JPH06220508A - 金属粉末の製造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】タンディッシュを取り外すことなく、必要なメ
ンテナンスが行え、作業効率及び製品の品質を向上する
とが可能な金属粉末の製造装置を提供する。 【構成】溶融金属を保持するタンディッシュ本体１と、
当該タンディッシュ本体１内に収容した溶融金属を流出
・落下させる溶融金属ノズル２とを備えたタンディッシ
ュ２０の下方に、溶融金属ノズル２から落下する溶融金
属に向けて高圧流体を噴射する噴霧流体ノズル１２を備
えた高圧流体室９を配置し、前記タンディッシュ２０を
噴霧流体ノズル１２（高圧流体室９）に対して上下に移
動する昇降装置４を備えた。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、金属粉末の製造装置に
係り、特に、必要なメンテナンスの容易化、効率化を達
成した金属粉末の製造装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、粉末冶金原料等に用いられる
金属粉末を製造する方法として、溶融状態とした金属の
流れに、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等のガスまた
は水、液化ガス等の高圧流体を吹きつけて前記溶融金属
を霧化した後、これを冷却して金属粉末を得るアトマイ
ズ法が行われている。

【０００３】このアトマイズ法に使用する金属粉末の製
造装置は、例えば、実開昭６２−１８６９３７号公報に
おいて紹介されている。この公報に記載されている金属
粉末の製造装置は、溶融金属を保持するタンディッシュ
本体と、当該タンディッシュ本体底部中央に設置され、
前記溶融金属を流出・落下させる溶融金属ノズルを備え
たタンディッシュと、タンディッシュ下面に位置し、溶
融金属ノズルから落下する溶融金属に向けて高圧流体を
噴射する噴霧流体ノズルを備えた高圧流体室と、霧化し
た溶融金属の冷却回収用チャンバを備え、前記タンディ
ッシュ、高圧流体室を他の構成要素から分離可能な組み
立てユニット体とした構造を有している。このため、予
め複数のタンディッシュを準備しておけば、外部段取り
作業によって当該タンディッシュ及び溶融金属ノズルの
メンテナンスを行う場合に、簡単にタンディッシュの交
換が行えるという利点を有している。

【０００４】また、前記タンディッシュ及び溶融金属ノ
ズルのセッティングを容易に行うことができ、さらに前
記噴霧流体ノズル及び溶融金属ノズルの中心合わせも同
時に外部段取り作業によって行うことができる。さら
に、特開昭６２−１５１５０３号公報では、タンディッ
シュの下部に設置された溶融金属ノズルと、噴霧流体ノ
ズルとの隙間を広げた構造を有する金属粉末の製造装置
が紹介されている。この金属粉末の製造装置は、溶融金
属ノズルと噴霧流体ノズルとの隙間を広げた構造を有す
るため、アトマイズ処理時に生じるブロッケージ現象
（溶湯逆噴射によって生じるノズルの閉塞）を防止する
利点を備えている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記実
開昭６２−１８６９３７号公報で紹介されている金属粉
末の製造装置は、タンディッシュ及び溶融金属ノズルの
メンテナンスを行う際、当該タンディッシュを取り外し
て他のタンディッシュと交換するため、作業に時間がか
かり生産性が低下するという問題があった。

【０００６】また、特開昭６２−１５１５０３号公報で
紹介されている金属粉末の製造装置は、前記溶融金属ノ
ズルと噴霧流体ノズルとが形成する隙間を広げた構造を
有しているが、両者の隙間は、常に一定に固定されてお
り、且つ、密閉された構造となっている。従って、アト
マイズ処理中に溶融金属ノズルが詰まり溶融金属が流出
しなくなった場合には、前記金属粉末の製造装置の運転
を停止し、タンディッシュを取り外した後、別のタンデ
ィッシュに交換する方法、あるいは、前記と同様にタン
ディッシュを取り外した後、酸素吹き込み冶具（酸素吹
き込み用管）を用いて溶融金属ノズル内に酸素を吹き込
み、当該溶融金属ノズル内に詰まった物質を溶かし出し
（洗浄し）、その後再び当該タンディッシュを取り付け
る方法により、溶融金属ノズルの詰まりを解消してい
た。このため、メンテナンス作業に時間がかかり生産性
が低下するという問題があった。

【０００７】また、両従来例とも、長時間に亘って金属
粉末の製造装置を停止する必要があり、得られた金属粉
末の品質が変動し、製品の歩留りが低下するという問題
があった。本発明は、このような問題を解決することを
課題とするものであり、タンディッシュを取り外すこと
なく、必要なメンテナンスが行え、作業効率及び製品の
品質を向上するとが可能な金属粉末の製造装置を提供す
ることを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明は、溶融金属を保持するタンディッシュと、
当該タンディッシュから落下する溶融金属に向けて高圧
流体を噴射する噴霧流体ノズルと、を備えた金属粉末の
製造装置において、前記タンディッシュと前記噴霧流体
ノズルとを上下に相対移動する昇降装置を備えたことを
特徴とする金属粉末の製造装置を提供するものである。

【０００９】

【作用】本発明に係る金属粉末の製造装置は、タンディ
ッシュを噴霧流体ノズルに対して上下に相対移動する昇
降装置を備えた構造を有するため、当該タンディッシュ
と噴霧ノズルとが形成する隙間を必要に応じて変更する
ことができる。従って、例えば、アトマイズ処理中に、
タンディッシュの溶融金属ノズルが詰まった際には、金
属粉末の製造装置を停止することなく、前記昇降装置を
作動して前記タンディッシュを上方に移動し、当該タン
ディッシュと噴霧流体ノズルとが形成する隙間を大きく
（広く）することで、当該タンディッシュを取り外すこ
となく、酸素吹き込み冶具等を用いて前記溶融金属ノズ
ル内を洗浄することができ、ノズル詰まりを解消でき、
アトマイズ処理が再開できる。

【００１０】また、前記昇降装置として、噴霧流体ノズ
ルを上下に移動させる方式のものを使用しても前記と同
様の作用を得ることができる。

【００１１】

【実施例】次に、本発明に係る実施例について、図面を
参照して説明する。図１は、本発明に係る金属粉末の製
造装置の主要部分を示す断面図、図２は、図１に示す金
属粉末の製造装置のタンディッシュを上昇した状態を示
す断面図である。

【００１２】図１及び図２に示すように、本実施例に係
る金属粉末の製造装置は、図示しない従来の溶解炉から
供給される溶融金属Ｍを受け取って保持する３トンの溶
鋼が収容可能なタンディッシュ２０を備えている。この
タンディッシュ２０は、タンディッシュ本体１と、当該
タンディッシュ本体１の底部中心位置に形成された貫通
孔内に下方に突出して挿嵌され、当該タンディッシュ本
体１内の溶融金属を下方に流出・落下させる溶融金属ノ
ズル２とで構成されている。

【００１３】前記タンディッシュ本体１の上部外周縁に
は、前記タンディッシュ２０を支持可能なフランジ１４
が等間隔で４つ設けられ、これらフランジ１４の下面に
掛合凹部が形成されている。そして、タンディッシュ２
０が各フランジ１４の掛合凹部に対応して架構５に固定
支持された４台の昇降装置４によって上下動自在に支持
されている。これら昇降装置４は、特に、図２に示すよ
うに、シリンダチューブ１７と、シリンダチューブ１７
内に配設されたピストン（図示せず）に連結されて、油
圧しよって当該シリンダチューブ１７に対して上下方向
に進退運動を行うピストンロッド１６を備えた油圧シリ
ンダにより構成されている。

【００１４】一方、タンディッシュ２０の下方には、前
記溶融金属ノズル２と同軸的リング形状の高圧流体室９
が設置されている。この高圧流体室９内には、後に詳細
するが、前記溶融金属ノズル２から落下する溶融金属Ｍ
に吹きつけるための空気、窒素、アルゴン、ヘリウム等
のガスまたは水、液化ガス等の流体が収容される。ま
た、前記高圧流体室９の底部には、前記溶融金属ノズル
２を中心とした同心に、前記溶融金属ノズル２から落下
する溶融金属Ｍに向けて、当該高圧流体室９内に収容さ
れている流体等を高圧で吹きつける噴霧流体ノズル１２
が等間隔に数カ所設置されている。なお、符号３は、噴
霧流体ノズルから噴出された高圧流体の焦点位置を示
す。さらに、前記高圧流体室９には、当該高圧流体室９
内に前記のような流体を高圧で供給する高圧流体供給管
１３が連結されている。そして、前記高圧流体供給管１
３の先端は、図示しない高圧流体供給ボンベ等に接続さ
れている。

【００１５】前記タンディッシュ２０に設けた４つのフ
ランジ１４の下部には、架構５に固定支持された昇降装
置４が各々１台ずつ設置されている。そして、前記ピス
トンロッド１６の上端（タンディッシュ２０側端部）に
は、フランジ１４の下面に形成した凹部に係合するシリ
ンダブラケット１５が装着されており、前記フランジ１
４は、このシリンダブラケット１５を介して昇降装置４
に支持されている。

【００１６】なお、本実施例では、ピストンロッド１６
のストロークＬが３００ｍｍである油圧シリンダを使用
した。次に、本実施例に係る金属粉末の製造装置を使用
した具体的動作について説明する。本実施例に係る金属
粉末の製造装置を用いて、アトマイズ法により金属粉末
を製造する。

【００１７】先ず、図１に示すように、タンディッシュ
２０と高圧流体室９を接近された状態で、タンディッシ
ュ本体１に収容された溶融金属Ｍを、溶融金属ノズル２
から所定の流量で落下させると同時に、落下する溶融金
属Ｍに噴霧流体ノズル１２から高速で噴出した高圧流体
を吹きつけ、前記溶融金属Ｍを微粉化すると共に、急冷
して金属粉末とする。製造された金属粉末は、図示しな
い金属粉末収容容器に回収される。

【００１８】この作業中に、溶融金属ノズル２が詰ま
り、溶融金属Ｍが落下しなくなった際には、金属粉末の
製造装置の運転を継続した状態で、昇降装置４を作動
し、図２に示すように、昇降装置４の油圧を調整してピ
ストンロッド１６を３００ｍｍ上昇させる。このように
して、タンディッシュ２０を高圧流体室９から上方に３
００ｍｍ移動し、この状態を維持する。この動作によ
り、タンディッシュ２０と高圧流体室９とが形成する隙
間を、アトマイズ処理時に形成されていた隙間に対して
３００ｍｍ上昇させることができ、これにより、溶融金
属ノズル２の下端を高圧流体室９の上面より下方に離間
した位置とすることができる。

【００１９】次に、この状態で、作業者１０が酸素吹き
込み管１１を用いて溶融金属ノズル２内に酸素を吹き込
み、当該溶融金属ノズル２内に詰まった物質を溶かし出
す。この時、タンディッシュ２０と高圧流体室９とが形
成する隙間が広く取られているため、タンディッシュ２
０を装置から取り外すことなく溶融金属ノズル２の洗浄
を行うことができる。

【００２０】次いで、前記溶融金属ノズル２の洗浄が終
了したら、昇降装置４の油圧を調整し、ピストンロッド
１６を元の位置まで降ろし、金属粉末の製造を再開す
る。なお、前記溶融金属ノズル２を洗浄した後、再び金
属粉末の製造を再開するまでに、約３分の時間を必要と
した。これは、従来の洗浄に比べ、約１／１０の時間で
あり、溶融金属ノズル２の洗浄時間を大幅に短縮するこ
とができた。

【００２１】また、本実施例に係る金属粉末の製造装置
を用いた際の製品の歩留りは、９１〜９２％であり、従
来に対して、１〜２％向上していた。これは、本発明に
係る金属粉末の製造装置は、溶融金属ノズル２の洗浄時
間を大幅に短縮することができるため、得られる金属粉
末の品質が変動することを抑制することができたためで
ある。さらに、タンディッシュ２０を上昇することによ
り、溶融金属ノズル２の観察が容易となり、溶融金属ノ
ズル２の破損による溶融金属Ｍの落下状況や、噴霧流体
ノズル１２の上方側壁面に地金が付着し、閉塞に至るト
ラブルを未然に発見して防止することができたためであ
る。

【００２２】なお、本実施例では、昇降装置４として、
油圧シリンダを使用したが、これに限らず、タンディッ
シュ２を上下方向に移動可能であれば、油圧ジャッキ
等、他の昇降手段を備えた昇降装置を使用してもよい。
また、本実施例では、昇降装置４により、タンディッシ
ュ２０を上下方向に移動したが、これに限らず、高圧流
体室９に昇降装置４を設置し、当該高圧流体室９を上下
方向に移動してもよい。

【００２３】そして、本実施例では、昇降装置４を４台
設置したが、これに限らず、昇降装置４の設置数は、タ
ンディッシュ２０あるいは高圧流体室９の上下移動に支
障を来さない範囲であれば、所望により決定してよい。
そして、この場合は、タンディッシュ本体１に設置した
フランジ１４の数は、昇降装置４の設置数に応じて決定
すればよい。

【００２４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る金属
粉末の製造装置は、タンディッシュを噴霧流体ノズルに
対して上下に相対移動する昇降装置を備えているため、
当該タンディッシュと噴霧ノズルとが形成する隙間を必
要に応じて変更することができる。従って、例えば、ア
トマイズ処理中に、タンディッシュの溶融金属ノズルが
詰まった際には、金属粉末の製造装置を停止することな
く、前記昇降装置を作動して前記タンディッシュと噴霧
流体ノズルとが形成する隙間を大きく（広く）すること
で、当該タンディッシュを取り外すことなく、酸素吹き
込み冶具等を用いて前記溶融金属ノズル内を洗浄するこ
とができる。この結果、短時間で溶融金属ノズルの詰ま
りを解消することができ、作業性を向上することができ
る。

【００２５】また、金属粉末製造の停止時間を大幅に減
少することができるため、得られる金属粉末の品質が変
動することを抑制することができる。さらに、タンディ
ッシュを上昇することにより、溶融金属ノズルの観察が
容易となり、溶融金属ノズル２に生じたトラブルを未然
に発見して防止することができる。この結果、製品の歩
留りを向上することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る金属粉末の製造装置の主要部分を
示す断面図である。

【図２】図１に示す金属粉末の製造装置のタンディッシ
ュを上昇した状態を示す断面図である。

【符号の説明】

１ タンディッシュ本体 ２ 溶融金属ノズル ３ 噴霧の焦点 ４ 昇降装置 ５ 架構 ７ ストッパーノズル ９ 高圧流体室 １０ 作業者 １１ 酸素吹き込み管 １２ 噴霧流体ノズル １３ 高圧流体供給管 １４ フランジ １５ シリンダブラケット １６ ピストンロッド １７ シリンダチューブ ２０ タンディッシュ Ｌ ストローク Ｍ 溶融金属

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶融金属を保持するタンディッシュと、
   当該タンディッシュから落下する溶融金属に向けて高圧
   流体を噴射する噴霧流体ノズルと、を備えた金属粉末の
   製造装置において、 前記タンディッシュと前記噴霧流体ノズルとを上下に相
   対移動する昇降装置を備えたことを特徴とする金属粉末
   の製造装置。