いた規定数の算術平均したもの。

【００２６】

【数１】

【００２７】（３）異常値を除いた規定数のデータのう
ちある幅にあるものを計数し、再頻値の平均値を使用す
る。例えば、 このようなときは平均値ｍとして８６９．５が使用され
る。 （４）異常値を除いた規定数のデータの調和平均を使用
する。

【００２８】

【数２】

【００２９】次に標準偏差σは次のようにして求められ
る。

【００３０】

【数３】

【００３１】標準偏差σは統計学での分散を使用するこ
ともでき、この場合には（５）式に示す標準偏差σの２
乗したものが使用される。これら平均値ｍや標準偏差σ
の算出は何れもＣＰＵ３の指令に基づいて行なわれる。

【００３２】図２は良品域の設定および更新を行なうた
めの一例を示すフローチャート１０であって、電源が投
入されるとセンサ出力のクリヤーなど、動作環境の設定
が行なわれ（ステップ１１）、その後良品域を設定し、
あるいは更新するための測定（センサ入力受け付け）が
開始される（ステップ１２）。

【００３３】この測定は規定サンプリング数となるまで
継続され（ステップ１３）、規定サンプリング数となる
と、これらの測定データを使用して良品域の設定および
更新処理が行なわれる（ステップ１４）。良品域の設定
処理あるいは更新処理は平均値ｍと標準偏差σを使用し
て行なわれることは上述した通りである。

【００３４】良品域が設定されると、入力測定データが
この良品域内に存在するかどうかの判別処理が行なわれ
（ステップ１５）、もしそのときの測定データがこの良
品域内に存在しないようなときには成形不良を示す信号
を生成して表示手段５が点灯表示される（ステップ１
６）。これで不良品が成形されたことが視覚的に認識で
きるようになる。不良品は自動選別されて良品と仕分け
される。

【００３５】判別結果、その測定データが良品域を示す
データ内であるときはその判別データが（１）式に示す
統計演算のためのデータとして使用される（ステップ１
７）。つまり、この測定データは次の良品域再設定時の
データとして使用され、規定サンプリング数に達した
ら、再び規定サンプリング数の測定データに基づいて良
品域更新処理が行なわれる（ステップ１７，１４）。そ
して、更新された新たな良品域のデータに基づいて同じ
く測定データとの判別処理が行なわれることになる。

【００３６】このように規定の成形時間ごとに過去の測
定データから良品域の再設定処理が行なわれるため、常
に成形機の成形条件の揺らぎに追随しながら良否の判断
が行なわれるようになる。

【００３７】上述では２つの測定データから良品域を設
定し、更新するようにしたが、使用する測定データ数に
は制限されず、また適用される成形機も射出成形機に限
られるものではない。

【００３８】

【発明の効果】以上のように、この発明に係る成形不良
自動判別装置では、成形条件の揺らぎに追随しながら成
形品の良否を判別するようにしたものである。

【００３９】これによれば、成形時間ごとに変化する可
能性の高い成形条件の揺らぎにも確実に自動的に追随し
て成形品の良否を判別できるから判別精度が格段に向上
する特徴を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係る成形不良自動判別装置の一例を
示す系統図である。

【図２】成形不良自動判別を実現するための一例を示す
フローチャートである。

【図３】測定データの揺らぎを説明する特性図である。

【図４】測定データの揺らぎと判定基準との関係を示す
特性図である。

【図５】測定データの揺らぎと判定基準との関係を示す
特性図である。

【符号の説明】

１ センサ ２ 良品域設定および更新手段 ３ 制御部 ４ 良品判別手段 ５ 表示手段 ６ 良品選別手段

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 成形機に設けられた各種センサと、 これらセンサから出力された成形情報を演算処理して良
   品域を設定する良品域設定手段と、 成形不良と判別されたとき対応する信号を出力する信号
   発生手段と、 これらの制御を司る制御部とで構成され、 上記成形情報の平均値と標準偏差から成形条件の揺らぎ
   に対応した良品域が順次更新され、更新されたこの良品
   域に基づいて成形品の良、不良を判定表示するようにし
   たことを特徴とする成形不良自動判別装置。