JPH06227A

JPH06227A - 高温ガスと調圧による火災抑制・保安方法

Info

Publication number: JPH06227A
Application number: JP4161197A
Authority: JP
Inventors: Hitoshi Kurioka; 均栗岡; Kiichiro Muta; 紀一郎牟田; Hiroomi Sato; 博臣佐藤; Tomio Ouchi; 富夫大内; Keiichi Miyamoto; 圭一宮本; Osami Sugawa; 修身須川
Original assignee: Kajima Corp
Current assignee: Kajima Corp
Priority date: 1992-06-19
Filing date: 1992-06-19
Publication date: 1994-01-11
Anticipated expiration: 2011-09-11
Also published as: JP2533716B2

Abstract

(57)【要約】【目的】屋内の広い空間内における火災発生時に、空気
の温度境界形成と発火部周囲の圧力調整とにより、煙拡
散防止及び避難路の安全を確保する方法を提供する。【構成】建物内空間７を２以上の区画Ｒ１、Ｒ２、・・
・に区切り、火災発生区画Ｒ１の周囲区画Ｒ２へ火災発
生区画Ｒ１内の気温より高温のガス31を吹き込むと共に
周囲区画Ｒ２の圧力を調圧手段38により火災発生区画Ｒ
１の圧力以上に調整し、火災発生区画Ｒ１の前記吹き込
みに干渉しない部位から排気流35として排気する。両区
画Ｒ１、Ｒ２の間に空気の温度境界を形成することによ
り、及び火災発生区画Ｒ１の圧力が燃焼により上昇した
場合でも周囲区画Ｒ２を圧力が火災発生区画Ｒ１の圧力
以上に保つことにより、プルーム20の周囲区画Ｒ２への
侵入を阻止し、火災発生区画Ｒ１の頂部に滞留させて煙
層26として閉じ込める。冬期暖房時及び夏期日射による
滞留熱気層の保持活用によって、両区画Ｒ１、Ｒ２の間
に温度境界を作り出すことも可能である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、高温ガスと調圧による
火災抑制・保安方法に関し、特に屋内空間における火災
発生時に高温ガスの吹込みと圧力調整とを選択的に行う
ことにより初期火災の拡大を防ぐと共に避難の安全を確
保するための高温ガスと調圧による火災抑制・保安方法
に関する。

【０００２】

【従来の技術】商品流通の拡大や事務所等の近代化の進
展に伴い展示場やアトリウム等の広い空間を有する建物
が増加している。図３及び図４は、方形建物１の内側に
床３から建物頂部にまで広がりその頂部を天井５で覆っ
た広い空間７を示す。空間７の周囲壁９と建物外壁11と
の間には事務室等が設けられる。空間７の設計には、所
要の機能の充足と意匠の両面に重点がおかれ、その空間
に対する給排気用開口の設計の重点も機能充足と意匠に
置かれる。他方、空間７には多数の人が集まる機会が予
想されるので、煙拡散防止（以下、火災抑制という。）
及び人の安全や避難路の確保（以下、保安という。）が
重要であり、火災検知・報知器具、各種消火設備、避難
誘導施設等の対策がとられる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】図３において、屋内の
広い空間７内で火災が発生し、発火部17からのプルーム
(plume)20が急速に広がると、当該空間及び隣接事務室
等にいる人の避難に支障を来たし、特別の対策を施さな
い場合には避難の余裕もなく煙が広がり重大な災害の原
因となる事態も予想される。図示例では発火部17の位置
を屋内の広い空間７の床３の中央とするが、発火部17の
位置は床だけでなく空間７内のどこにでもありうる。こ
の事態を避けるため、特開昭62−190340号公報は、火災
発生時に建物の階段部等の共通空間の内側に向けて加圧
送風し共通空間を通じての煙の急速な広がりを防ぎ避難
路を確保する方式を提案した。しかし火災発生後の加圧
送風は、発火部17へ新鮮空気を供給し火災の成長を促す
ことになるので、必ずしも最善の策ではない。

【０００４】本発明者は、広い空間内の温度分布及び同
空間に対する給排気口の位置や大きさが火災抑制保安上
の重要な要素であるとの知見を得、広い空間内部の温度
分布と火災発生部分の周囲の圧力とを制御すると共に適
切な給排気口の設置により屋内空間の火災拡大を防いで
火災を抑制し且つ避難路の安全を確保する方法の発明を
完成した。このように火災抑制と避難の安全確保の観点
から内部温度分布を制御し給排気口の配置を定める方法
は従来存在しなかった。

【０００５】従って本発明の目的は、空気の温度境界形
成と発火部周囲の圧力調整とによる屋内空間の火災抑制
・保安方法を提供するにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】図３及び図４を参照する
に、日射等によって発生した熱気層が屋内空間７の上部
に滞留する場合には、火災初期の発火部17からの弱い浮
力のプルーム20が上記熱気層の下端における空気密度境
界又は温度境界を貫通できなくなり、蓄煙区間又は煙層
26が低下する現象が報告されている。（岡泰資、須川
修身「滞留した熱気層への弱い上昇熱プリュームの侵
入状況のシミュレーション」日本建築学会大会学術
講演梗概集（中国）1990年10月）即ち、高さ25mのアト
リウムの場合、夏期には床３と天井５との間に約25^oCの
温度差が実測されたこと、及び空間７の高さ方向の温度
分布が一様でないことが報告されている。温度センサー
13（図１）を空間７の高さ方向に分布して取付けて測定
すれば、図３(B)の様な温度分布を測定できる。簡明の
ため、図３(B)では床３から高さH₁までは小さな温度傾
斜で直線的な分布をし、高さH₁より上では大きな温度傾
斜で直線的な分布であると仮定する。上部が高温となる
分布形はいくつかあるが、図３(B)としてはその一例を
示す。さらに上記岡等の論文は、高さH₁までの傾斜が0.
33^oC/m程度であり高さH₁より上の傾斜が3.3^oC/m程度で
ある時に、プルーム20が高さH₁における温度境界を通っ
て熱気層に侵入することができず、その温度境界下に滞
留して煙層26（図３(A)）を形成すること、及び温度境
界が弱いプルーム20に対してあたかも非常に堅い境界
（壁や天井）であるかのような振舞いを見せることを報
告している。

【０００７】本発明者は、空間７を２以上の区画に区切
り、火災発生区画に隣接する周囲区画に火災発生区画内
の気温より高温のガスを吹込めば火災発生区画の周囲に
空気の温度境界を人工的に作り得ること、冬期暖房時及
び夏期日射による滞留熱気層が空気の温度境界を生成し
得ること、及び前記周囲区画の圧力調整により火災のプ
ルームを火災発生区画に滞溜させ得ることに注目した。
上記高温のガスは、人体に有毒な成分を含まない清浄な
ものでなければならない。

【０００８】図１の実施例を参照するに、本発明の高温
ガスと調圧による火災抑制・保安方法においては、建物
内空間７を２以上の区画R1、R2、・・・に区切り、火災
発生区画R1の周囲区画R2へ火災発生区画R1内の気温より
高温のガスを例えば高温ガス流31のように吹込むと共に
周囲区画R2の圧力を火災発生区画R1の圧力以上に調整
し、火災発生区画R1の前記吹込みに干渉しない部位から
例えば排気流35のように排気する。高温のガスは、高温
の不燃性ガス又は高温空気とすることができる。又高温
ガスは、人体に有害なガスを含まないものとし、清浄ガ
スとすることもできる。好ましくは、前記高温ガスの吹
込み及び排気を、各区画R1、R2・・・の頂部において行
う。図示例では、火災発生区画R1の片側の周囲区画R2の
みを示すが、火災発生区画R1を囲む全ての周囲区画にお
いて図示周囲区画R2におけると同様に高温ガスの吹込み
が行われる。

【０００９】本発明の高温ガスによる空間の火災抑制・
保安装置は、建物内空間７を区切った２以上の区画R1、
R2、・・・、各区画内に設ける火災の検知手段15と圧力
センサー18と調圧手段38、各区画に高温ガスを吹込む高
温ガス吹込み手段30、各区画の前記吹込みに干渉しない
部位に設けた排気手段34、並びに前記検知手段15及び圧
力センサー18の出力に応答して前記高温ガス吹込み手段
30と前記排気手段34と調圧手段38とを選択的に作動させ
る制御手段39を備えてなるものである。

【００１０】

【作用】区画R1で火災が発生した場合に、図１に示す様
に周囲の区画R2に高温ガスを吹込むと、両区画R1、R2の
間に空気の温度境界が形成されるので、プルーム20はそ
の温度境界を貫通して周囲区画R2へ侵入することができ
ない。さらに発火部17で燃焼が続き火災発生区画R1内の
圧力が上昇することがあっても、周囲区画R2の圧力を調
圧手段38によって火災発生区画R1の圧力以上に保つの
で、温度境界が火災発生区画R1の外へ移動するのを防止
し、プルーム20を火災発生区画R1の頂部に留めて煙層26
として閉じ込める。よって、周囲区画R2においては高温
ガス吹込みによる若干の温度上昇はあってもプルーム20
即ち煙の侵入がなく人の避難の安全を確保できる。即
ち、火災による煙を火災発生区画R1の頂部にのみ滞留さ
せ、避難系通路に対する煙の影響を避け、安全な避難を
確保することができる。なお，冬期暖房時又は夏期日射
により空気の温度境界が生成している場合には、その温
度境界を保持活用すれば足りるので、高温ガス吹込み手
段30、調圧手段38及び後述の排気手段34は制御手段39に
より選択的に作動される。

【００１１】火災発生区画R1から煙の含まれ得る空気を
排気手段34によって引抜くことは、プルーム20を上方に
吸上げるように作用し、プルーム20が床３に広がって延
焼の原因となるのを防ぎ、火災拡大を防止すると共に床
３における避難の安全をも確保する。

【００１２】こうして、本発明の目的である「空気の温
度境界形成と発火部周囲の圧力調整とによる屋内空間の
火災抑制・保安方法の提供」が達成される。

【００１３】

【実施例】図１の実施例では、火災検知手段として各区
画R1、R2・・・に配置した熱電対などの温度センサー1
3、天井５に取付けた火災検知器15、及び人が操作でき
る火災報知器16の三者を用いる。吹込むべき高温ガス流
31の温度及び調圧手段38により維持すべき圧力レベルは
火災発生区画R1内の空気温度及び圧力に依存するので、
温度センサー13の出力及び圧力センサー18の出力をコン
ピュータなどの制御装置39に入力し、火災検知時におけ
る火災発生区画R1の空気温度及び圧力に基づいて高温ガ
ス流31の温度及び調圧手段38の目標圧力をコンピュータ
演算により定める。各区画R1、R2の境界が明確でない場
合には、例えばシャッターの様な可動隔壁40を作動させ
る。

【００１４】こうして定めた温度の高温ガス流31を発生
するため、図示実施例では高温空気と室温空気との混合
による温度調節方式の空調機37を用い、その混合比を制
御装置39からの信号により調節する。また制御装置39で
定めた調圧手段38の目標圧力を与えるため、例えば圧力
タンク33の圧力を調圧弁36によって目標圧力まで下げた
後周囲区画R2に加える。図示例の空調機37は、排気流35
の排気を空間７の外へ引抜く機能をも果たす。この場
合、高温ガス吹込みの開始及び停止は、制御装置39から
の信号に応動する弁32aの開閉によって行い、排気の開
始及び停止は、制御装置39からの信号に応動する弁32s
の開閉によって行い、調節した空気圧力増加の開始及び
停止は、制御装置39からの信号に応動する開閉弁32pの
開閉によって行う。従って、図示例においは空調機37の
給気側管路と開閉弁32aとが高温ガス吹込み手段30を形
成し、空調機37の還気側管路と開閉弁32bとが排気手段3
4を形成し、調節弁36を介する圧力タンク33の出力管路
と開閉弁32pとが調圧手段38を形成している。図１で
は、各区画ごとに空調機37を設けているが、個別空調機
37の替りに建物全体の集中空調システム（図示せず）を
利用してもよい。

【００１５】火災時に図１の高温ガス流31として高温空
気を周囲区画R2から吹込んだ場合にその高温空気の一部
分が火災発生区画R1に漏れ出すことがあっても、漏れ出
した高温空気は火災発生区画R1の天井部に溜るので発火
部17の燃焼を助長する恐れはない。

【００１６】図２は、高温ガスを吹込みむ機能と共に感
圧機能をも有する空調機37aを用いた実施例を示す。こ
の場合には，空調機37aに含まれる送風機の特性により
吹出し圧が調整されるので、送風機の吹出し口に圧力セ
ンサーを兼ねさせることができる。

【００１７】本発明における高温ガス吹込み手段30及び
排気手段34は、上記同一空調機37により形成される構成
に限定されるものではなく、例えば空調機によらない高
温ガス吹込み手段30及び排気手段34をそれぞれ独立に設
けてもよい。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように本発明の高温ガス及
び圧力調整による火災抑制・保安方法及び装置は、高温
ガス吹込みにより空気の温度境界を形成し且つ調圧によ
りその温度境界の位置を調整してプルームの煙を火災発
生区画の頂部に滞溜させつつ排煙するので、発火部から
の延焼を抑制し且つ建物からの安全な避難を確保する顕
著な効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の図式的説明図である。

【図２】本発明の他の実施例の図式的説明図である。

【図３】建物空間の図式的斜視図である。

【図４】方形断面の建物の図式的平面図である。

【符号の説明】

１建物３床５天井７空間９周囲壁 11 外壁 13 温度センサー 15 火災検知器 16 火災報知器 17 発火部 18 圧力センサー 20 プルーム 22 避難路 26 煙層 30 高温ガス吹込み手段 31 高温ガス流 32a、32s、32p 弁 33 圧力タンク 34 排気手段 35 排気流 36 調圧弁 37、37a 空調機 38 調圧手段 39 制御装置 40 垂れ壁又は可動の隔壁 41 避難用扉

フロントページの続き (72)発明者大内富夫東京都調布市飛田給２丁目19番１号鹿島建設株式会社技術研究所内 (72)発明者宮本圭一東京都調布市飛田給２丁目19番１号鹿島建設株式会社技術研究所内 (72)発明者須川修身千葉県野田市山崎2641

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】建物内空間を２以上の区画に区切り、火
災発生区画の周囲区画へ火災発生区画内の気温より高温
のガスを吹込み、前記周囲区画の圧力を火災発生区画の
圧力以上に調圧し、前記吹込みに干渉しない部位から排
気してなる高温ガスによる空間の火災抑制・保安方法。
【請求項２】請求項１の方法において、前記各区画の
頂部において前記吹込み、排気，及び調圧を行ってなる
高温ガスによる空間の火災抑制・保安方法。
【請求項３】建物内空間を区切った２以上の区画、前
記各区画内に設けた火災の検知手段と圧力センサーと調
圧手段、前記各区画に高温ガスを吹込む高温ガス吹込み
手段、前記各区画の前記高温ガス吹込みに干渉しない部
位に設けた排気手段、並びに前記検知手段及び圧力セン
サーの出力に応答して前記高温ガス吹込み手段と前記排
気手段と前記調圧手段とを選択的に作動させる制御手段
を備えてなる高温ガスによる空間の火災抑制・保安装
置。
【請求項４】建物内空間を区切った２以上の区画、前
記各区画に設けた火災の検知手段、前記各区画に高温ガ
スを吹込む機能と各区画の圧力を検知する感圧機能とを
有する高温ガス吹込み手段、前記各区画の前記高温ガス
吹込みに干渉しない部位に設けた排気手段、並びに前記
検知手段及び感圧機能の出力に応答して前記高温ガス吹
込み手段及び前記排気手段を選択的に作動させる制御手
段を備えてなる高温ガスによる空間の火災抑制・保安装
置。
【請求項５】請求項３又は４の装置において、前記高
温ガス吹込み手段の吹込み口及び前記排気手段の排気口
を各区画の頂部に設けてなる高温ガスによる空間の火災
抑制・保安装置。